「早い」「安い」「便利」にひそむワナ~トマト缶の危険!
不純愛トーク 第198夜
第197夜から数回にわたってお届けしている「グローバリズム」の問題。今回は、「トマト缶」を例に、グローバリズムが世界にどんな不幸を押し付けているかを、検討してみのす――。
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AKI 前回、哲ジイは、私の食生活が「グローバリズム」にどっぷり浸っている――とおっしゃいましたよね。
哲雄 ハイ、申しました。食生活ばかりではありませんよ。メシは「マック」や「KFC」で食う、オモチャは「トイザラス」で買う、服は「ユニクロ」。少しも「地産地消」じゃない。これを「グローバリズム」と言わずにどうするか――てなものです。
AKI そうか……。私の生活は、まるっきり「グローバリズム」に毒されてるかもしれませんね。でもね、そのほうが、早いし、安いし、便利だし……。
哲雄 それそれ。その「早い」「安い」「便利」。これを求めると、われわれは、知らず知らずのうちに「グローバリズム」のワナにはまっていくことになります。前回、チラとお話した「スロー・ライフ」の考え方では、この「早い」「安い」「便利」を求めないライフ・スタイルを追求しよう――と訴えてるんだよね。
AKI 哲ジイは、もうすっかり、スロー・ライフにおなりで……。
哲雄 それは、ま、最近、足腰も弱ってきて……って、ほっといてください。で、前回の続きだけど、前回は、「マネー・グローバリズム」を取り上げて、ハゲタカたちが世界を不幸にしている、という話をしました。今回は、「産業グローバリズム」に焦点を当ててみます。こっちのほうが、私たちの生活に関係が深いかもしれません。
AKI 「産業……」ということは、「ものづくり」ってことですか?
哲雄 そうです。たとえば、農業を取り上げてみましょうか? 日本では、ほとんどの農作物は、独立自営の農民が、その土地に合った方法で土地を耕作し、人の体にやさしい作物を作り出しています。これは、地球にとっても、人の健康という観点からも、とてもいいことだと私は思っているのですが、ここに「グローバリズム」が入り込むとどうなるか?
AKI 大規模農場で作った農作物を、ドーンと収穫して、世界中に流通させるようになる――ですか?
哲雄 そうです。大規模に農業を営むために、土地には化学肥料を大量に撒き、農薬を飛行機で散布し、収穫した穀物や果物などには防腐剤をまぶし、防カビ剤を吹きつけて、世界中に送り出す。それが人間の体によくないってことは、容易に想像できると思いますが、それだけじゃない。化学肥料でムリヤリ肥やされた土地は、ミミズも住めない土地になって、やがては土壌そのものがもろく、貧弱になっていく。大規模に農業を営むためには、それまで細かく区分され、潅木や樹木やあぜ道などで仕切られていた土地を、のっぺりした耕作地に変えなくてはならない。そういう土地の表土は、雨や風でどんどん流されてしまう。アメリカの穀倉地帯であるアイオワ州などでは、すでにその表土がかつての半分ほどに減ってしまっている、という報告が、いまから20年ほど前に発表されました。この土壌流出も、地球にとっては、大きな問題なんだよね。AKIクンは、トマト缶はよく使いますか?
AKI ハイ。よく使いますよ。だって、缶詰のほうが、生のトマトより安かったりしますしね。
哲雄 また、出てきましたね、「安いから」が。私だって、生活厳しいですから、そりゃ、食材は安いにこしたことはない。しかしね、それでも私は、トマト缶は使いません。
AKI ど、どうして……?
哲雄 トマト缶は、世界中でも数社しかない巨大食品会社によって、その生産・販売が寡占されていますが、AKIクン、このトマト缶に使われるトマト、どこでどんなふうに作られてるか、知ってますか?
AKI 巨大な農場……ですか?
哲雄 なのですが、もはや、それは農場とは言えないような農場。どっちかと言うと工場に近い――と言ったほうがいいと思います。ふつう、私たちがトマトを食べるときには、完熟したものを選びますよね?
AKI ハイ。トマトは、真っ赤に熟れたものを選ぶようにしてますけど……。
哲雄 しかし、自然にまかせていたのでは、トマトが熟れる次期はバラバラになってしまいます。それを、「おっ、こいつは熟れてるな」などと人間が目で判断して手摘みしていたのでは、とても大量生産には間に合わない。
AKI ど、どうしたんですか?
哲雄 ムリヤリ完熟させるわけです、エチレンを吹きつけて。エチレンには、そうやってトマトを赤くする働きがあるんだよね。ふつう、この物質は、トマト自体の中で自然に作られるんだけど、アメリカでは、これを農薬として使用する技術が開発され、これを使うと、通常の半分くらいの期間で真っ赤なトマトが一斉にでき上がる。これを、トマト収穫機(これも、アメリカで開発された)を使って、バァーッと収穫してしまうわけです。
AKI す、すご――い!
哲雄 感心してる場合じゃありません。通常の半分くらいの期間でムリヤリ完熟させられたトマトが、栄養的にも味覚的にも、自然に完熟したトマトに比べて劣る、というのは想像がつきますよね。さらに怖いのは、その後。
AKI エッ!? 何か、やるんですか?
哲雄 収穫したトマトは、ジュースにするか、ケチャップにするか、トマト缶にするかなんだけど、どう処理するかは、市場の動向を見て決められます。その間、トマトは貯蔵されるわけです。つぶされた状態で。
AKI つぶされた状態で……ですか? 丸のままじゃなくて……?
哲雄 丸のままじゃ、貯蔵しにくいでしょ。つぶした状態のほうが効率よく貯蔵できるからね。しかし、その状態で貯蔵しようとすると、腐敗の心配があるので、防腐剤浸けにして貯蔵します。缶詰やケチャップに使われるのは、こうして貯蔵されたトマト。だから安い。私が、「安い」という理由だけでトマト缶に飛びつかないのは、そんな理由からです。
AKI そうなんだ! 聞けば聞くほど、愚かだったなぁ……と思いますね。
哲雄 元々、トマトはね、収穫の時期が不ぞろいということもあって、アメリカでも、大規模農法には向かない作物だと考えられてたんだけどね、エチレンとトマト収穫機と防腐剤の登場によって、大規模化が可能になった。その結果、大産地であるカリフォルニアでも、1960年代の後半には4000軒あったトマト栽培農家が、1970年代にはわずか600軒になってしまいました。これが、農業における「グローバリズム」というものの正体。
AKI 家族農業が立ち行かなくなった、ということがですか?
哲雄 それだけじゃないでしょ。健全な農民を土地から追いやって、単なる労働者に変えてしまい、消費者には「安くて便利!」のキャッチフレーズで農薬・防腐剤まみれの食品を押し付け、なおかつ、土壌をやせさせてしまう。「グローバリズム」の嵐は、私たちにそんな結果を押し付けたわけです。
AKI ね、哲ジイ。農業以外でも、同じことが起こってるんでしょうか?
哲雄 少なくとも、雇用ということに関しては、同じことが起こってますね。たとえば、自動車や電気製品や繊維なんていう産業を例にとると、主要先進国の工場は、どんどん、海外に流出してますよね?
AKI 「あ、パナソニックだ」と思って買っても、「Made in Thailand」になってたりして、驚くことがあるんですけど……。
哲雄 企業は、少しでも安い労働力を求めて、生産拠点を人件費の安い途上国に移してますからね。そうして、業務の一定の部門あるいは複数の部門を、複数の国に置く企業を「多国籍企業」っていうんだけど、日本でも、大手の製造業は、ほとんどが、「多国籍」になってます。
AKI 別に、それは、わるいことではないでしょう?
哲雄 消費者としてはね。でも、働く側からしてみたらどうだろう?
AKI あ、そうか……。就職先がなくなっちゃう?
哲雄 つーか、国内での雇用状況が悪化しますよね。たとえば、国内で働いている労働者が、「もう少し賃金をUPしてほしい」と要求したとするよね。経営者はどうすると思う?
AKI ま、太っ腹な経営者なら、「よっしゃ」と大盤振る舞いするかもしれないけど……あ、そうか。そんな要求するなら、工場を海外に移しちゃうゾ――と言い出す。
哲雄 こないだも、経団連の会長がそんな発言してましたねェ。そうやって国内の賃金を抑えにかかる。それでも厳しければ、ほんとに生産拠点を海外に移してしまう。
AKI 要するに、国内の労働者は、どんどん貧しくなっていくしかない――と、そういうことですか?
哲雄 そうです。「産業グローバリズム」を経営の側から言うと、企業を「多国籍化」するということだけど、働く者の立場から言うと、雇用環境が悪化するということになる。これ、勤労大衆にとっては、深刻な事態なんだよね。
AKI そうかぁ……。大衆は、どんどん貧しくなっていくってことなんですね?
哲雄 そのとおり。「グローバル化」が進むことによって何が起こるかというと、労働コストは、世界でいちばん安い賃金に向かって、どんどん均されていく。一方、経営者は、安いコストを求めてどんどん世界に手を広げていき、その結果、利潤の幅が広くなる。
AKI 金持ちはどんどん豊かになり、貧乏人はどんどん貧しくなっていく……ですか。つまり、「グローバリズム」は、貧富の差を拡大するってことなんですね。
哲雄 よくわかりました。なので、この「グローバリズム」には、反対する声も大きい。その立場はいろいろなんだけど、ひとまとめに「反グローバリズム」と呼ぶこともできます。その中には、「エコロジー(環境保護)」のグループもいれば、「スロー・ライフ」を提唱するグループもいるし、「多文化主義」を唱えるグループもいる。
AKI とにかく、「グローバリズム」はよろしくない……と。哲ジイも、その立場なんですね。
哲雄 ハイ。文化的にも、経済的にも、政治的にも、「グローバリズム」には、真っ向反対の立場です。だからね、AKIクン……。
AKI 早い、安い、便利――にだまされるな、ということですね。
哲雄 最近、なんだかものわかりがよくなりましたね。次回は、「反グローバリズム」の精神的根拠ともなっている「スロー・ライフ」という考え方について、じっくりお話したいと思います。
AKI ファーイ。じゃ、きょうはここまで。エッ……と、ハラも減ったし、マックにでも……じゃなかった、きょうは、駅前の蕎麦屋にでも寄って帰ります。

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