消費者として「得」は、勤労者としては「損」
不純愛トーク 第195夜
結婚もできないような「貧困層」が増えている――過去3回、連続でお届けした《格差社会と結婚》の問題。今回は、そのまとめ。消費者が「安い!」「便利!」に走るほど、格差はひろがっていく、という話をお届けします――。
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AKI 私、ちょっと、反省しました。
哲雄 ハ……また、どこかのオヤジをたぶらかした……とか?
AKI ええ、実は、きのうもオヤジをひとり……って、んなわけないじゃないですか。じゃなくてですね、通販で安いものに飛びつくっていう、私の消費マインドを、少し見直してみようか――と。
哲雄 ホウ、そりゃまた、けっこうな話で……。私のロジスティクスの話が、キミの意識改革に少しでも寄与できたとしたら、それは、たいへんうれしいことです。
AKI そうですよね、哲ジイ。私たちが「便利だから」「安いから」と飛びつく通販商品を生み出す背景では、ワーキング・プアがどんどん生まれてる――としたら、けっしてそれは、社会をよくしていく消費行動にはならないなって思ったんですよ。
哲雄 エラいッ! よくぞそこまで思いいたってくれました。「通販」というシステムは、それ自体はけっしてわるいものじゃないとは思うのです。「通販」が「宅配」という運送システムと結びつくことによって、日本全国津々浦々にまで、流通網を広げていった。その結果、これまで販路を獲得できなかった地方の小規模メーカーの商品も、全国に流通することができるようになった。消費者の側から言うと、どんな過疎地帯に住んでいる人でも、欲しい商品を手に入れることができるようになった。これは、評価しなければならないことだと思います。
AKI でも、問題もありなのですね?
哲雄 ハイ。大ありです。雇用と労働のあり方が、大きく変わってしまいました。従来の物流は、
製造業者 ⇒ 卸売業者 ⇒ 小売店 ⇒ 消費者
という形になっていて、商品がわれわれの手元に届くまでには、いくつかの中間業者が介在していました。ま、これが商品価格を押し上げてしまう原因にもなっていたのですが、その代わり、その流通の過程で多くの雇用を生み、小規模事業者(小売店など)という社会的中間層も生み出していました。ところが、通販システムでは、これが、
製造業者 ⇒ 通販会社 ⇒ 消費者
というふうに短絡されてしまいました。場合によっては、
製造業者 ⇒ 消費者
と、製造業者と消費者が直結されてしまうケースもある。化粧品とか下着の通販では、この形が多いと思うんだけど……。
AKI 私がよく買ってた下着とかは、最後のパターンだ。
哲雄 いまは、通販の例で説明したのですが、この「通販会社」を大手スーパーや百貨店、ディスカウント・ショップなどの「大規模小売店」に置き換えても同じだと思うんだよね。要するに「中間」がなくなってしまった。消費者の立場から言えば、けっこうな話かもしれないんだけど、雇用と労働という観点から言うと、あまりいい話じゃない。
AKI ハーン……「中間」の雇用がなくなるからですね?
哲雄 ちょっと、図式化してみましょうか。大規模製造業や大規模小売業(通販含む)の経営者や管理者層を「Rich(富裕層)=R」と表し、小規模事業主やそこで働く管理職層を「Middle(中間層)=M」と表し、これらの職場でぎりぎりの賃金で働く労働者層を「Poor(貧困層)=P」と表しましょうか。この「R」と「M」と「P」の比率がね、従来の流通システムの中では、

ま、だいたい、これくらいの比率だったとしましょう(あくまで模式的に表すとということで、実際の統計数値ではありません)。しかし、これが、現在では、

という比率に変わりつつある。将来的には、もっと、この差が大きくなってしまうかもしれない。
AKI あ、それが「格差社会」ってことなんですね。
哲雄 そうです。「中間」が消えて、「富」と「貧」とに分解してしまう。つまり、こういうことです。
消費者が「安い!」「便利!」に飛びつくほど
格差は拡大していく!
別に、そういう消費行動を責めているわけではありませんが、このことを頭の片隅に置いておいて、正しい消費生活をしていただきたい――と、長住は願って止みません。そしてね、もうひとつ、忘れてはいけないことがあります。
AKI 謹んで承りましょう。ハイ、どうぞ。
哲雄 TVで解説される家計評論家のみなさんなどは、しきりに、「どうすればもっと安く買えるか?」を力説され、中には「円高は賢い買い物のチャンス」のようなことまでおっしゃる方もいらっしゃるようですが、そういうおバカさんたちが、ほとんど忘れていることがあります。
この社会には、ただ消費しているだけの人間なんていない。
消費者は、同時に、収入を得なければならない勤労者でもある。
このことをお忘れなんですね。
AKI てことは、あれですね。消費者として「得する行動」は、勤労者としては「損する行動」になる場合もある。それを忘れるな――と、哲ジイは、そうおっしゃりたいわけですね。
哲雄 おお、よくぞまとめてくださいました。この日本という国が、戦後、ここまで成長を遂げてきたのはね、「健全な中流」を育ててきたからだと思ってるんですよ。ところが、ここまで縷々申し上げてきたとおり、現在、この「中流層」が、「富」と「貧」とに分解してしまおうとしている。これこそ、私は国家的危機だと思っています。
AKI 一時期、「一億総中流」とまで言われてたのにね。
哲雄 「東京オリンピック」が開催される数年前だったでしょうか、当時の池田首相が「所得倍増計画」なんてものをブチ上げて、とにかく、国民の所得を増やそう、そうして健全な国内市場を形成しようと謳いあげてから、日本の高度成長が始まるんですが、その時代の国民は、まだ、「豊かな生活」を夢見ることができました。雇用に関しても、企業は「終身雇用制」を採用してましたから、安心して働くことができましたし、その当時はまだ力を持っていた「総評(日本労働組合総評議会)」を中心に、毎年、労働組合が資本側と「春闘」を闘って、一定の賃上げを獲得し続けていました。ところが……。
AKI 規制緩和……ですね?
哲雄 規制緩和と市場原理主義の導入です。これによって、この国は、メチャメチャになってしまいました。簡単に言ってしまうと、政府はいろんな規制を取っ払っちゃうし、介入もしないから、みんな、好きにやりなさいよ――ってことなんだよね。いわゆる「小さな政府」にしてしまったわけです。
AKI その頃から、大手スーパーの出店とかも増えましたよね?
哲雄 大規模小売店舗法(大店法)が廃止されてしまいましたからね。さらに「職業斡旋」に関する規制も取り払われて、「派遣会社」が野放し状態になってしまいました。こうして、虎が野に放たれたわけです。
AKI エッ!? 派遣会社って、虎……ですか?
哲雄 「派遣会社」って言うと、なんだかスマートに聞こえますけど、昔で言うなら、「口入屋」とか「手配師」ですからね。そして、そういう稼業は、かつてはヤクザのしのぎのひとつでもあったわけです(特に港湾労働者など。現在は禁止されている)。というわけなので、この業界は、あまり上品なものとは言えない。つまり、虎なわけです。私は、こういう虎を野に放ったのは、政策上、大きな過ちであった――と思っています。
AKI もっと、規制すべき――と、哲ジイは思ってるんですね?
哲雄 ハイ。思ってます。やっぱり、「大きな政府」が必要なんじゃないかとね。でないと、「格差」は広がっていく一方だと思ってます。
AKI 派遣労働者にも幸せな結婚ができるようにするために、では、いま、何をすべきと……?
哲雄 恋愛です。
AKI エッ!?
哲雄 ジョーダンですよ。それに関しちゃ、いろいろ腹案もあるのですが、その前に、もうひとつ、この社会をどういう社会にするかということについて、もうひとつ、申し上げておきたいことがあるので、次回は、その話をしたいと思います。

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