「エリートしか結婚できない時代」がやって来る!?
不純愛トーク 第192夜
産業革命以降、「労働力の再生産」を重視した社会は、「一夫一妻制」を社会のスタンダードとして採り入れました。しかし、その「一夫一妻制」が、いま、未曾有の危機に直面しています。出生率の低下、生涯独身率の上昇…。それらを招いた一因として、「男女雇用機会均等法」と「労働者派遣制度」がある。今回は、そんな話をお届けします――。
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AKI ねェ、哲ジイ。資本主義が健全に運営されるためには、「拡大再生産」が必要だとおっしゃいましたよね。そのためには、「労働力」も拡大再生産されなければならないわけですよね。それで、欧米の工業化された社会では、「一夫一妻制」がスタンダードとして採用されることになった。前回の話は、そういう流れでしたよね? でもね……。
哲雄 何か、疑問でも……?
AKI ほんとに、拡大再生産できてるのかなぁ、労働力は?
哲雄 そこなんですよ、お立ち会い。前回、「ホームドラマ」の話が出ましたよね?
AKI ハイ。「一夫一妻制」を道徳的にもバックアップするために、「理想的なホームドラマ」というものが、盛んに作られた――という話でした。
哲雄 少なくとも、1960年代ぐらいまでは、だいたい、その理想どおりに行っていたような気がします。
AKI エーッと、どの家庭にも3人ぐらい子どもがいて、テレビと冷蔵庫と洗濯機のある家庭で親子5人ぐらいが仲よく暮らす……っていうパターンですよね?
哲雄 ハイ。でも、現在、そのパターンは完全に崩れてますよね?
AKI そ、そうですね。ひとりっ子の家庭が多いし、生涯「おひとりさま」なんていう、どっかのだれかさんみたいなのもいるし……。
哲雄 だから、好きでそうしてるんじゃない――と申し上げたじゃありませんか。ま、それはいいとして、「一夫一妻制」がモデル・パターンとした「夫婦2人で、2~3人の子どもを作る」というパターンは、いまや完全に崩れてますよね。出生率だけで言うと、1.2~1.3の間ぐらいでしょ? つまり、夫婦2人で1人ちょっとの子どもしか作らない。
「労働力」という点から言うなら、これは、
「拡大再生産」どころか、「縮小再生産」になっちゃってます。
AKI どうして、そうなっちゃったんでしょ?
哲雄 いろんな原因が複合してると思うんですが、ひとつは、女性が社会進出したことが大きい。「社会進出」と言うと、何かいいことのような気がしますが、それは、あくまで、一部のキャリア・ウーマンに関して言えるだけの話で、実情はもっと悲惨。
AKI 悲惨……?
哲雄 「社会進出」なんてきれいごとじゃなくて、夫婦ともに働かないと、食っていけない――という社会になっちゃった、というか、しちゃった。
AKI しちゃった……? だれが?
哲雄 さぁ、だれが……でしょう。いちばん罪が大きいのは、人材派遣会社とその人材派遣というシステムの規制を取っ払った某政治家だと思うんだけど、その前に、まず、「女性の社会進出」という問題について、考えてみることにしましょうかね。
AKI でもさ、哲ジイ。女性の「社会進出」自体は、わるいことじゃありませんよね?
哲雄 ハイ、わるいことじゃありません。女性の上昇志向を満たす、という意味ではね。しかし、世の中で「上昇志向」に満ちて、「女ボス」になりたい、「女性管理職」が夢――なんていう女性は、そして、そんな夢を実現できる立場にいる女性なんて、社会のほんの一部、割合にすると全勤労女性の数パーセントにすぎない、と私は思っています。テレビ・ドラマなんかに登場して、肩で風切って歩く女――なんてのは、その数パーセントの女性を描いたものにすきない。私の目には、その逆の事態のほうが深刻に映ります。
AKI その逆……って?
哲雄 「女性保護」という規制が取っ払われた、ということです。少なくとも、近代以降の産業社会の中では、次代の「労働力」を産み、育てる女性は、保護しなくてはならない、という考え方が主流でした。初期の「フェミニズム」運動は、「女性を保護しよう」という運動だったんだよね。ところが、そこへ……。
AKI わかった。ジョーダンじゃないわ、保護なんてしなくていいから、女も男と対等に働かせろ――という声が登場した、でしょ?
哲雄 1960年代以降のフェミニズム運動は、どっちかというと、そっちのほうに向かっちゃった。「保護」の考えが主流だった時代には、女性には、過酷な肉体労働はさせないようにしようとか、女性の深夜残業はダメですよ――とか、女性労働を保護するためのいろんな規制があって、そのために、女性の就労には一定の制約があったんだけど、結局、日本では「男女雇用機会均等法」なんて悪法が成立しちゃったもんだから……。
AKI エッ、あれって悪法なの?
哲雄 私には、悪法としか思えません。だいたいさ、いろんな職種の人材募集をかけるのに、「男子募集」とか「女子募集」とか書けなくなっちゃったんだよ。極端な話、「ホステス」を募集するのに、「ホステス」なんていう性別を表す言葉が使えないから、「接客係募集」と書くしかない。どうするんだ、大量に男が集まってきちゃったら? 「ガードマン」だって「マン」は使えないから、「警備員募集」としか書けない。どうするの? AKB48みたいなのがゴソッと応募してきたら?
AKI ま、わたし的には、それも面白いかも……って思いますけどね。「会いたかった、会いたかった、会いたかった、イェッ!」なんて言う警備員? キャッ、面白い!
哲雄 勝手に言ってなさい。そしてね、この均等法の最大の問題点。それは、男女の賃金格差をなくしなさい――ってところ(実際は「労働基準法」に定められている)なんだけど、その結果、どうなったか?
AKI 女性の賃金が上がった?
哲雄 日本の経営者は、そこまでお人よしではありません。私が見る限り、少なくとも、単純一般労働に関しては、女性の賃金が上がったというより、男性の賃金が抑えられた。つまりね、低いほうに揃えられたわけです。その結果、どうなったか?
AKI 男の稼ぎだけじゃ食えない……?
哲雄 そう。共働きでないと家庭を維持できなくなっちゃった。だから、既婚女性もどんどん働きに出るようになる。すると、労働の供給量が増える。ますます、賃金レベルは下がる。その悪循環を生み出したわけです。しかもね、そこに「派遣労働」という、抜け道まで作っちゃった。
AKI 派遣労働って、抜け道になっちゃったんですか、何の?
哲雄 「使い捨て」のです。いいですか、企業が従業員を雇用するにあたっては、社会保険をつけたり、労働保険をつけたりして、その福利厚生面を整えなくちゃならない。給料20万の社員をひとり雇用すると、実際には40万の費用がかかる――と、言われてたんだけど、「派遣」というシステムを使えば、その福利厚生を担当するのは、派遣会社側の責任になっちゃうんだよね。つまり、企業側にしてみれば、ものすごく安上がりに労働者を雇用することができる。しかも、いつでも、使いたいときに発注して、要らなくなったら「要らない」と簡単に通告できてしまう。正社員だったら、そうはいかない。「解雇」となると、労働組合と合意しなきゃならなくなるし、仮に労働組合のない会社であっても、「この解雇が納得できない」と労働基準監督署などに申し出れば、会社側は、納得のできる理由を提示しなくちゃならなくなりますからね。
AKI でも、派遣だと、その責任は、派遣会社側が負うことになるわけですね?
哲雄 そうなんだけど、その派遣会社たるや、実にいい加減なところが多い。「福利厚生」なんてのは、その名目で賃金から天引きまでしておいて、就労を保証するわけでもなければ、年金や社会保険に加入させてさえいない、というところが、私の知っている限りでもザラにある。
AKI ずいぶん、詳しいですね、哲ジイ。
哲雄 ハイ。何を隠しましょう、私も一時期、派遣労働で糊口をしのいでいた時代がありましたから……。
AKI あ、そうか。哲ジイ、会社を倒産させちゃったんだもんね?
哲雄 うるさい。その話には触れないで! でね、その経験から言うと、派遣労働で生計を立てるなんてことは、たぶんムリ。結婚なんてとんでもない。特に「スポット」の派遣労働だと、アパートを借りることだってむずかしいから、労働者はホームレスになるしかない。
AKI エーッ、そんなにひどいんですか?
哲雄 そんなにひどいんです。一時期、派遣システムを「新しい時代の雇用形態」なんて持ち上げて、「これで労働力の流動性が高まる」なんてことを、ヌケヌケと口走っていた派遣会社の女社長がいたりしたけど、とんでもない話です。私は、断言してもいい。これは、1割か2割のエスタブリッシュメントとそれを取り巻くエリート層のために、残り8~9割の労働者の半数近くを「ルンペン化」する、悪魔のシステムです!
AKI 長住哲雄、大いに怒っております。
哲雄 実は、派遣労働に関する規制を「規制緩和」の名のもとに取っ払ったのも、例の某総理大臣。取っ払った結果、ネット難民が増え、そして、なんと!
生涯、結婚しない(できない)という「生涯独身率」が、
いま、グングン上昇している。
AKI エッ!? 私、「生涯独身」というのは、結婚生活に希望を見出せなくなった男女が増えているからだ――と思ってました。
哲雄 それも、あるでしょうね。でも、私が思うに、その半分は、「したくてもできない(経済的に)」だと思ってます。そして、工場や倉庫での派遣労働の率が上がっていくと、この「生涯独身率」は、もっともっと上がっていく。しまいには、「ヘェ、あの人、結婚したの? エリートなのねェ」なんて時代が、来ないとも限らない。
AKI ウソーッ! それ、大変じゃないですか。
哲雄 大変です。本来は、「健全な労働力を再生産するために」と広まった「一夫一妻制」が、その「労働力」の「スポット化」ゆえに、いま、足元から崩壊しようとしているわけです。次回は、その「スポット化」のもっともひどい職場、ロジスティックスを取り上げて、日本の結婚の未来を考えてみたいと思います。
AKI 次回も、社会派ですよぉ~、みなさん。

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