「一夫一妻制」は「労働力再生産」のためのシステム?
不純愛トーク 第191夜
前々回からお届けしている資本主義的価値観と共産主義的価値観の問題。世界は、資本主義的価値観のほうを選択した形になりましたが、その資本主義にも、さまざまな問題が存在します。今回のテーマは、資本主義が「労働力再生産」のシステムとして選択した「一夫一妻制」について。エッ!? 「一夫一妻制」って、労働力のためのシステムだったの? という方は、ぜひ、ご一読を――。
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哲雄 私たちの日本をはじめとして、世界の主要な国家のほとんどは、「資本主義」という制度を社会を動かすシステムとして採用しています。これは、おわかりですよね。
AKI ハイ。で、そうじゃない国っていうと、中国と北朝鮮……?
哲雄 共産主義国家ですね。でも、前回も申し上げたとおり、中国はもはや、「共産主義の国」とは言えない国になっています。政治的には、共産党の一党支配が続いていますが、経済的には、どこよりも貪欲な資本主義国家になりつつある。それまで共産主義体制を維持していた旧ソ連や東欧の各国も、ベルリンの壁崩壊(ドイツを共産主義の「東ドイツ」と資本主義の「西ドイツ」に分けていた壁が崩壊し、ドイツが統一された事件)以降、軒並み、資本主義へと移行してしまいましたからね。
AKI やっぱり、資本主義のほうがいい――という結論になったわけですね?
哲雄 いや、資本主義のほうがいい――ではなく、端的に言うと、世界は、理想的な共産主義を実現できなかった、と言うべきでしょうね。人間に「我欲」というものがある限り、理想的な共産主義なんてものは、空想上の産物でしかない。もし、それを実現しようとしたら、強力な官僚機構で統治するしかないけど、そうすると、今度は、政治的・文化的な不自由という問題が生じてしまう。世界は、それを嫌った――ということですね。ただ、もうひとつの道があるとすれば……。
AKI おっ、あるんですか? もうひとつの道が……?
哲雄 それはね、「共同体」の構築、という道なんだ。日本の古くからの「村落共同体」なんか、わたし的には、かなりそれに近い――と思っていたんだけどね。
AKI 思ってたんだけど……? ダメになっちゃったんですか?
哲雄 ハイ、もう、ほとんど崩壊しようとしてます。崩壊させてしまったのは、市場のメカニズムなんだけど、そこへ入り込むと、話が長くなっちゃうので、機会を改めたいと思います。本日のテーマは、では、勝ち残ったと見られている資本主義のほうは、どうなったか? これからどうなるのか? という問題です。
AKI 資本主義のほうにも、問題あり……なんですね?
哲雄 ひと口に「資本主義」と言いましたが、その資本主義の形には、いろんなパターンがあって、国によっても、ものすごく違います。ごく原始的な「資本主義」っていうのは、富の配分も、生産の計画も、すべてマーケットにまかせておけばいい。放っておけば、「見えざる神の手」が働いて、最終的には、うまく調整されるはずだっていうんだよね。
AKI それ、前にも出てきましたよね。エッ……と。
哲雄 アダム・スミスという人が「国富論」の中で主張したことなんだけど、学問的には、「古典派経済学」と呼ばれてます。いまでも、アングロ・サクソン系のイギリスや、アメリカの共和党が推進しようとする資本主義には、この考え方が根強く残っています。経済はマーケットにまかせて、政府は何もするな――という「小さな政府」の考え方なわけです。ところがね、そうやってマーケットにまかせた結果、1928年には、大恐慌を引き起こしちゃったし、つい最近も、リーマン・ショックで、世界の経済が未曾有のピンチに陥った。
AKI そのやり方だと破綻する……ってことですか?
哲雄 破綻することを覚悟の上でやるしかない――ってことですね。でも、それじゃ、一部の大資本は助かっても、庶民は計り知れない傷を負います。何よりも、雇用が確保できなくなるので、街には失業者があふれるようなことになってしまう。それじゃいかん、というので、資本主義にも修正を加える必要がある、と主張する人たちが現れました。
AKI 修正……? どんな修正ですか?
哲雄 いちばん大きいのが、需要と供給のアンバランス状態を防ぐために、政府のお金を使って需要を作り出すようなことをやりました。日本でも、一時期、ヤリ玉に上がりましたけど、公共事業で雇用を生み出す、なんていうのがわかりやすい例ですね。そういうことを主張したのが、ケインズに代表される「近代経済学」の学者たちなんだけど、アメリカでは、その考えに乗っ取って「ニューディール政策」なんて政策を実行に移して、大恐慌から抜け出したりもしました。日本だと、田中角栄の「日本列島改造論」なんかが、その例かな。
AKI こっちは、「大きな政府」なんですね?
哲雄 そのとおり。「大きな政府」っていうのはね、政府が介入することによって、資本主義の矛盾点を解消していこうという「修正資本主義」の考え方なんだ。それにも、いろんな考え方があるんだけど、そこに突っ込んでると、恋愛からますます離れていってしまうので、本日は、この「修正資本主義」の問題を、恋愛問題とからめてお話したいと思います。
AKI 待ってました。このまま、経済学の講義になっちゃうのかなぁ……って、ちょっと心配してたんです。
哲雄 そこで、質問です、AKIクン。資本主義というのは、その性質上、「拡大再生産」ってことが、宿命づけられるんだけど……。
AKI ちょ、ちょっと待ってください。その「拡大再生産」って何ですか?
哲雄 エーッとね、たとえば、ママチャリを作っている工場を例に取りましょうか。原料や材料を仕入れて、労働者を雇い入れて、ママチャリを作りました。売りました。原料も材料も全部、使っちゃいました。ハイ、これで、この工場はおしまい。これじゃ、会社は経営できないし、そんなことでは、資本主義そのものが成り立ちませんよね。
AKI また、原料や材料を仕入れて、ママチャリを作り続けます。
哲雄 いったん工場を始めたら、永遠に、そういうサイクルを繰り返すしかありませんよね。これを「再生産」というのですが、そのとき、去年は10台、作りました。今年も10台。来年も、再来年も10台作ります。これでは、資本主義は成り立たないんです。
AKI 成長しないから……?
哲雄 そうです。ちょっと考えてみてくださいね。1年経てば、従業員の給料だって上げなくちゃならないでしょ? ま、上げない会社もあるみたいだけど、銀行は、それじゃすまない。「どうです? ご融資しますので、少し設備を拡充して、来年は年産15台ぐらいを目指してガンバりませんか?」と、こう言ってくるわけです。そうして資金を借りると、その金利も払わなくてはならなくなるので、毎年10台という生産では、間に合わなくなる。そうやって、企業が成長していく。企業が成長することによって、銀行は利息を稼ぐことができる。
資本主義は、
社会の経済活動が、全体的には、そうやって拡大していくことを前提として
成立しているシステムなんだよね。
これが、「拡大再生産」。「拡大再生産」は、資本主義が健全に運営されるためには、必要不可欠な要件なんです。
AKI 要するに、資本主義が資本主義である限り、成長し続けるしかない、ということですね。
哲雄 そうなんです。で、考えてみてほしいんですが、この拡大再生産のために、いちばんのネックとなるのは、何でしょうか?
AKI お金……?
哲雄 お金は、銀行が貸してくれます。
AKI 原料は仕入れればすむしなぁ……。エッ、も、もしかして……人手?
哲雄 そう。労働力。でね、この労働力ってのは、残念ながら無尽蔵じゃない。アメリカは、アフリカから黒人を奴隷として連れてきたし、日本も、朝鮮半島から強制連行してきて、炭鉱などで働かせるなんてことをやったけど、そういう方法には、限界がある。あとは……?
AKI 作らせる……?
哲雄 だれに?
AKI 労働者自身に……?
哲雄 そのために、必要なものは?
AKI エッチ……。
哲雄 つーか、エッチする相手と、エッチする場所と、エッチのための体力と、そして、できた子どもを育てるだけの環境と資金だよね。ほんとはね、資本家の利益だけを考えたら、労働者は、血ヘドを吐くまでこき使いたい。しかし、そんなことをやってたら?
AKI そうか。次の世代の労働者が育たなくなってしまいますよね。
哲雄 そうです。産業革命以降、欧米の先進的な工業国は、「労働力の再生産」ということを重視するようになりました。個別の資本家が労働者をこき使うのにまかせていたら、そのうち、労働力は枯渇してしまうに違いない。そこで、国家の介入が必要になるわけです。社会福祉という考え方は、そこから生まれるんだけど、まず、国家は何に手をつけたでしょう?
AKI 児童の保護……?
哲雄 それもあります。それと、婦人の保護。なにしろ、婦人は、大事な次世代の労働力を産んでくれる存在ですからね。それと、もうひとつ。
AKI あ、わかった! 結婚制度だ!
哲雄 ほう、よくわかりましたね。結婚制度……というか、一夫一妻制の徹底だね。
おひとりさまに1名ずつ、妻がいきわたるようにしましょう
ということをやったわけです。
AKI そうか。ひとりで何人も独占してたんじゃ、全員にいきわたりませんものね。あれ!? いまだにいきわたってない人もいたりしますけど……。
哲雄 ほっとけ。それは、社会学の問題じゃなくて、文学的な問題です。
AKI てことはですよ、哲ジイ。「一夫一妻制」は、道徳的な理由からじゃなくて、経済的な理由から先進国のスタンダードになった――ってことなんですか?
哲雄 おっしゃるとおり。「労働力の再生産」のためには、それがベスト――と考えられたわけですね。結婚制度というのは、そうして常に、社会の運営上、都合のいいシステムとして作られてきた、という歴史を持っています。しかし、せっかく一夫一妻制を社会のスタンダードとしても、その家庭が、健全に運営されないと、次世代の労働力を正しく育成することはできませんから、「児童福祉」という考え方も生まれたし、「義務教育」という制度も生まれました。何より、「よき家庭」という道徳律を社会的規範として普及させることに、どの社会も力を注ぎました。
AKI ホーム・ドラマも流行りましたしね。
哲雄 おや、珍しく、目のつけどころがシャープですね。さて、数々の「ホーム・ドラマ」が理想として描いて見せた家庭のあり方は、しかし、現在、大きな曲がり角を迎えています。この話、ちょっと長くなるんですけど……。
AKI ハイ、では、次回、「ホーム・ドラマ」が描く家庭のあり方は、どのように変化したのか? そして、そんな中で、いまだ「おひとりさま」を貫く長住哲雄の事情とは、いったい何だったのか――について、詳しく語り合いたいと思います。
哲雄 もう、ええわ……。

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