「社長」の価値観と「坊主」の価値観、どっちを選ぶ?


 不純愛トーク   第187夜  
あなたの愛のあり方に大きく影響する「価値観」。実は、人間の精神の歴史は、「聖なるもの」を重視する価値観と「俗なもの」に惹かれる価値観とのせめぎ合いの歴史であった――とも言えます。この「聖」と「俗」は、あなたの愛にどんな影響を与えているのでしょうか――。

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哲雄 AKIクン、「聖」の反対語は、何だと思います?

AKI 「性」……だったりして?

哲雄 AKIクンらしい発想ですが、違います。

AKI 「獣」とか……?

哲雄 オーッ、昔、『聖獣学園』なんていうマンガがありましたね。映画化もされて、確か、主演は多岐川裕美だったような……。しかし、違います。「獣」ではありません。正解は、こちら。

AKI エッ、「俗」……?

哲雄 そう。「世俗」の「俗」です。古代から中世を経て、近代へといたる人間の歴史を「精神の歴史」として見るなら、この「聖」と「俗」とのせめぎ合いだった――とも言えるわけです。

AKI 「聖」と「俗」とが闘ってきたわけですか?

哲雄 実際に、どちらが権力を握るか――をめぐって、血を流し合うような闘いが繰り広げられたこともありました。ヨーロッパでは「宗教改革」がそうでしたし、日本でも、信長の「比叡山焼き討ち」のようなことが起こりました。しかし、人間の精神そのものも、「聖的な価値」と「俗的な価値」をめぐって、長い間、葛藤を続けてきました。この葛藤は、いまも続いてるんですね。ちょっと、下の図をご覧くださいませ。

聖と俗


AKI な、なんすか、これ?

哲雄 実はね、「聖」と「俗」とは、完全に分離された世界なのではなくて、かなりな部分で重なり合ってるんだよね。その重なり合った部分に、長住流に言わせてもらうならば、「アートの世界」すなわち「芸術的領域」というものが存在していると思っています。

AKI 文学とか美術とかの芸術ですか?

哲雄 音楽も、哲学も、この領域に含まれると思っています。文学にしても、美術や音楽、哲学にしても、その技芸そのものは「俗」の領域に属してるんだけど、しかし、こういう芸術を創造したり、鑑賞したり、論評したりする人たちの精神は、常に、ある根源的な問いを発しています。

AKI 神とは何か……とかですか?

哲雄 あるいは、「生きるとは何か?」とか、「存在とは何か?」という、考えても答えの出ない問いを、常に発し続けているわけです。この「問い」そのものは、「聖」の領域に属する「問い」だよね。「芸術的領域」にいる人たちは、技術的には「俗」、精神的には「聖」という中で、絶えず葛藤を続けている人たちと言ってもいいと思います。わかりやすくするために、この「聖の領域」と「俗の領域」、そしてその中間にある「芸術の領域」に、どんな人たちが住んで、どんな「価値観」が存在するかを、まとめておきましょうか。

「聖」の領域の住人たちとその「価値観」

住人――僧侶、神官、修行者、求道者、神学者……など。
住んでいる場所――寺院、神社、教会……などの宗教界。その研究機関や関連団体。まれに森の奥深く、山の上、都会の片隅……などの秘境。
追求している価値――宇宙を支配している真理との出会い、存在の意味を知ること、魂が救われること……など。


「俗」の領域の住人たちとその「価値観」

住人――政治家、財界人、役人、ビジネスマン、ワーキング・ウーマン、職人・職工、労働者・農民、主婦、ふつうの市民、野次馬……など。
住んでいる場所――政界、財界、会社、役所、農場、工場、商店、学校、病院、軍隊、ふつうの家庭、歓楽街、ギャンブル場……など。
追求している価値――名誉・名声、地位、財産、収入、達成感、生活の充実、家庭の平和、人気、快楽……など。


「芸術」の領域の住人たちとその「価値観」

住人――画家、作家、音楽家、工芸家などのアーチスト。思想家、哲学者などの思索家。およびその評論、鑑賞を生業または生きがいとする人々。まれに教師や医師、各種の活動家。
住んでいる場所――アトリエ・工房、書斎、酒場やカフェの片隅、ふつうの家庭や職場、まれに路上……など。
追求している価値――美の完成、深い知識や奥義の獲得、深い感動や感銘の享受、真理の発見、社会への働きかけ……など。


AKI ちなみに哲ジイ、私のような、フーゾクに身を置く人間は、これで言うと……?

哲雄 もちろん、「俗」。これ以上の俗はいないというほどの「俗」です。ただし……。

AKI おっ、何かあるんですね?

哲雄 もし、あなたが、この寂しきジジイのためにもろ肌脱いで、「いいわ。お代はいただきませんから、どうぞあなたの孤独をこの肌でいやしてくださいな」と、身を投げ打ったりしてくだされば、そして、それをあっちの町でも、こっちの村でも……というふうに、広く、あまねく、実施に及べば、キミは、「聖なる遊女、おAKI」として、永く歴史に名を残すでありましょう。

AKI やなこった。だれが、そんな……。

哲雄 やっぱり、俗人だ。

AKI それで、その歴史的な葛藤のほうは、どうなったのでございましょうか?

哲雄 ハイ、本題に戻りましょうか? 歴史的に言うと、古代というのは、どちらかと言うと、「聖の権威」が「俗の権威」を従えた時代、と言っていいと思います。未開の地域では、宗教的指導者が政治的指導者を兼務する、ということも行われました。

AKI 卑弥呼みたいに……?

哲雄 おお、よくご存じで。まさに、卑弥呼はそんな存在であったろう、と考えられています。しかし、中世の封建時代になると、「聖」の権力と「俗」の権力は、激しくせめぎ合うようになります。「聖」は「俗」を従えようとするのですが、「俗」もしたたかに、その支配をかいくぐろうとします。ヨーロッパで言うと、「教皇」と呼ばれたローマ法王と諸国の王権との関係ですね。日本だと、天皇と将軍の関係がこれに近いと思います。

AKI それで? どっちが勝っちゃったんですか?

哲雄 どっちが勝った……とかいうんじゃなくて、宗教改革の結果、ヨーロッパでは、「聖」と「俗」とは、完全に分離されてしまいました。つまり、政治とか経済とかの俗世間のことは「俗」にまかせよう、「聖」は人間の魂のことだけに関わっていよう――というふうに、棲み分けが行われるようになったわけです。

AKI よかったですね。

哲雄 よかった……と言えるのかどうか。確かに、科学技術などは、それによって飛躍的に発展を遂げます。ガリレオみたいに、「地動説」を唱えただけで軟禁状態に置かれる、なんてこともなくなりましたしね。ジャンヌ・ダルクみたいに、国民的英雄が「魔女裁判」にかけられる、ということもなくなりました。ただ……。

AKI 何か、問題でも……?

哲雄 「聖」的な束縛がなくなったぶん、「俗」の野心にブレーキをかける者がいなくなりました。

AKI 「俗」的な人々って、野心家なんですか?

哲雄 AKIクンは、「俗物」という言葉を聞いたことがありますか? 英語で言うと、「スノッブ」って言うんだけど……。

AKI ええ。私は、哲ジイみたいな人のことを言うんだと思ってましたけど……。

哲雄 ま、いいですけどね、何と言われようと。この「俗物」がヨーロッパ社会で幅を利かせるようになるのは、宗教改革が終わり、市民革命が行われ、産業革命がどんどん進行していく時代なんだよね。で、その頃、「あいつは、俗物だから」などと侮蔑的に言われたのは、どういう層かと言うと……。

AKI わかった。ギャツビーみたいな男でしょう? 異常とも言える野心に導かれて、上流への階段を昇りつめていくようなタイプ。

哲雄 ホォ、よくご存じで。ギャツビーがそういうキャラであったかどうかはともかくとして、「異常とも言える野心」という部分は当たっていると思います。当時のヨーロッパ社会での新興勢力というのは、小金を貯めて、事業を成功させて、どんどん社会的なステータスを上げていきつつあった連中なんだよね。「成功法則」に導かれ、上昇志向むき出しで社会の中枢へと進出してくる彼らは、旧勢力の目から見ると、品性もない、卑しい欲望だらけの「成りあがり者」にしか映りませんでした。

AKI いまで言うと、ヒルズ族……?

哲雄 おお、スルドいご指摘。まさに、そんな感じだったんでしょうね。それでね、大事なのは、ここから先。この「俗物」という言葉に代表されるような価値観の持ち主というのは、「聖」的なものの価値には目もくれず、「俗」な価値ばかりを追い求め続ける人たちなんですが、近代以降、社会で成功を勝ち取る人たちには、この「俗物」たちが目立つようになった。

AKI ハハァ、哲ジイは、そこを問題視してるわけですね? つまり、聖・俗分離の結果、「俗」的な価値だけで突っ走る人たちが増えた。それは、いかがなものか……と?

哲雄 そのとおり。私は、この世が正しく運営されるためには、「聖」も「俗」も、両方必要だと思ってるんですが、どうも、このバランスが、あまりよろしくない。マックス・ウェーバーという人が、いいことを言ってます。

AKI マックス・ウェーバー? 知らな~い。

哲雄 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』という本を書いた、ドイツの社会学者ですが、この人が言うんです。研究室に入るときには、信仰という外套は、ドアの外のコート掛けに掛けて、入りたまえ――ってね。

AKI エッ!? ホコリが舞うから……? あれ、よくないんですよね、特に精密機械とかを扱う場所では。

哲雄 じゃなくて! 彼が言うのは、こういうことです。信仰に導かれた倫理観や、この世界の神秘性に心惹かれるというのは、とても、大事な人間の精神のありようだけれど、いざ、研究に当たるというときには、その信仰心は、いったん【 】にくくってロックしてしまいなさい。そうでないと、客観的な事実の解明はむずかしくなる。

AKI それ、研究室に入るときだけじゃありませんよね?

哲雄 さすが、AKIクン。察しがいい。つまり、こういうことです。「俗」の世界で「俗」な活動に従事するときには、「聖」なることは、いったん「ブラック・ボックス」に格納して、客観性を重視するようにしましょう。しかし、「聖」の部分は、いつでも取り出せるように、大事に保管しておくのだ――と、たぶん、そういうことを言いたかったのだと思います。しかしね、AKIクン、現代人は、この大事な「聖なる箱」を、いつの間にか忘れてしまった。「ブラック・ボックス」にしまったことさえ忘れてしまっている。そこが問題だと、私は思うのですよ。

AKI その「ブラック・ボックス」は、いったい、どこへ行ってしまったんでしょう?

哲雄 問題は、そこですよね。その話は、日を改めて。その前に、この聖・俗分離のあとで、近代人の精神を襲った、もうひとつの重大な問題について、次回、お話をしたいと思います。


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