人はなぜ「障害のある恋」に燃えるのか?《恋愛の量と質》
不純愛トーク 第173夜
テストステロンに誘導されて「エッチさせろ」と迫る男と、「まだダメ」とストップをかける女。恋愛は、その押し引きのゲームとも言えます。そのときに問題になるのが、「量」を求めるか、「質」にこだわるか? 今回は、恋愛のその2つのパターンを比較してみます――。
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AKI 前回、確か……恋愛はスリリングだからこそ、人を惹き付けて止まないのだ――と、哲ジイにしては珍しくロマンチックなことをおっしゃいましたよね。
哲雄 珍しく……ですと? 言っておきますが、私が恋愛を支配しているのは脳内ホルモンであるとか、結婚は経済問題である――などと申し上げているのはですね、そういう事実を知った上で、恋愛を誤解や偏見や打算から解き放ち、純粋に「愛」というものを追求していただきたいからでありまして……。
AKI ハイ、ハイ。それはもう十分に存じておりますとも。で、本題ですけど、スリリングなほうが……というのは、いったい、どういうわけでしょう?
哲雄 ワタクシ思うにですね、
恋愛を求める人間には、2つのタイプがいると思うんです。
簡単に言うと、量か質か――
ということなんですけどね。
AKI 「量」は、簡単な恋愛を数多くしたい――ってことですか?
哲雄 ま、あんまり手間がかからない、つまり、コストのかからない恋愛で、手っ取り早くリビドー(性的欲動)を満たしたい、という人でしょうね。「数多く」は、必ずしも、人数とは限らない。ひとりと数多くエッチできればそれでいい、という人もいるかもしれないしね。
AKI その代わり、恋愛の機微は、あんまり楽しめませんよね。
哲雄 楽しもうとも思ってないと思います。「おまえ、やらせるの? やらせないの?」「あ、そう。オレ、面倒くさい女はタイプじゃないんだよね」と、さっさと背を向けてしまう。ま、健全っちゃ、健全ですわな。しつこく言い寄ることもないでしょうから。
AKI そういうタイプには、エッチもスポーツみたいなものなんでしょうね。あと引かないというか……。
哲雄 ですね。ただ、ひとつだけ気をつけなくちゃいけないのは、このタイプは、女を「エッチできるかどうか」で事業仕分けしてるようなところがありますから、「できる」に仕分けしたのに、「できない」と言われると、キレてしまう場合があります。
AKI キレる……とは、つまり、ムリに……ってことですか?
哲雄 特に、テストステロン値高いときに「キレる」状態になると、危険かもしれません。「なんだよ、おまえ。人を誘っておいて、ナニ、気取ってんだよ」と襲いかかってくることだってあるかもしれません。なにしろ、このタイプは、「女は男の前で脚を開いてナンボ」みたいに思ってるところもありますから。
AKI 要するに、このタイプには、思わせぶりな態度をとってはいけないってことですね。恋愛の押し引きを楽しもう――なんて態度をとると、サッサと背を向けられるか、襲いかかられるかのどっちか……ってことですよね。
哲雄 でも、わかりやすいでしょ?
AKI わかりやすいけど、私としては、「やらせるの? やらせないの?」と迫られてもねェ……って気がします。「やりたい」と思わせるのがあなたの仕事でしょ――って言いたくなるかもしれない。
哲雄 それが、正解だと思います。動物学的に言っても。
AKI エッ!? 動物ってそうなんですか?
哲雄 動物のメスをご覧なさいよ。オスに迫られても、簡単にはやらせないでしょ? ツチブタのメスなんてのは、そりゃもう、迫ってくるオスに噛み付く……など、必死の抵抗を続けて、それでも自分を組み伏せたオスにだけエッチを許す。もっと、ロマンチックなのもありますよ。鳥の中には、オスが懸命にマイホーム(巣)を作ってメスにプレゼンテーションし、気に入っていただけた場合のみ、合体を許される……なんてのもあります。
AKI 要するに、メスのガードは堅い。それが、動物の世界では常識ってことですね。
哲雄 それはすべて、少しでも優秀なオスの遺伝子と結ばれたい――という生物的本能のなせるわざなんだけど、その本能は、たぶん、人間のメスにも残されてるんでしょうね。だから、言い寄ってくる男に、女はさまざまなハードルを設けようとします。
AKI かぐや姫みたいに? 男たちに無理難題を押し付けて、結局、やらせずに月に帰っちゃうんでしょ、あの方は?
哲雄 つか、かぐや姫の要求の中には、性的な意味が含まれてたりするんだけどね。
AKI エッ、そうなの?
哲雄 たとえば、「ツバメの巣の中にある子安貝」を探して持ってきておくれ――なんて要求が出てくるんだけど、この子安貝てぇものがあなた、実に、女性のアレにそっくりな形をしている。ホラ、これ。
〈子安貝の写真〉

AKI ワッ、ほんとだ。でも、なんで、これがツバメの巣に?
哲雄 実はね、世界のいろんなところで語り継がれる神話の中に、「燕石」というものが登場する。それを発見したのは、南方熊楠という博物学者なんだけど、それらの神話に共通しているのは、ツバメがそれを海から運んでくる、ということ。そして、その石の力で、ツバメは安全に雛を産んだり、雛の目を開けさせたりすることができる――っていうことなんだ。その「燕石」が、『竹取物語』では「子安貝」に化ける。さて、その子安貝を手に入れるためには、男は、ツバメの巣に手を突っ込まなくちゃならない。これがまた、男には気持ちがいい。
AKI ツバメの巣が? 気持ちいいの?
哲雄 これについては、このシリーズでもたびたび紹介している中沢新一という文化人類学者が、『人類最古の哲学』という本の中で書いているんだけど、この「鳥の巣に手を突っ込む」という行為は、「鳥の巣あさり」と言われて、世界中に分布している男の子の遊びなんだって。
AKI 男の子限定なの?
哲雄 実はね、鳥の巣の中っていうのは、温かくて、フワフワしていて気持ちいい。まるで、女の子の「あの中」みたいだ。そこに手を突っ込んで探すと、そこには、女が大事にしているもの(=卵)がある。それを「盗む」ということに、男たちは何か、性的な意義を見出すのではないか――と、中沢先生はおっしゃっているわけです。ところが、『竹取物語』に出てくる男は、その「鳥の巣あさり」に失敗して、木から落ち、腰を痛めてしまう。かぐや姫は失望して、月に帰ってしまう。なんか、意味深な話でしょ?
AKI フーン。もしかして、エッチに失敗しちゃった――とか? あ、そうか。エッチの前に指で気持ちよくしてよ、と言ったのに、男はヘタで、ちっとも気持ちよくならなかった……とか。
哲雄 ぜんぜん学問的じゃないけど、なんか、AKIクンが言うと、リアルに説得力があるね。
AKI ハイ、女の子ですから。
哲雄 なんか、話がそれちゃったけど、そんなわけで、女は、「エッチしよう」と迫る男の前に、さまざまなハードルを設定するという動物的本能を持っている――と。かぐや姫の話は、それを象徴してると考えることもできるわけですね。
AKI フーン、それが、哲ジイの言う「質」ってことですか?
哲雄 女は「質」を獲得するために「ハードル」を設定し、男も「質」が欲しくて、あえてそのハードルを乗り越えようとする。これがあるからこそ、恋愛はスリリングになるわけで、そのスリルも含めて、恋愛に苦しんだり、悩んだり、楽しんだり、喜んだりできる。それこそが、「恋愛の質」だと、私は声を大にして言いたいわけです。
AKI てことは、哲ジイの場合、恋愛は「量」じゃないよ、「質」だよ――派なんですね?
哲雄 あったり前田のクラッカーよ!
AKI 古ッ! てことは、いっぱい、ハードル設けられたんだろうなぁ、哲ジイあたりだと?
哲雄 何ですか! その「……あたりだと」てのは!
AKI 哲ジイ、これだけは教えておきますね。女の子って、相手が自分のタイプの男だと、そりゃもう、ハードルなんて名ばかり。簡単に飛び越えられそうなのを「いちお、置いときますね」ぐらいの感じに設定するんだけど、そうでもない相手には、「そうでもない」程度に応じて、ハードなハードルを設定するんでございますよ。
哲雄 つまり、玉木宏には15センチぐらいのハードルでOKだけど、武田鉄矢だと2メートルになるゾ――と、そういうことですか?
AKI ま、わかりやすく言うと、そういうことになりますかね。あ~あ、哲ジイ。これまで、ずいぶんハードなハードルを置かれてきたんだろうなぁ……。かわいそうに。
哲雄 ほっとけ。
AKI いままで、どんなハードルを設けられてきたの? 私、ぜひ、聞きたいんですけど……。
哲雄 あっ、地震だ!
AKI キャーッ、こ、これ、大きいよーッ!


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