35のオヤジを「ウルッ」とさせた、19の彼女のイヴのひと言
小さな愛の「いい話」〈5〉

私がまだ、35歳であった頃のクリスマス・イブの話です。
当時、つき合っていた16歳年下の彼女のひと言に、
35のオヤジは、愛の何たるかを思い知らされたのでした。
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「信心もないくせに、何がクリスマスだ!」
その頃の私は、口を開けば、そんなことをわめいていたような気がします。
ちょうど、バブル真っ盛りの頃。
イヴには、ベイエリアにあるホテルのスイートのひとつも予約して、夜景を眺めながらシャンパンで乾杯する。
あるいは、舌を噛みそうな名前のフレンチの店でも予約して、「ティファニー」で買ったシンプルだけどかわいいプチペンダントかなんかを、きっちりラッピングして彼女に渡し、「キャー、これを私に!? チョーうれしいッ!」とか言わせる。
当時の女性誌などは、そうやってクリスマスのバブリーな過ごし方を煽りたて、煽られた女性たちも、競うように自分たちのクリスマス・プランを自慢し合ったりしていた。
「何がクリスマスだ!」
敬虔……ではないけれども、一度は洗礼を受け、『聖書』を最大の思想書として尊重してもいた私は、そんな風潮を苦々しい思いで見つめていたわけです。
その頃、私には、16歳年下の彼女がいました。
私が35歳ですから、彼女は、おん年19歳。
別に犯罪じゃありませんよ。それくらいの年齢差は、その当時としては当たり前……ではありませんが、ま、さして珍しくもありませんでした。
若い盛り、女としても怖いもの知らず、の年齢です。
「クリスマス、大好き!」――などと言いながら目を輝かせる彼女の真意が、《クリスマスには、サプライズをプリーズ!》であろうことは、容易に想像できました。
しかし、ガンコなること、レア・メタルのごとし――であったその頃の私は、クリスチャンにあるまじき言葉を口にしていました。
その頃の私は、口を開けば、そんなことをわめいていたような気がします。
ちょうど、バブル真っ盛りの頃。
イヴには、ベイエリアにあるホテルのスイートのひとつも予約して、夜景を眺めながらシャンパンで乾杯する。
あるいは、舌を噛みそうな名前のフレンチの店でも予約して、「ティファニー」で買ったシンプルだけどかわいいプチペンダントかなんかを、きっちりラッピングして彼女に渡し、「キャー、これを私に!? チョーうれしいッ!」とか言わせる。
当時の女性誌などは、そうやってクリスマスのバブリーな過ごし方を煽りたて、煽られた女性たちも、競うように自分たちのクリスマス・プランを自慢し合ったりしていた。
「何がクリスマスだ!」
敬虔……ではないけれども、一度は洗礼を受け、『聖書』を最大の思想書として尊重してもいた私は、そんな風潮を苦々しい思いで見つめていたわけです。

その頃、私には、16歳年下の彼女がいました。
私が35歳ですから、彼女は、おん年19歳。
別に犯罪じゃありませんよ。それくらいの年齢差は、その当時としては当たり前……ではありませんが、ま、さして珍しくもありませんでした。
若い盛り、女としても怖いもの知らず、の年齢です。
「クリスマス、大好き!」――などと言いながら目を輝かせる彼女の真意が、《クリスマスには、サプライズをプリーズ!》であろうことは、容易に想像できました。
しかし、ガンコなること、レア・メタルのごとし――であったその頃の私は、クリスチャンにあるまじき言葉を口にしていました。
「嫌いだよ、クリスマスなんて」
そんなわけありません。
ほんとは、クリスマスは、私にとっても大事な一日でした。
しかし、それは、イエスの思想に思いをいたし、「愛とは何か?」をあらためて問いかける日として大事――という意味です。
ほんとなら、彼女の手を引っ張って、教会の石段にでも連れて行き、「いいかい、イエスが教えた愛っていうのはね……」と、説話のひとつも聞かせてあげたいところでしたが、そんな抹香臭いことを、19歳の生意気盛りの彼女が喜ぶわけがない。
で、結局、選んだのは、
オレは、何もしない
でした。

何もしないまま、その日は遅くまで仕事をし、クタクタになって部屋に帰って来ると、部屋の中に、ついさっきまでだれかがいた、という気配が漂っていました。
間違いなくだれかがいた――そんな匂いがしたのです。
見ると、テーブルの上に、小さな包みが置いてありました。
ちょっとあせって、包みを解いてみると、それは、スモール・プレゼントでした。
クリスタル・ガラス製の、ペーパー・ウエート。
私が、いつも、書き散らした原稿や書類などを床にブチ撒けてしまうのを見ていた彼女が、「クリスマスのプレゼントに」と、選んでくれたものでした。
そのプレゼントに添えて、クリーム色のレター・ペーパーにしたためたメモ……というか、手紙のようなものが置いてありました。
ここに、謹んで、その全文をご紹介させていただきます。

そして、メリー・クリスマス!
きょう、ここへ来るとき、駅前には、女の子たちが声をからして売るロースト・チキンのワゴンや、クリスマス・ケーキのワゴンが出ていました。
電車から吐き出された、疲れた顔のお父さんたちが、そのワゴンの前を通るとき、一瞬、顔を輝かせるのです。
そして、何人かが、恥ずかしそうに財布を取り出して、チキンやケーキのバスケットを買って行きました。
家で待っているだれかのために。
もしかしたら、「ワーイ!」と目を輝かせてくれるかもしれない、小さな愛するだれかのために。
たぶん、おじさんは、クリスマスは、そんな日じゃない――と言うだろうと思います。
お酒を飲んでワイワイ騒いだり、高価なプレゼントを自慢し合ったり、意味もわからずチキンを食べたり……そんなのは、愚かな行為だと。
私も、そのほうが正論だろうと思います。
でも、私は、どちらかと言うと、駅前で恥ずかしそうに、だれかのためにケーキやチキンを買っていくお父さんたちの、その小さな愛のほうが好きかもしれない……。
みんな、たぶん、知っているんだと思います。
クリスマスがどんな日かも、ほんとは、その日に何をすべきなのかも。
でも、待っている家族のために、千円札を取り出してチキンを買うんですよね。
理由なんて、何んにもない。
ただ、そうすれば喜んでくれる人がいるから。
ただ、そのためだけに。
私は思います。
理由があるから、愛するんじゃない。
愛があるから、それを表す理由を探すんだって――。
その理由なんて、何だっていいんじゃないか――って。
私はね、おじさん。そんなふうに表す「愛」が、けっこう好きだったりするんです。
もしかしたら、間違ってるかもしれないけど、
ここにいる、この小さな女の子を、
理由なんてどうだっていいから、ちょっと喜ばせてやるか――と、
おじさんがそんな「愛」を見せてくれることを、どこかで期待してるんだと思います。
寒い中、遅くまでお仕事、お疲れさまでした。
ほんとは、顔を見て言いたかったけど、
大好きなおじさんに、心からの
メリー・クリスマス!
ささやかなプレゼントを置いて帰ります。
冷蔵庫に、チキン入ってるよ!!
温めて食べてくださいね。
ガーン!!
頭に一撃を食らったような気がして、それから、ジンワリ……と、目の中が熱くなってきました。

キミの言う通りだよ。
オレはそんなこともわからずに、キミにクリスマスの何たるかを説こう――なんて思ってた。
理由があるから愛するんじゃなくて、
愛があるから、その理由を探すんだ。
それこそ、クリスマスの「愛」にふさわしい。
35歳のオヤジ、19の女の子のひと言に、打ちのめされ――の一幕でした。
それから8年間。彼女が彼女にふさわしい若い男を選んで私のもとを去るまでの間、彼女は私の「いちばん大事な人間」であり続けました。
みなさんも、どうぞ、小さな、愛にあふれたクリスマスを。


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