第152夜☆「よい子タイプ」を落とすには、外堀から埋めるに限る
第152夜
前回まで7回にわたって解説してきた《支配》《従属》《自立》という「対人スタンス」の3基本パターンとそのサブ・タイプ。それを決めるのは、遺伝なのか、育ちなのか? 今回は、日本人にもっとも多い《従属型‐よい子タイプ》を例に、その性質がどうやって作られるかを、検証してみます――。
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AKI ずいぶん、久しぶりのような気がしますけど……。
哲雄 ええ。前回、テスト作るって約束しちゃいましたからね。
AKI それで、巣ごもりしてたんだ?
哲雄 このテストが思った以上にやっかいでしてね。なんとか、今週中にというお約束は果たせましたが……。それで? AKIクンは、何タイプでした?
AKI ご期待どおり、《従属型‐よい子タイプ》でしたわ。哲ジイは?
哲雄 テストが正しい答えを導き出せるか、いろんな人を想定しながらシミュレーションしてみますから、そのとき、自分も試してみました。するとね、なんと驚きの結果が! 《自立型‐ホット・タイプ》だったんですよ。
AKI 意外でも何でもないじゃありませんか。自分でも「私は自立型」って宣言してたし……。ま、予想どおりって結果でしょ? ということは、このテストは、わりと正確だってことじゃないですか。みなさんも、ぜひ、試してみてくださいね。
哲雄 さて、きょうはね、こういう対人関係のスタンスというのは、いったいどうやって決まるのか、という話をしようと思うんだけど……。
AKI あ、それ、キョーミあり。やっぱり、あれでしょうかね。親の教育とか、家庭環境とかって、大きいんじゃないですか? それとも遺伝?
哲雄 生まれか育ちか――ってことだよね。実はね、その問題には、まだ結論が出てないんだ。遺伝子学、大脳生理学、心理学なんかの学者たちが、「ニワトリが先か、卵が先か」みたいな議論を、延々と続けてる。たぶん、両方あるんだと思うんだけどね、私は。
AKI 私の場合は、親の影響がものすごく大きい気がするんですよ、哲ジイ。
哲雄 そうだね。キミの場合は、両親がともに教育者で、厳格だったんでしょ? タイプで言うと、《支配型‐裁判官タイプ》で、子どもを道徳やルールで支配しようとして、「あれしちゃダメ」「これしちゃダメ」と縛り続けてきた。
AKI 私ねェ、子どもの頃、ホメられたって記憶がないんだ。いつも、「おまえはダメな子」と言われ続けて、とうとう中学2年のときに、キレて、家を飛び出しちゃったんだけど……。
哲雄 ウン。それは、前にも聞いた。ゲーセンや友だちの家を泊まり歩いたりして、男遊びとかも、その頃に覚えたんだよね。
AKI 男は覚えてませんッ! でもね、いまだに、「こんなことしたら、人からわるい子と思われるんじゃないか」とか、つい、考えてしまうんだよね。それって、やっぱり親の教育のせいでしょ?
哲雄 ま、キミの親は特にそうだったのかもしれないけど、日本の社会そのものが、「人の目」を気にする《従属型‐よい子タイプ》を生み出しやすい構造を持ってるよね。このタイプは、日本人には、いちばん多いタイプじゃないかと、私は思ってるんだ。
AKI ヘーッ、日本の社会って、そういう社会なんだ?
哲雄 昔……と言っても、第二次世界大戦が終わった直後に、ルース・ベネディクトというアメリカの文化人類学者が『菊と刀―日本文化の型』という本を書いて、これが一大センセーションを巻き起こしたことがあるんだよね。
AKI あ、それ、学校で習ったことがある。
哲雄 でね、このオバちゃんが何を言ったかというと、日本人の文化は「恥の文化」だ、と言ったわけです。日本人は、「人からどう見られているか?」を異常に気にする文化を持っていて、「人から責められる」ことを恐れる、つまり「恥」を恐れる精神構造を持っている、とおっしゃった。
AKI ははぁ……だから、身内の恥を隠そうとかするわけだ。学校で「いじめ」が起こっても、「そんな事実は把握しておりません」とか言っちゃうしね。
哲雄 ま、そういう隠蔽体質は、世界中にあると思うけど、ただ、お母さんが子どもに「そんなことしたら、人に笑われるでしょ」と言い聞かせたり、中には「お行儀よくしてないと、お母さんが恥をかくでしょ」とまで言っちゃう人がいる。こういうお母さんの性質は、明らかに、子どもに「よい子体質」を植えつけてしまうよね。
AKI 私の場合は、それだ! でも、哲ジイ。日本人が「恥の文化」だとしたら、西洋人は何の文化だと言ったんです、そのベッカム……じゃない、ベ……なんとかオバちゃんは?
哲雄 ルース・ベネディクト。彼女は、西洋人の文化は「罪の文化」だと言いました。「罪」は、個人の内面に発生するものだよね。だから、だれに見られてなくても、いけないことはいけない――と、自ら判断する精神構造を持っている。どうだ、こっちのほうが上等だろう、と言いたかったのかどうかはわからないけどね。
AKI 確かに、哲ジイ、人の目がないところだと、何やってもいいって考える人、多いですよね、日本には? 旅の恥はかき捨て……とか言うし。
哲雄 でも、それ、日本人だけじゃないでしょ? ていうかね、この「恥の文化」っていうのは、私に言わせれば、日本人の固有のメンタリティじゃないような気がするんだ。むしろ、外来文化。それをもたらしたのは、たぶん、儒教。
AKI じゃ、中国生まれ?
哲雄 少なくとも、日本とか韓国とか中国とか、そういう儒教に毒された地域の人たちは、一歩、自分たちのコミュニティを離れてしまうと、何やってもいいみたいなところがある。思うんだよね、儒教が教えているのは「道徳」なんだけど、「道徳」ってのは、そもそもが「コミュニティの中での身の処し方」以上のものじゃない。だから、「人の目」がないところだと、とたんにそのタガが外れてしまう。
AKI 「恥の文化」は、日本人の文化なんじゃなくて、「儒教の文化」だ――と、哲ジイは、そうおっしゃりたいわけですね。
哲雄 ベネちゃんよ、おまえさん、そこんとこちゃんと見て言ってるのかよ――というわけでね、彼女の主張に関しては、批判も多いわけです。
AKI しかしまぁ、少なくとも「よい子体質」に関しては、「恥の文化」の産物とも言えるわけですね?
哲雄 ですね。だから、この性質に関しては、遺伝よりも教育・環境の影響が大きい、と私は考えます。で、おそらくなんだけど、そんな「よい子タイプ」が少し自信をつけて強気になると、《支配型‐裁判官タイプ》になってしまう。どちらも共通してるでしょ、あることが?
AKI エッ、何、何?
哲雄 どちらも、人に対して従順になったり、支配的になったりするときの価値基準が、外部にある――ってこと。「道徳」にしても、「人の目」にしても、それは、自分の外部にあるものだよね。
AKI そうかぁ、そうだよね。だからいつも、自分は、自分じゃないものの力で動かされているような気がするんだ。人の意見にも左右されやすいし……。
哲雄 だからね、このタイプの人間を口説くときは、男でも女でも、この「外部価値」を利用すると、案外うまくいく。
AKI たとえば、占い師に「あなた、この人とは相性最高よ」と言わせるとか?
哲雄 さすが、ワル知恵に長けたAKIクン。それも、ひとつの手ですね。あるいは、彼女やカレの友だちとか家族とか、そういう外堀から埋めていって、「ふたりが一緒になると、みんなが喜ぶ」的な状況を作り出してしまう。
AKI 「よい子」は、「わるい子」になりたくないから、つい、首をタテに振るしかなくなるわけですね。
哲雄 夢や目標をチラつかせるのもいいでしょうね。「キミとふたりで、力を合わせて、この地球を救いたいんだ」とかね。
AKI SFアニメじゃあるまいし、それ、大きすぎます、話が。
哲雄 じゃ、「この幼稚園を」でも、「このお寺を」とかでもいい。
AKI エッ、カレ、お寺の跡取り? それ、パスです。
哲雄 ちょっと話がそれちゃったけど、要するに、「よい子タイプ」が出来上がるのには、環境の影響が大きい、という話をしたわけです。他のタイプも多かれ少なかれ、育ちが影響する場合が多いのですが、対人スタンスを決めるのに、もうひとつ大きな影響を及ぼすのが、脳内ホルモン。このホルモンのバランスを決めるのは、もしかしたら遺伝かもしれないんだよね。
AKI その話、聞きた~い!
哲雄 では、その話は次回ということに。

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