第144夜☆「赤い糸」なんて信じていたら、ほんとの出会いを見失う
第144夜
はたして、人は、この世で「いちばん好きな人=ファースト」と巡り会うなんてことができるのか? 前回まで13夜にわたって続けてきた「セカンド最善論」から発展して、トークは、「出会い」のメカニズムに踏み込んでいきます。人は、「好きな人と出会う」のではなく、「出会った人を好きになる」というのが、今夜の話の骨子なのですが――。
【今回のキーワード】 赤い糸 運命 化学反応
【リンク・キーワード】 オーガズム 恋愛小説 エロ コミュニケーション 不倫
AKI 考えてみると、あれですよね、哲ジイ。この世に生まれた男女が、「おたがいにいちばん好き」っていう相手と巡り会える確率なんて、ものすごく低いですよね。
哲雄 おそらく天文学的な確率になると思います。
AKI じゃ、あれじゃないですか。もともと、「ファースト」同士の出会いなんて、絵に描いたモチみたいなもんじゃないですか。
哲雄 そんなもの期待するからいけないんです。「いちばん」と出会うことを期待するんじゃなくて、出会ったその人を「いちばん」と考える。少なくとも考えるように努力する。私は、そっちのほうが、人間として大事なんじゃないかと思うけどね。
AKI それ、哲ジイはやりました?
哲雄 ハ……?
AKI だからぁ、哲ジイ的には「いちばん」とは言えない女性であっても、この人を「いちばん」と考えておつき合いしよう……と、そういう殊勝な気持ちで、これまで出会ってきた女性に接してきましたか? どうですか、被告人?
哲雄 いや、裁判長。私は、自分が「セカンド」の立場であることが多かったものですから。それに、どうも……私の中には、こういうのが「いちばん」という理想型みたいなものが、あまりなくてですね、ステキな女性に出会うと、出会った途端に、その人が「いちばん」になってしまうものですから。実にまあ、簡単な話でして……。
AKI 要するに、被告人は、場当たり的で、ある意味、無節操でもある――と。「こういう女性と出会いたい」と強く願ったり、「この人だ、私がずっと待ち望んでいたのは…」と感じたり……ということが、これまでなかったわけですね?
哲雄 そういうのは、「純愛小説」とやらにおまかせしておけばいいんじゃないんでしょうか。しかしね、AKIクン、考えてみればわかると思うんだけど、人の脳の中に、「あなたのいちばんは、こういう女だよ」とか「こういう男だよ」なんて書き込みが、もともとあるわけじゃない。人の脳は、既定値を積んで出荷されるPCとは違うんだよね。
AKI でも、「赤い糸」とか言うじゃありませんか。
哲雄 アホな。あなたは、そんなものを信じてるわけですか?
AKI エッ!? 哲ジイは信じないんですか?
哲雄 あったり前田のクラッカー! これでも唯物論者ですよ、私は。
AKI ヘーッ、こんな叙情的な唯物論者、見たことない。人一倍、ロマンチストなくせに……。
哲雄 ロマンチストだから、唯物論なんです。もし、キミたちの言う「赤い糸」なんてものがあるとしたら、それは遺伝子上の書き込みぐらいしか考えられない。
AKI じゃ、遺伝子に書き込んであるんですよ、
あなたの理想の男は、こういう男だよ。
決して長住某みたいな男じゃないゾ――って。
哲雄 遺伝子には、そんなことまで書き込めませんッ! せいぜい、大きなチンチンの男を選びなさいとか、指の長い男を選びなさいとか、その程度のことでしょう。いずれも、生殖能力に関係することだから、コピーを残すことを唯一の使命とするDNAとしてみれば、そういう情報は、何らかの形で記録していると考えられます。
AKI では、やさしい男がいいとか、お金持ちがいいとか、胸毛の生えてない男がいい……とかいうのは?
哲雄 それは、メモリーだと思いますよ。生まれたあとで、学習して書き込まれたメモリーですよ。たとえば、キミのPCに「せいき」と打ち込むと、最初に「性器」と出てくるでしょ。ところが、私のPCに「せいき」と打ち込むと、「世紀」がトップにくる。これって、PCが学習したわけですよ。この女は、「性器」という言葉をよく使う。たぶん、この人は「性器」と変換してあげれば喜ぶんだ――と、PCが学習したわけです。それと同じことを、人間の脳もやってるんだね。
AKI 言っときますけど、私のPCは、哲ジイからいただいた中古ですよ。ヘンなクセつけたの、哲ジイじゃないですか。こないだなんて、「21世紀の浦賀造形展」って打ち出そうとしたら、「21性器の裏画像K点」なんて出てきて、思いきし笑っちゃったんですから。
哲雄 おや、それは失敬。ま、ともかくです。脳は、いろんなことを記憶するんだけど、特に人の好き嫌いに関するような記憶は、わりと奥深いところに書き込んでしまうから、本人は、それと知らないうちに、その指令を受けることになったりするんだね。
AKI 知らないうちに……ですか?
哲雄 あれ、私、どうしてこの人のことが気になってしまうんだろ?――なんて思ったこと、ありませんか? たとえば、キミはまるっきり意識してないのに、マグカップを両手で持って飲む男に、胸がキュンとなったりする。実は、それは、キミが幼い頃、キミにやさしくしてくれた隣のお兄ちゃんが、いつもやっていたクセだった……とかね。
AKI ホホーッ。それで、私は、「この人、私の運命の人だわ」と思ったりするわけですか?
哲雄 いいですけどね、それを「赤い糸」と呼ぼうが、「運命の出会い」と呼ぼうが、そういうことをメシの種にしようが。しかし、私は、人がどんな人と惹かれ合うかということを決めているのは、運命なんかじゃなくて、脳が記憶したメモリーによるのだと思ってます。
AKI そのメモリーは、上書き禁止なんですか?
哲雄 オッ、いい質問だねェ。池上彰も泣いて喜びそうな、いい質問。上書きできるかどうかは、メモリーの階層によるんだよね。
AKI ヘーッ、階層があるんだぁ……。
哲雄 前に、意識と無意識の話をしたと思うけど、フロイト的に言うなら、いちばん深いところにあるのが《無意識》で、これは、本人もその存在に気づかないほどだから、上書きしようにも、そのファイルを呼び出すこと自体ができない。よっぽどのことが起こらない限りね。PCで言うと、OSに書き込まれたメモリーだと思えばいい。
AKI ね、ね。その《無意識》の階層に書き込まれたメモリーって、たとえば、どんなものがあるの?
哲雄 キミの場合だと、つい、父親のような男性を求めてしまう――なんてのがそうだろうね。たぶん、キミは、だれかに指摘されない限り、自分の中にそんな指向性があることさえ、気づかなかったかもしれないんだ。これを書き直して、「息子のような男を求めてしまう」に変えようと思っても、それはムリ。
AKI でも、よっぽどのことが起これば、別なんでしょ?
哲雄 生命に関わる事件・事故に遭遇するとか、もう死んでしまいたいと思うような悲惨な目に遭うとかだけど、ま、そんな事態には出くわしたくないでしょ?
AKI じゃ、逆にいちばん浅いところにあるのは?
哲雄 いちばん浅いところにあるのは、《意識》だけど、ここに保存されたメモリーなら、何度でも呼び出して、書き直しができます。私が見る限り、キミなんか、毎日のように書き換えてます。
AKI ウソ! たとえば?
哲雄 昨日まで、石川遼がタイプとか言ってたと思ったら、きょうは島袋クンがいいと言い出したりね。つい数時間前まで、「男は、財産よりセンスよね」と言ってたのに、TVでセレブな男の特集を見たとたんに、「やっぱり、男は財力よ」と、見事に宗旨替えしてみせたりするではありませんか。
AKI そ、それは、単なる目移り、ということで……。
哲雄 別に責めてませんよ。要するに、人がどういう異性に心を奪われるか――ということを、運命論的に語るのはナンセンスだ、と申し上げたかったわけです。
AKI 運命でなかったら、何なんでしょう?
哲雄 化学反応です。
AKI 化学反応? 水素と酸素が一緒になると水になるとかっていう、あの化学反応ですか?
哲雄 オッ、よくご存じで。
AKI 失礼な! それくらいは知ってますよ。その化学反応が、男と女の間で起こるっていうんですか?
哲雄 化学反応のようなものが起こる、ということです。ある男とある女が出会ったときに、どういう化学反応が起こるかは、ま、ある程度、想像がつくわけで、
もし、出会いを「運命」というなら、
この化学反応の法則こそが、「運命」と呼ぶべきものだ
と、私は思います。
AKI 私、その法則、知りたいんですけど……。
哲雄 では、その話は、次回からじっくり。その前に、やってみたい化学反応の実験があるんだけどね……。
AKI な、何ですか?
哲雄 キミの汗とボクの汗が混じったら、どんな化学反応を起こすか?
AKI ワッ、想像するだけで鳥肌が立つ、という化学反応が起こりました。ではまた。
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哲雄 いや、裁判長。私は、自分が「セカンド」の立場であることが多かったものですから。それに、どうも……私の中には、こういうのが「いちばん」という理想型みたいなものが、あまりなくてですね、ステキな女性に出会うと、出会った途端に、その人が「いちばん」になってしまうものですから。実にまあ、簡単な話でして……。
AKI 要するに、被告人は、場当たり的で、ある意味、無節操でもある――と。「こういう女性と出会いたい」と強く願ったり、「この人だ、私がずっと待ち望んでいたのは…」と感じたり……ということが、これまでなかったわけですね?
哲雄 そういうのは、「純愛小説」とやらにおまかせしておけばいいんじゃないんでしょうか。しかしね、AKIクン、考えてみればわかると思うんだけど、人の脳の中に、「あなたのいちばんは、こういう女だよ」とか「こういう男だよ」なんて書き込みが、もともとあるわけじゃない。人の脳は、既定値を積んで出荷されるPCとは違うんだよね。
AKI でも、「赤い糸」とか言うじゃありませんか。
哲雄 アホな。あなたは、そんなものを信じてるわけですか?
AKI エッ!? 哲ジイは信じないんですか?
哲雄 あったり前田のクラッカー! これでも唯物論者ですよ、私は。
AKI ヘーッ、こんな叙情的な唯物論者、見たことない。人一倍、ロマンチストなくせに……。
哲雄 ロマンチストだから、唯物論なんです。もし、キミたちの言う「赤い糸」なんてものがあるとしたら、それは遺伝子上の書き込みぐらいしか考えられない。
AKI じゃ、遺伝子に書き込んであるんですよ、
あなたの理想の男は、こういう男だよ。
決して長住某みたいな男じゃないゾ――って。
哲雄 遺伝子には、そんなことまで書き込めませんッ! せいぜい、大きなチンチンの男を選びなさいとか、指の長い男を選びなさいとか、その程度のことでしょう。いずれも、生殖能力に関係することだから、コピーを残すことを唯一の使命とするDNAとしてみれば、そういう情報は、何らかの形で記録していると考えられます。
AKI では、やさしい男がいいとか、お金持ちがいいとか、胸毛の生えてない男がいい……とかいうのは?
哲雄 それは、メモリーだと思いますよ。生まれたあとで、学習して書き込まれたメモリーですよ。たとえば、キミのPCに「せいき」と打ち込むと、最初に「性器」と出てくるでしょ。ところが、私のPCに「せいき」と打ち込むと、「世紀」がトップにくる。これって、PCが学習したわけですよ。この女は、「性器」という言葉をよく使う。たぶん、この人は「性器」と変換してあげれば喜ぶんだ――と、PCが学習したわけです。それと同じことを、人間の脳もやってるんだね。
AKI 言っときますけど、私のPCは、哲ジイからいただいた中古ですよ。ヘンなクセつけたの、哲ジイじゃないですか。こないだなんて、「21世紀の浦賀造形展」って打ち出そうとしたら、「21性器の裏画像K点」なんて出てきて、思いきし笑っちゃったんですから。
哲雄 おや、それは失敬。ま、ともかくです。脳は、いろんなことを記憶するんだけど、特に人の好き嫌いに関するような記憶は、わりと奥深いところに書き込んでしまうから、本人は、それと知らないうちに、その指令を受けることになったりするんだね。
AKI 知らないうちに……ですか?
哲雄 あれ、私、どうしてこの人のことが気になってしまうんだろ?――なんて思ったこと、ありませんか? たとえば、キミはまるっきり意識してないのに、マグカップを両手で持って飲む男に、胸がキュンとなったりする。実は、それは、キミが幼い頃、キミにやさしくしてくれた隣のお兄ちゃんが、いつもやっていたクセだった……とかね。
AKI ホホーッ。それで、私は、「この人、私の運命の人だわ」と思ったりするわけですか?
哲雄 いいですけどね、それを「赤い糸」と呼ぼうが、「運命の出会い」と呼ぼうが、そういうことをメシの種にしようが。しかし、私は、人がどんな人と惹かれ合うかということを決めているのは、運命なんかじゃなくて、脳が記憶したメモリーによるのだと思ってます。
AKI そのメモリーは、上書き禁止なんですか?
哲雄 オッ、いい質問だねェ。池上彰も泣いて喜びそうな、いい質問。上書きできるかどうかは、メモリーの階層によるんだよね。
AKI ヘーッ、階層があるんだぁ……。
哲雄 前に、意識と無意識の話をしたと思うけど、フロイト的に言うなら、いちばん深いところにあるのが《無意識》で、これは、本人もその存在に気づかないほどだから、上書きしようにも、そのファイルを呼び出すこと自体ができない。よっぽどのことが起こらない限りね。PCで言うと、OSに書き込まれたメモリーだと思えばいい。
AKI ね、ね。その《無意識》の階層に書き込まれたメモリーって、たとえば、どんなものがあるの?
哲雄 キミの場合だと、つい、父親のような男性を求めてしまう――なんてのがそうだろうね。たぶん、キミは、だれかに指摘されない限り、自分の中にそんな指向性があることさえ、気づかなかったかもしれないんだ。これを書き直して、「息子のような男を求めてしまう」に変えようと思っても、それはムリ。
AKI でも、よっぽどのことが起これば、別なんでしょ?
哲雄 生命に関わる事件・事故に遭遇するとか、もう死んでしまいたいと思うような悲惨な目に遭うとかだけど、ま、そんな事態には出くわしたくないでしょ?
AKI じゃ、逆にいちばん浅いところにあるのは?
哲雄 いちばん浅いところにあるのは、《意識》だけど、ここに保存されたメモリーなら、何度でも呼び出して、書き直しができます。私が見る限り、キミなんか、毎日のように書き換えてます。
AKI ウソ! たとえば?
哲雄 昨日まで、石川遼がタイプとか言ってたと思ったら、きょうは島袋クンがいいと言い出したりね。つい数時間前まで、「男は、財産よりセンスよね」と言ってたのに、TVでセレブな男の特集を見たとたんに、「やっぱり、男は財力よ」と、見事に宗旨替えしてみせたりするではありませんか。
AKI そ、それは、単なる目移り、ということで……。
哲雄 別に責めてませんよ。要するに、人がどういう異性に心を奪われるか――ということを、運命論的に語るのはナンセンスだ、と申し上げたかったわけです。
AKI 運命でなかったら、何なんでしょう?
哲雄 化学反応です。
AKI 化学反応? 水素と酸素が一緒になると水になるとかっていう、あの化学反応ですか?
哲雄 オッ、よくご存じで。
AKI 失礼な! それくらいは知ってますよ。その化学反応が、男と女の間で起こるっていうんですか?
哲雄 化学反応のようなものが起こる、ということです。ある男とある女が出会ったときに、どういう化学反応が起こるかは、ま、ある程度、想像がつくわけで、
もし、出会いを「運命」というなら、
この化学反応の法則こそが、「運命」と呼ぶべきものだ
と、私は思います。
AKI 私、その法則、知りたいんですけど……。
哲雄 では、その話は、次回からじっくり。その前に、やってみたい化学反応の実験があるんだけどね……。
AKI な、何ですか?
哲雄 キミの汗とボクの汗が混じったら、どんな化学反応を起こすか?
AKI ワッ、想像するだけで鳥肌が立つ、という化学反応が起こりました。ではまた。

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