第13夜☆チンパンジーはなぜ乱婚するのか?
AKI 前回は、たいへん有意義なご提案をいただき……。
哲雄 な、なんですか? あらたまって……。
AKI 実は、お友だちで、不倫に悩んでる子がいるんッすよ。
哲雄 そういう場合のお友だちというのは、実は、自分…ってことが多いんだけど。
AKI ち、違いますよォ。ほんとに、友だち。その友だちが、そう言えば、哲ジイと同じようなこと言ってたなぁ、と思って……。
哲雄 ホウ、何と?
AKI 一夫一妻制なんて、なくなればいいのに……って。
哲雄 フーン、そりゃ深刻だ。チンパンジーだったらよかったのにね。
AKI エッ、チンパンジーは、一夫多妻なんですか?
哲雄 どころか、乱婚らしいですよ。動物の世界では珍しくないことらしいけど。
AKI 乱婚……ってことは、メスもいろんなオスを受け入れるってこと?
哲雄 むしろ、積極的にそうしてる。戦略としてね。
AKI 戦略? 何のための?
哲雄 子どもを殺させないため。
AKI 子どもを殺す?
哲雄 チンパンジーに限らず、動物のオスは、自分の遺伝子を持った子孫を残したい。これが、「利己的な遺伝子」の最大の目標だからね。仮にメスが、他のオスの子どもなんて産んだら、その子は殺してしまう。いい例が、ボスの交替劇。サルでも、ライオンでも、メスを支配するオスが交替すると、新しくやって来たボスは、前のボスの血を受け継いだ子どもを殺してしまう。
AKI 連れ子は認めないんだぁ。
哲雄 そう。認めない。
AKI そりゃ、ボスの交替劇なら、こいつはオレの子じゃないってわかるだろうけど、そうでなかったら、わからないでしょ、生まれてきた子がだれの子かなんて? 彼らにはDNA鑑定なんてできないわけだから……。
哲雄 そのとおり。だから、チンパンジーのメスは、そこらじゅうのオスとやりまくる。
AKI エッ? もしかして……。
哲雄 そのもしかして。いろんなオスと結ばれておけば、生まれてくる子がだれの子かわからなくなる。オスだって、「もしかしてオレの子かもしれない」と思う子どもを殺したりしないでしょ。
AKI な~るほど。頭いいね、チンパンジーも。
哲雄 AKIちゃんも、頭よくなったほうがいいかも……。
AKI ダメですよ。その手は桑名の焼き……クリ?
哲雄 ハマグリ。
AKI 人間は、血液型も知ってるし、DNA鑑定だってできるんですから。あ、でも、そういうことを知らなかった時代もあるんだよね。
哲雄 そう。不倫や浮気は、人類の歴史とともに古く、女性も積極的に……というか、ある意味では、女性のほうが積極的に浮気してたみたいだよ。
AKI あれぇ? だって、哲ジイは、前に、精子をバラ撒きたいオスのほうが、いろんなメスと結ばれたがる、って言わなかった?
哲雄 遺伝子の法則から言うと、そういうことになるね。でも、ダーウィン的進化の法則から言うと、一概にそうとも言えない。
AKI エーッ、どういうこと?
哲雄 前にツルの売春の話、したよね。
AKI そう言えば、そんな話も……。
哲雄 ツルに限らず、動物のほとんどは、エサの確保のためだったら、配偶者以外のオスとも交尾する。ま、しょうがないよね、生存のためなんだから。もうひとつ、優秀な遺伝子を確保するために浮気する、ということもあるんだ。
AKI そのために、メスは交尾するオスを厳選する。確か、哲ジイはそう言ってたと思うけど。
哲雄 もちろん、それもある。でもさ、考えてごらん。そうしてツガイになったあとで、もっと強そうなオスが現れたりしたら、AKIちゃんだったら、どうする?
AKI そりゃ、迷いますよ、少しは。
哲雄 でしょ? たとえば、あっちのほうがうちのダンナより背が高いとか、顔がいいとか、頭がよさそうだとか、稼ぎがよさそうだとか……。そんなとき、動物のメスは、あの遺伝子ももらっちゃおうか、なんて考えるらしいんだよね。
AKI ずるいなぁ。
哲雄 ウン、でも、それも生存というか、種の保存のためだったら仕方ない。それにね、ひとりのダンナにすべてを捧げて、他のオスをシャット・アウトしてしまったら、たとえば、そのダンナに何かあったとき、生きる術を失ってしまう。
AKI それは、人間が考えることでしょ?
哲雄 そう。それは、ヒトのメスが考えること。でも、人間にしても、動物たちにしても、メスが、ひとりのオスにすべてを賭けるということはしない。どこかで保険をかけようとする。これは、メスに共通する心理だってことだけは、覚えておいてほしいんだよね。
AKI ハイハイ、よくわかりました。なのに、人間は、一夫一妻制度を選んでしまったんですよね。
哲雄 いや、別に、選んでしまったわけじゃない。世界中の文化圏の中で、
一夫一妻制をとっているのは、わずか16%
にすぎないんだから。
AKI エーッ、そんなに少ないの?
哲雄 意外に少ない。われわれは、少なくとも第二次世界大戦後は、欧米流のキリスト教保守派的な倫理観とか家庭観とかに洗脳されてしまってるから、それを当たり前と感じてるんだけど、実際、世界の結婚制度は、そんなにモノトーンじゃないんだ。
AKI その友だちにも教えてあげよう。その子、けっこう、罪の意識に苦しんでるから。
哲雄 なんなら、私が……。
AKI それはけっこうです!
哲雄 どころか、乱婚らしいですよ。動物の世界では珍しくないことらしいけど。
AKI 乱婚……ってことは、メスもいろんなオスを受け入れるってこと?
哲雄 むしろ、積極的にそうしてる。戦略としてね。
AKI 戦略? 何のための?
哲雄 子どもを殺させないため。
AKI 子どもを殺す?
哲雄 チンパンジーに限らず、動物のオスは、自分の遺伝子を持った子孫を残したい。これが、「利己的な遺伝子」の最大の目標だからね。仮にメスが、他のオスの子どもなんて産んだら、その子は殺してしまう。いい例が、ボスの交替劇。サルでも、ライオンでも、メスを支配するオスが交替すると、新しくやって来たボスは、前のボスの血を受け継いだ子どもを殺してしまう。
AKI 連れ子は認めないんだぁ。
哲雄 そう。認めない。
AKI そりゃ、ボスの交替劇なら、こいつはオレの子じゃないってわかるだろうけど、そうでなかったら、わからないでしょ、生まれてきた子がだれの子かなんて? 彼らにはDNA鑑定なんてできないわけだから……。
哲雄 そのとおり。だから、チンパンジーのメスは、そこらじゅうのオスとやりまくる。
AKI エッ? もしかして……。
哲雄 そのもしかして。いろんなオスと結ばれておけば、生まれてくる子がだれの子かわからなくなる。オスだって、「もしかしてオレの子かもしれない」と思う子どもを殺したりしないでしょ。
AKI な~るほど。頭いいね、チンパンジーも。
哲雄 AKIちゃんも、頭よくなったほうがいいかも……。
AKI ダメですよ。その手は桑名の焼き……クリ?
哲雄 ハマグリ。
AKI 人間は、血液型も知ってるし、DNA鑑定だってできるんですから。あ、でも、そういうことを知らなかった時代もあるんだよね。
哲雄 そう。不倫や浮気は、人類の歴史とともに古く、女性も積極的に……というか、ある意味では、女性のほうが積極的に浮気してたみたいだよ。
AKI あれぇ? だって、哲ジイは、前に、精子をバラ撒きたいオスのほうが、いろんなメスと結ばれたがる、って言わなかった?
哲雄 遺伝子の法則から言うと、そういうことになるね。でも、ダーウィン的進化の法則から言うと、一概にそうとも言えない。
AKI エーッ、どういうこと?
哲雄 前にツルの売春の話、したよね。
AKI そう言えば、そんな話も……。
哲雄 ツルに限らず、動物のほとんどは、エサの確保のためだったら、配偶者以外のオスとも交尾する。ま、しょうがないよね、生存のためなんだから。もうひとつ、優秀な遺伝子を確保するために浮気する、ということもあるんだ。
AKI そのために、メスは交尾するオスを厳選する。確か、哲ジイはそう言ってたと思うけど。
哲雄 もちろん、それもある。でもさ、考えてごらん。そうしてツガイになったあとで、もっと強そうなオスが現れたりしたら、AKIちゃんだったら、どうする?
AKI そりゃ、迷いますよ、少しは。
哲雄 でしょ? たとえば、あっちのほうがうちのダンナより背が高いとか、顔がいいとか、頭がよさそうだとか、稼ぎがよさそうだとか……。そんなとき、動物のメスは、あの遺伝子ももらっちゃおうか、なんて考えるらしいんだよね。
AKI ずるいなぁ。
哲雄 ウン、でも、それも生存というか、種の保存のためだったら仕方ない。それにね、ひとりのダンナにすべてを捧げて、他のオスをシャット・アウトしてしまったら、たとえば、そのダンナに何かあったとき、生きる術を失ってしまう。
AKI それは、人間が考えることでしょ?
哲雄 そう。それは、ヒトのメスが考えること。でも、人間にしても、動物たちにしても、メスが、ひとりのオスにすべてを賭けるということはしない。どこかで保険をかけようとする。これは、メスに共通する心理だってことだけは、覚えておいてほしいんだよね。
AKI ハイハイ、よくわかりました。なのに、人間は、一夫一妻制度を選んでしまったんですよね。
哲雄 いや、別に、選んでしまったわけじゃない。世界中の文化圏の中で、
一夫一妻制をとっているのは、わずか16%
にすぎないんだから。
AKI エーッ、そんなに少ないの?
哲雄 意外に少ない。われわれは、少なくとも第二次世界大戦後は、欧米流のキリスト教保守派的な倫理観とか家庭観とかに洗脳されてしまってるから、それを当たり前と感じてるんだけど、実際、世界の結婚制度は、そんなにモノトーンじゃないんだ。
AKI その友だちにも教えてあげよう。その子、けっこう、罪の意識に苦しんでるから。
哲雄 なんなら、私が……。
AKI それはけっこうです!
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