第121夜☆男の未練は「後悔」、女の未練は「希望」に引きずられる
第121夜
男の恋も、女の恋も、過去を引きずるのは共通。しかし、その引きずり方は、まるっきり違います。中島みゆき、ユーミンの歌も引用しながら、今回は、恋愛につき物の「未練」の正体について、語り合います――。
【今回のキーワード】 未練 中島みゆき ユーミン
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AKI 前回の話からすると、哲ジイは、あきらめがいいわりに引きずるタイプなんですね。
哲雄 男は、引きずる生きものです。
AKI そ、そうなんですか? つまり、未練たらしいってこと?
哲雄 あれ!? ご存じなかった? 歌謡曲の世界だって、昔の女に、冬子だの、霧子だのと呼びかけて、「幸せに暮らせよ」なんて歌ってるのは、ほとんど男でしょう。
AKI そう言えば、そうかも。あ、でも、女だって歌ってるでしょ? 昔の恋を思い出して……。
哲雄 歌ってるけど、それは、「叶わぬ恋」についてだけだよね。そして、歌の内容は、「叶わぬ恋」に苦しむ自分の胸の内。届かない想いを抱えて、「着てはもらえぬセーター」を編んだりしてるわけですよ。
AKI ヘン、そうじゃないのもありますよ。前回の竹内まりやの歌だって、言ってるじゃありませんか。

元気で暮らしていることを
さり気なく告げたかったのに……
――竹内まりや 『駅』より
哲雄 でも、胸の内はビターなんだよね。それを強がってる見せてるだけのような気がしますが……。
AKI もっとスイートなのもありますよ~だ。ユーミンの『ハートの落書き』って曲には、こんな歌詞が出てきます。
机の傷あと ハートの落書き
最前線には届かなかったけど
それでも全てが きらきらしていた
あの日それぞれの夢の途中
――松任谷由実 『ハートの落書き』より
哲雄 それは、「自分史」の中の一風景として語られてるメモリーでしょ? 中島みゆきも言ってるじゃありませんか。
AKI 有名な歌ですよね、『時代』とかいう。でも、いつかまた「めぐりあう」んでしょ? それって未練じゃないんですか?
哲雄 「生まれかわって」だからね。別に「もう一度、会いたい」とか「もう一回、エッチしよう」とか言ってるわけじゃない。「そんな時代もあったね」は、やっぱりメモリーじゃないですか。女はね、そんなふうに、
過去の恋は「メモリー化」して、
フォルダーに収納してしまうんじゃないの。「上書き禁止」にしてね。
AKI 男は、そうじゃないんですか?
哲雄 人によるかもしれないけど、女よりも「ライブ」だと思います。「ライブ」だから、ちょっと火をつければ、すぐ燃え上がる。スタンダード曲に『That Old Feeling』ってのがあるんだけどね、その歌詞が男の未練のあり方を端的に表してるんだ。
ゆうべ、キミを見て
また昔の想いがよみがえった
キミがボクの視界に入ったとたんに
その想いがよみがえった
キミが踊りながらそばを通ったときなんて
ボクのハートは興奮して
キミと目があったときには
固まっちまったよ
――Lew Brown 『That Old Feeling』より
AKI かなり、キケンな感じがしますねぇ。
哲雄 ええ、たいへんキケンですから、取り扱いにはご注意ください。それでね、未練を歌った男の曲をいろいろ見ていくと、頻繁に登場する語彙があることに気づいたんです。
AKI な、何ですか?
哲雄 英語で言うと「still」。日本語に訳すと、「まだ」とか「いまだに」って意味だけど、これがやたら出てくる。「Still burning=まだ、燃えている」っていうふうにね。「いまだに」は、男の未練につき物の語彙なんじゃないか――と気づいたわけです、この灰色の脳細胞は。女はそうじゃない。終わっちまったものは、「メモリー」にしてしまうから、「いまだに」感=0、になってしまうでしょ?
AKI ま、そう……ですかね。
哲雄 な、何ですか、その歯切れのわるさは? なんか引っかかってる男でもいるって表情ですけど……?
AKI 自分から去ったにしても、話し合って別れたにしても、事実として「別れた」があったら、「いまだ」は「0」になっちゃうでしょうね。なっちゃう……というより、「しちゃう」んじゃないかな。「いまだ」は煮物にして、ハイ、こちら、乙女特製の「いまだ煮」でございます――なんちって。
哲雄 あの……私、笑ったほうがいいですか?
AKI 笑って、笑って。笑う頃にはふぐ来る。ああ、ふぐ食いてェ……。
哲雄 壊れてますな、完全に。
AKI でもね、でもね、その「別れた」って事実がないと、女は引きずるんですよ、いつまでも。
哲雄 だから、申し上げたでしょ。女が歌う未練は、「叶わぬ恋」についてだって。「叶わぬ」というのは、「完全にムリ」とか「絶望的」というのじゃない。いつまでたっても「未完成」ということです。「未完成な恋」であれば、どんなに苦しかろうが、そこにはまだ一縷の「希望」があるでしょう。
AKI た、たしかに。そんなはずはない。あのとき、あの人が言った言葉にウソがあるとは思えない――なんてね。
哲雄 ウーン、キミの言葉には、どうも、ミョーなリアリティがあるなぁ。これは何かある、きっと何かある。
AKI それはいいから。じゃ、男のほうはどうなんです? 女より「ライブ」だとおっしゃる男の未練は、いったい、何に引っ張られるんですか?
哲雄 引っ張られるんじゃなくて、引き戻されるんですね、リグレットに。
AKI リグレット? それ、何のクスリ?
哲雄 ええ、痔によく効く……じゃなくて、リグレットとは「後悔」です。
AKI エッ、後悔するんですか? あんな女に出会わなきゃよかった……とか?
哲雄 ノン、ノン(目の前で指を振る)。後悔するのは自分についてです。「ああ、あのとき、もっとガツンと行っとけばよかった」とか、「左のオッパイだけじゃなく、右のオッパイもなめとけばよかった」とか、「あのとき、もっとやさしい言葉をかけておけばよかった」と後悔して、「そうすれば失わずにすんだのに」と思ったりするわけですね。
AKI エッ、エーッ!? そんなひとりよがりなことを考えてるんですか、男って。
哲雄 そうですよ。彼女が自分のもとを去ったのは、自分の愛し方が足りなかったからだ、かわいそうなことをした――とね。男はそんな風に考えて、「自分のせいで不幸にしてしまった女」のことをいつまでも気にかけ、「どこかで泣いてるんじゃないだろうか」と思ったりするわけです。それが、男の未練の正体。
AKI ウソーッ! あり得ない!
哲雄 ずいぶん、違うでしょ? 男の未練と女の未練。まとめて言うと、
女の未練は、希望に引っ張られ、
男の未練は、後悔に引き戻される。
だから、女が歌う未練は、「叶わぬ恋」が多く、男の未練は「失った恋」が多い。男の未練を成り立たせているものは「後悔」だから、「やり直せば、彼女をもっと幸せにしてやれる」と考えるわけで、したがって、男の焼けぼっくいには、すぐ火が点いてしまう。
AKI 信じらんない。どうして、そうなっちゃうかなぁ。
哲雄 その理由については、次回、じっくり話しましょうか?
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それでも全てが きらきらしていた
あの日それぞれの夢の途中
――松任谷由実 『ハートの落書き』より
哲雄 それは、「自分史」の中の一風景として語られてるメモリーでしょ? 中島みゆきも言ってるじゃありませんか。
AKI 有名な歌ですよね、『時代』とかいう。でも、いつかまた「めぐりあう」んでしょ? それって未練じゃないんですか?
哲雄 「生まれかわって」だからね。別に「もう一度、会いたい」とか「もう一回、エッチしよう」とか言ってるわけじゃない。「そんな時代もあったね」は、やっぱりメモリーじゃないですか。女はね、そんなふうに、
過去の恋は「メモリー化」して、
フォルダーに収納してしまうんじゃないの。「上書き禁止」にしてね。
AKI 男は、そうじゃないんですか?
哲雄 人によるかもしれないけど、女よりも「ライブ」だと思います。「ライブ」だから、ちょっと火をつければ、すぐ燃え上がる。スタンダード曲に『That Old Feeling』ってのがあるんだけどね、その歌詞が男の未練のあり方を端的に表してるんだ。

また昔の想いがよみがえった
キミがボクの視界に入ったとたんに
その想いがよみがえった
キミが踊りながらそばを通ったときなんて
ボクのハートは興奮して
キミと目があったときには
固まっちまったよ
――Lew Brown 『That Old Feeling』より
AKI かなり、キケンな感じがしますねぇ。
哲雄 ええ、たいへんキケンですから、取り扱いにはご注意ください。それでね、未練を歌った男の曲をいろいろ見ていくと、頻繁に登場する語彙があることに気づいたんです。
AKI な、何ですか?
哲雄 英語で言うと「still」。日本語に訳すと、「まだ」とか「いまだに」って意味だけど、これがやたら出てくる。「Still burning=まだ、燃えている」っていうふうにね。「いまだに」は、男の未練につき物の語彙なんじゃないか――と気づいたわけです、この灰色の脳細胞は。女はそうじゃない。終わっちまったものは、「メモリー」にしてしまうから、「いまだに」感=0、になってしまうでしょ?
AKI ま、そう……ですかね。
哲雄 な、何ですか、その歯切れのわるさは? なんか引っかかってる男でもいるって表情ですけど……?
AKI 自分から去ったにしても、話し合って別れたにしても、事実として「別れた」があったら、「いまだ」は「0」になっちゃうでしょうね。なっちゃう……というより、「しちゃう」んじゃないかな。「いまだ」は煮物にして、ハイ、こちら、乙女特製の「いまだ煮」でございます――なんちって。
哲雄 あの……私、笑ったほうがいいですか?
AKI 笑って、笑って。笑う頃にはふぐ来る。ああ、ふぐ食いてェ……。
哲雄 壊れてますな、完全に。
AKI でもね、でもね、その「別れた」って事実がないと、女は引きずるんですよ、いつまでも。
哲雄 だから、申し上げたでしょ。女が歌う未練は、「叶わぬ恋」についてだって。「叶わぬ」というのは、「完全にムリ」とか「絶望的」というのじゃない。いつまでたっても「未完成」ということです。「未完成な恋」であれば、どんなに苦しかろうが、そこにはまだ一縷の「希望」があるでしょう。
AKI た、たしかに。そんなはずはない。あのとき、あの人が言った言葉にウソがあるとは思えない――なんてね。
哲雄 ウーン、キミの言葉には、どうも、ミョーなリアリティがあるなぁ。これは何かある、きっと何かある。
AKI それはいいから。じゃ、男のほうはどうなんです? 女より「ライブ」だとおっしゃる男の未練は、いったい、何に引っ張られるんですか?
哲雄 引っ張られるんじゃなくて、引き戻されるんですね、リグレットに。
AKI リグレット? それ、何のクスリ?
哲雄 ええ、痔によく効く……じゃなくて、リグレットとは「後悔」です。
AKI エッ、後悔するんですか? あんな女に出会わなきゃよかった……とか?
哲雄 ノン、ノン(目の前で指を振る)。後悔するのは自分についてです。「ああ、あのとき、もっとガツンと行っとけばよかった」とか、「左のオッパイだけじゃなく、右のオッパイもなめとけばよかった」とか、「あのとき、もっとやさしい言葉をかけておけばよかった」と後悔して、「そうすれば失わずにすんだのに」と思ったりするわけですね。
AKI エッ、エーッ!? そんなひとりよがりなことを考えてるんですか、男って。
哲雄 そうですよ。彼女が自分のもとを去ったのは、自分の愛し方が足りなかったからだ、かわいそうなことをした――とね。男はそんな風に考えて、「自分のせいで不幸にしてしまった女」のことをいつまでも気にかけ、「どこかで泣いてるんじゃないだろうか」と思ったりするわけです。それが、男の未練の正体。
AKI ウソーッ! あり得ない!
哲雄 ずいぶん、違うでしょ? 男の未練と女の未練。まとめて言うと、
女の未練は、希望に引っ張られ、
男の未練は、後悔に引き戻される。
だから、女が歌う未練は、「叶わぬ恋」が多く、男の未練は「失った恋」が多い。男の未練を成り立たせているものは「後悔」だから、「やり直せば、彼女をもっと幸せにしてやれる」と考えるわけで、したがって、男の焼けぼっくいには、すぐ火が点いてしまう。
AKI 信じらんない。どうして、そうなっちゃうかなぁ。
哲雄 その理由については、次回、じっくり話しましょうか?

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