第92夜☆「厳しすぎる母」は、「S」な子どもを作る?
第92夜
「愛とは何か?」をめぐって、管理人・哲雄がパートナー・AKIを相手に展開する、オヤジ・ギャグ風+ちょっぴりアカデミックおしゃべり。今回は、「S」な性質がどのようにして誕生するか、マルキ・ド・サドのエピソードを紹介しながら、幼少期の問題にメスを当てます――。
【今回のキーワード】 サド しつけ 虐待の連鎖
AKI 前回の「Mの誕生」に続いて、今回は、「Sの誕生」について話すんでしたね。「S」は、「サド」から来てるんですよね。
哲雄 昔は、金山で有名でした。
AKI それは「佐渡」。
哲雄 男のチンチンをチョン切ったりした……。
AKI それは「サダ」。「アベサダ」でしょ?
哲雄 悲しくて、涙が出てきそう……。
AKI それは、「サッド」。
哲雄 自転車についてる、気持ちのいい座席……。
AKI 気持ちがいいかどうかは知りませんけど、「サドル」ですね。ハイ、もうないですか? では、正解をどうぞ。
哲雄 コホッ。エー、「サド」というのは、18~19世紀にかけてのフランスの貴族、マルキ・ド・サドのことですね。この人の一生は、女性に対する「憎悪」で貫かれていた、と言ってもいいと思います。
AKI マゾッホは「尊敬」でしたよね。こちらは「憎悪」。何かあったんですか、幼少期に?
哲雄 母親がすごかったんだね。サドを育てたお母さんというのは、メチャクチャ道徳に厳しい人で、幼かったサドを何かと言っては厳しく叱責したらしい。厳しいだけじゃなくて冷淡でもあったから、サドはこの母親から愛情を受け取ることができず、憎悪を募らせていった。
AKI 愛情がどんなものかを知らないまま、育ったんですね。それじゃ、結婚もできませんね。
哲雄 いや、結婚はするんだ。それも、半ば強制的に。この相手がまた、すごかった。
AKI ムチの女王……みたいなお嫁さん?
哲雄 いやいや。結婚したのは、裁判所長官の娘なんだけど、すごかったのは、その母親、つまり義母ですね。この人が、虚栄心の塊のような人で、世間体を気にしちゃ、何かと口やかましいことを言う。
AKI いまで言うと、モンスター・ペアレンツみたいな感じ?
哲雄 かもしれませんね。サドは、このふたりの女性、実の母と義母を通して、「女性的なもの」を嫌悪するようになっていくのです。そして、ついに事件を起こします。
AKI まさか、義母を殺したとか……?
哲雄 いやいや、そんな直接的な事件じゃない。もっと屈折したこと。ジャンヌという娼婦を別宅に連れ込んで、アナル・セックスを強要するんだ。
AKI エッ!? それ、フツーにやるでしょ、いまでは?
哲雄 当時としては、それだけでも不道徳だったんだろうね。しかもサドは、その女に、キリスト像の上に大便をさせたりしたので、大きなスキャンダルとなって、投獄されてしまいます。
AKI それだけで投獄?
哲雄 その時代としては、ショッキングな出来事だったんでしょうね。5年後に出獄するんだけど、今度は、ケレルという女を監禁して、縛り付けてムチで打ったりしたため、またもや投獄。4年後に出獄すると、今度は、薬品やムチを使う乱交騒ぎを起こして、またも投獄。こういうことを繰り返したため、最後は精神病院に収容されて、74歳でこの世を去りました。
AKI いまでは、どちらのご家庭でもフツーにやっていることで、投獄を繰り返したわけですねェ。
哲雄 どちらのご家庭でも…は、やってないでしょ。フツーに…でもないと思うよ。やっぱり、アブノーマルはアブノーマル。で、このサド侯爵が、バスティーユでの獄中生活中に書いた小説、『美徳の不幸』『ソドムの百二十日』が、そのスキャンダラスな内容とともに世界中にセンセーションを巻き起こしたもので、そこから「サディズム」という言葉が生まれた――と、ま、こういうわけですね。
AKI フーン、やっぱりこっちも、幼少期に問題ありなんですねェ。
哲雄 AKIクンは、「虐待の連鎖」という言葉を聞いたこと、ある?
AKI ハイ。虐待を受けて育った子どもが、大きくなると、今度は虐待する側に回る――という話ですよね。
哲雄 ここで言う虐待は、理不尽な暴力ばかりじゃなくて、厳しすぎる「しつけ」なども含まれるんだけど、幼少期にそういう目に遭った子どもは、自分が受けた屈辱を、今度は、他人を傷つけることによって晴らそうとするんだよね。
AKI サドもそうだったわけですね。
哲雄 そう。キミが、幼い頃に受けた「厳しすぎるしつけ」を、今度は私をいじめることによって晴らそうとしているようにね。
AKI だから、いじめてませんって。これは、しつけです!
哲雄 そうそう、そのしつけ。「S」的な要素を持つ人は、その「しつけ」に異常にこだわるところがあるんだよね。
AKI そ、そうなんですか?
哲雄 親から厳しい「しつけ」を受けて、それを嫌悪しながら育った人は、自分が親になったとき、今度は自分の子どもに対して、自分が親から受けたと同じ、あるいはそれ以上の厳しい「しつけ」を施そうとする傾向がある。これ、会社の上司と部下の関係にも見られる傾向なんだよね。
AKI そ、そう言えばそうかもしれない。
哲雄 鬼のような上司にしじゅう罵倒されながら仕事を覚えた部下は、自分が上司になったとき、やっぱり部下に対して同じような態度をとるんだよね。「オレたちが新人の頃なんてなぁ」とか言いながら、結局、自分も鬼になってしまう。
AKI フーン、それも連鎖するんだ。つまり、
「S的なもの」は連鎖する
ってことなんですね。
哲雄 ウン、虐待も「厳しすぎるしつけ」も連鎖する。そこに「嫌悪」や「憎悪」の感情が育っていればね。
AKI あっ、そうか。そこが「M」との違いなんですね。
哲雄 そのとおり。同じ「厳しいしつけ」を受けても、そこで芽生える感情が「尊敬」や「憧れ」であれば、「M」になり、「嫌悪」や「憎悪」であれば、「S」になる。ちょっとした違いのように見えるけど、この差は大きいよね。
AKI フーン、やっぱり、私は「M」だわ。こないだ、テストやってみたら、「ちょいM」でした。
哲雄 やっぱりね。キミは、なんたかんだと言いながらも、キミを厳しくしつけたお父さんやお母さんを、どこかで尊敬もしてたんだよ。一時は、道を外れたかもしれないけどさ。
AKI 道は……いまでも、ちょっぴり……外れてるかも……。
哲雄 思い切って、もっと外してみれば? 何ならお手伝いしましょうか? ウヒヒ……。
AKI キモッ! 投獄しますよ。
哲雄 ウワッ、今度は「S」だ。みなさん、どうぞメリーなクリスマスを。
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AKI 愛情がどんなものかを知らないまま、育ったんですね。それじゃ、結婚もできませんね。
哲雄 いや、結婚はするんだ。それも、半ば強制的に。この相手がまた、すごかった。
AKI ムチの女王……みたいなお嫁さん?
哲雄 いやいや。結婚したのは、裁判所長官の娘なんだけど、すごかったのは、その母親、つまり義母ですね。この人が、虚栄心の塊のような人で、世間体を気にしちゃ、何かと口やかましいことを言う。
AKI いまで言うと、モンスター・ペアレンツみたいな感じ?
哲雄 かもしれませんね。サドは、このふたりの女性、実の母と義母を通して、「女性的なもの」を嫌悪するようになっていくのです。そして、ついに事件を起こします。
AKI まさか、義母を殺したとか……?
哲雄 いやいや、そんな直接的な事件じゃない。もっと屈折したこと。ジャンヌという娼婦を別宅に連れ込んで、アナル・セックスを強要するんだ。
AKI エッ!? それ、フツーにやるでしょ、いまでは?
哲雄 当時としては、それだけでも不道徳だったんだろうね。しかもサドは、その女に、キリスト像の上に大便をさせたりしたので、大きなスキャンダルとなって、投獄されてしまいます。
AKI それだけで投獄?
哲雄 その時代としては、ショッキングな出来事だったんでしょうね。5年後に出獄するんだけど、今度は、ケレルという女を監禁して、縛り付けてムチで打ったりしたため、またもや投獄。4年後に出獄すると、今度は、薬品やムチを使う乱交騒ぎを起こして、またも投獄。こういうことを繰り返したため、最後は精神病院に収容されて、74歳でこの世を去りました。
AKI いまでは、どちらのご家庭でもフツーにやっていることで、投獄を繰り返したわけですねェ。
哲雄 どちらのご家庭でも…は、やってないでしょ。フツーに…でもないと思うよ。やっぱり、アブノーマルはアブノーマル。で、このサド侯爵が、バスティーユでの獄中生活中に書いた小説、『美徳の不幸』『ソドムの百二十日』が、そのスキャンダラスな内容とともに世界中にセンセーションを巻き起こしたもので、そこから「サディズム」という言葉が生まれた――と、ま、こういうわけですね。
AKI フーン、やっぱりこっちも、幼少期に問題ありなんですねェ。
哲雄 AKIクンは、「虐待の連鎖」という言葉を聞いたこと、ある?
AKI ハイ。虐待を受けて育った子どもが、大きくなると、今度は虐待する側に回る――という話ですよね。
哲雄 ここで言う虐待は、理不尽な暴力ばかりじゃなくて、厳しすぎる「しつけ」なども含まれるんだけど、幼少期にそういう目に遭った子どもは、自分が受けた屈辱を、今度は、他人を傷つけることによって晴らそうとするんだよね。
AKI サドもそうだったわけですね。
哲雄 そう。キミが、幼い頃に受けた「厳しすぎるしつけ」を、今度は私をいじめることによって晴らそうとしているようにね。
AKI だから、いじめてませんって。これは、しつけです!
哲雄 そうそう、そのしつけ。「S」的な要素を持つ人は、その「しつけ」に異常にこだわるところがあるんだよね。
AKI そ、そうなんですか?
哲雄 親から厳しい「しつけ」を受けて、それを嫌悪しながら育った人は、自分が親になったとき、今度は自分の子どもに対して、自分が親から受けたと同じ、あるいはそれ以上の厳しい「しつけ」を施そうとする傾向がある。これ、会社の上司と部下の関係にも見られる傾向なんだよね。
AKI そ、そう言えばそうかもしれない。
哲雄 鬼のような上司にしじゅう罵倒されながら仕事を覚えた部下は、自分が上司になったとき、やっぱり部下に対して同じような態度をとるんだよね。「オレたちが新人の頃なんてなぁ」とか言いながら、結局、自分も鬼になってしまう。
AKI フーン、それも連鎖するんだ。つまり、
「S的なもの」は連鎖する
ってことなんですね。
哲雄 ウン、虐待も「厳しすぎるしつけ」も連鎖する。そこに「嫌悪」や「憎悪」の感情が育っていればね。
AKI あっ、そうか。そこが「M」との違いなんですね。
哲雄 そのとおり。同じ「厳しいしつけ」を受けても、そこで芽生える感情が「尊敬」や「憧れ」であれば、「M」になり、「嫌悪」や「憎悪」であれば、「S」になる。ちょっとした違いのように見えるけど、この差は大きいよね。
AKI フーン、やっぱり、私は「M」だわ。こないだ、テストやってみたら、「ちょいM」でした。
哲雄 やっぱりね。キミは、なんたかんだと言いながらも、キミを厳しくしつけたお父さんやお母さんを、どこかで尊敬もしてたんだよ。一時は、道を外れたかもしれないけどさ。
AKI 道は……いまでも、ちょっぴり……外れてるかも……。
哲雄 思い切って、もっと外してみれば? 何ならお手伝いしましょうか? ウヒヒ……。
AKI キモッ! 投獄しますよ。
哲雄 ウワッ、今度は「S」だ。みなさん、どうぞメリーなクリスマスを。

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