自伝的創愛記〈52〉 青春の館

Vol.52
高2になると、ボクは、下宿を
引っ越した。そこには松山東高
の生徒が3組、女子高東雲学園
の生徒が2人入室していた。
その下宿「花咲荘」は、県立高校である松山東高校の正門前から脇道を20~30メートル入ったところにあった。
2階に7つある個室のうち3部屋には、東校の3人が入室していた。うち一部屋は、高1の姉が中1の弟と同居していた。
残り3部屋のうち、ひとつは空き部屋。あとの2部屋には、ミッションスクール東雲学園の女子が入室していた。
ボクはすべての部屋をノックして、「2号室に越してきた重松です。よろしく」とあいさつして回った。16歳から17歳の1年半を過ごすことになる「青春の館」での生活は、そうして始まった。
貸し間が並ぶ2階へは、通りに面してしつらえられた木戸を開けて、外付けの階段を上って行く。その階段の上り口に、ビニールのクロスを敷いた長テーブルと丸椅子が8つ並んだ食堂がある。賄いを希望する間借り人たちは、そこで、朝食と夕食をとる。
同宿の間借り人たちは、おだかいにフレンドリーだった。ボクもすぐに、彼らと打ち解け、何かあると、おたがいの部屋をノックした。

間借り人同士が仲のいい下宿が、受験勉強の環境としていいか、わるいかと言うと、あまりいいとは言えないかもしれなかった。
きょうは勉強するゾ――と思っていると、だれかが部屋をノックしてくる。勉強のわからないところを教えてくれということもあったが、「トランプやらない?」とか「バドミントンやらない?」と遊びに誘ってくることもあった。ときには、人知れず並んでいることを「実は…」と打ち明けてくることもあった。
ホクは、どんなノックも断らなかった。それで、ホクの部屋は、訪ねてきやすい部屋になった。
訪ねてくるのは、同宿の間借り人たちばかりではなかった。
2年からクラスメートになったA組のクラスの連中や、編入クラス時代のクラスメートたちも、「おーい、いるか?」とやって来る。
草野正夫も、そのひとりだった。
「おまえんとこ、人が集まってくるのォ。落ち着いて勉強できんやろ?」
正夫が心配するとおり、ボクには、落ち着いて教科書を開く時間も、本を読む時間もなかった。
成績1位で入った編入クラス内の成績も、2年に進級する頃には、学年で30位以下に落ちていた。
2階に7つある個室のうち3部屋には、東校の3人が入室していた。うち一部屋は、高1の姉が中1の弟と同居していた。
残り3部屋のうち、ひとつは空き部屋。あとの2部屋には、ミッションスクール東雲学園の女子が入室していた。
ボクはすべての部屋をノックして、「2号室に越してきた重松です。よろしく」とあいさつして回った。16歳から17歳の1年半を過ごすことになる「青春の館」での生活は、そうして始まった。
貸し間が並ぶ2階へは、通りに面してしつらえられた木戸を開けて、外付けの階段を上って行く。その階段の上り口に、ビニールのクロスを敷いた長テーブルと丸椅子が8つ並んだ食堂がある。賄いを希望する間借り人たちは、そこで、朝食と夕食をとる。
同宿の間借り人たちは、おだかいにフレンドリーだった。ボクもすぐに、彼らと打ち解け、何かあると、おたがいの部屋をノックした。

間借り人同士が仲のいい下宿が、受験勉強の環境としていいか、わるいかと言うと、あまりいいとは言えないかもしれなかった。
きょうは勉強するゾ――と思っていると、だれかが部屋をノックしてくる。勉強のわからないところを教えてくれということもあったが、「トランプやらない?」とか「バドミントンやらない?」と遊びに誘ってくることもあった。ときには、人知れず並んでいることを「実は…」と打ち明けてくることもあった。
ホクは、どんなノックも断らなかった。それで、ホクの部屋は、訪ねてきやすい部屋になった。
訪ねてくるのは、同宿の間借り人たちばかりではなかった。
2年からクラスメートになったA組のクラスの連中や、編入クラス時代のクラスメートたちも、「おーい、いるか?」とやって来る。
草野正夫も、そのひとりだった。
「おまえんとこ、人が集まってくるのォ。落ち着いて勉強できんやろ?」
正夫が心配するとおり、ボクには、落ち着いて教科書を開く時間も、本を読む時間もなかった。
成績1位で入った編入クラス内の成績も、2年に進級する頃には、学年で30位以下に落ちていた。

やっと机の前でひとりになれるのは、夜10時を過ぎる頃だった。
「さて、ひと勉強しておくか」と、遅れている数ⅡBの教科書を開き、トランジスタラジオで深夜放送を聞きながら、英語の読本を開いた。
そんなある日、ドアをコンコンと叩く音がした。
「ハイ」と返事をすると、「3号室の正岡です」と秘めやかな声がした。
ボクの2号室とは、共同トイレと流し場を隔てて隣り合う角部屋に住んでいるミッションスクールの女の子だった。
ドアを開けると、「ちょっと英語の構文でわからんところがあって……」と言う。
「どうぞ」と、ボクは彼女を部屋へ招き入れた。少し、胸がドキドキしていた。(続く)
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