頭のいい「浮気」の問い詰め方-前編

「どうも怪しい…」と、夫の浮気を問い詰めようとする妻。
どこにでもある会話ですが、こんな取り調べでは、
ノラリクラリ…とかわされて終わり。問題点を探ってみます。
愛の会話力レッスン 第16回(改訂版)
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今回は、ちょっと趣向を変えて、「夫の浮気」を問い詰める妻と、問い詰められる夫の会話をご紹介しましょう。
まずは、被疑事実からご説明――。
状況証拠
①夫の帰宅が深夜2時。「取引先と飲んでいた」と言うが、そのわりに酒のニオイがあまり強くなかった。
②夜10時に「帰り、何時頃になる?」とメールを入れたが、レスがなかった。←いつもなら、即、返事が返ってくるのに、不自然である。
物証
①夫のスーツのポケットから取り出したハンカチに、かすかにルージュをぬぐった跡が残っていた。色はバイオレット。微量ではあるが、パール成分も検出された。
②靴下の右足につけておいた目印(1箇所だけ、目立たないように赤い糸を縫い付けておいた)が、帰宅した夫の左足から発見された。
以上の証拠から、被告人の妻は、被告人の浮気を強く疑うにいたり、翌朝、朝食の席に着いた被告人に、事の真偽を問いただすこととなった。
以下は、そのやりとりである。
まずは、被疑事実からご説明――。

①夫の帰宅が深夜2時。「取引先と飲んでいた」と言うが、そのわりに酒のニオイがあまり強くなかった。
②夜10時に「帰り、何時頃になる?」とメールを入れたが、レスがなかった。←いつもなら、即、返事が返ってくるのに、不自然である。

①夫のスーツのポケットから取り出したハンカチに、かすかにルージュをぬぐった跡が残っていた。色はバイオレット。微量ではあるが、パール成分も検出された。
②靴下の右足につけておいた目印(1箇所だけ、目立たないように赤い糸を縫い付けておいた)が、帰宅した夫の左足から発見された。
以上の証拠から、被告人の妻は、被告人の浮気を強く疑うにいたり、翌朝、朝食の席に着いた被告人に、事の真偽を問いただすこととなった。
以下は、そのやりとりである。
会話例1 良妻賢母妻 vs たぬき夫
妻 取引先と飲んでたなんてウソばっかり言って。これは何ッ!
妻、夫の目の前に、ルージュの付着したハンカチを差し出す。
夫 ハンカチだろ? おまえにはこれが、トイレット・ペーパーに見えるか?
夫、笑ってとぼける。相当なタヌキである。
妻 ふざけないで! そこに赤いものがくっついてるでしょ!!
夫、ハンカチを手にとって、ためつすがめつしたあとで…
夫 こりゃ、口紅だなぁ、あのときの……ブヒヒヒ……。
妻 あ、あのときって……あなたッ! 何がおかしいのよ?
夫 うちの課のユミちゃんのら~。それ、洗わないで、とっといて。
わざとニヤついて見せる。この夫の演技力は、オスカーものである。
妻 な、何がおかしいのよッ!
夫 いや、ユミちゃんがね、「先輩、これ、知ってます? めっちゃおいしいんですよ~」って、紙パック入りのドリンク、自分の飲みかけのを、ストローさしたまま渡してくれたから、ひと口飲ませてもらったわけよ。でもさ、そのまま返すのわるいから、飲んだあと、ストローの口をハンカチで拭いて返してあげたの。そうしろって教えたの、おまえじゃなかったっけ?
妻 そ、そうだけど……じゃ、じゃさ、どうして靴下が左右逆になってたのよッ!
夫 く、靴下~!? なんじゃ、それ?
妻 帰ってきたとき、靴下が左右逆になってたの。目印つけてたから、わかるのよ。どこで、靴下脱いだのか、私にわかるように……。
夫 会社。
妻 エッ!?
夫 知らなかった? オレ、いつも会社じゃ、靴も靴下も脱いで、サンダルに履き替えてんだよ。水虫だし……。それより、何だい、その目印っての?
妻 い、いや……それは……。
妻 取引先と飲んでたなんてウソばっかり言って。これは何ッ!
妻、夫の目の前に、ルージュの付着したハンカチを差し出す。
夫 ハンカチだろ? おまえにはこれが、トイレット・ペーパーに見えるか?
夫、笑ってとぼける。相当なタヌキである。
妻 ふざけないで! そこに赤いものがくっついてるでしょ!!
夫、ハンカチを手にとって、ためつすがめつしたあとで…
夫 こりゃ、口紅だなぁ、あのときの……ブヒヒヒ……。
妻 あ、あのときって……あなたッ! 何がおかしいのよ?
夫 うちの課のユミちゃんのら~。それ、洗わないで、とっといて。
わざとニヤついて見せる。この夫の演技力は、オスカーものである。
妻 な、何がおかしいのよッ!
夫 いや、ユミちゃんがね、「先輩、これ、知ってます? めっちゃおいしいんですよ~」って、紙パック入りのドリンク、自分の飲みかけのを、ストローさしたまま渡してくれたから、ひと口飲ませてもらったわけよ。でもさ、そのまま返すのわるいから、飲んだあと、ストローの口をハンカチで拭いて返してあげたの。そうしろって教えたの、おまえじゃなかったっけ?
妻 そ、そうだけど……じゃ、じゃさ、どうして靴下が左右逆になってたのよッ!
夫 く、靴下~!? なんじゃ、それ?
妻 帰ってきたとき、靴下が左右逆になってたの。目印つけてたから、わかるのよ。どこで、靴下脱いだのか、私にわかるように……。
夫 会社。
妻 エッ!?
夫 知らなかった? オレ、いつも会社じゃ、靴も靴下も脱いで、サンダルに履き替えてんだよ。水虫だし……。それより、何だい、その目印っての?
妻 い、いや……それは……。
被告人、逆転無罪。
妻は、以後、夫から「目印女」呼ばわりされ、毎朝、「きょうの目印は何?」とからかわれることに。
さて、この会話例も、いつものように、「エゴグラム」を使った交流図にしてみましょう。
「エゴグラム」と「交流分析」については、このシリーズの第13回 『心理学が見つけた、絶対、ケンカにならない話法』 で詳しく解説していますので、そちらをご参照ください。ここでは簡単に、図の見方だけ解説しておきます。
【図の見方】
「エゴグラム」では、自我の状態を大きく次の3つに分けて考えます(ほんとは5つあるのですが、ここでは3つに簡略化して考えます)。
P=親の自我……相手を子どものように支配したり、面倒をみたりしようとする自我の状態。→相手が素直に耳を傾け、言うことを聞いてくれることを期待。
A=自立したおとなの自我……合理的、客観的に物事を判断する自我の状態。→相手も冷静で、客観的な反応を示してくれることを期待。
C=子どもの自我……相手に依存したり、わがままを言って甘えたり、順応して「いい子」になろうとする自我の状態。→相手がわがままや願いを聞き入れてくれるか、子ども同士として共感し合うことを期待。
図では、話し手が、自分のどんな自我から相手のどんな自我に向けて語りかけているかを「→」で示しています。「P→C」とあれば、その人は自分の「親の自我」を使って、相手の「子どもの自我」に向けて語りかけている――ということになるわけです。
「エゴグラム」では、自我の状態を大きく次の3つに分けて考えます(ほんとは5つあるのですが、ここでは3つに簡略化して考えます)。



図では、話し手が、自分のどんな自我から相手のどんな自我に向けて語りかけているかを「→」で示しています。「P→C」とあれば、その人は自分の「親の自我」を使って、相手の「子どもの自我」に向けて語りかけている――ということになるわけです。

さて、この会話例では、妻は「親の自我=P(批判的な親の自我=CPです)」を使って、夫を責めようとしています。
それに対して夫は、無邪気な「子どもの自我=C(自由な子どもの自我=FC)」を使い、同じ「子ども」に向かって話すように話すことで、そのホコ先を交わしています。
しかし、この夫には、別の本心があります。言葉にはしないので、会話の中では隠されたまま(←これを「メタ・メッセージ」と言います)ですが、図では、このメッセージも破線で示しておきました。表面の会話では、大きな衝突は起こっていませんが、このメタ・メッセージは、妻のメッセージと完全に交差していて、双方とも、心の中にストレスを溜め込むことになります。
つまり、こういう会話の仕方では、問題はほんとうには解決しない、ということです。
もう一例、挙げておきましょう。
会話例2 依存型妻 vs 養護型夫
妻 ねェ、ケンちゃん(夫の名前)、私に何か、隠してることない?
通常はここで「何もないよ」と答えるところだが、
養護型の夫は、妻を子ども扱いして、まともに答えない。
夫 い~っぱいあるよ。
妻 エーッ!? いっぱいあるの?
夫 ミーちゃん(妻の名前)が知らないほうがいいことが、いっぱいあるからね、世の中には。
妻 私を悲しませるようなことも……? ケンちゃんは、私を悲しませるようなことしてない?
夫 してない。
妻 じゃ、これも、私を悲しませるようなことじゃないのね?
妻、ハンカチを夫の前にそっと差し出し、口紅のついた箇所を指差す。
夫 ハハ……それはね……(と、前例と同じような説明をする夫)。
妻 もうひとつだけ訊いていい? きのう、どこかで靴下脱いだ?
夫 オーッ、そうだ。今度、ミーちゃんも行ってみるといいよ。会社の近くに足湯マッサージができてさぁ。ほんと、疲れが吹っ飛ぶんだ。30分1500円だよ、安いでしょ。
妻 ほんとに、ほんとに、私を悲しませるようなこと、してないのね?
夫、うなずきながら、妻の手を握り締め、目に力を込めて言う。
夫 ミーちゃん、ボクを信じて。どんなことがあっても、ボクは、ミーちゃんを悲しませるようなことだけはしないから。
妻 ねェ、ケンちゃん(夫の名前)、私に何か、隠してることない?
通常はここで「何もないよ」と答えるところだが、
養護型の夫は、妻を子ども扱いして、まともに答えない。
夫 い~っぱいあるよ。
妻 エーッ!? いっぱいあるの?
夫 ミーちゃん(妻の名前)が知らないほうがいいことが、いっぱいあるからね、世の中には。
妻 私を悲しませるようなことも……? ケンちゃんは、私を悲しませるようなことしてない?
夫 してない。
妻 じゃ、これも、私を悲しませるようなことじゃないのね?
妻、ハンカチを夫の前にそっと差し出し、口紅のついた箇所を指差す。
夫 ハハ……それはね……(と、前例と同じような説明をする夫)。
妻 もうひとつだけ訊いていい? きのう、どこかで靴下脱いだ?
夫 オーッ、そうだ。今度、ミーちゃんも行ってみるといいよ。会社の近くに足湯マッサージができてさぁ。ほんと、疲れが吹っ飛ぶんだ。30分1500円だよ、安いでしょ。
妻 ほんとに、ほんとに、私を悲しませるようなこと、してないのね?
夫、うなずきながら、妻の手を握り締め、目に力を込めて言う。
夫 ミーちゃん、ボクを信じて。どんなことがあっても、ボクは、ミーちゃんを悲しませるようなことだけはしないから。
被告人、推定無罪。
ふたりは、以前にもまして堅い絆で結ばれましたとさ。めでたし、めでたし。
この会話も、図にしてみましょう。

この会話では、妻は「子どもの自我=C」を使い、夫の「親の自我=P」に向けて、「私を悲しませるようなこと、してないよね」と問いかけ、夫も、「ボクを信じて。キミを悲しませるようなことは絶対にしないから」と、「P→C」の答えを返しています。
表面上は、おたがいに相補し合う会話が成立していて、何の問題もなさそうですが、ここにもメタ・メッセージが隠されています。「危ない、危ない。こいつ、油断がならないぞ」という本心で、このメタ・メッセージは、やはり、妻のメツセージと交差しています。
というわけで、どちらの夫も無罪放免とはなったのですが、問題の解決は、隠蔽されたままで終わってしまいました。
危機感を感じた夫が、その後、身を律して、行動を改めたか、もっと巧妙に立ち回るようになったかは、知る由もありません。
いずれにしても、こういう問い詰め方ではあまり効果がない――ということだけは、ハッキリしました。
では、もっと頭のいい妻なら、どうするか?
次回、この続きをお届けすることにしましょう。


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