自伝的創愛記〈44〉 赤面の疾走

Vol.44
短パンから尻の肉をはみ出させた
ピンちゃんが見守る中、ボクは
クラス対抗リレーを走った。その
走りを見て、また、彼女が――。
体育祭の日も、ピンちゃんのヒップは、短パンの縁から尻の肉をはみ出させていた。
他の女の子たちは、ほとんどがブルーマーを穿いていた。裾をゴムで絞ってゆったりとヒップを覆う女子特有の体操着。当時、ほとんどの中学校で、女子の体操着として使われていたのだが、ボクは、おむつのように見えなくもないその体操着が、あまり好きではなかった。
しかし、ピンちゃんはそのブルーマーではなく、ピッチリとした短パンを穿いていた。バレーボール部の女子や陸上部の女子など、運動部に所属する活発系の女子にも、何人か、短パン姿がいた。
開会式の行進では、ピンちゃんの揺れるヒップは、ボクの2列前を歩いていた。軽快な行進曲に乗って、彼女が右足を踏み出すと左の尻の肉が、左の足を踏み出すと右の尻の肉が、ショートパンツの縁からムニュッとはみ出して、ももの上部に肉色の丘を作る。ボクはドキドキしながら彼女のヒップを目で追った。

騎馬戦、棒倒し……と、お決まりの運動会演目が進行して、クラス対抗リレーの時間になった。1走は1位と頭差の2位でバトンを2走に渡した。しかし、2走のランナーが後続の2人に抜かれて、ボクがバトンを受けたときには、順位は4位に落ちていた。
「クソーッ、抜いてやる」
ボクは、バトンを手にすると、前を走る3位の背中を必死で追った。第2コーナーを回る頃には、ボクは3位に並びかけ、ついにその体の前に出た。2位の走者の背中も見えて来た。その差、2メートル。もうひと頑張りすれば、2位に上がれるゾ。
そう思って、ピッチを一段上げたとき、耳にタッタッという音が響いて来た。リレーゾーンでは、ボクの後ろの5位にいたはずのB組の走者が、すぐ後ろに迫っていた。2位に並びかける勢いだったボクの後ろから、そいつはあっと言う間にボクに並んだと思うと、ボクを抜き去り、さらに前を行く2位をも抜き去っていった。せっかく3位まで上げた順位が、再び、4位に落ちてしまった。
「あ~あ」「何だよ」という声が聞こえて来るようだった。その中から「ガンバって」と叫ぶ声も聞こえてきた。
しかし、ボクの足は、3コーナーにかかるところでいっぱいいっぱいになっていた。追いつきそうだった前の走者との距離は、みるみる離れていった。
結局、ボクは、バトンを受けたときと同じ4位で、4走にバトンを渡した。
他の女の子たちは、ほとんどがブルーマーを穿いていた。裾をゴムで絞ってゆったりとヒップを覆う女子特有の体操着。当時、ほとんどの中学校で、女子の体操着として使われていたのだが、ボクは、おむつのように見えなくもないその体操着が、あまり好きではなかった。
しかし、ピンちゃんはそのブルーマーではなく、ピッチリとした短パンを穿いていた。バレーボール部の女子や陸上部の女子など、運動部に所属する活発系の女子にも、何人か、短パン姿がいた。
開会式の行進では、ピンちゃんの揺れるヒップは、ボクの2列前を歩いていた。軽快な行進曲に乗って、彼女が右足を踏み出すと左の尻の肉が、左の足を踏み出すと右の尻の肉が、ショートパンツの縁からムニュッとはみ出して、ももの上部に肉色の丘を作る。ボクはドキドキしながら彼女のヒップを目で追った。

騎馬戦、棒倒し……と、お決まりの運動会演目が進行して、クラス対抗リレーの時間になった。1走は1位と頭差の2位でバトンを2走に渡した。しかし、2走のランナーが後続の2人に抜かれて、ボクがバトンを受けたときには、順位は4位に落ちていた。
「クソーッ、抜いてやる」
ボクは、バトンを手にすると、前を走る3位の背中を必死で追った。第2コーナーを回る頃には、ボクは3位に並びかけ、ついにその体の前に出た。2位の走者の背中も見えて来た。その差、2メートル。もうひと頑張りすれば、2位に上がれるゾ。
そう思って、ピッチを一段上げたとき、耳にタッタッという音が響いて来た。リレーゾーンでは、ボクの後ろの5位にいたはずのB組の走者が、すぐ後ろに迫っていた。2位に並びかける勢いだったボクの後ろから、そいつはあっと言う間にボクに並んだと思うと、ボクを抜き去り、さらに前を行く2位をも抜き去っていった。せっかく3位まで上げた順位が、再び、4位に落ちてしまった。
「あ~あ」「何だよ」という声が聞こえて来るようだった。その中から「ガンバって」と叫ぶ声も聞こえてきた。
しかし、ボクの足は、3コーナーにかかるところでいっぱいいっぱいになっていた。追いつきそうだった前の走者との距離は、みるみる離れていった。
結局、ボクは、バトンを受けたときと同じ4位で、4走にバトンを渡した。

リレーが終わると、昼休みだ。弁当を食べるために教室に戻ると、ピンちゃんと目が合った。ボクをチラと見た目が、クスッ……と笑ったように見えた。
ボクの腑甲斐ない走りを笑ったのかと思ったのが、笑った理由は、別にあった。
「重松クン、真っ赤な顔して走りよったよ。ゆでたタコみたいやった」
エッ……と思った。自分が走っているときの顔色なんゾ、それまで気にしたこともなかった。そんな赤い顔で走っているのか――と、少し、ショックでもあった。
「松ちゃん、息止めて走ってるんとちゃうか?」
横から笠井クンが口を出した。クラスでは唯一、ボクを遊びに誘ってきたりする男子だったが、その指摘を聞いて、ボクはハッ……となった。
そう言えば、短い距離を走るときのボクは、呼吸を止めて走っていることがある。特にだれかを抜こうと足の回転を上げているときなどには、息をしていないこともある。
ピンちゃんは、そんなときのボクの顔を「ゆでたタコのようだ」と笑ったのだろう。ピンちゃんに笑われたのは、それが二度目だった。
最初は、弁論大会の弁論を校内放送で流したときの「鼻すすり」。そして、今回のリレー。彼女にとってボクは、「笑うべき存在」になってしまったのかもしれない。そう思うと、ボクは自分自身が、彼女に対して少し恥ずかしくなった。
しかし、ピンちゃんの次の言葉は、そんなボクの恥ずかしさを吹き飛ばしてしまった。
「私、ガンバってェ~て、叫んだんよ。聞こえんかった?」
そうか、3コーナーで聞こえた「ガンバってェ~」は、ピンちゃんの声だったのか。
それに気づいた瞬間、ボクのピンちゃんへの思慕のメーターは、グイーンと上がって振り切れた。
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