国土は処理できない「私権」の「墓場」となる

凝りもせずに売りに出される新築マンション。しかし、その30%が売れ残り、賃貸物件の空室率も上昇の一途。このままだと、日本は、処理できない「私権」の「墓場」と化してしまいます。今回は、そんなシリアスな話を――。
Talker
シランケン・重松シュタイン 自ら著作を手がけるエッセイスト&作家。当ブログの管理人です。旧ペンネーム/長住哲雄。
AKI エステ嬢として働きながら作家を目指すアラサーの美女。
AKI マイホーム、マイホーム……と、大手ディベロッパーが競ってマイホームを無売り出した結果、この国の国土は「小さな私権」で埋め尽くされていった。それこそが問題だ――と、前回は、そういう話をしたところで終わったんでしたね?
シランケン ハイ、そうでした。何が問題なのか? 今回は、そこらへんを探ってみたいと思います。私がいちばん問題だと思っているのは、この「私権」なるものの正体が、「利用権」ではなく、「所有権」だというところです。実はね、AKIクン、この地球は、みんなが思っているほど広くはない。人口1人あたり、どれくらいあるか、ご存じですか?
AKI エーッ、そんな計算、したことないです。
シランケン ごく単純な計算をしてみましょうか。地球の陸地面積は約149億ヘクタールですが、これを地球の人口65億人で割ると、人口1人あたりの面積は約2.3ヘクタールになります。しかし、この陸地面積のうち、植物群の生育に適した樹林気候域面積、すなわち人間の生活に適した面積は、約55%。1人あたりに直すと、1.23ヘクタールになります。しかも、30年後の2050年には、地球の人口は90億に達すると見られています。すると、この面積はさらに小さくなって、
1人あたり0.9ヘクタール。95メートル×95メートル、
小学校の運動場程度の広さしかなくなります。
AKI けっこう広いじゃありませんか?
シランケン バカを言っちゃあいけません。この面積の土地で、人は、1年間の生存に必要な穀物を育て、野菜や果物を栽培し、牛や豚や鶏を飼い、なおかつ生存に必要な酸素を得るための樹林を育てなくてはならないんですよ。
AKI ワッ、大変! そう考えると、狭いですよね、この地球も?
シランケン そう、狭いんです。その狭い「地球という不動産」を「私権」で切り刻んでしまっていいのか? しかも、その「私権」が正しく使われているかと言うと、そうでもない。特に日本の場合はね……。
AKI 日本の場合は……? それ、どういうことです?
シランケン せっかく手に入れた「私権」としての「所有権」が、正しく使われてないということです。前にこの話をしたときには、その「所有権」を「値上がり」目的に所有する人たちがいて、そんな人たちの中には、「民泊」目的の中国資本に売り渡す人たちもいる、という話をしました。しかし、コロナ騒動でそのネライは、見事にハズレとなりましたがね。
AKI あら、残念。
シランケン しかしね、AKIクン、そういうアテはずれは、欲に走った末に本人たちが負う損失ですから、知ったことじゃない。問題は、その結果、起こることです。
AKI 何が起こったんです?
シランケン 空室率の上昇です。令和2年度を見てみると、
マンションの新規販売戸数は27,223戸でしたが、同年末の在庫数は8,305戸。
なんと30%が売れ残っていたことになります。
賃貸住宅に関しても、東京23区で16.4%が空室(2018年度)。
AKI 大家さん、大変ですねェ。家賃収入で、老後は安泰なんて思ってた人たちも、アテが外れたんじゃありませんか?
シランケン でしょうね。しかし、そもそも、老後収入のためにアパートを建てるっていう発想が、おかしい。おそらくは、「相続税対策のために、借金してアパートに建て替えておくといいですよ」てなことを不動産会社などに吹き込まれたんでしょうが、少子化で人口減少が続く日本の社会で、「アパート経営で老後は安泰」などと考えるほうがおかしい。
AKI 戸建て住宅に関してはどうなんですか?
シランケン 戸建ての場合は「空室率」ではなく「空き家率」になるんですが、こちらは全国で13.5%と、やっぱり増加傾向にあります。総務省の発表では、2018年度でその数846万戸。
AKI そういう空き家はどうなるんです?
シランケン 賃貸や売却に回そうとするんですが、「借り手」も「買い手」も見つからないまま、放置されていると、やがてこうした物件は腐朽・破損が進んでいきます。そうして腐朽・破損の進んだ物件が、全国で200万戸にも及ぶ。こうなると、それらの住宅は、もはや何にも利用できない「社会のゴミ」と化していきます。
シランケン ハイ、そうでした。何が問題なのか? 今回は、そこらへんを探ってみたいと思います。私がいちばん問題だと思っているのは、この「私権」なるものの正体が、「利用権」ではなく、「所有権」だというところです。実はね、AKIクン、この地球は、みんなが思っているほど広くはない。人口1人あたり、どれくらいあるか、ご存じですか?
AKI エーッ、そんな計算、したことないです。
シランケン ごく単純な計算をしてみましょうか。地球の陸地面積は約149億ヘクタールですが、これを地球の人口65億人で割ると、人口1人あたりの面積は約2.3ヘクタールになります。しかし、この陸地面積のうち、植物群の生育に適した樹林気候域面積、すなわち人間の生活に適した面積は、約55%。1人あたりに直すと、1.23ヘクタールになります。しかも、30年後の2050年には、地球の人口は90億に達すると見られています。すると、この面積はさらに小さくなって、
1人あたり0.9ヘクタール。95メートル×95メートル、
小学校の運動場程度の広さしかなくなります。
AKI けっこう広いじゃありませんか?
シランケン バカを言っちゃあいけません。この面積の土地で、人は、1年間の生存に必要な穀物を育て、野菜や果物を栽培し、牛や豚や鶏を飼い、なおかつ生存に必要な酸素を得るための樹林を育てなくてはならないんですよ。
AKI ワッ、大変! そう考えると、狭いですよね、この地球も?
シランケン そう、狭いんです。その狭い「地球という不動産」を「私権」で切り刻んでしまっていいのか? しかも、その「私権」が正しく使われているかと言うと、そうでもない。特に日本の場合はね……。
AKI 日本の場合は……? それ、どういうことです?
シランケン せっかく手に入れた「私権」としての「所有権」が、正しく使われてないということです。前にこの話をしたときには、その「所有権」を「値上がり」目的に所有する人たちがいて、そんな人たちの中には、「民泊」目的の中国資本に売り渡す人たちもいる、という話をしました。しかし、コロナ騒動でそのネライは、見事にハズレとなりましたがね。
AKI あら、残念。
シランケン しかしね、AKIクン、そういうアテはずれは、欲に走った末に本人たちが負う損失ですから、知ったことじゃない。問題は、その結果、起こることです。
AKI 何が起こったんです?
シランケン 空室率の上昇です。令和2年度を見てみると、
マンションの新規販売戸数は27,223戸でしたが、同年末の在庫数は8,305戸。
なんと30%が売れ残っていたことになります。
賃貸住宅に関しても、東京23区で16.4%が空室(2018年度)。
AKI 大家さん、大変ですねェ。家賃収入で、老後は安泰なんて思ってた人たちも、アテが外れたんじゃありませんか?
シランケン でしょうね。しかし、そもそも、老後収入のためにアパートを建てるっていう発想が、おかしい。おそらくは、「相続税対策のために、借金してアパートに建て替えておくといいですよ」てなことを不動産会社などに吹き込まれたんでしょうが、少子化で人口減少が続く日本の社会で、「アパート経営で老後は安泰」などと考えるほうがおかしい。
AKI 戸建て住宅に関してはどうなんですか?
シランケン 戸建ての場合は「空室率」ではなく「空き家率」になるんですが、こちらは全国で13.5%と、やっぱり増加傾向にあります。総務省の発表では、2018年度でその数846万戸。
AKI そういう空き家はどうなるんです?
シランケン 賃貸や売却に回そうとするんですが、「借り手」も「買い手」も見つからないまま、放置されていると、やがてこうした物件は腐朽・破損が進んでいきます。そうして腐朽・破損の進んだ物件が、全国で200万戸にも及ぶ。こうなると、それらの住宅は、もはや何にも利用できない「社会のゴミ」と化していきます。
AKI エーッ、それ、大変じゃないですか?
シランケン 大変ですよ。放っておくと、この国の国土は、そうして「ゴミ化」した「私権」の墓場と化してしまいます。こりゃ大変だというんで、2015年には「空き家対策特別措置法」が成立しました。
AKI あ、それ、何となく覚えてます。このまま放置しておくと危険と判断された空き家に対して、市区町村長が立ち入り調査などができるようにしたんですよね?
シランケン 所有者が了解しなくても立ち入り調査ができるようにしました。その結果、その空き家が「特定空き家」と認定されると、所有者に対して、「除却」や「修繕」を命じることができるようになりました。従わない場合には「過料」が課せられ、それでも改善されない場合には、「行政代執行」が行えるようにもなりました。しかしねェ……。
AKI 何か問題があったんですね?
シランケン 実はね、そういう空き家に関しては、所有者が不明だったり、いても連絡先がわからなくなっていたり、すでに死んでいたりする場合もある。あるいは、所有権がいくつにも分割相続されていて、その全員と連絡をとることがむずかしかったりする。
AKI そうなると、「私権」は「幽霊化」してしまいますよね?
シランケン 同じことが、農地や墓地でも起こっているんですよ。これね、付け焼刃で片づけられるような問題じゃない。日本の「土地所有権」を根本的に見直さない限り、この問題は解決しません。
AKI 根本的に――ですか? シランケンには、何か、お考えがあるんですね?
シランケン ハイ、あります。でも、それを言うと、長くなりますので……。
AKI では、次回、じっくりとお聞きすることにしましょう。
筆者の最新刊官能小説です!
盆になると、男たちがクジで「かか」を交換し合う。
明治半ばまで、一部の地域で実際に行われていた
「盆かか」と呼ばれる風習。本作品は、その風習を
題材に描いた官能フィクションです。
与一の新婚の妻・妙も、今年は、クジの対象になる。
クジを引き当てたのは、村いちばんの乱暴者・権太。
権太との三日間を終えた妙は、その夜から、
様子が変わった。その変化に戸惑う与一は、
ある日、その秘密を知った??。
筆者初の官能作品、どうぞお愉しみください。
2020年9月発売 定価:200円 発行/虹BOOKS
⇒Kindle でお読みになる方は、ここをクリック。
⇒BOOK☆WALKER からお読みになる方は、ここをクリック。
既刊本もどうぞよろしく 写真をクリックしてください。






明治半ばまで、一部の地域で実際に行われていた
「盆かか」と呼ばれる風習。本作品は、その風習を
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与一の新婚の妻・妙も、今年は、クジの対象になる。
クジを引き当てたのは、村いちばんの乱暴者・権太。
権太との三日間を終えた妙は、その夜から、
様子が変わった。その変化に戸惑う与一は、
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管理人は常に、下記3つの要素を満たせるように、脳みそに汗をかきながら、記事をしたためています。
あなたの押してくださったポイントを見ては、喜んだり、反省したりの日々です。
どうぞ、正直な、しかしちょっぴり愛情のこもった感想ポチをお送りください。よろしくお願いいたします。



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