「方向音痴」は女の甲斐性?

女には「迷子」になって男を心配させる本能が、
男にはそんな「迷子」を探し出してやりたい
という「シェパード本能」があります。そんな
本能同士が出会うと、ふたりの間には――。
M は「男からのモテ技」、 W は「女からのモテ技」、 N は「男女共通のモテ技」。
今回は、私の友人Kが、職場のスタッフS美と道ならぬ恋にはまってしまった経緯をご紹介しようと思います。
そのきっかけが、なんと、「方向音痴」。
Kの話によると、そのいきさつは、こうでした――。
迷っては泣きそうな声で電話をかけてくる彼女がかわいくて……
私、どこにいるのか、わからなくなっちゃって……。
S美は、よく、泣きそうな声で電話をかけてきた。
これ、帰りにN社のTさんのところに届けといてくれる?
と、地図まで渡して頼んであるのに、S美はその地図が「まったく読めない女」だった。
S美は、Kのオフィスにアシスタントとして採用された女の子だった。
センスはいいし、性格も明るくて取引先にも好かれるし、それに笑顔のかわいいキュートなタイプでもあったので、「経験者優遇」であったにもかかわらず、Kの一存で、専門学校を出たばかりの彼女に白羽の矢が立った。
実際、仕事の呑み込みも早く、Kの選択は間違っていなかったのだが、唯一のと言っていい弱点が、「方向音痴」だった。
そこから何が見える?
そのビルは、いま、キミのどっち側に見えてる?
じゃ、その角を右に曲がって……。
電話、切らずにいるから、見えたら報告して。
電話口で、頭の中の3D画像を回転させながら説明して、しばらく待っていると、
あっ、ありましたぁ~!
と、とびきりの明るい声が、電話の向こうから飛び込んでくる。
最初の半泣きの声とはあまりにも対照的な、明るい声。それがあるので、怒る気にもなれなかった。
そのきっかけが、なんと、「方向音痴」。
Kの話によると、そのいきさつは、こうでした――。


S美は、よく、泣きそうな声で電話をかけてきた。

と、地図まで渡して頼んであるのに、S美はその地図が「まったく読めない女」だった。
S美は、Kのオフィスにアシスタントとして採用された女の子だった。
センスはいいし、性格も明るくて取引先にも好かれるし、それに笑顔のかわいいキュートなタイプでもあったので、「経験者優遇」であったにもかかわらず、Kの一存で、専門学校を出たばかりの彼女に白羽の矢が立った。
実際、仕事の呑み込みも早く、Kの選択は間違っていなかったのだが、唯一のと言っていい弱点が、「方向音痴」だった。




電話口で、頭の中の3D画像を回転させながら説明して、しばらく待っていると、

と、とびきりの明るい声が、電話の向こうから飛び込んでくる。
最初の半泣きの声とはあまりにも対照的な、明るい声。それがあるので、怒る気にもなれなかった。

そうして半年、1年……が過ぎ、S美は、貴重な戦力として育っていった。
やがて、クライアントとの折衝などにもKと同席するようになり、そういう席では、若手としてズバズバ、ものを言うようになって、それで先方の意思が決定する――ということも、珍しくなくなった。
S美は有頂天になった。
KとS美は、オフタイムをしばしば一緒に過ごすようになった。酒を飲み、食事をとりながら、仕事のプランを練ることもあった。

いつの間にか、いっぱしのクリエーター気取りの口をきくようになったS美を、頼もしくもほほえましくも見ていたつもりだったのだが――。
それは、ある案件で、KとS美の意見が食い違い、激しく議論したときのことだった。

激昂したKが、思わず声を荒げると、S美の態度が急変した。

言うなり、S美は立ち上がり、店を飛び出してしまったのだ。
外は、霧のような雨。S美は傘も持たずに飛び出して、止める間もなく、通りの向こうへ消えてしまった。

やれやれ、私としたことが、おとなげもないことを言ってしまった――。
後悔しながら、残った酒をちびちびとなめ、さて、そろそろ……と、Kが腰を上げかけたときだった。
胸のポケットの携帯が、いきなり震え始めた。見ると、S美からだった。

例の泣きそうな声だった。
いつものように、周囲に見えるものを聞き、大方の見当をつけて探しに行くと、S美は、いくつも通りを隔てたビル街の、大手都市銀行の支店の前で、ビル陰に身を隠すようにして、降りかかる雨を避けていた。
その姿は、入社当初、「どこにいるのか、わからなくて……」と、泣き出しそうな声で電話をかけてきた、あの頼りなげな子羊そのままだった。
Kがそっと傘を差し出すと、S美は、その傘の中に飛び込んできた。

雨に濡れた肩を震わせるS美がいとおしく感じられ、Kは、その肩を抱き寄せ、そして唇を合わせた。
肉感的なS美の唇は、Kの唇が触れたとたんに、激しく息の音をもらしながら、Kの口に吸い付き、熱い温度の舌を自分から差し入れてきた。傘で身を隠すようにしながら、Kたちは、雨のビル街で、たがいの体をむさぼり合った。
KとS美は、越えてはいけない一線を、こうして越えた。
Kには、妻もいれば、子どももいる。
Kの妻は、S美とは対照的な女だ。地図だって、Kよりしっかり読める。ショッピング・センターなどに行っても、複雑な通路にまごつくKを、「ホラ、こっち。まったくぼやっとしないでよ」と、叱りつけるような女だ。
それはそれで心地よく、Kはしっかり者の妻に叱り飛ばされるバカな亭主を、これからも演じ続けようと思っている。
S美とKの関係は、いまも続いている。
ささいなことで言い争いになると、いまも、S美は迷子になる。この迷える子羊も、放ってはおけない――。

「迷う」のは、「探し出してほしい」からかもしれません
「迷える子羊衝動」というものが、女性にはある――と、私は思っています。もしかしたら、男性にもあるかもしれません。私も、子どもの頃、親に叱られたりすると、家を飛び出し、どことも知れずほつつき歩いたのですが、そんなとき、心のどこかに、「このまま行方不明になって、親に後悔させてやりたい」という思いがあったような気がします。
意識的にか、無意識のうちにか、彼女もそんな行動をとったのでしょうね。その本心は、「探し出してほしい」です。
一方、男性の中には、「そういう子羊を保護しなくては……」という「シェパード本能」も備わっています。もし、S美がそれを知っていて、意識的にそんな行動をとっていたとしたら、あっぱれ! というほかありません。
筆者の官能小説! 電子書店から発売中です!
盆になると、男たちがクジで「かか」を交換し合う。
明治半ばまで、一部の地域で実際に行われていた
「盆かか」と呼ばれる風習。本作品は、その風習を
題材に描いた官能フィクションです。
与一の新婚の妻・妙も、今年は、クジの対象になる。
クジを引き当てたのは、村いちばんの乱暴者・権太。
三日間の盆かかを終えて帰って来た妙は、その夜から
様子が変わった。その変化に戸惑う与一は、
ある日、その秘密を知った??。
筆者初の官能作品、どうぞお愉しみください。
2020年9月発売 定価:200円 発行/虹BOOKS
⇒BOOK☆WALKER からお読みになる方は、ここをクリック。
⇒Kindle でお読みになる方は、ここをクリック。
既刊本もどうぞよろしく 写真をクリックしてください。






明治半ばまで、一部の地域で実際に行われていた
「盆かか」と呼ばれる風習。本作品は、その風習を
題材に描いた官能フィクションです。
与一の新婚の妻・妙も、今年は、クジの対象になる。
クジを引き当てたのは、村いちばんの乱暴者・権太。
三日間の盆かかを終えて帰って来た妙は、その夜から
様子が変わった。その変化に戸惑う与一は、
ある日、その秘密を知った??。
筆者初の官能作品、どうぞお愉しみください。
2020年9月発売 定価:200円 発行/虹BOOKS
⇒BOOK☆WALKER からお読みになる方は、ここをクリック。
⇒Kindle でお読みになる方は、ここをクリック。
既刊本もどうぞよろしく 写真をクリックしてください。

管理人は、常に、フルマークがつくようにと、工夫して記事を作っています。
みなさんのひと押しで、喜んだり、反省したり……の日々です。
どうぞ正直な、しかしちょっぴり愛のこもった感想ポチをお願いいたします。
→この記事はためになった(FC2 恋愛)
→この記事に共感した(にほんぶろぐ村 恋愛)
→この記事は面白かった(人気ブログランキング 恋愛)
このテーマの記事一覧に戻る トップメニューに戻る
- 関連記事
-
- 人は、「美しき敗北者」に心を奪われる (2022/04/16)
- 「方向音痴」は女の甲斐性? (2022/04/02)
- 彼女を「心のクイーン」にしてあげるひと言 (2022/03/17)