自伝的創愛記〈37〉 短パンに先生のニオイを嗅ぐ

Vol.37
「これに穿き替えんね」と
先生が差し出した短パン。
ボクはそのニオイを嗅いだ。
先生の女を感じるために――。
「これ、おまえに渡してくれと頼まれた」
夏休みに入る前の最後の週、生徒会の副会長としてボクを補佐してくれていた純一が、一枚のメモを持ってきた。
淡いピンクの封筒に、ノートの切れ端に書きなぐったメモが入っていた。開いてみると、電車の停留所からの道順を記した地図と「8月25日・午後1時」という日時が記されていて、その下に小さな文字でしたためたひと言が添えてあった。
《大したものは作れないけど、朝からごちそう作って待っとるけん、
ゆっくり出ていらっしゃい》
横から、メモを覗こうとしていた純一が、「何て書いとぉと?」と訊いてきたが、ボクは、「何でもなか」と、純一にはそのメモを見せなかった。

地図に書かれたチャボ先生の家は、小倉北区の西の端、製鉄の街・八幡区との境界近くにあった。路面電車で20分はかかる距離だ。
先生、遠いところから通ってたんやなぁ……。
それを思うと、胸の奥から「ありがとう」という言葉が涌いてきて、喉をくすぐった。
暑い日だった。
側溝に沿って植わった柳の幹では、ワシワシ(熊ゼミのこと)が「ワーシ、ワシ、ワシ……」とけたたましい鳴き声を上げていた。
頭の上からガンガンと照り付ける太陽は、噴き出す汗をたちまちのうちに塩に変えてしまっていた。
家を出るときに、「先生に呼ばれるんやったら、これば、持っていかんね」と、母親が持たせてくれたバヤリスオレンジ6本が、ぬるま湯のようになっていた。
あ~あ、これじゃ先生に届けても、すぐには飲めんばい――と思いながら歩いて行くと、地図に描かれた団地の前に着いた。
夏休みに入る前の最後の週、生徒会の副会長としてボクを補佐してくれていた純一が、一枚のメモを持ってきた。
淡いピンクの封筒に、ノートの切れ端に書きなぐったメモが入っていた。開いてみると、電車の停留所からの道順を記した地図と「8月25日・午後1時」という日時が記されていて、その下に小さな文字でしたためたひと言が添えてあった。
《大したものは作れないけど、朝からごちそう作って待っとるけん、
ゆっくり出ていらっしゃい》
横から、メモを覗こうとしていた純一が、「何て書いとぉと?」と訊いてきたが、ボクは、「何でもなか」と、純一にはそのメモを見せなかった。

地図に書かれたチャボ先生の家は、小倉北区の西の端、製鉄の街・八幡区との境界近くにあった。路面電車で20分はかかる距離だ。
先生、遠いところから通ってたんやなぁ……。
それを思うと、胸の奥から「ありがとう」という言葉が涌いてきて、喉をくすぐった。
暑い日だった。
側溝に沿って植わった柳の幹では、ワシワシ(熊ゼミのこと)が「ワーシ、ワシ、ワシ……」とけたたましい鳴き声を上げていた。
頭の上からガンガンと照り付ける太陽は、噴き出す汗をたちまちのうちに塩に変えてしまっていた。
家を出るときに、「先生に呼ばれるんやったら、これば、持っていかんね」と、母親が持たせてくれたバヤリスオレンジ6本が、ぬるま湯のようになっていた。
あ~あ、これじゃ先生に届けても、すぐには飲めんばい――と思いながら歩いて行くと、地図に描かれた団地の前に着いた。

記された部屋番号を探し当てると、鉄の扉がピシと閉ざされていた。
来てはいけないところに来たんじゃないか?
そう思うと、ブザーに伸ばした手が、一瞬、止まった。渇きかけていた汗が一気に噴き出して、額から流れ落ちた。
ブザーを鳴らすと、中から「ハーイ」と声がして、廊下をスッスッと歩いてくる音がした。
「暑かったやろ? さ、入って、入って」
ドアを開けた先生の格好を見て、危うく声を出しそうになった。
いつも着ているブラウスではなく、肩までむき出しにしたタンクトップ。襟ぐりの大きく開いたタンクトップからは、胸の谷間がのぞいていた。
「暑いけんね、こげな格好にしたと。重松クンも、シャツとか着とったら、暑かろ? 上はランニング一枚でよかよ。ズボンも、よかったら短パンにせんね」
そう言うと、「これ、穿けるやろかね」と、押し入れから出した一枚の短パンを、両手で広げて見せる。
「エッ、それ……?」
「あ、これね、先生が穿きよったと。お尻が大きいけん、ちょっとブカブカかもしれんけど……」
言いながら、「ちょっと穿いてみんね」と言う。「私は外に出とるけん」と、先生が部屋を出て行くと、ボクは穿いて来たズボンを脱いで、短パンを手に取った。
これ、先生が穿いとったんか……。
そう思うと、短パンの二股に分かれるその部分に、秘密めいたニオイが染み込んでいるように感じられた。もしかしたら、先生の女のニオイが秘められておるかもしれん……。
いかんこととはわかっていたが、ボクはそっと、その部分に口を近づけた。鼻孔を広げて、そこから立ち上ってくるニオイを、思い切り吸い込んだ。
いい香りだ……と思った。花のような甘い香り。しかし、それは、その頃流行っていた粉せっけんの香りだった。いくら、クンクンとやっても、そこから、先生の個人的生活の残り香を嗅ぎ出すことはできなかった。
「どォ? 穿けた?」
襖の外から声がしたので、ボクは、あわてて短パンに足を通した。

「あら、入ったごたるねェ。ウン、似合うとる、似合うとる」
そう言って、先生はボクの腰の前にしゃがみ込むと、両手を短パンとボクの腰の間に差し込んで、グルリとひと回りさせた。先生の指は、ボクの腰の肉と短パンの縁の間を行ったり来たりして、フィット感を確かめている。
先生の短パンのウエストは、指1本が動き回れる余裕を持って、ボクの腰にまとわりついていた。
「ちょっとユルめやけど、ま、脱げ落ちはせんやろ」
そう言って、先生は、ボクの腰骨のあたりをポンポンと叩き、お尻をパンパンと叩き、そして、下腹部のヘソの下辺りをソワーッと撫でた。
あ、そこは――と、ボクは思わず腰を引いた。ボクのそこは、先生の短パンのニオイを嗅ごうとしたとき、その行為のいけなさに反応して起ち上がっていた。
それを先生には気づかれたくなかった。しかし、気づかれたに違いない。
ボクの下腹をなで下がった先生の手は、起ち上がって硬くなったボクの根元を探り当てた。チャボは、「あら……」という顔をして、ボクの罪な硬直をなでるようにさすった。
「元気やねぇ」
言いながらボクを見上げる先生の頭は、起ち上がったボクのそれの位置にあった。その顔は、ボクの下半身の罪をとがめているようでもあり、しかし、どこかで笑っているようにも見えた。
暑さを避けるためだろう。アップにして団子にまとめた髪の束から何本かがほつれて、大きく開いた先生の肩や胸元に垂れ落ちていた。
ボクの目は、その一点に釘付けになった。そして、そこから離れられなくなった。ほつれ落ちた髪がへばりつく胸元の、ゆったりしたタンクトップの襟ぐり。そこから先生の胸のふくらみが見えていた。
ちょっとのぞいていた――というレベルじゃない。
完全に、全部、見えていた。先生が前屈みの姿勢を取っていたので、それは、まるで胸から吊り下がる果実のように、タンクトップの中でブラブラと揺れていた。
先生は、ブラジャーをしていなかった。なので、先生の胸から吊り下がる果実は、先端の干しブドウまでがクッキリと見えた。
ボクにとっては、生まれて初めて見る、成熟した女性のリアルな乳房。
見てはいけないものを……。そう思うと、ボクのそこには一段と血が集まり、短パンの中でグイと反り返って、パンツの生地を押し上げた。
たぶん……それも、先生に見られていた。
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