自伝的創愛記〈34〉 影に恋して……

Vol.34
リレーの全力疾走で貧血を
起こしたボクは、白衣の先生に
「救出」された。そのベッドで
ボクは先生に秘密を握られた。
女の腕で体を支えられた――というのは、幼い頃の母親を除けば、おそらく、それが最初で、そして最後の経験だったろうと思う。
全校生徒が参加する陸上競技会の午後の目玉種目・クラス対抗リレーで、200メートルを全力疾走したボクは、閉会式の途中で、思いもしない気分の悪さに襲われた。腹から気持ちわるさ がこみ上げ、なんだか、ゾクゾクと寒気がして、体がグラつく。
これが貧血ってやつか――と思ったが、たかがグラウンド一周だ。その程度の全力疾走で貧血なんか起こしたんじゃ、みっともない。なんとか閉会式の間はしっかり立って、最後の閉会宣言までやんなくちゃ。そう思って立っていたのだが、校長と教頭のあいさつがやたら長い。我慢して聞いているうちに、体がフラつき始めた。
そんなボクの異状にだれよりも早く気づいたのが、チャボ先生だった。朝礼台の横に一列に並んだ先生たちの列から、白衣がサッと動き始めるのが目の端に見えた。白衣は列先頭に立つボクのところまで小走りにやって来ると、サッとボクの右腕を右手で取り、左腕をボクの左肩に回して、ボクの体を抱きかかえた。
先生の腕に抱えられるようにして、運動場から本校舎の養護室へと連れて行かれる。その姿を、ボクは「ああ、みっともない」と感じていた。「みっともない」と感じながら、ボクの右腕は、甘美な感触を受け取ってもいた。
先生の右腕でつかまれたボクの右腕は、しっかりと先生の胸元に引き寄せられていた。
何だろう、このやわらかさは……?
それが、先生の胸のふくらみなんじゃないか――と思ったとき、ボクは貧血の身でありながら、下腹部に血が集まっていくのを感じた。

「ムキになって走りよったけん、貧血起こしたっちゃね。頭ば低うして寝かせるけん、安静にしとくとよ」
養護室に着いてボクをベッドに寝かせると、先生はボクの頭を抱えて、頭が載っていた枕を背中の下へとずらした。
ボクは先生の手のなすがままに、身を任せた。それは、ボクにとって、恥ずかしい時間でもあった。
ボクの頭の下から枕をはずすとき、先生の白衣の胸の合わせ目は、ボクの顔の目の前にあった。白衣を通して先生の胸のふくらみは、ボクの鼻の頭をかすめ、枕をボクの腰の下に当てるために、腹の下へともぐっていった。
枕を腰にあてがうとき、今度は、先生のトレパンのウエストの下の、プクッと盛り上がったあたりが、ボクの顔をおおう形になった。
なんだろ、この匂い……? それは、胸元から漂ってくる甘酸っぱい香りともちょっと違う、生な女の香り……という気がした。
これが、チャボ先生の生な香り……? もしかしてあそこから漂ってくる……?
そう思った途端、ボクのパンツの中で、アレがむっくりと頭をもたげた。
まずい……と思ったが、思えば思うほど、血はそこに集まって、アレをふくらませた……。
「顔の赤うなっとォよ。熱が出たっちゃろかね?」
枕をボクの腰の下にあてがった先生は、ボクの顔を覗き込んだ。眉を八の字に寄せて、心配そうにボクの顔を覗き込む。
貧血なのに顔が赤くなるのはおかしい――と思っているんだろうか。しかし、ボクは、顔が赤くなったその理由を、明かすわけにはいかなかった。
理由は明かさなかったが、先生の手は、ボクの体に起こった秘密を探り当てたに違いない。
「暑いかもしれんけど、体が冷えんごと、毛布一枚かけとくね」
そう言って先生は、ボクの体に毛布を一枚、かけてくれた。かけた毛布のシワを伸ばすように、先生の手が、毛布の上を滑った。
そ、それ、まずいんですけど……。
ボクの下腹部では、先生の匂いに反応したアレが頭をもたげて、毛布にテントを張っていた。それを発見されてしまったら、ボクは、逆らいようのない心の秘密を、先生に握られてしまうような気がした。しかし、握られてしまった。
全校生徒が参加する陸上競技会の午後の目玉種目・クラス対抗リレーで、200メートルを全力疾走したボクは、閉会式の途中で、思いもしない気分の悪さに襲われた。腹から気持ちわるさ がこみ上げ、なんだか、ゾクゾクと寒気がして、体がグラつく。
これが貧血ってやつか――と思ったが、たかがグラウンド一周だ。その程度の全力疾走で貧血なんか起こしたんじゃ、みっともない。なんとか閉会式の間はしっかり立って、最後の閉会宣言までやんなくちゃ。そう思って立っていたのだが、校長と教頭のあいさつがやたら長い。我慢して聞いているうちに、体がフラつき始めた。
そんなボクの異状にだれよりも早く気づいたのが、チャボ先生だった。朝礼台の横に一列に並んだ先生たちの列から、白衣がサッと動き始めるのが目の端に見えた。白衣は列先頭に立つボクのところまで小走りにやって来ると、サッとボクの右腕を右手で取り、左腕をボクの左肩に回して、ボクの体を抱きかかえた。
先生の腕に抱えられるようにして、運動場から本校舎の養護室へと連れて行かれる。その姿を、ボクは「ああ、みっともない」と感じていた。「みっともない」と感じながら、ボクの右腕は、甘美な感触を受け取ってもいた。
先生の右腕でつかまれたボクの右腕は、しっかりと先生の胸元に引き寄せられていた。
何だろう、このやわらかさは……?
それが、先生の胸のふくらみなんじゃないか――と思ったとき、ボクは貧血の身でありながら、下腹部に血が集まっていくのを感じた。

「ムキになって走りよったけん、貧血起こしたっちゃね。頭ば低うして寝かせるけん、安静にしとくとよ」
養護室に着いてボクをベッドに寝かせると、先生はボクの頭を抱えて、頭が載っていた枕を背中の下へとずらした。
ボクは先生の手のなすがままに、身を任せた。それは、ボクにとって、恥ずかしい時間でもあった。
ボクの頭の下から枕をはずすとき、先生の白衣の胸の合わせ目は、ボクの顔の目の前にあった。白衣を通して先生の胸のふくらみは、ボクの鼻の頭をかすめ、枕をボクの腰の下に当てるために、腹の下へともぐっていった。
枕を腰にあてがうとき、今度は、先生のトレパンのウエストの下の、プクッと盛り上がったあたりが、ボクの顔をおおう形になった。
なんだろ、この匂い……? それは、胸元から漂ってくる甘酸っぱい香りともちょっと違う、生な女の香り……という気がした。
これが、チャボ先生の生な香り……? もしかしてあそこから漂ってくる……?
そう思った途端、ボクのパンツの中で、アレがむっくりと頭をもたげた。
まずい……と思ったが、思えば思うほど、血はそこに集まって、アレをふくらませた……。
「顔の赤うなっとォよ。熱が出たっちゃろかね?」
枕をボクの腰の下にあてがった先生は、ボクの顔を覗き込んだ。眉を八の字に寄せて、心配そうにボクの顔を覗き込む。
貧血なのに顔が赤くなるのはおかしい――と思っているんだろうか。しかし、ボクは、顔が赤くなったその理由を、明かすわけにはいかなかった。
理由は明かさなかったが、先生の手は、ボクの体に起こった秘密を探り当てたに違いない。
「暑いかもしれんけど、体が冷えんごと、毛布一枚かけとくね」
そう言って先生は、ボクの体に毛布を一枚、かけてくれた。かけた毛布のシワを伸ばすように、先生の手が、毛布の上を滑った。
そ、それ、まずいんですけど……。
ボクの下腹部では、先生の匂いに反応したアレが頭をもたげて、毛布にテントを張っていた。それを発見されてしまったら、ボクは、逆らいようのない心の秘密を、先生に握られてしまうような気がした。しかし、握られてしまった。

「元気になったようやね」
そう言って、先生はボクの腹をポンポンと叩いた。
「しばらく休んで元気が出たら、先生が家まで送っていくけん、しばらく寝とき」
エッ、家まで? それ、イヤだなぁ――と意外な顔をすると、先生は言うのだった。
「生徒さんが具合わるくなったときには、私たちが親御さんにその説明ばせんといけんごと、なっとおと。面倒くさかろうけど、後で、先生ば家まで案内しちゃって」
そう言うと、ニッコリ笑ってカーテンを閉めた。
カーテンの向こうで、先生は、机に向かって何か書き物をしているような気配が聞こえてくる。何してるんだろうと思ったが、目を閉じると、睡魔が襲ってきて、いつの間にか眠ってしまったようだった。
たぶん……小1時間は、眠っていたような気がする。
カーテンの向こうでは、夕日が養護室を照らし出していた。西向きの窓のレースのカーテンから差し込む夕日が、部屋の中のいろんなものをシルエットにしてベッドのカーテンに映し出していた。
チャボ先生も、その影のひとつとして、カーテンの中にいた。影は、西陽が差し込む窓に向かって、伸びをするようなしぐさを見せていた。両腕を上に伸ばして背伸びをした影は、今度は窓枠に手を置いて、グラウンドに向かって身を乗り出すようなしぐさを見せ、そしてグイと尻を突き出して、背中を反らした。
まるでスフィンクスのストレッチを見ているようだ。いや、それとも草原を駆けるチーターの伸びか。影として映し出されるその姿を「美しい」と思い、ボクはその影に恋をした。

ボクが見とれているとも知らず、カーテンの向こうの影は、クルリとムキを変えた。今度は、窓に背を向けたと思うと、白衣の前を開き、トレパンのウエストに手をかけた。
エッ、何を――と思う間もなく、影は、それをスルスルとひざまで下ろし、そこから片足ずつを抜き取っていく。片足立ちしてトレパンを抜き取っていく姿は、もうチャボなんかじゃない。ツルのようだと思った。
シルエットではあったが、それは、ボクだけが見ることのできた、極上のストリップ・ショーだった。
やがて、片足のプリマドンナは、スカートを穿き、羽織っていた白衣を脱いでそれをコート掛けに吊るすと、「さて……」と声を発した。
「そろそろ起こすとするか……」
言うなり、サーッとカーテンが開けられた。
「あら、もう起きとったと?」
「ハイ」と答えながら、ボクはそれに続く言葉を口の中だけでつぶやいた。「しっかりと……」。
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