自伝的創愛記〈32〉 養護室の小さな秘密

Vol.32
生徒が全員、宿題を忘れていた。
怒って授業をボイコットした
チャボ先生を呼び戻す役目を
押し付けられたボクは――。
「あんたの責任よ、謝って、先生、連れ戻してき」
女子生徒たちに言われて、ボクは渋々だけど、養護室に向かった。
何と言って謝ったら、チャボ先生の機嫌は直るのか? 名案が浮かばないので気が重かったが、ここまで来たら、もうノックするしかない。
養護室の白塗りの引き戸をコンコンと叩くと、中から「ハイ……」と声がした。
「2組の重松です」
「待って……」と声がして、白い戸がスルリと開けられた。
その姿に、アッ……と思った。
チャボは、黒のタイトに薄紫のニットという授業中の服装の上から、白衣を羽織り、首から聴診器をぶら下げていた。もう、教室で授業をするという格好ではない。
ハイ、養護室の先生ですよ。
どうしたの?
どこか具合わるいの?
白い引き戸に左手を当て、右手を腰に当ててボクの顔を覗き込むチャボは、もう「保健の先生」ではなく、普通に「養護室の先生」の顔に戻っていた。
「あの……先生、さっきは……」
「授業やったら、もう、やらんよ」
「す、すみませんでした。ボクが宿題忘れたけん……」
「重松クンのせいやなか。宿題は、全員が忘れとったっちゃから、しょうがないたい。受験に関係のない保健の宿題やら、忘れてしまうともムリなかもんね」
言いながら目を床に落とす先生が、なんだか、子どもに言うことを聞いてもらえず悲しむ母親のように見えた。この先生は、ボクらが守ってやらんといけん。
そのとき、芽生えた「守ってやらんと」は、ボクの中で眠っていたある感情に火を点けた。
女子生徒たちに言われて、ボクは渋々だけど、養護室に向かった。
何と言って謝ったら、チャボ先生の機嫌は直るのか? 名案が浮かばないので気が重かったが、ここまで来たら、もうノックするしかない。
養護室の白塗りの引き戸をコンコンと叩くと、中から「ハイ……」と声がした。
「2組の重松です」
「待って……」と声がして、白い戸がスルリと開けられた。
その姿に、アッ……と思った。
チャボは、黒のタイトに薄紫のニットという授業中の服装の上から、白衣を羽織り、首から聴診器をぶら下げていた。もう、教室で授業をするという格好ではない。
ハイ、養護室の先生ですよ。
どうしたの?
どこか具合わるいの?
白い引き戸に左手を当て、右手を腰に当ててボクの顔を覗き込むチャボは、もう「保健の先生」ではなく、普通に「養護室の先生」の顔に戻っていた。
「あの……先生、さっきは……」
「授業やったら、もう、やらんよ」
「す、すみませんでした。ボクが宿題忘れたけん……」
「重松クンのせいやなか。宿題は、全員が忘れとったっちゃから、しょうがないたい。受験に関係のない保健の宿題やら、忘れてしまうともムリなかもんね」
言いながら目を床に落とす先生が、なんだか、子どもに言うことを聞いてもらえず悲しむ母親のように見えた。この先生は、ボクらが守ってやらんといけん。
そのとき、芽生えた「守ってやらんと」は、ボクの中で眠っていたある感情に火を点けた。

「みんな、反省しとりますけん、先生、教室に戻って来てください。先生がおらんと……」
そこで言葉が詰まった。言おうとした言葉が喉に詰まって、アフアフ……と顎を震わせた。
そんなボクの肩に先生の両手が伸びて来た。
「わかった、わかった。少ししたら行くけん、戻って、みんなば落ち着かせとって」
トントンと肩を叩かれて、「ハイ……」とうなずいた。
行こうとすると、肩に置いた先生の手に力が加わった。
「重松クン、わざわざ呼びに来てくれたんやね。ありがとう……」
そう言って、肩に置いた手でボクの体を引き寄せる。ボクは先生の手で抱き寄せられるような形になり、ボクの頭は、先生の白衣の胸元に埋もれた。
開かれた白衣の下に着込んだ薄紫のセーター。フワッとしたセーターの生地を通して、ボクの頭は、その下に覆い隠されたさらに柔らかなクッションを感じた。
ドキッ……とした。
これ、もしかしたら、先生のオッパイの膨らみか……?
そう感じた瞬間、そのふくらみから漂ってくる甘い香りがボクの鼻孔に飛び込んできた。
まずいよ――と思ったが、手遅れだった。ボクの腹の下で、アレがムックリと頭をもたげていた。ムクムクと起き上がるアレは、止める間もなく、ボクの制服のズボンを持ち上げた。

あのとき、先生は、ボクの体の変化に気づいたんだろうか?
たぶん、気づいていたに違いない――と、ボクは思う。
ボクの体を抱き寄せた養護教諭・チャボは、ボクを抱き寄せた肩に回した右手で、胸に埋もれたボクの頭を抱き寄せ、もう一方の手をボクの背中に回して、グイと引き寄せた。
それで、ボクの腰は先生の腰に密着する形になった。
一瞬、先生の腰がボクの高まりをふくよかな下腹の肉で捕らえ、クイッ……とこね回したような気がした。
「元気になったみたいやね」
そう言いながら、クスリ……と笑ったチャボ先生の笑みが何を意味していたのか、いまでも、ボクはわからないままでいる。
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「盆かか」と呼ばれる風習。本作品は、その風習を
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