自伝的創愛記〈26〉 白いパンツの罪と罰

老犬自伝的エッセイ 「創愛記」
     Vol.26  


中2のクラスに、林文子という
ヤンチャな女子がいた。人より
短いスカートを穿き、人の名前を
呼んでは、足を開いて――。

 小学校時代の最後の半年間を級長として過ごしたボクは、中学校のクラスでも学級委員長に推薦され、胸に委員長バッジを飾ることになった。
 胸にかがやくバッジは、それなりに誇らしくもあったが、同時にそれは、身にある種の危険を背負うことも意味した。
 中学校には、1クラスに2人か3人、いわゆる不良と呼ばれる連中がいた。そういう連中にとって、「委員長」のバッジは、何かと目障りになるに違いない。
 しかし、ボクには、小学校の最後の1年間で、ちょっとだけ学習したことがあった。クラスをまとめるためには、クラスの中でワルっぽくふるまうそういう連中を決して仲間外れにはせず、ほどほど仲よくしておいたほうが、クラスはよくまとまるということだ。
 というわけで、委員長になってからのボクの周りには、頭のいい連中も寄ってきたが、あまり素行のよくない連中も寄って来て、何かと手助けをしてくれたりするようになった。
 その中には、女子もいた。林文子も、そのひとりだった。
 ちょっとやんちゃな女の子だった。体育の時間など、他の子たちがブルーマーを穿いてくるのに、彼女だけは、所属する卓球部の短パン姿で現れて、少し脚を開き気味に地べたに座ったりしていた。
 「重松クン」と名前を呼ばれて振り向くと、開いた脚をボクのほうに向けて、閉じていたヒザを貝の殻のようにジンワリと開き、開いたと思うとギュッとすぼめて見せたりする。
 それはまるで、ボクをそこへ誘い込むしぐさのように見えた。しかし、ボクには、そんな誘いに乗る気はなかったので、彼女が脚を開いて見せる度に、目を逸らしていた。

            

 2年生になるときには、クラス替えが行われたが、林文子とは、またも同じクラスになった。ボクが再び学級委員長に選ばれると、文子は自分から「私、掲示係やる」と言い出した。
 クラスの掲示板に、何をどう貼り出すかを決めるのは、委員長であるボクの仕事だった。その指示に従って、文子は机の上に飛び上がり、掲示板の右から左へ、高い位置から低い位置へと、背伸びをし、腰を屈め、掲示物をコルクのボードに画鋲で留めていく。
 お転婆な文子の制服のスカート丈は、人よりもだいぶ短かったので、彼女伸び上がる度に、屈み込む度に、スカートの裾からは、白いパンツがのぞいた。
 ボクは、その度に「ドキッ」とさせられたが、そのことを口にはしなかった。口にすると、なんだか彼女のあざとい計略にはめられてしまうような気がして、見て見ないフリをした。それでも、目はチラチラ……と、彼女のパンツに向いてしまう。
 林文子は、ボクにとって「好きなタイプ」の女子というわけではなかったが、無警戒とも見えるお転婆っぽさの中に、時折、漂わせてくる「女の子」という匂いは、ボクの心をちょっとだけ動揺させた。
 というわけで、林文子と掲示物を貼り出す時間は、ボクにとって、密かな愉しみの時間ともなっていた。
 しかし、その愉しみは、長くは続かなかった。

            

 いつものように、林文子に手伝ってもらって掲示物を貼り出していたある日のことだった。いきなり、ガラガラッ……と、教室の鉄製のトビラを開ける音がした。
 「なん……?」と、文子が脅えたような表情を見せた。
 「オウ、文子」と入ってきたのは、3人の男たちだった。顔に見覚えがない。たぶん、3年生だ。
 「ボクら、いま、掲示板の整理やりよっちゃけど……」
 だから、ジャマせんといててくれ――と、ボクにしてみれば、精いっぱい抵抗して見せたつもりだったが、3年生の圧力にはかなわなかった。
 「オレたち、この子に話があるっちゃ。おまえ、ちょっと、席外しとってくれ」
 「NO」と断ることも、「なんで?」と問い返すこともできず、「どうする?」と尋ねるつもりで文子の顔を見ると、文子はコクリとうなずいたように見えた。
 その顔が、「ゴメンね」と言っているようにも見えたので、ボクは、仕方なく教室のトビラを開けて外へ出た。
 「これ、片づけんといかんけん、30分経ったら、戻ってくるばい」と言い残して。
 他に言いようがあったろうに――と、後になって思ったのだが、そのときは思いつかなかった。いや、それよりも、そもそも女の子ひとりを残して教室を出ていくなんてことを、やるべきじゃなかったとも思ったが、ボクにはその勇気もなかった。
 よく考えると、職員室に走って、先生を呼んでくるという方法もあったはずだが、その知恵は、残念ながら、そのときのボクの頭には浮かばなかった。
 結局、ボクは逃げたのだ――と、思い知るしかなかった。
 30分経って教室に戻ってみると、文子の姿は教室になく、貼りかけの掲示物が、彼女が踏み台にした机の上に置きっ放しになっており、なぜか、文子のものと思われるハンカチが、床に落ちていた。
 男たちと文子の間で何が起こったのか、ボクには知る術がなかった。
 その日、彼女が教室に戻ってくることはなく、その日以後、文子が掲示物の貼り出しを手伝ってくれることもなかった。
 ボクには、苦い後悔だけが残った。
 身を挺してでも、教室に居残り続けるべきではなかったか?
 以後、ボクと顔を合わせることを避けるようになった林文子を見る度に、その後悔がボクを苦しめた。



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