父と娘の幻夢〈9〉 その人の名は…

第9話 父と娘の幻夢 9
R18
このシリーズは、性的表現を含む官能読み物です。
18歳未満の方は、ご退出ください。
美遊の部屋を訪ねた私は、そこに
飾られた一枚の写真が目を引いた。
母親と思われる女性と一緒に写った
母と娘の写真。その母親の胸に光る
ペンダント。それは……。

ここまでのあらすじ 「きょうのお通し、私が作ったんですよ」。お盆を抱えてニッコリほほ笑む顔を「かわいい」と思った。名前を佐藤美遊。私がランチを食べに通う居酒屋「鉄太郎」のアルバイト店員だった。その顔を見たくて、昼飯は「鉄太郎」と決めた私。ある日、食事しながら、ジャズのナイト・クルージングのチラシを見ていると、彼女がそれに興味を示してきた。「ジャズが好き」と言う彼女を私は、横浜でのクルージングに誘った。「きょうは若いお嬢さんとご一緒で?」と冷やかすベースの前原に、「へへ、隠し子です」とふざける美遊。しかし、彼女が発した「隠し子」という言葉は、私の中で、具体的なイメージとともにふくらみ始めた。かつて、私が会社を辞めるときに、一度だけ愛し合ったことのある桂山美佐子。美遊の顔には、その面影が宿っていた。横浜からの帰り、美遊は「これからも会ってくれますか? お父さんのように」と言う。私と美遊は、それからも度々、逢瀬を重ねた。娘のように甘える美遊が「やってみたかったことがある」と言う。それは、「父親の背中を流してあげること」。私は、その願いを叶えてあげることにした。しかし、それは「危ない遊び」につながった――
「キミの部屋が見てみたい」
美遊にそう切り出したのは、街に秋の風が吹き始め、クローゼットから長袖を引っ張り出そうか――と考え始めた頃だった。
「私の部屋? 散らかってますよ、人並みに」
「その散らかった部屋を見てみたい」
「エーッ!? もしかして、生活指導……?」
「娘が健全に生活するように見守るのも、お父さんの役目だからね」
「ンもォーッ。うるさいお父さんね」
不平をもらしながら、美遊は私を、都電の走る街に案内した。
美遊が通う大学のキャンパスへ自転車で行けるくらいの距離にあるその街は、雑多な商店街と、あとは民家やアパートが立ち並ぶ、雑然とした街だった。
そこに建てられた築20~30年は経っているだろうと思われるアパート。その南向きの1DKの部屋が、美遊の住処だった。
「ほんッとに、散らかってますからね」
言いながら美遊が玄関のドアを開けると、部屋の中から甘酸っぱい匂いが漂ってきた。
女の子の部屋の匂いだった。
DKには、小さな冷蔵庫と食器戸棚。そして、いつもはそこで食事をとっているのだろう、折りたたみ式の小さなテーブルが置いてあった。
「座ってもらうところもないので、ベッドの縁にかけてもらっていいですか?」
6畳の居室には、隣室との境界の壁に沿ってベッドが置かれ、その反対側の壁には本棚とデスクがセットになったユニット家具。そのユニット家具とベッドの間に、小さな座卓が置いてあった。
勉強して、寝るだけの部屋。そこで、懸命に生きている女の子のひたむきさが感じられる部屋だった。
美遊にそう切り出したのは、街に秋の風が吹き始め、クローゼットから長袖を引っ張り出そうか――と考え始めた頃だった。
「私の部屋? 散らかってますよ、人並みに」
「その散らかった部屋を見てみたい」
「エーッ!? もしかして、生活指導……?」
「娘が健全に生活するように見守るのも、お父さんの役目だからね」
「ンもォーッ。うるさいお父さんね」
不平をもらしながら、美遊は私を、都電の走る街に案内した。
美遊が通う大学のキャンパスへ自転車で行けるくらいの距離にあるその街は、雑多な商店街と、あとは民家やアパートが立ち並ぶ、雑然とした街だった。
そこに建てられた築20~30年は経っているだろうと思われるアパート。その南向きの1DKの部屋が、美遊の住処だった。
「ほんッとに、散らかってますからね」
言いながら美遊が玄関のドアを開けると、部屋の中から甘酸っぱい匂いが漂ってきた。
女の子の部屋の匂いだった。
DKには、小さな冷蔵庫と食器戸棚。そして、いつもはそこで食事をとっているのだろう、折りたたみ式の小さなテーブルが置いてあった。
「座ってもらうところもないので、ベッドの縁にかけてもらっていいですか?」
6畳の居室には、隣室との境界の壁に沿ってベッドが置かれ、その反対側の壁には本棚とデスクがセットになったユニット家具。そのユニット家具とベッドの間に、小さな座卓が置いてあった。
勉強して、寝るだけの部屋。そこで、懸命に生きている女の子のひたむきさが感じられる部屋だった。

腰を下ろそうとしたベッドの上には、美遊が脱ぎ捨てたTシャツと、たぶん部屋着代わりに使っているのだろうスウエットの上下、クルクルと丸まったままのソックスなどが、無造作に放り投げられていた。
隅にまとめてあげようとスウェットを手に取ると、その下には、サーモン・ピンクのブラジャーとパンツが脱ぎ捨てられていた。
かすかに、汗の匂いがする。
それも指でつまもうとすると、「あっ」と声を挙げて、美遊が飛んできた。
「もォ、お父さん、そんなことしないでッ!」
私が手にしたスウエットと下着を引ったくるようにして、それを押し入れの中に放り込む。
「おとなしく座っててね。いま、何か飲み物、用意するから」
言われるままに腰を下ろすと、反対側の壁のラックに目が留まった。
大学の講義に使う教科書、岩波の古典文学大系の何冊か、文学論などの専門書が並んだ棚の上には、文庫本が数十冊。その隣にCDが何枚か。その脇のすき間に、フォトフレームに収まった写真が立ててある。
だれの写真だろう――と、ラックに近づいてみた。
女2人が、肩を並べ、頬と頬をくっつけるようにしてニッコリと微笑んだ写真だった。ひとりは、まだ、中学か高校生ぐらいと思われる女の子。特徴のあるワシ鼻と大きな目から、おそらく美遊の少女時代だろうと思われた。
その横で、やさしそうに微笑んでいる年配の婦人。
もしかして、おととし亡くなったというお母さんか……。
鼻の形は、いまの美遊にそっくりだ。頭にはだいぶ、白いものが混じっているが、たぶん、昔は美人だったに違いない――と、私は、その婦人の若い顔を頭の中で復元してみた。
その顔が、だんだん、ある人物の顔に近づいていく。
そして……。
私は、その人の写真の、ある一点にクギ付けになった。
その人の胸元に、キラリと光るものが写っていた。
私は、目を凝らして、その一点をのぞき込んだ。
小さな十字のペンダント。
それは、20年近く前に、ある人の胸元に見たものとそっくりだった。
その人の名は、佳山美佐子。
私が、初めて美遊を見たときに、だれかに似ている――と思った、その人だった。

「あ、その写真? お母さんと私だよ。似てるでしょ?」
タンブラーに焼酎のウーロン茶割りを入れて運んできた美遊が、私に顔をすりつけるようにして、一緒に写真をのぞき込んだ。
「亡くなる1年ぐらい前の写真かな。この頃までは元気だったんだけどね……」
美遊の話す言葉は、ほとんど頭に入らなかった。
もし、この女性が佳山美佐子だとしたら、美遊の「佐藤」という苗字は?
「ね……」と、私は、写真を見つめたまま、声を挙げた。
「キミは、佐藤美遊だよね?」
「そうだよ」
「ずっと、佐藤……?」
「そうだよ」
「お母さんも、佐藤だったの?」
「結婚してからはね」
「エッ、お母さん、結婚してたの?」
「そうだよ。すぐ別れたけどね」
「じゃ、佐藤っていうのは、結婚した相手の姓?」
「そうだよ。でも、面倒だから、旧姓には戻さなかったみたい。ていうか、法律的には、まだ、離婚が成立してないのかもしれない」
「じゃ、キミのお父さんは、その佐藤さんじゃないの?」
「ウウン。違うみたいだよ。お母さんとお父さんは、私が生まれる前に別れたの。お母さんのおなかには、その佐藤さんと結婚する前に、すでに私がいたんだって。それがわかったから、別れたんだよって、お母さんからは聞かされてる」
「もしかして、お母さんの結婚する前の姓は……」
言いかけて、私は口をつぐんだ。
それを聞くと、開けてはいけない箱を開けることになるのではないか。
その懼れが、私の口をつぐませた。
しかし、美遊は、その一瞬の間を逃さずに、口を開いた。
「佳山だよ」
「佳山……美・佐・子……?」
「エッ……!?」
今度は、美遊が私の顔を凝視した。
凝視したまま、口をつぐんだ。
そのまま、止まってしまうのではないか――と思われる時間が、ふたりの間を流れた。
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