スマホは人を「個の空間」に閉じ込める

人々の生活から「言葉」が失われつつある。友人や恋人と会っていても、彼らはただ目を落として、指を動かしているばかり。スマホの登場は、人を「個の世界」に閉じ込めてしまった――?
Talker
シランケン・重松シュタイン 自ら著作を手がけるエッセイスト&作家。当ブログの管理人です。旧ペンネーム/長住哲雄
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラフォーの美女。
【今回のキーワード】 スマホ ボキャブラリー
AKI 前回、ジイは、「言葉を必要とする生活」が、人々から失われつつあるのではないか――とおっしゃいました。あれ、とても気になっているんですが……。
シランケン ああ、あれね。音楽を鑑賞しようとか、詩や小説を読もうという文化的動機が、人々から失われかけている。その理由のひとつが、そこにあるんじゃないか――と申し上げたんでしたよね。
AKI そうそう、そんな話でした。「でも、言葉を必要とする生活」が失われるっていうのは、どういうこと? そこが、いまひとつ、わからないんですけど。
シランケン たとえばですがね、AKIクン。キミのホームでは、「お風呂がわいた」とか「ご飯が炊けた」とかいうのは、だれが教えてくれます?
AKI だれが――っていうか、わたくし、あいにくとひとり住まいなものですから、だれも教えてなんぞくれませんの。あえて言うなら、風呂釜とか炊飯器がしゃべってくれる……かな。
シランケン でしょうね。必要な「お知らせ」は、たいてい器具についたコンピュータ音声がしゃべってくれる。進化した家庭では、「電気つけて」とか「××の音楽かけて」とかにも答えてくれたりします。こんな生活を続けていると、私たちは、どんどんボキャブラリーを失っていく。
AKI ボ、ボキャブラリー……? つまり、語彙を失っていくってことですか? それ、ちょっと怖いですね。
シランケン ボキャブラリーってのは、どうやって磨かれ、獲得されていくかと言うと、本を読んだり、人と議論したり……という知的刺激を経て――なんですが、その知的刺激を得る機会が、減っているような気がするんですよ。
AKI そう言えば、近頃、若者たちが口に泡を吹きながら議論している姿なんて、あまり見なくなりましたよねェ。友だち同士で会っても、何かについて熱く語り合っているなんて姿は、ほとんど見ない。じゃ、何をしているかって言うと、ふたりとも自分のスマホに目を落として、しきりに指を動かしてる。
シランケン ゲームでもしていたんでしょうね。恋人同士と思われる男女のカップルでもいますよ。ふたりで並んで座ったり、向かい合って座ったりしているのに、恋人らしい会話もせず、イチャイチャするでもなく、ただ黙々と指を動かしてる。キミたち、愛し合ってるのなら、もっと他にやることあるでしょう――と思うんだけどね。
AKI ジイ様としては、キスのひとつもしてほしかったワケですね?
シランケン 別に、キスじゃなくてもいいですよ。しかし、恋人同士なら、「今度、ここに行ってみようか?」とか、「今度の誕生日、何して過ごそうか?」とか、「この前、うちのパパとママがね……」とか、いろいろお話することはあるでしょうに――って思うんですよ。その時間を、ただ黙って指動かしてるだけじゃ、何とももったいない。何なら、この私が……。
シランケン ああ、あれね。音楽を鑑賞しようとか、詩や小説を読もうという文化的動機が、人々から失われかけている。その理由のひとつが、そこにあるんじゃないか――と申し上げたんでしたよね。
AKI そうそう、そんな話でした。「でも、言葉を必要とする生活」が失われるっていうのは、どういうこと? そこが、いまひとつ、わからないんですけど。
シランケン たとえばですがね、AKIクン。キミのホームでは、「お風呂がわいた」とか「ご飯が炊けた」とかいうのは、だれが教えてくれます?
AKI だれが――っていうか、わたくし、あいにくとひとり住まいなものですから、だれも教えてなんぞくれませんの。あえて言うなら、風呂釜とか炊飯器がしゃべってくれる……かな。
シランケン でしょうね。必要な「お知らせ」は、たいてい器具についたコンピュータ音声がしゃべってくれる。進化した家庭では、「電気つけて」とか「××の音楽かけて」とかにも答えてくれたりします。こんな生活を続けていると、私たちは、どんどんボキャブラリーを失っていく。
AKI ボ、ボキャブラリー……? つまり、語彙を失っていくってことですか? それ、ちょっと怖いですね。
シランケン ボキャブラリーってのは、どうやって磨かれ、獲得されていくかと言うと、本を読んだり、人と議論したり……という知的刺激を経て――なんですが、その知的刺激を得る機会が、減っているような気がするんですよ。
AKI そう言えば、近頃、若者たちが口に泡を吹きながら議論している姿なんて、あまり見なくなりましたよねェ。友だち同士で会っても、何かについて熱く語り合っているなんて姿は、ほとんど見ない。じゃ、何をしているかって言うと、ふたりとも自分のスマホに目を落として、しきりに指を動かしてる。
シランケン ゲームでもしていたんでしょうね。恋人同士と思われる男女のカップルでもいますよ。ふたりで並んで座ったり、向かい合って座ったりしているのに、恋人らしい会話もせず、イチャイチャするでもなく、ただ黙々と指を動かしてる。キミたち、愛し合ってるのなら、もっと他にやることあるでしょう――と思うんだけどね。
AKI ジイ様としては、キスのひとつもしてほしかったワケですね?
シランケン 別に、キスじゃなくてもいいですよ。しかし、恋人同士なら、「今度、ここに行ってみようか?」とか、「今度の誕生日、何して過ごそうか?」とか、「この前、うちのパパとママがね……」とか、いろいろお話することはあるでしょうに――って思うんですよ。その時間を、ただ黙って指動かしてるだけじゃ、何とももったいない。何なら、この私が……。
AKI コラ、コラ。でも、アレですよね。コロナで、密がどうの、ソーシャル・ディスタンスがどうの……という話になって、ますます、その傾向に拍車がかかったような気がします。
シランケン 確かに、コロナは、友だちからも、恋人たちからも、言葉を発する機会を奪っていったという一面が、多少はあったかもしれません。しかし、それ以前に、人から「社会性」を奪い、「個」の世界に閉じ込めてしまったものがある。
AKI ここまでの話の流れからすると、どうも、元凶はスマホである――とおっしゃりたいようですね、重ジイは?
シランケン 残念ながら、そう言わざるを得ないでしょうねェ。生活費を稼ぐために、一時期、コンビニのレジでバイトをしていたこともあるんですが、そこへやってくる客の中には、スマホの画面から目を離さないまま、レジにポンと商品を置いて、こちらが何を訊いても、顔も上げない、返事もしない。まるで、人と視線を合わせたり、声を出したりすると損する――とでも思っているように見えます。
AKI いますよねェ、そういうピープル。公的な空間にいるのに、「スマホと自分」という個人的な空間に閉じこもっている。そういう人たちって、そもそも、社会的生活を営むことができないんじゃないか――って思うんですよ。
シランケン 「個人的な空間に閉じこもる」ですか? キミも、なかなか鋭いことを言うようになりましたなぁ。
AKI おホメに預かりまして、光栄ですわ。
シランケン 確かに、キミが言うことにも一理ある、大目に見て、二理ぐらいはある。スマホの登場は、私たちの生活を社会と繋げるツールとして活用できるようになった。その利便性は、大いに評価すべきだと私も思っています。しかし、一方で、この便利なツールは、個人を社会から切り離してしまいました。
AKI つまり、「個人的な空間」に閉じ込めちゃったんですね。
シランケン 閉じ込めるまでいかなくても、ある社会の中で生きている人間に、「個の空間」を提供する。スマホがそのツールとして利用されるようになった――っていうことは、否定できないと思います。こうして人々が自分だけの「個の空間」を持つようになると、社会には、これまでなかったようなエゴイズムが出現します。
AKI エゴイズム……? エッ、それはどんな?
シランケン 実は、ここからが、新しいテーマに突入することになるんですが、話が長くなってしまいますので……。
AKI ハイ。では、次回からその話、じっくりお聞きしたいと思います。
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