言葉を練る人間がいなくなった

「J-ポップ」の時代になって以降、歌詞からメッセージ性が失われ、いつまでも心に残る歌が少なくなった気がします。実はそれは、歌詞を創るプロがいなくなったからだという話を——。
Talker
シランケン・重松シュタイン 自ら著作を手がけるエッセイスト&作家。当ブログの管理人です。旧ペンネーム/長住哲雄
AKI エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
【今回のキーワード】 懐メロ シンガーソングライター
AKI 令和も3年となりましたね。ジイは、お正月、どこかに出かけられたんですか?
シランケン 滅相もない。不要不急の外出は控えておりましたのでね。家飲みしながら、ひとりで駅伝なんぞ見ておりましたよ。
AKI そもそも、不要不急の用事など、ない人ですからね。よかったんじゃないですか。
シランケン 正月早々、失敬な。
AKI 失礼しました。それはそうと、前回、ジイは気になることをおっしゃいました。最近の曲が胸に引っかかってこないのは、言葉が直接的すぎるからだ。それは、詞を作るプロがいないからだ――と。
シランケン そう言えば、そんなことを申し上げたような気もします。これはね、詞を作る場合にも、小説を書く場合にも、共通して言えることだと思うんですが、言葉が練れてないと思うんですよ。
AKI 言葉が……練れてない……? ちょっと、よくわからないんですが……。
シランケン たとえば、「好き」を「好き」という言葉にして言ってしまう。「愛してる」を「愛してる」と言う。「悲しい」を「悲しい」と言い、「楽しい」を「楽しい」と言い、「泣いた」「笑った」「苦しんだ」「喜んだ」と、そのまま、ストレートに言葉にしてしまう。ほんとは、そういう言葉はオブラートにくるんだまま、聴く人間、読む人間に、「ああ。この人は悲しいんだろうな」「どんなにか苦しかっただろうな」と想像させる。それが、「言葉が練れている」ということなんですが、そういうふうに言葉を紡ぐプロがいなくなったなぁ——と思うんですよ。
AKI ジイの言う「言葉を紡ぐプロ」というのは、「作詞家」ということですか?
シランケン 音楽に関して言うと、「作詞家」とか「ソングライター」ということになるでしょうね。そういうプロたちが、「言いたいこと」や「叫びたい言葉」は奥に忍ばせたまま、詞という形で、ひとつのストーリーいうか、だれもが共感できる物語を築き上げていく。私は、彼らのそういう仕事を「すごい才能だなぁ」と感じていたのですが、いまは、そういう仕事ができるプロがいなくなりました。
AKI なんか、わかる気がします。
上野発の夜行列車下りたときから~
なんて歌われると、それだけで、ひとつの物語が目に浮かんじゃいますものね。
シランケン あ、『津軽海峡冬景色』ね。ま、あれは演歌ですが、しかし、人々に長い年月、歌い続けられる演歌を創り出すっていうのは、それだけでも、すごい才能だとは思います。好きかどうかは別にしてね。
シランケン 滅相もない。不要不急の外出は控えておりましたのでね。家飲みしながら、ひとりで駅伝なんぞ見ておりましたよ。
AKI そもそも、不要不急の用事など、ない人ですからね。よかったんじゃないですか。
シランケン 正月早々、失敬な。
AKI 失礼しました。それはそうと、前回、ジイは気になることをおっしゃいました。最近の曲が胸に引っかかってこないのは、言葉が直接的すぎるからだ。それは、詞を作るプロがいないからだ――と。
シランケン そう言えば、そんなことを申し上げたような気もします。これはね、詞を作る場合にも、小説を書く場合にも、共通して言えることだと思うんですが、言葉が練れてないと思うんですよ。
AKI 言葉が……練れてない……? ちょっと、よくわからないんですが……。
シランケン たとえば、「好き」を「好き」という言葉にして言ってしまう。「愛してる」を「愛してる」と言う。「悲しい」を「悲しい」と言い、「楽しい」を「楽しい」と言い、「泣いた」「笑った」「苦しんだ」「喜んだ」と、そのまま、ストレートに言葉にしてしまう。ほんとは、そういう言葉はオブラートにくるんだまま、聴く人間、読む人間に、「ああ。この人は悲しいんだろうな」「どんなにか苦しかっただろうな」と想像させる。それが、「言葉が練れている」ということなんですが、そういうふうに言葉を紡ぐプロがいなくなったなぁ——と思うんですよ。
AKI ジイの言う「言葉を紡ぐプロ」というのは、「作詞家」ということですか?
シランケン 音楽に関して言うと、「作詞家」とか「ソングライター」ということになるでしょうね。そういうプロたちが、「言いたいこと」や「叫びたい言葉」は奥に忍ばせたまま、詞という形で、ひとつのストーリーいうか、だれもが共感できる物語を築き上げていく。私は、彼らのそういう仕事を「すごい才能だなぁ」と感じていたのですが、いまは、そういう仕事ができるプロがいなくなりました。
AKI なんか、わかる気がします。

なんて歌われると、それだけで、ひとつの物語が目に浮かんじゃいますものね。
シランケン あ、『津軽海峡冬景色』ね。ま、あれは演歌ですが、しかし、人々に長い年月、歌い続けられる演歌を創り出すっていうのは、それだけでも、すごい才能だとは思います。好きかどうかは別にしてね。
AKI いまは、そういう曲を作り出すプロがいない――と?
シランケン いなくなりましたねェ。かつて、そういうプロは、音楽の世界でも、文学の世界にもいて、20年から30年と歌い続けられ、読まれ続けられる「スタンダード」を生み出していたのですが、いま、オリコンのチャートでトップにランキングされたりする曲に、20年、30年と歌い続けられる曲があるかというと、皆無に等しい。
AKI 「ドルチェ&ガッパーラの香水がどうたら……」って曲じゃ、20年はおろか、10年だって持たないでしょうね。
シランケン もたないでしょうねェ。
AKI いまの時代の曲からは、「懐メロ」が誕生する可能性は?
シランケン なくはないでしょうが、残念ながら、きわめてレアになるかもしれませんねェ。そもそも、「音楽を鑑賞する」という文化的動機が、人々から失われていくかもしれない。いや、音楽ばかりじゃない。詩や小説を読もうという動機も、希薄になっていくかもしれない。
AKI エーッ!? それ。なぜなんでしょう?
シランケン わかりません。わかりませんが、ひとつだけ、私が恐れていることがあります。
AKI そ、それは……何?
シランケン 言葉を必要とする生活が、人々から失われつあるのではないか――ってね。
AKI 「言葉を必要とする生活」が失われる? それって、大変なことですよ、ジイさま。
シランケン ハイ、大変なことだ――と、私も思っています。
AKI どうしてなんです? どうして、人々は、その生活を失っていったんですか?
シランケン それには、いくつかの理由が考えられるんですが、それを話し出すと、長くなってしまいます。年も明けたことですし、私もまた、ひとつ歳をとってしまったので、それについては、ひとつひとつ、順を追ってお話しましょう。
AKI ハイ、楽しみにお待ちしております。それまで、お亡くなりにならないように。感染もなさらないように。
シランケン ハイ、ハイ。精一杯、ガンバってみます。本年もどうぞよろしくです。
AKI みなさんも、どうぞお気をつけて、一年をお過ごしください。
筆者の最新刊官能小説です!
盆になると、男たちがクジで「かか」を交換し合う。
明治半ばまで、一部の地域で実際に行われていた
「盆かか」と呼ばれる風習。本作品は、その風習を
題材に描いた官能フィクションです。
与一の新婚の妻・妙も、今年は、クジの対象になる。
クジを引き当てたのは、村いちばんの乱暴者・権太。
権太との三日間を終えた妙は、その夜から、
様子が変わった。その変化に戸惑う与一は、
ある日、その秘密を知った??。
筆者初の官能作品、どうぞお愉しみください。
2020年9月発売 定価:200円 発行/虹BOOKS
⇒Kindle でお読みになる方は、ここをクリック。
⇒BOOK☆WALKER からお読みになる方は、ここをクリック。
既刊本もどうぞよろしく 写真をクリックしてください。






明治半ばまで、一部の地域で実際に行われていた
「盆かか」と呼ばれる風習。本作品は、その風習を
題材に描いた官能フィクションです。
与一の新婚の妻・妙も、今年は、クジの対象になる。
クジを引き当てたのは、村いちばんの乱暴者・権太。
権太との三日間を終えた妙は、その夜から、
様子が変わった。その変化に戸惑う与一は、
ある日、その秘密を知った??。
筆者初の官能作品、どうぞお愉しみください。
2020年9月発売 定価:200円 発行/虹BOOKS
⇒Kindle でお読みになる方は、ここをクリック。
⇒BOOK☆WALKER からお読みになる方は、ここをクリック。
既刊本もどうぞよろしく 写真をクリックしてください。

管理人は常に、下記3つの要素を満たせるように、脳みそに汗をかきながら、記事をしたためています。
あなたの押してくださったポイントを見ては、喜んだり、反省したりの日々です。
どうぞ、正直な、しかしちょっぴり愛情のこもった感想ポチをお送りください。よろしくお願いいたします。



→このテーマの記事一覧に戻る →トップメニューに戻る
- 関連記事
-
- スマホは人を「個の空間」に閉じ込める (2021/02/22)
- 言葉を練る人間がいなくなった (2021/01/19)
- 21世紀の音楽から失われていったもの (2020/12/22)