キャット・ファイター〈11〉 南部の酒場にて

第8話 キャットファイター 11
R18
このシリーズは、性的表現を含む官能読み物です。
18歳未満の方は、ご退出ください。
日本人を「ジャップ」と呼び、
黒人差別が根強く残る南部の酒場で
麗奈は黒人レスラーと闘うショーに
出演していた。観客たちが期待して
いるものは明らかだった——。

前回から読みたい方は、⇒こちらからどうぞ。
ここまでのあらすじ 「ビックリするようなもの、お見せしますよ」。歌舞伎町のショーパブの支配人・平山に言われて、顔を出したその店は、客席の真ん中に、プールのような泥レスのリングが設えられた変わった造りだった。リング・アナの紹介でリングに登場したその女性を見て、内村良助は「ハッ……」と息を呑んだ。彼女は、かつて、アイドル出身の女子プロとして、一世を風靡したこともある岬麗奈だった。やがて始まった泥レス。麗奈はたちまち石黒に組み伏せられ、ウエアをはぎ取られた。リングウエアを脱がされると、試合は負け。敗者の泥を洗い流す権利は、オークションにかけられる。バケツ一杯の水で、麗奈は、白い肌を露わにされた。平山は「これ、記事になりませんかね」と言う。しかし、それを記事にしたのでは、店も、掲載した『スポタイ』も、当局にニラまれてしまう。良助は、「麗奈の転落人生を描くインタビュー記事にしよう」と提案した。「結婚しようと思ったことはなかったの?」という良助の質問に、麗奈は力なく首を振った。「いたにはいたけど」と言うその男は、麗奈を「接待ドール」として利用する男だった。しかし、麗奈が女子プロを引退すると、麗奈に商品価値がないと判断した男は、彼女を捨てた。麗奈は、興行系のプロダクションに移って、「泥レス」の世界に身を投じた。その「泥レス」は、やがて「オイル・レス」に変わった。さらに客寄せを狙う支配人・平井は、客をリングに上げて、彼女たちと格闘させる「チャレンジ・マッチ」なる企画を打ち出した。しかし、そのショーは当局にわいせつ罪で摘発され、店は営業停止となり、麗奈も検挙されたが、不起訴処分となった。その麗奈から電話がかかってきた。「アメリカに渡ってキャット・ファイト」のショーに出ると言う。「止めろよ」と止める良助に麗奈は言うのだった。「それが言えるのは、私と結婚してくれる男だけだよ」と。心配する良助の目に向かって、麗奈は「抱いて」と言う。良助はその肌を抱いた。アメリカに飛び立ったのは、麗奈だけではなかった。良助の妻も、本格的に翻訳の仕事か゜したいからとアメリカ移住を決意し、娘もそれに従うことになって、良助は妻子と別れた。数日後、麗奈がひどいショーに出ていることを知った良助は、アメリカに行くことを決意した――
翌月、良助は、1週間の夏休みを取った。
アメリカまでの往復チケットを取ったが、それは、佳苗たちのいるニューヨーク行きではなく、ダラス行きだった。
そこから目的の町まで、レンタカーで移動した。
目指すクラブはすぐに見つかった。
観光客など滅多に立ち入らないダウンタウンの一画に、けばけばしいネオン管の輝く店があった。「Pussy Cat」という文字が点滅するその下に、「エキサイティング・プロ・レスリング」の文字があった。
入り口で、ガードマンらしき男に「ジャパニーズか?」と尋ねられたので、「イエス」と答えると、男は口の端に意味ありげな笑みを浮かべて、「エンジョイ・イット(楽しみな)」と言った。
店内は、タバコの煙とウイスキーの匂い、そして、客席を埋める男たちが放つ体臭がミックスされて、息をするのもイヤになるような空気で満たされていた。
その臭いを嗅いだだけで、そこがどういう場所であるかが想像できるような、そんな臭いだった。
ほどなく、ショー・タイムが始まった。
黒髪と栗毛のビキニの女同士が、たがいのコスチュームを脱がせようと取っ組み合いを演じ、最後には、脱がせたほうの女が脱がされたほうの女をレズる、というショー。
カウボーイ姿のブロンドの女が、毛むくじゃらで筋骨隆々の男にムチを振るって立ち向かうのだが、最後にはそのムチを取り上げられ、衣装を剥ぎ取られて、逆にムチ打たれ、組み伏せられて、悲鳴を挙げながら犯される、というショー。
前座と思われるショーが2つ続いて、メイン・エベントになった。
アメリカまでの往復チケットを取ったが、それは、佳苗たちのいるニューヨーク行きではなく、ダラス行きだった。
そこから目的の町まで、レンタカーで移動した。
目指すクラブはすぐに見つかった。
観光客など滅多に立ち入らないダウンタウンの一画に、けばけばしいネオン管の輝く店があった。「Pussy Cat」という文字が点滅するその下に、「エキサイティング・プロ・レスリング」の文字があった。
入り口で、ガードマンらしき男に「ジャパニーズか?」と尋ねられたので、「イエス」と答えると、男は口の端に意味ありげな笑みを浮かべて、「エンジョイ・イット(楽しみな)」と言った。
店内は、タバコの煙とウイスキーの匂い、そして、客席を埋める男たちが放つ体臭がミックスされて、息をするのもイヤになるような空気で満たされていた。
その臭いを嗅いだだけで、そこがどういう場所であるかが想像できるような、そんな臭いだった。
ほどなく、ショー・タイムが始まった。
黒髪と栗毛のビキニの女同士が、たがいのコスチュームを脱がせようと取っ組み合いを演じ、最後には、脱がせたほうの女が脱がされたほうの女をレズる、というショー。
カウボーイ姿のブロンドの女が、毛むくじゃらで筋骨隆々の男にムチを振るって立ち向かうのだが、最後にはそのムチを取り上げられ、衣装を剥ぎ取られて、逆にムチ打たれ、組み伏せられて、悲鳴を挙げながら犯される、というショー。
前座と思われるショーが2つ続いて、メイン・エベントになった。

コールと共に、客席から一斉に、口笛と歓声が上がった。
リングに上がったのは、麗奈だった。
ガウン代わりにきものを羽織り、唇には真っ赤なルージュ。黒い髪は、頭頂部にシニヨンを作ってまとめ、そこを櫛のように見えなくもないバレッタで留めている。それでも、ゲイシャ・ガールをイメージしたつもりなのだろう。
コールされると、麗奈は、着ていたガウンをパッと脱ぎ放った。下に着ていたのは、ビキニのリング・コスチューム……というより、ほとんど下着だった。淡いピンクのブラとパンツには、桜の花があしらってある。これも、ニッポンとゲイシャを思わせる演出か――。
麗奈の体は、少し小さくなったように見えた。
胸のふくらみとヒップの張りだけは、やや豊かになったように見えたが、肌は、明らかに以前のようなツヤがなくなったように見える。
麗奈もそろそろ、三十の声を聞く年頃だ。しかし、肌のツヤのなさは、そのせいばかりではないだろう。アメリカでのすさんだ生活が、かつては輝くような透明感を見せていた麗奈の肌から、繊細な肌理を奪っていったのに違いない。
「レディス・アンド・ジェントルマン。チャレンジャー・オブ・トゥナイト。マグナム・コック・ファイター、ミスター・ボビー・アニマル・フットマーン!」
コールとともに、再び、口笛と歓声が湧き起こった。その歓声の中から「キル・ハー(やっちまいな!)」という野次が飛び、その声に何人かが唱和して、やがてそれは、場内全体を包む「キル・ハー」コールになった。

「ボビー」と紹介されたのは、平井浩一郎が良助に見せた雑誌に載っていた黒人レスラーだった。
ボビーは、ガウンを脱ぎ捨てると、場内の「キル・ハー」コールに応えるように、腰を突き出して見せた。その腰のトランクスのふくらみを見て、良助は気分がわるくなった。
「マグナム」は、そのサイズを表すためにつけられたキャッチ・フレーズに違いない。こんな化け物を相手に、日本のかわいい小柄な女を闘わせる。その演出の意図が、良助には手に取るようにわかった。
ディープな南部に位置するその町は、全米でも保守的な地域として知られている。日本人を見れば、いまでも、「ジャップ!」と吐き捨てるように口にする土地柄だ。
黒人に対する差別意識も、根強く残っている。「黒人と寝た女」は、いまだに蔑視の対象となる。
そんな土地で、日本の女と黒人の男を闘わせ、男に女を犯させる。彼らが嫌悪する民族の女を彼らが蔑視する人間によって陵辱させる。それは、彼らにとって、最高にエロチックで、なおかつ溜飲の下がる見世物なのだ。
その餌食になることを承知で、麗奈は、この世界に飛び込んできた。
なぜだ?
もしかして……良助がある考えに思いいたったとき、試合開始を告げるゴングが鳴った。
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