キャット・ファイター〈10〉 ポルノ雑誌が伝える醜聞

第8話 キャットファイター 10
R18
このシリーズは、性的表現を含む官能読み物です。
18歳未満の方は、ご退出ください。
「これ、見ました?」。平山が
良助にポンと投げてよこしたのは、
アメリカのポルノ雑誌だった。
そのページに掲載されていたのは、
リングで裸にされた麗奈だった。

前回から読みたい方は、⇒こちらからどうぞ。
ここまでのあらすじ 「ビックリするようなもの、お見せしますよ」。歌舞伎町のショーパブの支配人・平山に言われて、顔を出したその店は、客席の真ん中に、プールのような泥レスのリングが設えられた変わった造りだった。リング・アナの紹介でリングに登場したその女性を見て、内村良助は「ハッ……」と息を呑んだ。彼女は、かつて、アイドル出身の女子プロとして、一世を風靡したこともある岬麗奈だった。やがて始まった泥レス。麗奈はたちまち石黒に組み伏せられ、ウエアをはぎ取られた。リングウエアを脱がされると、試合は負け。敗者の泥を洗い流す権利は、オークションにかけられる。バケツ一杯の水で、麗奈は、白い肌を露わにされた。平山は「これ、記事になりませんかね」と言う。しかし、それを記事にしたのでは、店も、掲載した『スポタイ』も、当局にニラまれてしまう。良助は、「麗奈の転落人生を描くインタビュー記事にしよう」と提案した。「結婚しようと思ったことはなかったの?」という良助の質問に、麗奈は力なく首を振った。「いたにはいたけど」と言うその男は、麗奈を「接待ドール」として利用する男だった。しかし、麗奈が女子プロを引退すると、麗奈に商品価値がないと判断した男は、彼女を捨てた。麗奈は、興行系のプロダクションに移って、「泥レス」の世界に身を投じた。その「泥レス」は、やがて「オイル・レス」に変わった。さらに客寄せを狙う支配人・平井は、客をリングに上げて、彼女たちと格闘させる「チャレンジ・マッチ」なる企画を打ち出した。しかし、そのショーは当局にわいせつ罪で摘発され、店は営業停止となり、麗奈も検挙されたが、不起訴処分となった。その麗奈から電話がかかってきた。「アメリカに渡ってキャット・ファイト」のショーに出ると言う。「止めろよ」と止める良助に麗奈は言うのだった。「それが言えるのは、私と結婚してくれる男だけだよ」と。心配する良助の目に向かって、麗奈は「抱いて」と言う。アスリートとして鍛えた筋肉の上にやわらかな脂肪を蓄えた麗奈の肌を、良助は「せつない」と感じながら抱いた――
翌週、アメリカへ発つ麗奈の荷物を、良助は成田までクルマで運んだ。
スーツケースが1個だけ。
決断の重さに比べて、麗奈の荷物は驚くほど軽かった。
その軽さに、良助は麗奈の運命の軽さを思った。
出発ゲートを通過した後、麗奈は一度だけ、足を止めて後ろを振り返り、良助に深々と頭を下げた。
じゃね――というふうに、肩の上で小さく手を振ると、麗奈はクルリと体の向きを変え、もう迷いはない、というような足取りで、通路を歩いていった。
二度と、麗奈が振り返ることはなかった。
ちょっとそこまで行ってくるね。
そんな調子で、麗奈の姿は通路から消えた――。

麗奈がアメリカへ旅立って1年ほどが過ぎた頃、良助の生活には、大きな変化が訪れた。
翻訳の仕事をしていた妻の佳苗が、アメリカの出版社からヘッド・ハンティングを受けた。日本の文学作品を英語に翻訳して英語圏で販売するために、その作品の発掘や翻訳の仕事を手がけてみないか――という誘いだった。
そのためには、アメリカに移住しなくてはならない。
しかし、良助には、妻の仕事にくっついて日本を離れるという選択はできなかった。
日本とアメリカに分かれて別居するという方法も考えられはしたが、妻の仕事の性質上、移住先のアメリカに永住するということにだってなりかねない。
「別れましょうか」と言い出したのは、妻のほうだった。
前から、アメリカの大学に留学したいと言っていた娘も、妻についていくことになり、良助だけが、日本で独身生活を送ることになった。
どいつも、こいつも、アメリカかぁ――。
ひとりになった良助は、再び、毎夜のように歓楽街に繰り出すようになった。
半分は、取材のため。しかし、残りの半分は、やり場のない夜の無聊を満たすためでもあった。
スーツケースが1個だけ。
決断の重さに比べて、麗奈の荷物は驚くほど軽かった。
その軽さに、良助は麗奈の運命の軽さを思った。
出発ゲートを通過した後、麗奈は一度だけ、足を止めて後ろを振り返り、良助に深々と頭を下げた。
じゃね――というふうに、肩の上で小さく手を振ると、麗奈はクルリと体の向きを変え、もう迷いはない、というような足取りで、通路を歩いていった。
二度と、麗奈が振り返ることはなかった。
ちょっとそこまで行ってくるね。
そんな調子で、麗奈の姿は通路から消えた――。

麗奈がアメリカへ旅立って1年ほどが過ぎた頃、良助の生活には、大きな変化が訪れた。
翻訳の仕事をしていた妻の佳苗が、アメリカの出版社からヘッド・ハンティングを受けた。日本の文学作品を英語に翻訳して英語圏で販売するために、その作品の発掘や翻訳の仕事を手がけてみないか――という誘いだった。
そのためには、アメリカに移住しなくてはならない。
しかし、良助には、妻の仕事にくっついて日本を離れるという選択はできなかった。
日本とアメリカに分かれて別居するという方法も考えられはしたが、妻の仕事の性質上、移住先のアメリカに永住するということにだってなりかねない。
「別れましょうか」と言い出したのは、妻のほうだった。
前から、アメリカの大学に留学したいと言っていた娘も、妻についていくことになり、良助だけが、日本で独身生活を送ることになった。
どいつも、こいつも、アメリカかぁ――。
ひとりになった良助は、再び、毎夜のように歓楽街に繰り出すようになった。
半分は、取材のため。しかし、残りの半分は、やり場のない夜の無聊を満たすためでもあった。

かつて麗奈が泥レスのリングに上がっていた「アクトレス」は、ミュージシャンの生演奏を聞かせるミュージック・パブとして営業を再開し、釈放された平井浩一郎は、雇われ店長として店の切り盛りを任されていた。
「いやぁ、その節はどうも。ちょっとやりすぎちゃいましたよ。内村さんの忠告、聞いておけばよかったすねェ」
「どうせ、あれだろ? ほとぼりが冷めたら、また、何かやらかす気なんじゃないの?」
「いやいや、もう懲りました。私も、もう歳だし……」
「歳だし……」はおたがいさまだ。
良助も、そろそろ色物の取材からは身を退きたい――と思い始めているところだった。
「それにしても、麗奈も大胆なこと始めちまったもんですね。見ました?」
「見た……って、何を?」
「アレ? 内村さんともあろう人が、まだ知らなかったんですか? ちょっと待ってくださいよ」
平井が席を外して持ってきたのは、向こうのポルノ雑誌だった。
「ホラ、ここ」と開いて見せたページに載っていたのは、いかにも場末の……という感じの酒場にしつらえられた、プロレス・リングだった。
リングの上では、日本人らしい小柄な女性がリング・コスチュームを剥ぎ取られ、まる裸にされていた。その体を押さえつけたまま、剥ぎ取った衣装を高々と掲げて見せているのは、黒人の男性レスラーだった。
良助は、ギクリ……となった。
黒人レスラーはリング用のタイツをひざまで下ろし、天井を向くほどにそそり立った黒光りのするイチモツを、まさに、女のそこに突き立てようとしている。
苦悶の表情で叫び声を挙げているらしい女の顔は、紛れもない、麗奈のそれだった。
《そのエキサイティングなショーは、この南部の町では、
連日、押すな押すなの盛況となっている。
観客のお目当ては、このプリティなジャップ女のプッシーが、
マッチョな黒人レスラーの巨大コックに貫かれるときに挙げる
彼女の「Year-h!」という悲鳴だ。
まるでカナリヤがカラスの食い物となるように、
彼女の華奢な体は、粗暴な男に貫かれ、突きまくられ、リングの上で仮死状態となる。
世界に、こんなエキサイティングなショーがまたとあろうか》
連日、押すな押すなの盛況となっている。
観客のお目当ては、このプリティなジャップ女のプッシーが、
マッチョな黒人レスラーの巨大コックに貫かれるときに挙げる
彼女の「Year-h!」という悲鳴だ。
まるでカナリヤがカラスの食い物となるように、
彼女の華奢な体は、粗暴な男に貫かれ、突きまくられ、リングの上で仮死状態となる。
世界に、こんなエキサイティングなショーがまたとあろうか》
デカデカと掲載されたカラー写真に添えられたコピーに、良助は体の震えを感じた。
「アメリカじゃ、こんなの、平気でやっちゃうんすね」
「おタクだって、似たようなことやってたじゃないの?」
「いや、いくら何でも、ここまではやらないっすよ。麗奈ちゃん、よく、こんな世界に飛び込んだよなぁ」
平井の感想を聞きながら、良助の頭には、最後の食事のときに麗奈がもらした言葉が蘇った。
「もし、私に、そんな仕事止めろ――と言える人がいるとしたら、それは……」
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盆になると、男たちがクジで「かか」を交換し合う。
明治半ばまで、一部の地域で実際に行われていた
「盆かか」と呼ばれる風習。本作品は、その風習を
題材に描いた官能フィクションです。
与一の新婚の妻・妙も、今年は、クジの対象になる。
クジを引き当てたのは、村いちばんの乱暴者・権太。
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「盆かか」と呼ばれる風習。本作品は、その風習を
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クジを引き当てたのは、村いちばんの乱暴者・権太。
三日間を終えて帰って来た妙は、その夜から、
様子が変わった。その変化に戸惑う与一は、
ある日、その秘密を知った??。
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みなさんのひと押しで、喜んだり、反省したり……の日々です。
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