シランケンの不純愛講座

　パターンＡ　
単純キレ型～「頭に来た」程度を示して相手をビビらせる

　自分がどれくらい怒っているかを、声の大きさや、相手を攻撃する言葉の過激さや、表情や、ときには鉄拳（男性の場合）によって示そうとするパターン。粘着質なタイプの場合には、長期間にわたって、口をきかなくなる、相手を無視する、家事をボイコットする（女性の場合）……などの実力行使によって、自分の怒りの程度を示そうとする場合もあるかもしれません。

　【心理的意味】 心理的には、これらの行動は「威嚇行動」に分類できると思います。ケンカや闘いのときにとる行動と同じ。つまり、ファイティング・ポーズですね。「ガツン」がいちばん伝わりやすい方法ではあるのですが、伝えることは、ただ「私は怒っている」ということだけなので、相手には「何を怒っているのか？」が、正確には伝わらない場合もあります。
　【効果】 相手にショックを与える――という意味では、効果的な方法です。ただし、基本的にこの方法は「ファイティング・ポーズ」なので、相手から反撃が返って来ることも、覚悟しなくてはなりません。つまり、売り言葉に買い言葉、となる危険性も少なくない、ということです。この種の怒りは時間が経てば治まる――ということを熟知している相手には、ただ「じっと嵐が吹き去るのを待つ」という作戦をとられることもあるかもしれません。この「ガツン」の最大の欠点は、「頭に来た」は伝わっても、「なぜ頭に来ているのか？」というその理由が、正確には伝わらない、ということです。時間が経てば、また同じ過ちを繰り返されてしまう可能性がきわめて高い。「犬も食わない」ケンカを、何度も繰り返すことになるのも、このパターンの宿命と言っていいと思います。

　パターンＢ　
モラハラ型～道徳を振りかざして相手を人格的に攻撃する

　「道徳」や「常識」という外部的な価値を持ち出して、相手を人格的にやり込めるパターン。「そんなことをするあなたは、人間として欠陥がある」と責めるわけで、このパターンの「ガツン」は、「自分は正しい」と思っている人が、しばしば用います。やりすぎると、モラル・ハラスメント（道徳的いじめ）と受け取られることもあります。
　【心理的意味】 「道徳」や「常識」を振りかざす人は、基本的には、自分の価値を社会的価値に依拠してしか判断できない人――です。「みんな言ってる」とか「ＴＶでも言ってたけど」とか「うちのお母さんが」とか、常にだれかの言葉を引用したりするのも、このタイプに共通する特徴です。つまり、「頭に来た」を伝えたいのだけど、その怒りの正当性が自分の中からは見つけられない人なんですね。なので、「道徳」や「常識」という外在的な価値を持ち出して、相手をやり込めようとするのですが、なにしろ振りかざす武器が「道徳」や「常識」ですから、その「ガツン」は、「あなたには常識がない」「モラルにかける」と、相手の人間性を攻撃することになります。とても危険な「ガツン」でもあるわけです。
　【効果】 断言してもいいのですが、４種のパターンの中では、もっとも効果が期待できない「ガツン」の言い方です。理由は３つあります。ひとつは、「ガツン」のために振りかざした「道徳」や「常識」が、陳腐だったり、根拠にかけるものだったりして、相手に「そんな常識、いまどき通用しないよ」と一笑に付されてしまう場合。ひとつは、その「道徳」や「常識」が、相手の「道徳」や「常識」と真っ向からぶつかるようなものであった場合（←「道徳」や「常識」は、ただ一種類とは限りません）。そして、最後のひとつは、「人格攻撃された」と感じた相手が、逆ギレしたり、落ち込んでしまったりして、そういう攻撃を仕掛けてきた相手に対して心をふさいでしまう場合です。いずれの場合も、「ガツン」が功を奏するとは、考えられません。

　パターンＣ　
被害者型～自分が蒙った辛い心情を訴えて反省を促す

　相手の行為によって自分がどれだけ辛い思いを味わったかを、切々と訴えるパターン。「だから、もう二度としないで」と訴えるわけで、「ガツン」というより、「哀願」に似た言い方に感じられます。

　【心理的意味】 こういう言い方をする人の心の中には、ある種の「願望」が潜んでいる、と考えられます。それは、「こんな辛い思いを味わったんだから、それ相応の償いをしてほしい」という願望です。「ガツン」と行きながら、「報酬」を期待している、と言ってもいいでしょう。その「報酬」とは？　もしかしたら、「じゃ、埋め合わせに○○してくれる？」というリクエストかもしれないし、「ごめん。もう二度とあなたにそんな思いはさせない」という、より強い愛の表明かもしれません。どちらにしても、そこに潜んでいるのは、相手に甘える心、または依存する心です。
　【効果】 この「ガツン」、実はとても、効果があります。ただし、その「効果」は、「ガツン」の効果ではありません。「報酬が期待できる」という効果です。「おいしい償い」を期待するなら、このパターンはもっとも効果的。しかし、それで相手が心から反省し、その行動を改めるか――となると、やや疑問が残ります。相手によっては、「償ったからいいや」と、再び、問題行動を繰り返す恐れもあるからです。

　パターンＤ　
取説型～危機感を伝えて取り扱い上の注意を促す

間違った「取り扱い」を繰り返していると、この機械は正常に作動しなくなりますのでご注意ください――各種の機器の《取扱説明書》には、そういう記載が必ず載っています。このパターンはそれと同じ。「あなたがそういうことを繰り返していると、私も正常に作動しなくなるよ」と注意を促しているわけですが、「正常に作動しなくなる」には、「嫌いになるかも」とか「失望するかも」も含まれています。しかし、ただ注意を喚起するだけでなく、そこに「嫌いにさせないでね」というメッセージをプラス。ここが、このパターンのポイントです。

　【心理的意味】 このパターンでの「ガツン」のスタンスは、「親的」または「教師的」といったところでしょうか。相手のいけないところを正しく指摘して、「どうか、私に嫌いと思わせないでほしい」と伝えているわけです。依存するでもなく、攻撃するでもなく、脅すでもなく、しかし、おとなとしての自覚をもって注意して――と、しっかり伝える。もっとも理想的な「ガツン」であろうと、私は考えます。
　【効果】 こういう言い方をされると、もしそれが愛情を抱いている相手からの言葉であれば、「嫌いになられちゃたまらない」と、気を引き締めます。つまり、効くわけです。「ガツン」の対象となった行動を改めさせる言葉としては、もっとも効果的。実際、筆者も、交際中の女性からこういう言い方をされて、行動を改めたことが何度もありました。

　というわけで、「ガツン」のもっとも効果的な言い方は《Ｄパターン》。
　そのミソは、「嫌いにさせないで」のひと言である――本日は、そんな話をさせていただきました。

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