キャット・ファイター〈4〉 インタビュー

第8話 キャットファイター 4
R18
このシリーズは、性的表現を含む官能読み物です。
18歳未満の方は、ご退出ください。
泥レスファイターとしてパブの
見せ物となった元アイドル・麗奈。
「これ、記事になりませんかね」
と支配人は言う。良助は、麗奈の
インタビューを条件にした——。

前回から読みたい方は、⇒こちらからどうぞ。
ここまでのあらすじ 「ビックリするようなもの、お見せしますよ」。歌舞伎町のショーパブの支配人・平山に言われて、顔を出したその店は、客席の真ん中に、プールのような泥レスのリングが設えられた変わった造りだった。リング・アナの紹介でリングに登場したその女性を見て、内村は「ハッ……」と息を呑んだ。彼女は、かつて、アイドル出身の女子プロとして、一世を風靡したこともある岬麗奈だった。やがて始まった泥レス。麗奈はたちまち石黒に組み伏せられ、ウエアをはぎ取られた。リングウエアを脱がされると、試合は負け。敗者の泥を洗い流す権利は、オークションにかけられる。バケツ一杯の水で、麗奈は、白い肌を露わにされた――
「どうでした? なかなか面白い趣向だったでしょう?」
ショータイムが終わると、支配人の平井が、ニヤニヤ笑いながら、席までやって来た。
「どうです? ネタになりませんかねェ?」
「書いてもいいんだけど、目つけられるんじゃないの?」
「エッ、そうすか?」
「オレの感触で言うと、ギリギリ。あれ以上やると、桜田門が黙ってないような気がする。うちとしても、呼び出しくらうのはまずいしねェ」
「そうすか……」
「でなきゃ、麗奈のクローズ・アップとしてやるか……だね」
「麗奈の?」
「ウン。元アイドルの麗奈が泥レスラーになってたっていう、ニュースとして取り上げるのさ。そこに、店のこともチラと書く。その程度にしといたほうが無難な気もするよ。で、どうなのよ? 麗奈は、この仕事、自分から売り込んできたの?」
「ほんとはね、あそこまでやるとは思ってなかったみたいっすよ。最初はいやがってたんだけど、事務所のほうが何とかかんとか説き伏せて、やらせたんじゃないすか。なにせ、あいつの事務所、こっち系だから」
平井は、右手で頬を切るしぐさをして見せた。
麗奈は何度か、事務所を移っていた。アイドルとして売れなくなった時点で、芸能事務所から興行を中心とする事務所に身を移し、女子プロでも売れなくなってからは、さらに小さな、名前を聞いたこともないような事務所に移籍した、という知らせを受けていた。
最後には、そんな事務所にまで移っていたのか……。
「話、聞けるかなぁ?」
「あ、いいすよ。控え室にいると思いますから、呼んできましょうか?」
「いや。ここじゃないほうがいいんじゃない。オレが控え室に行くよ」
「でも、控え室だと、他の出演者もいるし……。じゃ、VIPルーム、ひとつ空けときますから、そっちでいいすか?」
「じゃ、頼みます」
ショータイムが終わると、支配人の平井が、ニヤニヤ笑いながら、席までやって来た。
「どうです? ネタになりませんかねェ?」
「書いてもいいんだけど、目つけられるんじゃないの?」
「エッ、そうすか?」
「オレの感触で言うと、ギリギリ。あれ以上やると、桜田門が黙ってないような気がする。うちとしても、呼び出しくらうのはまずいしねェ」
「そうすか……」
「でなきゃ、麗奈のクローズ・アップとしてやるか……だね」
「麗奈の?」
「ウン。元アイドルの麗奈が泥レスラーになってたっていう、ニュースとして取り上げるのさ。そこに、店のこともチラと書く。その程度にしといたほうが無難な気もするよ。で、どうなのよ? 麗奈は、この仕事、自分から売り込んできたの?」
「ほんとはね、あそこまでやるとは思ってなかったみたいっすよ。最初はいやがってたんだけど、事務所のほうが何とかかんとか説き伏せて、やらせたんじゃないすか。なにせ、あいつの事務所、こっち系だから」
平井は、右手で頬を切るしぐさをして見せた。
麗奈は何度か、事務所を移っていた。アイドルとして売れなくなった時点で、芸能事務所から興行を中心とする事務所に身を移し、女子プロでも売れなくなってからは、さらに小さな、名前を聞いたこともないような事務所に移籍した、という知らせを受けていた。
最後には、そんな事務所にまで移っていたのか……。
「話、聞けるかなぁ?」
「あ、いいすよ。控え室にいると思いますから、呼んできましょうか?」
「いや。ここじゃないほうがいいんじゃない。オレが控え室に行くよ」
「でも、控え室だと、他の出演者もいるし……。じゃ、VIPルーム、ひとつ空けときますから、そっちでいいすか?」
「じゃ、頼みます」

ほんとは、いまの麗奈に顔を合わせるのは、気が引けた。
麗奈だって、いやがるかもしれない。
しかし、良助には、いまの麗奈の偽らざる心境を聞いてみたい――という気もあった。記事にするかどうかは、その話を聞いてからでも遅くはない。
ほどなく、平井が戻ってきて、1時間だけ、という約束でインタビューすることになった。
案内されたVIPルームをノックすると、中から「ハイ」と小さな声がした。
ドアを開けると、ガウンをまとった小さな体が振り向いた。
良助の顔を見ると、麗奈は「あっ……」と口を開け、あわてて顔を背けた。
「こんなとこまで……」
麗奈の口からやっと出た言葉は、それだけだった。
言いながら、麗奈はまとったガウンの胸を合わせ直した。
「ごめん。ここの支配人とは、前からいろいろあってさ。新しいアトラクションを始めたから、見てくれないか――っていうもんだから……」
「これ、新聞に取り上げるんですか?」
「店としては、取り上げてほしいってことなんだけど、あなたのことを書くとなると、一応、本人の了解も得ておきたかったからね」
「わたし、あんまり……」
「あんまり……」の後の言葉は想像できた。
たぶん、麗奈としては、転落した自分の姿など、人に知られたくはないのだろう。しかし、きっぱりとした「NO」ではない。「あんまり……」と言葉を濁したのは、心のどこかに、「世の中から忘れ去られてしまいたくない」という願望が潜んでいるからに違いない――と、良助は推量した。
一度でもスポット・ライトを浴びたことのある人間の、それが、悲しい性というものだ。

「ボクに、《人間=岬 麗奈》を書かせてくれないかなぁ。アイドルからスタートしたあなたが、女子プロの世界に飛び込み、いまは歓楽街の出し物となって泥レス・ファイターをやっている。それでも、女としての自分を見せ続けるしかない。そんなひとりの女の生きざまとして、あなたを書いてみたいんだ」
人間=岬 麗奈を書いてみたい――は、ジャーナリストとしての良助の本心だった。しかし、低俗を売りにしている『スポタイ』という媒体でそれができるかというと、おそらくはムリだ。「あなたを書いてみたい」と言いながら、結局は、「元アイドルの転落」という一面を、興味本位に書き立てるしかない。
結果的には、麗奈を裏切ることになるだろう。
泥だらけの麗奈にバケツ一杯の水をぶっかけて辱めを加えるのと同じことを、良助はペンを使ってやることになる。そのことに、良助の胸が痛んだ。
「内村さんが書いてくれるのなら……」と、結局、麗奈は紙面掲載をOKした。
麗奈の生い立ちや、女子プロレス時代のことまでは頭の中に入っているので、そのままでも原稿は書けたのだが、良助にはどうしてもひとつだけ、麗奈に訊いてみたいことがあった。
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