キャット・ファイター〈1〉 泥まみれの転落

第8話 キャットファイター 1
R18
このシリーズは、性的表現を含む官能読み物です。
18歳未満の方は、ご退出ください。
「ビックリするようなものを
お見せしたいんですよ」
歌舞伎町のショー・パブ、
「アクトレス」の支配人から、
電話を受けてのぞいてみると——。
「赤コーナー、153センチ、47キロ、バスト86センチ、ウエスト53センチ、ヒップ88センチ。元WWWCミニマム級チャンピオン。レイ――ナ――、ミサ――キ――!」
リングアナのコールを聞いて、内村良助は、自分の耳を疑った。
レイナ・ミサキ……?
岬 麗奈?
かつては、「パンツを見せるアイドル」として一世を風靡し、その後、女子プロレス界に転進して世間を「あっ」と言わせた、あの、岬 麗奈……か?

「ちょっとね、内村さんもビックリするようなものをお目にかけたいんですよ」
新宿・歌舞伎町のショー・パブ「アクトレス」の支配人・平井浩一郎から電話をもらったときには、「また、しょうもない外タレでも呼ぶから、なんていうんじゃないだろうな」と、半分はうんざりした気分で応答した。
平井はそういう電話をかけてきては、「新聞で取り上げてもらえませんかね? 頼みますよ」と手をすり合わせてくる。
ニュースとして価値があれば取り上げるのだが、たいていは、もう名前も忘れられているような外タレが、初めて新宿のパブで歌うからとか、日劇のダンサーたちが出張ストリップをやるから――とかいった話で、いまひとつバリューに欠ける。
「いや、今度は、まじですごいす。店内も大改装して、内村さんがいままで見たこともないようなものをお目にかけますから」
いやに力が入っているので、騙されたつもりでやって来たのだった。
確かに、店内は大改装されていた。
客席フロアの中央に、巨大なプールのようなリングがしつらえてあり、その周りを取り囲むように客席が配置されていた。酒を飲みながら格闘技をどうぞ――ということらしい。
しかし、これはどういう趣向なのか?
リングの床一面にビニールシートが敷き詰められ、そこには、まるで田植え前の苗代のように、泥が張られていた。
そこへ、2人の女子レスラーが登場した。
ひとりは、ボディ・ビルでもやっているのか、隆々と盛り上がった男並みの筋肉の女だった。リング・アナに「ハウンド石黒」と紹介されると、その筋肉を見せつけるように、両腕を肩の位置に上げて力こぶを作って見せた。
そして、もうひとりは、150センチそこそこのちいさな体に、きゅっと締まった腰、プリンと張り出したキュートなヒップ、そして……ちいさな顔の中でキラリと光を放つ大きな瞳……。
間違いない。かつてのアイドル、岬 麗奈だった。
リングアナのコールを聞いて、内村良助は、自分の耳を疑った。
レイナ・ミサキ……?
岬 麗奈?
かつては、「パンツを見せるアイドル」として一世を風靡し、その後、女子プロレス界に転進して世間を「あっ」と言わせた、あの、岬 麗奈……か?

「ちょっとね、内村さんもビックリするようなものをお目にかけたいんですよ」
新宿・歌舞伎町のショー・パブ「アクトレス」の支配人・平井浩一郎から電話をもらったときには、「また、しょうもない外タレでも呼ぶから、なんていうんじゃないだろうな」と、半分はうんざりした気分で応答した。
平井はそういう電話をかけてきては、「新聞で取り上げてもらえませんかね? 頼みますよ」と手をすり合わせてくる。
ニュースとして価値があれば取り上げるのだが、たいていは、もう名前も忘れられているような外タレが、初めて新宿のパブで歌うからとか、日劇のダンサーたちが出張ストリップをやるから――とかいった話で、いまひとつバリューに欠ける。
「いや、今度は、まじですごいす。店内も大改装して、内村さんがいままで見たこともないようなものをお目にかけますから」
いやに力が入っているので、騙されたつもりでやって来たのだった。
確かに、店内は大改装されていた。
客席フロアの中央に、巨大なプールのようなリングがしつらえてあり、その周りを取り囲むように客席が配置されていた。酒を飲みながら格闘技をどうぞ――ということらしい。
しかし、これはどういう趣向なのか?
リングの床一面にビニールシートが敷き詰められ、そこには、まるで田植え前の苗代のように、泥が張られていた。
そこへ、2人の女子レスラーが登場した。
ひとりは、ボディ・ビルでもやっているのか、隆々と盛り上がった男並みの筋肉の女だった。リング・アナに「ハウンド石黒」と紹介されると、その筋肉を見せつけるように、両腕を肩の位置に上げて力こぶを作って見せた。
そして、もうひとりは、150センチそこそこのちいさな体に、きゅっと締まった腰、プリンと張り出したキュートなヒップ、そして……ちいさな顔の中でキラリと光を放つ大きな瞳……。
間違いない。かつてのアイドル、岬 麗奈だった。

岬 麗奈には、過去2度ほどインタビューをしたことがある。
一度は、彼女が「セクシー系アイドル」としてデビューした直後。そのとき、彼女はまだ18歳だった。
「体でいちばん自信がある部分は?」という質問に、「オッパイです」と恥ずかしそうに答えるので、「ホントに?」と訊くと、「形だけは……」と舌を出した。
「オッパイです」は、訊かれたらそう答えるようにと指示をされていたのだろうが、その後の「形だけは……」は、彼女のホンネと感じられた。用意された問答マニュアルの中に少しだけ自分のホンネをもぐり込ませて返してくる、その機転とちょっぴり垣間見えた人間性に、良助は好感を抱き、それからも何かあるたびに、彼女には好意的な記事を書いてきた。
もう一度は、彼女がアイドルを辞めて女子プロレスに転進することを発表した直後。このときは、独占インタビューだった。
そのとき彼女は、23歳になっていた。
「なぜ、また女子プロなのか?」という質問に、彼女は平然と笑いながら返したのだった。
「アイドルだろうと女子プロだろうと、結局、私たちが見せることを期待されているものは、同じでしょ? 23歳という年齢は、アイドルとしては賞味期限だけど、女子プロなら、なんとか持つでしょ? 最後の悪あがき……かな」
そう言いながら笑った顔が、どこか寂しげで、投げやりにも感じられた。18歳から23歳まで、5年間にわたって彼女が身を置いたアイドルの世界は、結局、彼女に「体を売り物にするしかない」という虚飾の虚しさを悟らせる意味しか持たなかったのかもしれなかった。
特に歌がうまいというわけでもない、演技力が優れているというわけでもない、そんな彼女が、なおも世間の注目を浴びて生き続けるとしたら、他にどんな道があったのか?
それを考えると、良助は胸が痛んだ。
元アイドルの女子プロレスラー・岬 麗奈が世間の注目を浴びたのは、わずか1年ちょっとの間だけだった。
世間が彼女に期待したのは、かわいい顔をした小さな体の麗奈が、ごつい女たちに投げ飛ばされ、組み敷かれ、悲鳴を挙げ、痛めつけられる姿だったに違いない。
そういうファイトを、女子プロレスの世界では「キャット・ファイト」と言う。
観客の興味が、勝負の勝ち負けや技の競い合いよりも、ファイトする女子レスラーの色気などに向くような種類のファイトを総称する言い方だが、エスカレートすると、リング衣装もビキニになったり、トップレスになったりする。
岬 麗奈が出場するファイトは、そこまで露骨なものではなかったが、もしかしたら観客の期待は、それに近かったかもしれない。
そんなファイトに出続けて、痛めつけられ続けるうちに、華奢な麗奈の体はボロボロになっていった。
故障しがちになり、リングも休み勝ちになって、いつの間にか、岬 麗奈の名前は、女子プロレス界からも忘れ去られていった。
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