未亡人下宿〈2〉 Yの字の誘惑

もの想い 妄夢草紙 
 第7話  未亡人下宿   

      R18 
このシリーズは、性的表現を含む官能読み物です。
18歳未満の方は、ご退出ください。


風に、大家夫人のワンピースは
体にピッタリ張り付いて、体の線を
浮き上がらせた。下腹部にレリーフ
される「Y」の字。見とれる幸一に
夫人は妖しく体をくねらせた。


この話は連載2回目です。最初から読みたい方は⇒こちらからどうぞ。

ここまでのあらすじ 大輔が4度目の下宿に引っ越した。「今度の下宿のおばさん、ワシに色目使いよるんよ。いっぺん見に来いや」。大輔に誘われて、その新しい下宿を訪ねると、大家夫人は肉感的で、どこか小悪魔を思わせる魅力を漂わせていた。未亡人であるその大家の元へは、通って来る男がいた――



 「なんや、向こうの窓、閉めたままかいな。ほじゃけ、風が通らんのやわ」
 大家夫人は、つと立ち上がって、納戸として使っている向かいの部屋の窓を開け、雨戸を引いた。
 東向きの窓からサーッとまぶしい光が射しこみ、夫人の薄いワンピースの生地を刺し貫いた。光の中に、夫人の体の線が浮かび上がった。
 細い腰だった。しかし、その下には、豊かなラインを描く尻が張り出していた。
 夫人は、ビキニのショーツを穿いているようだった。ピッチリとしたショーツに押さえつけられた肉が、その縁から少しだけはみ出して、淫猥な盛り上がりを見せていた。
 夫人が窓を開けたので、東の窓からはモワッとした風が吹き込んできた。
 モワッとはしていたが、風が通るようになると、体の表面にへばりついていた暑熱が払われて、一瞬、涼気が体を撫でていく。
 風は、夫人のワンピースを体に張り付かせた。腿と腹部が合わさる部分が「Y」の字の形にレリーフされ、その「Y」字の上に、ちょっとだけポッコリと突き出た腹部が浮き上がって見えた。
 幸一が夫人の「Y字」に見とれていると、大輔が声をひそめて言った。
 「な、うちのおばさん、色っぽいやろ?」
 ひそめた声でも、その声はしっかり、大家夫人の耳に届いたようだった。
 「何言いよん、村上さん。こんなおばさんをからこうたらいかんがな」
 言いながら、夫人は、大輔の隣に腰を下ろした。
 ワンピースの裾から出た脚を横へ投げ出し、倒れそうな体を床に着いた手で支える。
 きれいにそろえて畳の上に投げ出されたひざから下の脚。
 床に下ろした尻の豊かなふくらみ。
 尻の上でくねりと曲がった上体の危なっかしいバランス。
 その上で、息を弾ませるたびに存在を主張する乳房のふくらみと、何かの拍子に浮かび上がる乳首のリアルな形。
 肩は、夫人が何か言葉を発するたびに、ユラリと大輔の体のほうに傾く。
 大輔の言う「色っぽい」は、こういうことを指していたんだろうな――と思いながら、幸一はその姿に目を奪われた。

       

 「どうぞ」と勧められて、冷たいお茶を飲んでいると、大家夫人が「なぁ、村上さん」と、肩を大輔の肩にぶつけながら言った。
 「このひと、ガール・フレンドとかおるん?」
 「おるわけないやん」
 「なんで?」
 「なんで……て、ワシら、男子校なんで。たいていのやつは、女なんかおらんでよ。なぁ、幸一」
 幸一は、話を振られて、うなずくしかなかった。
 それを聞いて、大家夫人の目がキラッと輝いたような気がした。
 「ほたら、あれ? まだ、知らんのん?」
 「何をですか?」
 「何を……て、女をや。まだ、したことないのん?」
 「ハ、ハイ……」
 「そら、気の毒やなもし。なぁ、大ちゃん」
 言いながら、大家夫人は、またも肩を大輔の肩にぶつけ、「なぁ、なぁ」というふうに大輔の体を揺らした。
 いつの間にか、「村上さん」が「大ちゃん」に変わっている。
 大輔は、「そんな、からかわんといてや。上原が困っとんで」と言いながら、手を大家夫人の腿に伸ばした。
 大家夫人は、腿の上に置かれた大輔の手にそっと自分の手を重ねて、それを腿の付け根のほうへと導いた。
 ふたりの手が腿の上を滑るのに合わせて、ワンピースがずれ上がっていき、夫人の白く、むっちりした太腿が、露わになった。
 目のやり場に困ってドギマギしている幸一を、上目遣いに見ながら、大家夫人はクスリと笑った。
 「ねェ、大ちゃん。上原さんにも教えたらんといけんねェ」
 「ほたら、おばさんが教えたらええじゃろ」
 「もぉ、さっきからおばさん、おばさんて。そら、確かに下宿のおばさんやけんど……」
 「ほたら、どがいゆうたらええんかいのぉ?」
 「綾子さん……とか。ほや、綾ちゃんがええわ」
 「綾ちゃん? そんなん、言われんがや」
 「ゆうて。綾ちゃんてゆうてみて」
 「ほ、ほたら……綾ちゃん」
 「わぁ、いま、ゾクッ……ときたわ」
 言いながら、大家夫人は、重ねた手をグイと腿の付け根に引き寄せた。
 ワンピースの奥に、花柄のビキニのショーツが見えた。大輔の手は、夫人の手に導かれて、そのビキニの上へと到達した――と見えた瞬間、大輔がパッと、その手を振り解いた。
 「止めときや。お客さんがいよんのに」
 「なんよ。ええとこ見せたろ思たのに……」
 大家夫人は、プッと頬をふくらませて、めくれ上がったワンピースの裾を直した。

       

 後日、学校で顔を合わせた大輔に、幸一は訊いた。
 「なぁ、大輔。こんなは、あのおばさんとどがいな関係なんよ?」
 「どがいな……て、下宿人と大家やないか」
 「ほんまにそれだけか?」
 「ほやけ、ゆうたやろ。あのおばさんは、ワシに色目使いよるゆうて……」
 「色目だけか?」
 「あとはな……」と、大輔は幸一の耳元に口を寄せてささやいた。
 「勝手に想像せえや」
 言うと同時に、腹にパンチが飛んできた。
 幸一が反撃を加えようと繰り出した拳を、大輔はヒラリとかわして言った。
 「おまえな、経験してみたかったら、あのおばさんに頼むとええぞ。おまえ、けっこう、おばさんのタイプらしいでよ」
 それだけ言うと、大輔は自転車に飛び乗って走り去ってしまった。
 オレが、あの大家夫人のタイプ……?
 幸一は、ゾクッ……と身震いした。
 身震いすると同時に、ワンピースの胸元からのぞいた形のいい胸とその先端で硬く尖っていたアーモンドのような乳首が頭に浮かび、大輔の手を腿の付け根に誘いながらのぞかせた花柄のショーツが目の奥に浮かんだ。
 あれは、もしかして自分を挑発していたのか――。
 幸一の腿のあたりから、何かがゾクゾクと粟立って、幸一の全身を這い上がっていった。

       

 幸一が次に大輔の下宿を訪ねたのは、1週間後だった。
 「おじゃまします」
 玄関で声をかけたのだが、返事はなかった。
 その上がり口に、見慣れない靴が置いてあった。ピカピカに光る大きな革靴。大輔のものでないことは、一目瞭然だった。
 だれかお客さんでも――と思って、もう一度、声をかけようとしたら、階段の上から大輔が顔を出して、「しっ」と口に指を当てたので、幸一はそっと靴を脱いで階段を上がった。
 「これが来とんのや。はよ、入れや」
 大輔は、親指を立てて幸一を招き入れると、そっと襖を閉めた。
 階下からは、物音がしなかった。物音がしないということは、何もしてないか、音がしない何かをしている、ということだ。
 「いつもの男や。これや、これ」
 大輔は、人差し指で頬を斜めに切るマネをして見せた。
 「エーッ、あのおばさん、そんな男とつきおうとん?」
 「大きな声、出すなっちゅうに。そのうち、始まりよんで」
 「始まる……て、何がぞ?」
 「決まっとるやないけ。アレじゃが」
 大輔と幸一が声をひそめていると、ガチャンと大きな音がした。テーブルの上で食器か何かが倒れて割れたような、そんな音だった。
 続いて、「ヒーッ」という悲鳴が聞こえた。
 「下のコレな、けっこう、荒っぽいのが好きみたいなんや」
 大輔が、幸一に耳打ちしたときだった。
 「イヤーッ! そんなんせんといて。なぁ……あ、止めて。イ、イヤッ……」
 ピシッ、バシッ――と、何かを打ち付ける音がして、そのたびに「ヒーッ」と悲鳴が挙がった。
 「きょうは、一段と激しいみたいやで。オイ、見に行こうか?」
 「エッ!? 見る……って、オイ、大輔」
 止める間もなく、大輔はそっと襖を開けて、階段に足を踏み出した。
 「シッ」と口に指を当てて、手招きする。
 おまえもついて来い――という合図だった。
 幸一は、足音を立てないように忍び足でその後に従った。
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