「政治の季節」は、なぜ、終わったのか?

反戦⇒反体制の運動が退潮すると共に、若者たちに広がったのは「脱政化」の動き。音楽の世界にも変化が…。「反戦フォーク」から「四畳半フォーク」へと変わったフォークソングは、この時代――。
Talker
シランケン・重松シュタイン 自ら著作を手がけるエッセイスト&作家。
当ブログの管理人です。旧ペンネーム/長住哲雄
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
【今回のキーワード】 内ゲバ 四畳半フォーク ニューミュージック
AKI 1970年代に入って、学生運動が下火になるにつれ、「反戦フォーク」からも政治的メッセージが薄れていき、「四畳半フォーク」と呼ばれる新しいフォークの世界が生まれた。前回は、そんな話をしたんですよね。
シランケン ハイ、若者たちは「政治」に疲れちゃったんですね。しかし、私に言わせるなら、疲れさせちゃった――と言うべきかもしれない。
AKI 疲れさせた? だれが?
シランケン 当時、学生運動を指導していたリーダーたちが――です。戦後の日本の学生運動というのは、多かれ少なかれ、マルクス主義の影響を受けていたんですが、マルクス主義の思想には、いろんな流れがありました。それを解説していると、本を何冊も書くほどの量になってしまいますので、ここでは省略します。しかしね、学生運動をリードしてきた各党派は、運動に対する当局の弾圧が厳しくなり、街頭での実力闘争を押さえ込まれるようになると、ますます、その思想を先鋭化させていきました。
AKI 先鋭化? つまり、鋭くなった――ということですか?
シランケン 尖っていった……ということですね。「セクト」と呼ばれた各党派は、競うようにその路線を過激化させていき、過激化させていくほどに、その路線をめぐって内部対立も生じて、分裂していく組織もあり、さらにその分裂した組織同士が流血のバトルを繰り広げたりしました。
AKI 分裂して、バトル――って、なんだかそれ、暴力団の抗争みたいですね?
シランケン ちょっと違いますけど、しかし、悪の組織であろうと、善の組織であろうと、残念ながら、組織っていうものは、組織が組織である限り、必ず、そういう経緯を辿ります。ほんとうなら、大きな目標に向かって「大同団結」すべきところを、「小異分裂」していくんですね。悲しいことに、追い込まれるほど、分裂していくんです。
AKI ホント、悲しいことですね。新選組の末路みたい……。
シランケン 新選組? そう言えばそうですねェ。学生運動も、最後は、強大な敵に立ち向かうよりも、分裂した組織同士の抗争のほうが目立ってしまい、世間はそれを「内ゲバ」と呼んだりしていました。そういう運動の姿に、一般大衆はウンザリしてしまったんでしょうね。1970年代に入ると、学生運動も、反戦フォークのようなメッセージ性の強いフォークも、「パトス=情熱」を失っていきました。
AKI 情熱を失った運動は、その後、どうなっちゃったんですか?
シランケン 2通りありましたね。
これも、若者たちの間には広がっていきました。
AKI シランケンはどっちだったんですか?
シランケン 「脱政治化」はしたかもしれませんが、「右傾化」はしませんでしたね。ただ、静かに余生を過ごそう――と。
AKI よ、余生ですと? 20代で……? そりゃないでしょ?
シランケン ハイ、若者たちは「政治」に疲れちゃったんですね。しかし、私に言わせるなら、疲れさせちゃった――と言うべきかもしれない。
AKI 疲れさせた? だれが?
シランケン 当時、学生運動を指導していたリーダーたちが――です。戦後の日本の学生運動というのは、多かれ少なかれ、マルクス主義の影響を受けていたんですが、マルクス主義の思想には、いろんな流れがありました。それを解説していると、本を何冊も書くほどの量になってしまいますので、ここでは省略します。しかしね、学生運動をリードしてきた各党派は、運動に対する当局の弾圧が厳しくなり、街頭での実力闘争を押さえ込まれるようになると、ますます、その思想を先鋭化させていきました。
AKI 先鋭化? つまり、鋭くなった――ということですか?
シランケン 尖っていった……ということですね。「セクト」と呼ばれた各党派は、競うようにその路線を過激化させていき、過激化させていくほどに、その路線をめぐって内部対立も生じて、分裂していく組織もあり、さらにその分裂した組織同士が流血のバトルを繰り広げたりしました。
AKI 分裂して、バトル――って、なんだかそれ、暴力団の抗争みたいですね?
シランケン ちょっと違いますけど、しかし、悪の組織であろうと、善の組織であろうと、残念ながら、組織っていうものは、組織が組織である限り、必ず、そういう経緯を辿ります。ほんとうなら、大きな目標に向かって「大同団結」すべきところを、「小異分裂」していくんですね。悲しいことに、追い込まれるほど、分裂していくんです。
AKI ホント、悲しいことですね。新選組の末路みたい……。
シランケン 新選組? そう言えばそうですねェ。学生運動も、最後は、強大な敵に立ち向かうよりも、分裂した組織同士の抗争のほうが目立ってしまい、世間はそれを「内ゲバ」と呼んだりしていました。そういう運動の姿に、一般大衆はウンザリしてしまったんでしょうね。1970年代に入ると、学生運動も、反戦フォークのようなメッセージ性の強いフォークも、「パトス=情熱」を失っていきました。
AKI 情熱を失った運動は、その後、どうなっちゃったんですか?
シランケン 2通りありましたね。
ひとつは、「右傾化」という動き。
世の中の矛盾を批判したりするのではなく、
世間の認める権威に従って身を処していこうとする態度が、
若い人たちの間に広がっていきました。
もうひとつは、「脱政治化」の動き。
社会や政治のリアルな世界から身を退いて、
小さな自分たちの世界を大事に生きていこうとする、
まさに「四畳半フォーク」が描くような世界。
世の中の矛盾を批判したりするのではなく、
世間の認める権威に従って身を処していこうとする態度が、
若い人たちの間に広がっていきました。
もうひとつは、「脱政治化」の動き。
社会や政治のリアルな世界から身を退いて、
小さな自分たちの世界を大事に生きていこうとする、
まさに「四畳半フォーク」が描くような世界。
これも、若者たちの間には広がっていきました。
AKI シランケンはどっちだったんですか?
シランケン 「脱政治化」はしたかもしれませんが、「右傾化」はしませんでしたね。ただ、静かに余生を過ごそう――と。
AKI よ、余生ですと? 20代で……? そりゃないでしょ?
シランケン でも、そういう人、けっこういたんですよ、われわれの時代には。運動に挫折して疲れちまったんでしょうね、ふつうに日本の企業に就職して、自分たちが拒否してきた秩序に組みこまれることを拒み、インドなどに流浪の旅に出るやつもいたし、日本の寒村で農業を始めたりする人もいました。その生き方は、若くして、まるで「世捨て人」のようだ――と感じたりもしたものです。
AKI よかったですね、重ジイ、世捨て人にならなくて。
シランケン いまでも、世捨て人のようなもんですけどね。
「政治的」であることを止めるということは、
「世捨て人」になるのと同じ
「世捨て人」になるのと同じ
――と思うんですよ、私は。
AKI 「政治的」を止めるだけで? 他に趣味なかったんですか?
シランケン 「政治」は「趣味」じゃありませんッ! 全人格的に関わらなきゃいけない問題ですから、本気で取り組もうと思ったら、エネルギー使うし、疲れちゃうんですッ!
AKI エーッ、疲れるんですか、たかが政治で?
シランケン 「たかが……」なんぞとおっしゃらないでくださいよ。そうい言い方する人、シランケンは、「嫌い」になっちゃいますゾ。
AKI あら、そりゃ大変。では、「たかが」だけど「されど……」。これでいかがでしょう?
シランケン ま、いいでしょう。いいですか、AKIクン、「政治的である」ということは、どういう仕事を選んで、そこで何を主張し、どんな人間関係を形成するか、そして、その結果、どういう社会の建設を目指すか……という、それらすべてを含んだ、人としてのありようを求め続ける生き方――と言っていいかと思います。しかし、それを続けるのは、決してラクじゃない。疲れてしまうわけです、考え続けることに。
AKI それで、もう、政治は止めた――って? ドロップ・アウトしちゃうわけですね?
シランケン 1970年代は、そういう時代になりました。
AKI 音楽は、どうなっちゃったんですか?
シランケン 「反戦フォーク」の後には、「四畳半フォーク」の時代がやって来るんですが、「四畳半フォーク」の時代は、そんなに長くは続きませんでした。
AKI 残念。『神田川』とか、よかったのに……。
シランケン 曲としてはね。しかしね、AKIクン、その頃から、住宅事情が劇的に変わり始めました。まず、賄付きの「下宿」という住宅スタイルが、激減しました。四畳半ひと間とか、三畳ひと間という「貸し間」スタイルも、消えていきました。そういう部屋は、「1K」とか「1DK」というアパートスタイルに変わっていき、金のない学生でも、そういう部屋に住むようになりました。つまり、「四畳半フォーク」の舞台となった住居が、世の中全体に消えて行き、歌のリアリティも失われていったわけです。
AKI しょうがないと言えば、しょうがない……か。高度成長まっ盛りの時代ですものね。で? その後にやって来たのは?
シランケン 「ニューミュージック」と呼ばれるようになったジャンルです。その旗手となったのは、吉田拓郎とか井上陽水とか荒井由実(現在のユーミン)とかであったわけですが、この話を始めると長くなっちゃうんですよね。
AKI ハイ、では次回に。それまで、感染なさいませんように。
筆者の最新刊官能小説です!
盆になると、男たちがクジで「かか」を交換し合う。
明治半ばまで、一部の地域で実際に行われていた
「盆かか」と呼ばれる風習。本作品は、その風習を
題材に描いた官能フィクションです。
与一の新婚の妻・妙も、今年は、クジの対象になる。
そのクジを引き当てたのは、村いちばんの乱暴者・権太。
権太との三日間を終えて帰って来た妙は、その夜から、
様子が変わった。その変化に戸惑う与一は、
ある日、その秘密を知った??。
筆者初の官能作品、どうぞお愉しみください。
2020年9月発売 定価:200円 発行/虹BOOKS
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管理人は常に、下記3つの要素を満たせるように、脳みそに汗をかきながら、記事をしたためています。
あなたの押してくださったポイントを見ては、喜んだり、反省したりの日々です。
どうぞ、正直な、しかしちょっぴり愛情のこもった感想ポチをお送りください。よろしくお願いいたします。



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