DVに走る男が恐れているものの「正体」

File-58 DVに走る男が恐れているものの「正体」
怒っているけど、その怒りの対象は強大。
そんなとき、小心な人間ほど、
「怒りのホコ先」を自分の周りの
「弱い存在」に向けようとします。DVも、
動物虐待も、その結果、起こること——。
「怒っている人」は、ほんとうは「恐れている人」だ――という話を、前回のこのシリーズでお話しました。
参考記事
File-57『「怒っている人」は、ほんとうは「恐れている人」』
「怒り」の背後には、しばしば、「恐怖」がひそんでいる場合が多い。しかし、人は、そんな「恐怖」を感じていることなど、他人に知られたくないし、自分でも認めたくない。なので、「怒り」を発する元となった「恐怖」のほうは、通常、隠蔽されてしまう。
前回は、そんな話をしたわけですが、隠しているのは、「恐怖」だけではありません。
「だれ」に対して怒っているのか――という「怒りの対象」。これもまた、隠されている場合が多い、という話を、今回はしてみようかと思います。

「妻に手を挙げる男」が、ほんとうに怒っているものは?
妻や恋人に暴力を振るう男性がいます。実際に殴ったり蹴ったりするDV男もいますが、「バカ」「クズ」などと言葉で相手を責めるタイプもいます。
R恵さんの夫・T彦さんも、そんな男のひとりです。
最初は、やさしかったのだそうです。
仕事をしながら家事もこなすR恵さんを気遣って、「疲れてないか? ムリしなくてもいいよ」などと、やさしい言葉もかけてくれました。しかし、その「ムリしなくていいよ」が「ムリするなよ」に変わり、そこに「どうせ大した仕事してないんだろ」のひと言が加わるようになり、ついには「仕事なんか止めちまえよ!」になるのに、そんなに時間はかかりませんでした。
ある日のことです。会社の同僚たちと飲んで帰ったR恵さんに、いきなり、T彦さんの手が飛んできました。
こんな時間まで、どこで遊んでんだよ。オレが大変な思いして、やっと、仕事片づけて帰って来たってのによ、おまえは、会社でお遊び半分の飲み会かよ!
それ以来、何かと理屈をつけては、夫はR恵さんに手を挙げるようになりました。 よくあるDVのパターンです。
しかし、R恵さんには、自分がなぜ怒られなければならないのか、その理由がわかりません。もしかして、この人、会社で面白くないことでもあったのだろうか――と、想像するしかありませんでした。
R恵さんの想像は、的外れではありませんでした。それから数カ月後、T彦さんは会社を辞め、転職するのですが、それとともに妻への暴力も治まったからです。
この話に出てきたDV夫・T彦さんの「怒り」は、一見、妻のR恵さんに向けられているように見えますが、実は、そうではありませんでした。T彦さんが勤めていた会社は、社員にサービス残業を強要する、上司や会社への精神的服従を強いる、社訓を唱和させる……などの、いわゆる「ブラック企業」でした。
ノルマが達成できずに、毎日のように「バカ」「クズ」などの言葉を浴びせられるT彦さんの頭の中では、会社や上司に対する「怒り」が渦を巻き、噴出寸前の状態になっていました。
しかし、それを会社にぶつけてしまうと、組織の中で自分の居場所がなくなってしまう。行き場のない「怒り」は、妻のR恵に向けられた――というのが真相だろうと、私は推測します。

File-57『「怒っている人」は、ほんとうは「恐れている人」』
「怒り」の背後には、しばしば、「恐怖」がひそんでいる場合が多い。しかし、人は、そんな「恐怖」を感じていることなど、他人に知られたくないし、自分でも認めたくない。なので、「怒り」を発する元となった「恐怖」のほうは、通常、隠蔽されてしまう。
前回は、そんな話をしたわけですが、隠しているのは、「恐怖」だけではありません。
「だれ」に対して怒っているのか――という「怒りの対象」。これもまた、隠されている場合が多い、という話を、今回はしてみようかと思います。

「妻に手を挙げる男」が、ほんとうに怒っているものは?
妻や恋人に暴力を振るう男性がいます。実際に殴ったり蹴ったりするDV男もいますが、「バカ」「クズ」などと言葉で相手を責めるタイプもいます。
R恵さんの夫・T彦さんも、そんな男のひとりです。
最初は、やさしかったのだそうです。
仕事をしながら家事もこなすR恵さんを気遣って、「疲れてないか? ムリしなくてもいいよ」などと、やさしい言葉もかけてくれました。しかし、その「ムリしなくていいよ」が「ムリするなよ」に変わり、そこに「どうせ大した仕事してないんだろ」のひと言が加わるようになり、ついには「仕事なんか止めちまえよ!」になるのに、そんなに時間はかかりませんでした。
ある日のことです。会社の同僚たちと飲んで帰ったR恵さんに、いきなり、T彦さんの手が飛んできました。

それ以来、何かと理屈をつけては、夫はR恵さんに手を挙げるようになりました。 よくあるDVのパターンです。
しかし、R恵さんには、自分がなぜ怒られなければならないのか、その理由がわかりません。もしかして、この人、会社で面白くないことでもあったのだろうか――と、想像するしかありませんでした。
R恵さんの想像は、的外れではありませんでした。それから数カ月後、T彦さんは会社を辞め、転職するのですが、それとともに妻への暴力も治まったからです。
この話に出てきたDV夫・T彦さんの「怒り」は、一見、妻のR恵さんに向けられているように見えますが、実は、そうではありませんでした。T彦さんが勤めていた会社は、社員にサービス残業を強要する、上司や会社への精神的服従を強いる、社訓を唱和させる……などの、いわゆる「ブラック企業」でした。
ノルマが達成できずに、毎日のように「バカ」「クズ」などの言葉を浴びせられるT彦さんの頭の中では、会社や上司に対する「怒り」が渦を巻き、噴出寸前の状態になっていました。
しかし、それを会社にぶつけてしまうと、組織の中で自分の居場所がなくなってしまう。行き場のない「怒り」は、妻のR恵に向けられた――というのが真相だろうと、私は推測します。

「弱いもの」へと向かう、「強いもの」への怒り
「怒り」を「怒りの対象」に向けてぶつけるわけにはいかない――という場面に、私たちはしばしば遭遇します。相手が上司とか会社とか、ときには社会全体……というふうに強くて大きすぎて、「怒り」をぶつけたら、自分がつぶされてしまうというケースです。
こんなとき、治まりきらない「怒り」はどこへ行くでしょうか?
たいていの場合は、グッとガマンして、脳の奥にしまい込まれてしまいます。
あるいは、気晴らしに飲んで騒いで発散させてしまおうとする人もいるかもしれません。
しかし、それではすまない人たちもいます。そういう人たちの中には、もっと手近な方法で、治まりのつかない「怒り」を解消しようとする人たちもいます。
行き場のない「怒り」を解消する「手近な方法」。
それは、「自分より弱い存在」に「怒りの矛先」を向けるという方法です。上司に「怒り」をぶつけたいのに、それができないから、今度は、自分の部下に当たりちらす。会社に文句を言いたいのに、それができないから、家庭で妻や子どもに手を挙げる。
強いものにぶつけられない「怒り」を、非力なものに振り向けて、精神のバランスを取ろうとするわけで、心理学的には、こういうプロセスを「置換」と言います。
「怒り」をぶつけられる側は、たまったものではありません。自分は何もわるいことをしてないのに、「怒りの矛先」だけを向けられるわけです。とばっちりもいいところです。
DVの多くは、こうした「置換」の結果――と見ることもできます。しかし、この「置換」という精神の作業は、もっと恐ろしい結果を生み出す場合もあります。

「土下座しろ!」という要求は、「犯罪」です
「置換」によって行われる「弱い者いじめ」は、もっとも力の弱いものを対象に行われます。DVの場合、その対象は「妻」であることが多いのですが、そのうち、「子どもの虐待」へとエスカレートすることもあります。
矛先は、家庭内とは限りません。弱い対象を求めて「動物虐待」へと向かう場合もあるでしょうし、さらに、「社会的弱者」へ向かう場合も考えられます。
最近、目立つ現象の中に、「度を過ぎたクレーム」というのがあります。飲食店やコンビニの店員などに向かって、「サービスがわるい。土下座しろ!」などと要求する事例もあります。
これも、一種の「置換」行為と言えなくはありません。「土下座しろ」などと要求する客は、「サービス業の従業員なら、客に歯向かえないだろう」と弱点を見越した上で、「怒りの矛先」をぶつけてきているわけです。
しかし、ここまで来ると、その行為は「犯罪」です。「土下座しろ!」は「強要罪」、そこで金品を要求すると「恐喝罪」が成立してしまいます。先頃も、滋賀県大津市のボーリング場で、「年齢確認」を求めた従業員に怒った客が「土下座しろ!」と詰め寄る事件が起こりましたが、この客には「強要罪」が適用され、懲役8カ月の実刑判決が下されてしまいました。
こうした「置換」行為が引き起こす最大の事件は、無差別殺傷事件です。
行き場のない「怒り」を、無力な通行人などに振り向けてしまうわけですが、「怒りの矛先」を隠蔽するという精神の活動は、行き過ぎると、そういう重大犯罪にまで発展してしまうことがある。このことは、頭に入れておいたほうがよさそうです。
ここまでくると、もはや、個人のレベルでは対応のしようがありません。

仮に、あなたが土下座を要求されたりしたときには、これくらいは毅然と言えるようにしておくのも、ひとつの方法です。
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