「怒っている人」は、ほんとは、「恐れている人」

疑いの目「愛」はときどきウソつき
 File-57  「怒っている人」は、ほんとは、「恐れている人」

あなたに「怒り」を振り向けてくる人がいたら、
実は、その人は、あなたの何かを「恐れて」
いるのかもしれません。それは何か?
通常は隠されているその正体を見誤ると、
あなたはその怒りに、対処できないかも…。




 「怒り」は、たいていの場合、「恐怖」に対する「防御反応」である。
 前回の「愛は、ときどきウソつき」(参照『その人が、あなたに怒っている「人に言えない理由」』)では、そんな話をしました。
 では、その人の「怒り」は、どんな「恐怖」から生み出されたのでしょう?
 それを知ることは、その「怒り」と正しく向き合うためにも、必要なことではあるのですが、本人さえ自覚してない場合もある「隠された恐怖」の正体を見破ることは、そんなに簡単ではありません。

悪魔女
「怒る人」が恐れているものの正体は?

 人が、「恐怖」を感じる理由は、いろいろです。何に「恐怖」を感じるかは、その人の環境や育ち方によっても変わってきます。しかし、その中で、人が「隠したい」と思うほどの「恐怖」は、そんなに多くはありません。
 主なものを、「恐怖」の度合いが強いと思われる順番に、並べてみましょう。

 〈1〉肉体的危害への恐怖 

 殺されるかもしれない、傷つけられそうだ……など、肉体に加えられる脅威に対する恐怖。動物であれば、本能的に「防御スイッチ」が入る最大級の脅威です。
 この「恐怖」を感じると、人は2種類の異なる反応を見せます。
 闘争心の旺盛な人は、自分の体を大きく強く見せようと筋肉を強張らせ、グイと胸を張り、相手をニラみつけるような視線を送り、口からは、「何だ、このヤロー!」とか「何よ、あんた!」などの戦闘的な「怒り」の言葉が飛び出します。
 一方、闘争心が強くない人は、身を縮め、目を逸らし、声をひそめて、脅威が去るのをじっと待ちます。

 〈2〉財産を奪われる恐怖 

 文字通り、自分の築いた財産を奪われる、金品を強奪される……という脅威に対する恐怖です。動物の世界で言うと、「エサを奪われる」脅威。生存を脅かされる脅威でもあるので、これも、本能的に「防御スイッチ」が入ります。
 経験した方もいらっしゃるかと思いますが、エサを食べている犬の食器に手を近づけたりすると、気の荒い犬は、歯をむいてうなり声を挙げます。
 人間の世界にも、「食い物の恨みは怖い」という言葉がありますが、近代人にとっては、「食い物」よりも「金品」や「財産」。しかし、それを「守りたい」があまり表面に出すぎると、「あいつは金の亡者」などと思われてしまうので、この恐怖も、隠されることが多くなります。

 〈3〉愛を奪われる恐怖 

 自分の伴侶(妻・夫、恋人など)や子どもを奪われる、危害を加えられる……などの脅威に対する恐怖。「愛を」と言いましたが、正確には「遺伝子を」と言ったほうがいいかもしれません。
 動物にとって、「己の遺伝子を守れ」は、至上の指令です。特に、自分では生命を生み出すことのできないオスにとって、これは深刻な指令です。のんびり構えていると、他のオスにメスを寝取られ、こっそり遺伝子を仕込まれてしまうかもしれないので、自分の伴侶に近づくオスがいると、本能的に「防御スイッチ」が入って、「怒り」をむき出しにするわけです。
 人間も、ほんとは同じはずなのですが、そんな「恐怖」を感じるたびに「怒り」の行動を起こしていると、オス同士は、延々と殺し合いをしなければならなくなりますので、社会的なルールを作って、その「怒り」を封じ込める制度を作り上げました。
 人間の場合は、メスも同様の「恐怖」を感じますが、人間のメスが他のメスに感じる「恐怖」の正体は、「遺伝子を奪われる恐怖」ではなくて、「財産を奪われる恐怖」に近いだろうと思われます。
 
 〈4〉ナワバリを侵される恐怖 

 「ナワバリ」には、「身体的ナワバリ」と「支配権のナワバリ」があります。
 「身体的ナワバリ」は、自分の体の周囲に「それ以上近づくな」と張り巡らされた警戒領域のこと。心理学の世界では「パーソナル・スペース」とも呼ばれ、そのスペースは、相手と親密になるほど小さくなります。親しくない他人がその領域に侵入しようとすると、体が本能的に回避行動をとったり、闘争態勢をとったり、言葉で「近すぎます!」と警報を発したりします。
 「支配権のナワバリ」は、所有する土地や管轄する仕事の範囲、自分がボスとして束ねる部下や仲間や家族といった集団を囲い込むために、境界線のように張り巡らされた「意識のナワバリ」です。
 この領域に他者が足を踏み入れようとすると、やはり、人は「防御行動」をとります。人の土地に勝手に足を踏み入れると、「侵入者」として撃退しようとします。忙しそうだから手伝おうとしたのに、「オレの仕事に手出しするな」とムッとする人もいます。よその部署の人間にうっかり手伝いを頼むと、「人の部下を勝手に動かすな」と怒り出す人もいます。
 こちらのナワバリは「意識のナワバリ」ですから、「防御行動」も本能的にではなく、意識的な行動として表されます。

 〈5〉地位・序列を失う恐怖 

 会社や学校、各種のグループなどで、自分が得た地位や序列が脅かされることに対する恐怖。地位が上の人間ほど、この脅威に対する恐怖が強くはたらき、下位にいる人間が自分を越えてのし上がる気配を感じると、「防御スイッチ」が入ります。
 こうした恐怖に対する「防御行動」は、「群れ」という社会を形成するサルなどの世界でも、しばしば見られますが、サルよりは複雑な階級を形成する人間社会の場合、その表れ方も、程度も、もう少し複雑です。
 こういう「恐怖」は、まったく感じないという人もいれば、ものすごく敏感に感じるという人もいます。
 敏感なタイプが上司だったりすると、部下は、かなり気を遣わされます。上司の指示に「お言葉ですが……」などと異議をはさむと、「キミはだれに向かって口をきいてるんだ」「××のくせに生意気な」といった言葉で反撃を食らいます。上司を飛び越えて、その上の幹部に自分の考えを提案したりすると、「そういう話は、まず私を通せ」と、目をむいて怒られます。
 男と女の間、先輩と後輩の間、友だち同士の間でも、「序列や順番」が問題になることがあります。たとえば、自分の彼女が恋人である自分を差し置いて、何かを自分の友人や先輩に相談した――としましょうか。女性はあまり気にしないのですが、たいていの男は、「オレにことわりもなく」と怒るか、露骨に不愉快な顔をします。
 これらもすべて、自分の地位や序列が脅かされたことに対する「防御行動」なのですが、こういう反応を見せるのは、どちらかと言うと、順序にこだわる生きものである男性です。

 〈6〉名誉を失う恐怖 

 こちらは、能力、人格、実績などの「社会的な評価」が脅かされることに対する恐怖。人間だけが感じることのできる、やや高度な恐怖です。
 この恐怖に対して「怒り」という「防御行動」が生み出されるケースは、かなり限られています。
 たとえば、自分の能力や実績が、教師や上司によって不当に低く評価されている、と感じたとき。そのことで、「役立たず」「バカ」などと名誉を損なう言葉を浴びせられたりしたとき。あるいは、心ないウワサを流されたり、誹謗・中傷されたりして、人格を傷つけられたと感じたとき。
 自尊心の強い人間ほど、こういう脅威に直面すると、自分の名誉を守りたいという「自己防御」のスイッチが入り、「怒り」を発動することになるわけです。

 以上、「防御反応」としての「怒り」を引き出す6種類の「恐怖」をご紹介しましたが、これらの「恐怖」は、通常は、隠されています。
 隠されているので、その人の「怒り」がどんな「恐怖」から生み出されたものかを判断するのは、そんなに容易なことではない――と、最初に申し上げました。しかし、想像することはできます。その想像をはたらかせるヒントは、あなたに振り向けられるその人の「怒りの言葉」の中にひそんでいます。

悪魔女
「だれに向かって」と声を荒げる人たちが恐れているもの

 あなたに「怒り」をぶつけてくるその人は、どんな「恐怖」を隠蔽しているのか?
 それを推測する手がかりとなるキーワードやしぐさを、よくある言い方の中から探ってみましょう。

「チッ」と舌を鳴らす・ドンと体をぶつけてくる・ジッとニラみつけてくる――相手を威嚇するようなこういうしぐさの背後には、〈1〉の「肉体的危害への恐怖」がひそんでいると考えられます。
「何か文句あるのか?」「ジロジロ見ないでよ」――目が合っただけで、こういう言葉を返してくる人がいたら、その背後にも、〈1〉の「肉体的危害への恐怖」が隠されていると思っていいでしょう。
「勝手に触るな!」「黙って見るな!」「のぞくな!」――その人の持ち物に触れたり、読んでいる本をめくってみたり、食べている弁当をチラと見たりしただけで、こんな言葉が返ってきたら、その背後には、〈2〉の「財産を奪われる恐怖」がひそんでいると推測できます。
「ひとの女」「ひとの男」「ひとの家」――「ひとの女に手を出して」などというふうに、相手を責める言葉の中にこういうフレーズが頻繁に登場する人は、所有欲の強い人。背後には、〈3〉の「愛を奪われる恐怖」または〈4〉の「ナワバリを侵される恐怖」がひそんでいると考えられます。
「だれに向かって」「××のくせに」――「だれに向かってものを言ってるんだ?」というふうに、怒ったり、叱責したりする言葉の端々に、こんなフレーズ含まれる人は、地位や序列にこだわる人。その背後には、〈5〉の「地位・序列を失う恐怖」が隠されていると思って間違いありません。
「××も知らないの?」「常識だろ、そんなの!」――説教したり、怒ったりするときに、こんな余計なひと言を付け加えたがる人たちがいます。こういう人たちが守りたいのは、「自分のほうがおまえより上」というプライドです。その背後には、〈5〉の「地位・序列を失う恐怖」または〈6〉の「名誉を失う恐怖」がひそんでいると推測できます。
「おまえのせいで……」「おまえのために……」――「おまえのせいで」と責任をかぶせ、「おまえのために」と恩を着せる。何かにつけてこういうフレーズが飛び出す人は、相手を支配したいという欲望が強い人です。その背後には、〈4〉の「ナワバリを侵される恐怖」または〈5〉の「地位・序列を失う恐怖」または〈6〉の「名誉を失う恐怖」が隠されている、と考えられます。

 他にもまだあるのですが、きりがないのでこれくらいにしておきましょう。
 その人の「怒り」の正体を見きわめるための参考にしてください。



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