処刑人ピートの憂鬱〈6〉最後の弁明、断末の祈り

第5話 処刑人ピートの憂鬱 6
R18
このシリーズは、性的表現を含む官能読み物です。
18歳未満の方は、ご退出ください。
彼女は2回目の審判の法廷に立った。
「なぜ男装の禁」を破った? という
尋問に、「イギリス兵たちの凌辱」を
訴えた彼女は、「辱めよりは死を」と、
懇願したのだった——。

前回から読みたい方は、⇒こちらからどうぞ。
ここまでのあらすじ イギリス軍の兵士としてフランス軍と対峙していたオレは、あの女の火刑の警備を命じられた。オレたちをさんざん手てこずらせたフランス娘は、火刑台にくくられて、炎に包まれた。あの女がオレたちの前に立ちはだかったのは、1429年5月のことだった。それからフランス軍は連戦連勝。ついにイギリス軍との間に休戦が成立し、シャルル皇太子を王位に就けることができた。しかし、休戦はすぐに終わり、彼女は囚われの身となって、オレたちイギリス軍の砦に幽閉された。「魔女」ではないことを証明するために、男装を解き、女装となって両手両足を鎖でつながれた姿は、オトコをそそった。そこへ公爵がやって来て、その体に跨り、白いケツを振った。屈辱に震えるオルレアンの娘。「オイ、たっぷり濡らしておいたゾ」と公爵はオレたちに目配せした。「後は好きにしろ」ということらしい。オレたちは、牢に吊るされた女の体を貪った。そんな日が続いたある日、女が修道士を呼んでくれ、と懇願した。彼女の口から発せられたのは、「男装に戻りたい」だった。それは、死を覚悟しての懇願だった――
やがて、2回目の審問が開かれた。
審問官たちの尋問の矛先は、ジャンヌが法廷で誓いを立てたにもかかわらず、再び「男装」に戻ったことに向けられた。
異端審問では、被告が異端を認め、心からの改悛の意を示せば、死罪を免れる。
すでにジャンヌは、1回目の審問で、その改悛の意思を示して、「二度と男装はしない」ことを誓っていた。その「禁」を破った。
コーションたちは、そこを鋭く追及した。
追及されたジャンヌは、涙ながらに訴えた――という。
「もし、私の身を修道院内にとどめ置いてくだされたならば、このようなことにはいたらなかったでありましょうに」
「この期に及んで、申し開きをいたすのか?」
「しかし、判事さま。私の身は、度重なる辱めを受けたのでございます。イギリス兵たちによって、来る夜も、来る夜も、繰り返し、繰り返し……」
「それは、そなたが望んだのではないのか? 看守たちを誘惑して、身の自由を得ようとしたのではないのか?」
「そのようなことは、考えも及びませんでした。あの者たちは、暴力をもって私の衣服を剥ぎ、私の貞操を踏みにじったのでございます。無理やりに、口汚くののしりながら、何人も、何人も……」
「看守どもが申すには、そなたも、肉の喜びに震えておった――と聞くが……」
「とんでもないことでございます。私は、苦痛と屈辱に震えていたのでございます。あのような辱めに耐えることは、とても……。それで、罪を重ねることとは知りながら、修道士さまに、男装に戻させてください――とお願い申し上げました。もう、私は、あのような屈辱には、もう、わたくしは……」
言いながら、あの女は、被告人席に泣き崩れ、その声が廷内に響き渡ったのだそうだ。
「その結果、どのような審判が下るかは、存じておったのだな?」
「はい、存じて……おりました。覚悟は、できております。あのような屈辱に耐えよ、と仰せられるのであれば、むしろ、死を与えていただきたい……と」
それが、あの女の最後の弁明だった。
やがて判決が下り、「オルレアンの聖少女」は火刑に処せられることとなった。「火刑」にするということは、遺体を灰にしてしまうということだ。
灰にしてしまうのは、その亡骸が二度と復活できないようにするということだ。
オレたちキリスト教徒にとって、それは、もっとも過酷な処罰ということになる。
それくらい、おエラ方は、あの女の復活を恐れていた――ってわけだ。
審問官たちの尋問の矛先は、ジャンヌが法廷で誓いを立てたにもかかわらず、再び「男装」に戻ったことに向けられた。
異端審問では、被告が異端を認め、心からの改悛の意を示せば、死罪を免れる。
すでにジャンヌは、1回目の審問で、その改悛の意思を示して、「二度と男装はしない」ことを誓っていた。その「禁」を破った。
コーションたちは、そこを鋭く追及した。
追及されたジャンヌは、涙ながらに訴えた――という。
「もし、私の身を修道院内にとどめ置いてくだされたならば、このようなことにはいたらなかったでありましょうに」
「この期に及んで、申し開きをいたすのか?」
「しかし、判事さま。私の身は、度重なる辱めを受けたのでございます。イギリス兵たちによって、来る夜も、来る夜も、繰り返し、繰り返し……」
「それは、そなたが望んだのではないのか? 看守たちを誘惑して、身の自由を得ようとしたのではないのか?」
「そのようなことは、考えも及びませんでした。あの者たちは、暴力をもって私の衣服を剥ぎ、私の貞操を踏みにじったのでございます。無理やりに、口汚くののしりながら、何人も、何人も……」
「看守どもが申すには、そなたも、肉の喜びに震えておった――と聞くが……」
「とんでもないことでございます。私は、苦痛と屈辱に震えていたのでございます。あのような辱めに耐えることは、とても……。それで、罪を重ねることとは知りながら、修道士さまに、男装に戻させてください――とお願い申し上げました。もう、私は、あのような屈辱には、もう、わたくしは……」
言いながら、あの女は、被告人席に泣き崩れ、その声が廷内に響き渡ったのだそうだ。
「その結果、どのような審判が下るかは、存じておったのだな?」
「はい、存じて……おりました。覚悟は、できております。あのような屈辱に耐えよ、と仰せられるのであれば、むしろ、死を与えていただきたい……と」
それが、あの女の最後の弁明だった。
やがて判決が下り、「オルレアンの聖少女」は火刑に処せられることとなった。「火刑」にするということは、遺体を灰にしてしまうということだ。
灰にしてしまうのは、その亡骸が二度と復活できないようにするということだ。
オレたちキリスト教徒にとって、それは、もっとも過酷な処罰ということになる。
それくらい、おエラ方は、あの女の復活を恐れていた――ってわけだ。

後で聞いたことだが、あの女をルーアンの城の牢獄に幽閉するように仕向けたのは、司教のコーションだった――という。
あのイギリスびいきの司教は、まだ汚れを知らない乙女をオレたちの牢獄に放り込むことによって、その純潔を踏みにじらせ、耐えられなくなった女が、再び、男装に戻ることまでも計算した上で、その身柄を狼たちの檻に送り込んだのかもしれない。
オレたちは、まんまとその計略に乗せられて、あの女の体を貪った。
しかし、そのオレたちには、何のお咎めもなかった。
コーションのやつにしてみれば、「よくやった、おまえたち」ぐらいのものだろう。
ヴィンセントなんかは、女のあそこがどうだったか――なんてことを、他の兵士たちに自慢げに聞かせたりしていたが、オレは、とてもそんな気になれなかった。
オレの耳には、オレのイチモツをブチ込まれ、涙に濡れた顔を振りながら、オレの耳元で唱え続けた女の哀願とも祈りともつかない言葉が、いまも残響のように残っている。
「お許しを、お許しを……」と、女は唱え続けた。
それは、オレに「お願い、止めて」と言っているのか――と、最初は思った。
しかし、違った。
女は、確かに、こう言ったのだ。
「お許しください。汚れしこの身を……。汚したこの者たちの罪を……」
その言葉が耳に残っていたから、オレは、女の最後の願いに応えた。
火刑台にくくられたあの女が、「十字架を、見えるところに」と懇願したとき、オレはその足元に、木の十字架を立てて見せてやった。
その十字架を見ると、女はかすかに微笑んで、安堵したように目を閉じた。
すぐに、その全身を炎が包んだ。

オレたちの戦は、それからも続いた。
オレもヴィンセントもジャックも、各所で繰り広げられる戦闘に駆り出された。
ヴィンセントのやつは、いまでも言う。
「いい女だったなぁ。あの女のあそこを思い出すと、アレがうずうずしてきやがるぜ」
ヴィンセントの言う「いい女」は、あの女には当てはまらないような気がする。
見た目だけで言うなら、特に、オレたちの牢にブチ込まれてきたときのあの女は、どこにでもいる「田舎の小娘」に見えた。
しかし、その精神は、違った。
気高く、清廉な乙女。
あの女が振りかざす旗の下でだったら、オレも、もうちっとましな働きができるだろうに――と思いながら、きょうも、オレはフランス野郎どもとの不毛な戦いに出かけなくちゃならない。
しかし、そこにはもう、オレたちを脅かす旗はない。
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