花嫁の「消えた15分」

第4話 花嫁の「消えた15分」
R18
このシリーズは、性的表現を含む官能読み物です。
18歳未満の方は、ご退出ください。
花嫁の姿が見えない。控え室から、
どこかへ出かけて、戻って来ない
というのだ。もしかして逃げたか。
心配の声が挙がる中、現れた花嫁の
後ろ髪が、何本かほつれていた——。
あれ!? セッちゃんじゃないか……?
白いドレスの裾をからげて、エレベーターに駆け込む女性の姿が、節子に似ていた。
花井節子。その日、私が出席することになっていた結婚式のヒロイン、つまり花嫁だ。
あんなに急いで、どこへ行くのか?
いや、もしかして人違いかもしれない……。
そのまま、控え室に入って、集まった出席者たちとあいさつをかわした。
花井節子は、私たちがいつも昼飯を食べに行くコーヒー・ショップの経営者だった。経営者と言えば聞こえはいいが、7~8人も座ればいっぱいになるカウンターだけの小さな店を、友だちと二人で切り盛りしている、いまで言うならSOHOの女というところだろう。
いつも私たちを笑顔で迎える明るさ。下町育ちで、ときには私たちの背中をドーンと叩いてくれたりもする気風のよさ。それに、ちょっぴり美人でもあったので、編集部の男たちには評判がよく、そのうちの何人かは、彼女を飲みに誘ったりもしていた。
彼女が結婚することになったのは、そんな中のひとりだった。
彼女を誘っていた男たちの中では、いちばん風采の上がらない、地味な男だったが、どうやら、「女将さん気質」の節子は、その男を何とかしたいという思う気持ちが強くなり、それが愛情へと変化していったのだろう――というのが、私たちの観測……というより、下司の勘ぐりだった。

どれ、花嫁と花婿殿にごあいさつでもしておくか――と、新郎新婦の控え室に顔を出してみたのだが、花嫁の姿はなかった。
「あれ!? 花嫁は?」
「ちょっとあいさつに行って来るって、さっき、出て行ったんですよ。どこに行っちゃったんすかねェ?」
「逃げられちまったんじゃないのォ? おまえ、ボーッとしてるから……」
新郎の中田が、心配そうな顔をしている。
ジョーダンでからかったのだが、そう言いながらも、新郎の話が、あわててエレベーターに駆け込む女の姿とダブった。
やっぱり、あれは、節子だったんだ――。
上気した顔で、花嫁がみんなのところにあいさつに現れたのは、それから15分ほど経ってからだった。
「どこ、行ってたんだよ。中田のやつ、花嫁に逃げられたんじゃないか……って、青い顔してたぞ」
「いいんですよ。あの人、ちょっとしたことでうろたえちゃうんだから。もう、きょうだって、落ち着きがなくて、朝からそわそわしっぱなしなの」
「ま、いいじゃないの。こんな、度胸の据わった花嫁が付いてれば、あいつも心配ない。オレたちも安心だよ」
「ンもォ……わたし、そんなに度胸なんかないんですよォ、ほんとは……」
言いながら、片手を頭の後ろに回す。
きっちりセットしたばかりのはずの後ろ髪が、何本かほつれて、うなじにかかっていた。節子はそれを、手で髪留めの中に押し込むと、「さて……」と、ドレスの裾をからげた。
「心配性の新郎が自殺するといけないから、わたし、そろそろ控え室に戻りますね」
クルリと体の向きを変えた節子。そのうなじに、赤い充血の跡が見えた。
白いドレスの裾をからげて、エレベーターに駆け込む女性の姿が、節子に似ていた。
花井節子。その日、私が出席することになっていた結婚式のヒロイン、つまり花嫁だ。
あんなに急いで、どこへ行くのか?
いや、もしかして人違いかもしれない……。
そのまま、控え室に入って、集まった出席者たちとあいさつをかわした。
花井節子は、私たちがいつも昼飯を食べに行くコーヒー・ショップの経営者だった。経営者と言えば聞こえはいいが、7~8人も座ればいっぱいになるカウンターだけの小さな店を、友だちと二人で切り盛りしている、いまで言うならSOHOの女というところだろう。
いつも私たちを笑顔で迎える明るさ。下町育ちで、ときには私たちの背中をドーンと叩いてくれたりもする気風のよさ。それに、ちょっぴり美人でもあったので、編集部の男たちには評判がよく、そのうちの何人かは、彼女を飲みに誘ったりもしていた。
彼女が結婚することになったのは、そんな中のひとりだった。
彼女を誘っていた男たちの中では、いちばん風采の上がらない、地味な男だったが、どうやら、「女将さん気質」の節子は、その男を何とかしたいという思う気持ちが強くなり、それが愛情へと変化していったのだろう――というのが、私たちの観測……というより、下司の勘ぐりだった。

どれ、花嫁と花婿殿にごあいさつでもしておくか――と、新郎新婦の控え室に顔を出してみたのだが、花嫁の姿はなかった。
「あれ!? 花嫁は?」
「ちょっとあいさつに行って来るって、さっき、出て行ったんですよ。どこに行っちゃったんすかねェ?」
「逃げられちまったんじゃないのォ? おまえ、ボーッとしてるから……」
新郎の中田が、心配そうな顔をしている。
ジョーダンでからかったのだが、そう言いながらも、新郎の話が、あわててエレベーターに駆け込む女の姿とダブった。
やっぱり、あれは、節子だったんだ――。
上気した顔で、花嫁がみんなのところにあいさつに現れたのは、それから15分ほど経ってからだった。
「どこ、行ってたんだよ。中田のやつ、花嫁に逃げられたんじゃないか……って、青い顔してたぞ」
「いいんですよ。あの人、ちょっとしたことでうろたえちゃうんだから。もう、きょうだって、落ち着きがなくて、朝からそわそわしっぱなしなの」
「ま、いいじゃないの。こんな、度胸の据わった花嫁が付いてれば、あいつも心配ない。オレたちも安心だよ」
「ンもォ……わたし、そんなに度胸なんかないんですよォ、ほんとは……」
言いながら、片手を頭の後ろに回す。
きっちりセットしたばかりのはずの後ろ髪が、何本かほつれて、うなじにかかっていた。節子はそれを、手で髪留めの中に押し込むと、「さて……」と、ドレスの裾をからげた。
「心配性の新郎が自殺するといけないから、わたし、そろそろ控え室に戻りますね」
クルリと体の向きを変えた節子。そのうなじに、赤い充血の跡が見えた。

披露宴は、定刻通りに始まった。
ひな壇に上がった白いドレス姿の節子に、場内からため息がもれた。
「セッちゃん、いい女だったんだねェ」と、口惜しそうな言葉をもらす者もいた。
「中田は、いい拾い物したなぁ」と、うらやんでみせる者もいた。
肩も鎖骨も見せるローブ・デコルテ。むき出しの肌が、ほんのり、ピンク色に染まっている。胸元からは、豊かな胸が、くっきりとした陰影をのぞかせていた。
「いい女だろ、セッちゃん」
隣に座った村中が、私の肩を突ついてきた。
村中は、私と同期入社の、性格も、仕事の仕方も、ものの考え方も正反対の男だが、なぜか入社以来、妙にウマが合う。「おまえ、セッちゃんなんてどうなの? オレはいい女だと思うよ」と、なかなか彼女を作ろうとしない私に、交際を勧めてきたこともあった。
その村中が、私の耳に口を寄せるようにしてささやいた。
「やってきちゃったよ、さっき」
「ナニ言ってんの、おまえ?」
「上のフロアに部屋とってさ、一発、やらせろってやってきちゃった」
「バカ言ってんじゃないよ」
「なんかさ、このまま、中田の女にしてしまうのがもったいなくてよ。オレは、おまえとくっつけたかったのに、おまえ、気のない返事しかしないし……」
村中は、そういう行動に関してはすばやい。すばやい……というより、思ったことは行動に表さないとすまないタイプだ。
熟慮型の私とは、そこがまず違う。村中にしてみれば、いつまでも行動に移さない私が、じれったく見えたのだろう。
「それで、彼女、素直に応じたのか?」
「素直だよ。素直な女なんだって、あいつは」
「何つって迫った?」
「ほんとは、中田なんかのところに行かせたくない。みんな、そう思ってんだよって。オレも、長住も……って。みんなの想いを、受け止めろ……ってな。そしたら、自分からドレスの裾を上げて、ケツを突き出してきた」
「おまえ、オレの名前まで使ったのか?」
「思ってただろ、おまえだって、あいつを自分の女にしたいって。おまえがグズグズしてるからいけないんだよ」
壇上では、新郎新婦が誓いのキスを交わしていた。
節子の肩を抱き寄せる中田の手が、ブルブルと震えていた。

村中がとった部屋は、階上のシングルだった。
そこへ、村中は、「どうしても、式の前に渡しておきたい大事なものがある」と言って、節子を呼び出した。
あわててやってきた節子が部屋に入ってくるなり、村中は、「やらせろ」と言った。
「ナ、ナニ言ってるの?」
「オレも、みんなも、おまえが中田の女になってしまうのが、残念でしょうがないんだ。長住だって、そう思ってるよ。みんなの想いを受け止めてくれ。おまえが中田の女になってしまう前に」
「そんなの……ひどい……」
節子はためらったが、村中が、「ドレスを上げて、パンツを下ろせ」と言うと、黙って窓のほうへ体を向け、ドレスの裾を両手で腰の上までからげた。
白いドレスの裾から現れた、スラリと伸びた2本の脚。その上で形よく盛り上がったヒップの山。しかし、そのヒップを覆っているのは、ふつうの白い下着だけだった。ドレスで覆われた花嫁の華やぎの下で、節子の「女」は、素の姿をさらしていた。
「手がふさがってるの……」
言いながら、節子は、ヒップを村中のほうに突き出した。
村中は、節子の白い下着を一気にひざの下まで下ろすと、その腰をわしづかみにして、怒張したものをその中心に押し当て、両手で力いっぱい、節子の腰を引き寄せた。
「あ――ッ!」
節子の叫びが、部屋中に響き渡った。
婚礼の客たちが集い、新郎がオロオロと部屋の中をうろつき回るその階上で、節子はグラつく体を窓の手すりをつかんで支え、明るい陽光が遠慮なく差し込む南向きの窓に向かって、歓喜の声を挙げ続けた。
花嫁のドレスは、突き立てた村中の怒張に引っかかって、村中が腰を送り込むたびに、サラサラ……と、衣擦れの音を響かせた。
感極まってくると、節子は背をのけぞらせ、その背を村中の体に預けた。村中は、節子の上体を引き寄せ、その首筋に唇を当てて、吸血鬼のように肌を吸った。
「そんなとこ……跡がついちゃう……あっ、ダメぇ……」
村中が、盛りのついた犬のように腰を震わせ、節子の全身から力が抜けた。
婚礼の昼間。
ふたりの行為を知っているのは、窓から差し込む南の陽光だけだった。
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