自伝的創愛記〈13〉 家の常識と教室のルール

親たちが主張する「家の常識」と、
教師が言う「教室のルール」は、
しばしばぶつかり合った。その
矛盾がボクの思春期を作った――。
家を支配する常識と、教室を支配するルール。
小学校5年から6年にかけての1年半を、ボクは、そんな矛盾の中で過ごすことになった。
それは、けっしておたがいを受け入れることのできない、まったく異質のもの――と、ボクの目には映っていた。
家庭が「私の世界」とするなら、学校は「公の世界」。ボクのローティーンの数年間は、そんな「公・私」の分裂の中で過ぎていった。

「私の世界の常識」を口にするのは、もっぱら親たちだった。
夜遅くまで起きていて、勉強するだけでなく、学級新聞や文集のガリ版切りをやったり、クラスに張り出す掲示物を模造紙で作ったりしているボクを見て、父親がかける言葉は、「そんな役にも立たんことばっかりやらせて、おまえの先生はおかしいっちゃなかか」だったり、「つまらんことばっかりせんで、成績上げんか」だったりした。
母親の言い方はもう少しやさしかったが、「あんまりムリせんときんしゃいよ。他の子はどうでんよか。母さんは、あんたさえ体ば壊さんでおってくれたら、それでよかっちゃけんね」などと、やっぱり、その理屈は、「自分たちがよければ」だった。
「家」という「私組織」には、「自分たちさえよければ」という利己的な動機が働いている。
小6になったボクは、家と学校の往復を通して、そのことにうっすらと気づき、それがまた、「私」と「公」の意識の葛藤を増幅した。
小学校5年から6年にかけての1年半を、ボクは、そんな矛盾の中で過ごすことになった。
それは、けっしておたがいを受け入れることのできない、まったく異質のもの――と、ボクの目には映っていた。
家庭が「私の世界」とするなら、学校は「公の世界」。ボクのローティーンの数年間は、そんな「公・私」の分裂の中で過ぎていった。

「私の世界の常識」を口にするのは、もっぱら親たちだった。
夜遅くまで起きていて、勉強するだけでなく、学級新聞や文集のガリ版切りをやったり、クラスに張り出す掲示物を模造紙で作ったりしているボクを見て、父親がかける言葉は、「そんな役にも立たんことばっかりやらせて、おまえの先生はおかしいっちゃなかか」だったり、「つまらんことばっかりせんで、成績上げんか」だったりした。
母親の言い方はもう少しやさしかったが、「あんまりムリせんときんしゃいよ。他の子はどうでんよか。母さんは、あんたさえ体ば壊さんでおってくれたら、それでよかっちゃけんね」などと、やっぱり、その理屈は、「自分たちがよければ」だった。
「家」という「私組織」には、「自分たちさえよければ」という利己的な動機が働いている。
小6になったボクは、家と学校の往復を通して、そのことにうっすらと気づき、それがまた、「私」と「公」の意識の葛藤を増幅した。

「公」を説くのは、もっぱら教師であり、その教師の指導を受けた生徒たちであり、彼らが構成する「クラス」という組織だった。
「公」は「みんなで」を説いた。
みんなで「統一した」行動をとる。みんなで「共通した」意識を持つ。
「全体」の利益のために、「自分」の利益を犠牲にする。
そうして「みんなで」や「全体のために」を求めながら、その教師は、「個性を主張せよ」とも求めた。
「思ったことがあったら、積極的に手を挙げて、自分の意見を言え」
「何も言わないということは、このクラスなどどうなってもいい――と考えているのと同じだゾ」
級長をやっていたボクやその対抗馬、風紀委員、各班の班長など、先生の目にクラスのリーダーと認められた生徒たちは、特に、「リーダーとしての責務を果たせ」と厳しく求められた。
そうして、教師の求める「公」が厳しくなるほど、その基準は、家庭が求める「私」とぶつかった。

しかし、おとなの世界が求める「公」もまた、統一はできていなかった。
Aという先生は、「全国学力テスト」の成績を重視して、「学校の格」を上げることを主眼にしている。Bという先生は、子どもたちに「自由研究」をやらせるなどして、その「自主性」を育てようとしている。Cという先生は、子どもの礼儀作法を重視して、やたら規律に厳しい。
それぞれの先生のクラスは、その先生の指導法を反映して、生徒たちの気質にも違いが見えた。
「おとなたちの価値観の違い」は、子どもであるボクたちの目にも明らかだった。
時代は、混乱していた。
そんな中でボクたちは揉まれ、そして、その事件は起こった。
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