「帝王」が生まれるには「奴隷」が必要?

余剰生産物を蓄えることができるようになった「金持ち農民」は、広大な土地や権力を手にしていきますが、その段階でどうしても必要となるのが「労働力」。その「労働力」を確保するために生まれたのが「奴隷制」です。その「奴隷」を彼らはどうやって手に入れたのか? 今回は、そんな話を――。
Talker
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
AKI 余剰生産物を生み出すことで、人を雇い、農地を増やしていった「金持ち農民」は、「農園主」から「大農場主」へ――と、進化していく。でも、大きくなればなるほど、「金持ち農民」には、どうしても足りないものが出てくる。それは何?――というところで、前回の話は終わったんですが……。
哲雄 そうでしたね。もう、答えはわかりました?
AKI 全然。まさか船……とかじゃないだろうし。
哲雄 船ですか? 余剰生産物である小麦をワインと交換したいなんてときには、必要になるかもしれませんが、この段階では「どうしても足りないもの」とまでは言えない。もっと「必要不可欠」な何か……なんですがね。
AKI 降参。さっぱりわかりません。
哲雄 ひと言で申し上げると、「労働力」です。金に余裕のできた「金持ち農民」は、生活するのがやっとの「ビンボー農民」の土地を収奪して、ビンボー農民を小作人として働かせたり……ということをやっていたのですが、農場の規模が大きくなるにつれ、それじゃ間に合わなくなります。それに、小作人っていう形じゃ、メチャクチャこき使うというわけにもいかない。
AKI エッ、そうなんですか? 鞭で引っぱたいて働かせてたりしたのか――と思ってました。
哲雄 たぶん、そこまではやらない。小作人と農場主の関係は、地域や文明によってさまざまなんですが、後に欧州などで主流になっていくのは、小作人に区分した農場の一部をまかせて耕作させ、農場主は、そこから収穫される穀物の何割かを地代として徴収するという形でした。日本流に言うと、「年貢」ってやつですね。しかし、農場が巨大になり、大きな権力を手にした「金持ち農民」にとって、そういう小作のシステムをちまちまと維持していくのは、骨が折れるし、面倒くさくもある。もっと手っ取り早く、もっと安価な「労働力」を手に入れる方法はないか?――と考えたわけですね。
AKI あったんですか、そんな方法が?
哲雄 そうでしたね。もう、答えはわかりました?
AKI 全然。まさか船……とかじゃないだろうし。
哲雄 船ですか? 余剰生産物である小麦をワインと交換したいなんてときには、必要になるかもしれませんが、この段階では「どうしても足りないもの」とまでは言えない。もっと「必要不可欠」な何か……なんですがね。
AKI 降参。さっぱりわかりません。
哲雄 ひと言で申し上げると、「労働力」です。金に余裕のできた「金持ち農民」は、生活するのがやっとの「ビンボー農民」の土地を収奪して、ビンボー農民を小作人として働かせたり……ということをやっていたのですが、農場の規模が大きくなるにつれ、それじゃ間に合わなくなります。それに、小作人っていう形じゃ、メチャクチャこき使うというわけにもいかない。
AKI エッ、そうなんですか? 鞭で引っぱたいて働かせてたりしたのか――と思ってました。
哲雄 たぶん、そこまではやらない。小作人と農場主の関係は、地域や文明によってさまざまなんですが、後に欧州などで主流になっていくのは、小作人に区分した農場の一部をまかせて耕作させ、農場主は、そこから収穫される穀物の何割かを地代として徴収するという形でした。日本流に言うと、「年貢」ってやつですね。しかし、農場が巨大になり、大きな権力を手にした「金持ち農民」にとって、そういう小作のシステムをちまちまと維持していくのは、骨が折れるし、面倒くさくもある。もっと手っ取り早く、もっと安価な「労働力」を手に入れる方法はないか?――と考えたわけですね。
AKI あったんですか、そんな方法が?
哲雄 ありましたねェ。少なくとも、ローマ帝国までの古代には、しきりに行われていました。いやいや、古代どころか、南北戦争以前のアメリカでも、盛んに。
AKI わかった、奴隷だ!
哲雄 そうです。奴隷なら、鞭で引っぱたいて過重な労働を強いることだってできる。報酬だって、労働できるギリギリのものを与えておけばいい。労働コストは小作人よりもはるかに安くすむじゃないか――と思ったんですね、「巨大農場主」となった「金持ち農民」たちは。
AKI その奴隷は、どうやって確保したんですか?
哲雄 古代には、主に戦争によって調達していました。戦争をやって負かした相手の国の民を、「奴隷」として自分の国に連れて帰ったりしていたようですよ。
AKI 「労働力」として?
哲雄 男の場合は、たいてい「労働力」としてでしたが、女は召使としてだったり、妻としてだったりしたこともあったようですよ。
AKI エーッ、妻まで?
哲雄 女が足りなくなると、他国の村や街を襲って、女を奪って来るってことまでやっていたようですね。そうして、広大な地域を支配する強大な権力が生まれていきます。その頂点と言えるのが、中東からヨーロッパ全域に至る広大な範囲を領域として手中に収めたローマ皇帝でしょう。しかし、民族大移動後にやって来た封建制の時代に入ると、その権力に陰りが差し、帝国は崩壊していきます。
AKI その理由は?
哲雄 いろんな原因が指摘されていますが、各地に封建領主が成立して、領民をタイトに縛り付けていく中で、広大な領土を単一の価値で支配しようとする「皇帝」という存在は、そぐわなくなったのかもしれません。
AKI そうなると、奴隷という「労働力」は、必要ではなくなるんですか?
哲雄 封建制の時代には、領民は、領主から与えられる小規模な農園を自分たちの力で耕作する権利を与えられる代わりに、年貢を納め、領主に忠誠を誓う――という体制が、欧州でも、日本でも、出来上がっていきました。そういうガチガチに固められた社会の中には、「奴隷」なんぞという「異質なもの」は入り込んでいけなくなりますからね。しかしね、16世紀以降になると、ヨーロッパの列強国は、アジアやアフリカやアメリカに遠征しては、現地を植民地化するようになります。そこで、彼らは何をやったか?
AKI 「奴隷」を確保した――ですか?
哲雄 そうではあるんだけど、彼らを本国に連れて帰るなんていう効率のわるいことはしなかった。連れて帰るんじゃなくて、現地でこき使ったんですね、「労働力」として。そうして、安い「労働力」で生産した生産物を本国に持ち帰れば、宗主国(植民地に自国民を派遣した本国です)に巨万の富をもたらす。実際、イギリス、フランス、スペインなどは、そうした植民地経営によって、潤っていくわけです。帝国主義の時代にはね……。
AKI 帝国主義の時代には? その後には、何か問題が起こったんですね?
哲雄 ハイ、世界中のあちらでもこちらでも。それを語るには、18世紀から20世紀にかけての国際政治・国際経済全体を語らなくてはならないんですが、この話、ちと、長くなりますなぁ。
AKI ハイ、ハイ。では、その話は次回からということにいたしましょうか。
AKI わかった、奴隷だ!
哲雄 そうです。奴隷なら、鞭で引っぱたいて過重な労働を強いることだってできる。報酬だって、労働できるギリギリのものを与えておけばいい。労働コストは小作人よりもはるかに安くすむじゃないか――と思ったんですね、「巨大農場主」となった「金持ち農民」たちは。
AKI その奴隷は、どうやって確保したんですか?
哲雄 古代には、主に戦争によって調達していました。戦争をやって負かした相手の国の民を、「奴隷」として自分の国に連れて帰ったりしていたようですよ。
AKI 「労働力」として?
哲雄 男の場合は、たいてい「労働力」としてでしたが、女は召使としてだったり、妻としてだったりしたこともあったようですよ。
AKI エーッ、妻まで?
哲雄 女が足りなくなると、他国の村や街を襲って、女を奪って来るってことまでやっていたようですね。そうして、広大な地域を支配する強大な権力が生まれていきます。その頂点と言えるのが、中東からヨーロッパ全域に至る広大な範囲を領域として手中に収めたローマ皇帝でしょう。しかし、民族大移動後にやって来た封建制の時代に入ると、その権力に陰りが差し、帝国は崩壊していきます。
AKI その理由は?
哲雄 いろんな原因が指摘されていますが、各地に封建領主が成立して、領民をタイトに縛り付けていく中で、広大な領土を単一の価値で支配しようとする「皇帝」という存在は、そぐわなくなったのかもしれません。
AKI そうなると、奴隷という「労働力」は、必要ではなくなるんですか?
哲雄 封建制の時代には、領民は、領主から与えられる小規模な農園を自分たちの力で耕作する権利を与えられる代わりに、年貢を納め、領主に忠誠を誓う――という体制が、欧州でも、日本でも、出来上がっていきました。そういうガチガチに固められた社会の中には、「奴隷」なんぞという「異質なもの」は入り込んでいけなくなりますからね。しかしね、16世紀以降になると、ヨーロッパの列強国は、アジアやアフリカやアメリカに遠征しては、現地を植民地化するようになります。そこで、彼らは何をやったか?
AKI 「奴隷」を確保した――ですか?
哲雄 そうではあるんだけど、彼らを本国に連れて帰るなんていう効率のわるいことはしなかった。連れて帰るんじゃなくて、現地でこき使ったんですね、「労働力」として。そうして、安い「労働力」で生産した生産物を本国に持ち帰れば、宗主国(植民地に自国民を派遣した本国です)に巨万の富をもたらす。実際、イギリス、フランス、スペインなどは、そうした植民地経営によって、潤っていくわけです。帝国主義の時代にはね……。
AKI 帝国主義の時代には? その後には、何か問題が起こったんですね?
哲雄 ハイ、世界中のあちらでもこちらでも。それを語るには、18世紀から20世紀にかけての国際政治・国際経済全体を語らなくてはならないんですが、この話、ちと、長くなりますなぁ。
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管理人は常に、下記3つの要素を満たせるように、脳みそに汗をかきながら、記事をしたためています。
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