洗濯板に捧げ銃〈3〉 彼女を殺した醜聞

通報を受けて駆け付けた中尾百合は、
そこにいた男に口をふさがれた——。
マリアたちへ 第20話
洗濯板に捧げ銃 第3章

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ここまでのあらすじ 受験校であるボクらの学校に音楽教師としてやって来た中尾百合。ボクらが「ミス・リリー」と呼んだ彼女は、いつも白いブラウスに黒いタイトスカートという合唱団のような格好で教壇に立った。「色気がない」とけなす生徒もいたが、村上たちがどこかから聞き出してきた話は、少し違った。前任の高校は、やや荒れたスクールだった。「お宅の生徒たちが、カラオケハウスで酒を飲んでいる」。通報を受けたリリーは、無防備にもそのカラオケ店に乗り込んだ――
「オイ、おまえら、先生の体、押さえとけ」
男が命じると、3人の生徒たちは、抗う百合の体をソファに押さえつけた。
「この先生、大学出たばかりなんじゃ、ゆうとったの?」
「そ、そうッす」
3人が答えると、男はニヤッとほくそ笑んだ。
「ほんじゃ、まだな~んもしらんのかもしれんのォ。酒の味も、男の味も。おまえらも知りたいじゃろ? この女先生が、どこまで知っとるか、のォ?」
3人がうなずくと、男はいきなり、百合のスカートをめくり上げ、下着に手をかけた。
新人音楽教師・百合の下半身は、たちまちむき出しにされ、男たちの好奇の目にさらされた。
「きれいな色しとるのォ」
「ちっこいワレメじゃのォ……」
「子どもみたいじゃが」
「ほんまじゃ。こんな、まだ男をくわえ込んだこと、ないんと違うか」
男たちは笑いながら卑猥な言葉を口にしては、百合の両脚の奥を押し開き、のぞき込み、撫でまわした。
「止めなさい。止めて。イヤ、イヤーッ!」
足をバタバタさせて叫ぶ百合の口の両端を、男は片手で押さえ、もう一方の手で髪をムンズとつかんで顔を上向かせると、酒臭い息で百合の口を塞いだ。
「ウッ」と口をつぐんで抵抗したが、男は百合の鼻をつまんで呼吸を止め、苦しくて口を開けると、口いっぱいに含んだウイスキーを口から口へと流し込んできた。
百合はむせた。むせる百合の口を塞いで、男は再び、ウイスキーを流し込んでくる。
口の中にも、喉にも、焼けるような刺激が広がった。
頭の中がカーッと熱くなり、それを何度か繰り返されるうちに、教師・百合の意識は、遠のいていった。
男が命じると、3人の生徒たちは、抗う百合の体をソファに押さえつけた。
「この先生、大学出たばかりなんじゃ、ゆうとったの?」
「そ、そうッす」
3人が答えると、男はニヤッとほくそ笑んだ。
「ほんじゃ、まだな~んもしらんのかもしれんのォ。酒の味も、男の味も。おまえらも知りたいじゃろ? この女先生が、どこまで知っとるか、のォ?」
3人がうなずくと、男はいきなり、百合のスカートをめくり上げ、下着に手をかけた。
新人音楽教師・百合の下半身は、たちまちむき出しにされ、男たちの好奇の目にさらされた。
「きれいな色しとるのォ」
「ちっこいワレメじゃのォ……」
「子どもみたいじゃが」
「ほんまじゃ。こんな、まだ男をくわえ込んだこと、ないんと違うか」
男たちは笑いながら卑猥な言葉を口にしては、百合の両脚の奥を押し開き、のぞき込み、撫でまわした。
「止めなさい。止めて。イヤ、イヤーッ!」
足をバタバタさせて叫ぶ百合の口の両端を、男は片手で押さえ、もう一方の手で髪をムンズとつかんで顔を上向かせると、酒臭い息で百合の口を塞いだ。
「ウッ」と口をつぐんで抵抗したが、男は百合の鼻をつまんで呼吸を止め、苦しくて口を開けると、口いっぱいに含んだウイスキーを口から口へと流し込んできた。
百合はむせた。むせる百合の口を塞いで、男は再び、ウイスキーを流し込んでくる。
口の中にも、喉にも、焼けるような刺激が広がった。
頭の中がカーッと熱くなり、それを何度か繰り返されるうちに、教師・百合の意識は、遠のいていった。

百合の一件は、事件になった。
フラフラになった若い女の体を、男3人が運んで来て、公園の植え込みの陰に遺棄していった。
住民からの通報で警察官が駆け付け、引きちぎられた跡のある服の様子などから、警察は、「暴行事件」があったものと推理し、百合の回復を待って事情を聴取した。
中尾百合は、前夜、通報を受けてカラオケ店に向かったこと、そこで酒を飲んでいた自分の学校の生徒3人を見つけ、飲酒を止めさせようとしたが、その場にいた男に体を押さえつけられ、無理やり酒を飲まされて暴行されたこと。しかし、その後のことは、飲まされたアルコールが回っていて、よく覚えていない――と供述した。
百合の供述を受けて、警察は、その場にいた高校生3人を特定して保護し、彼らに酒を飲ませ、百合に暴行を働いた男を青少年保護育成条例違反、婦女暴行の容疑で逮捕した。
暴行によって受けた体の傷も、心の傷も、決して軽くはなかった。
しかし、中尾百合は、気丈な女だった。
教師という仕事と真剣に向き合おうとすると、身に危険が及ぶことがあることも、ある程度は覚悟していた。
その覚悟ができていたのに、自分の行動は、少し無鉄砲すぎたかもしれない――という反省もあった。
そういうことを冷静に振り返ることもできたので、百合はその傷を癒やし、PTSDにも陥らずにすんだ。
しかし、事件から1カ月も経たないうちに、中尾百合は、教職を辞した。
辞職した理由は、暴行によって受けた傷ではなく、世間が浴びせる「好奇の目」だった。

事件は、地元のローカル紙、ローカル放送のニュース番組などで、ひっそりと取り上げられただけだったが、学校内や地元の学区内では、「この女性教師ってだれだ?」という詮索が始まり、たちまち、「この若い音楽教師って、中尾百合のことじゃないか」というウワサが、校内にも学区内にも広がった。
ウワサには、尾ひれがついた。その尾ひれにさらに尾ひれがついて回った。
「この女先生、グデングデンに酔うとったらしいで」
「教え子の男の子たちと飲んどったんかいのォ?」
「学校出たばかりの先生らしいで」
「まだ遊びたい盛りやわのォ」
「もしかして、自分から飲ませたんかもしれんで」
「近頃の若い女先生は、何するやらわからんのォ」
そんなウワサに面白がって飛びつく俗流ジャーナリズムもあった。
『泥酔! 美人女教師、
男子高校生らと酒乱パーティの末のご乱行』
そうして広がる好奇の目に、百合は耐えられなかった。
もう、この街を出るしかない。
決断した中尾百合は、海を渡って、この地にやって来たのだった。
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