始めは、「金持ち農民A」と「貧乏農民B」のちょっとした差

他農業を始めることになって、人間の世界には「貧富の格差」が生まれた——という話をしました。「金持ち農民のA」と「貧乏農民のB」の運命は、その後、どんな展開をたどるのか? 今回は、その仕組みについてお話します――。
Talker
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
【今回のキーワード】 貧富の格差 労働者の誕生
AKI 前回は、「農民A」と「農民B」の話をしたんですよね?
哲雄 農業を始めることによって、「豊かな農民」と「貧乏な農民」が生まれ、そこから貧富の格差が生まれ、さらに巨大な権力が生み出されていった――と、前回は、そこまでお話をしました。本日は、その仕組みについて考えてみようと申し上げたんでしたね。
AKI そうでした。同じ10アールの土地を耕す「農民A」と「農民B」がたどることになった運命について話してくださるということでした。
哲雄 あ、そうでしたね。じゃ、もう一度、前回の復讐からね。「農民A」は1年で400キロの小麦を生産し、そのうち300キロを自らの家族3人で消費(1人当たり100キロ)するとします。余剰生産物として備蓄できる小麦は100キロ。一方の「農民B」は、300キロの小麦しか生産できず、Bは、そのほとんどを自分たち家族3人のために消費してしまいます。余剰できる小麦は、ほとんどありません。これを表にするとこうなります。
AKI 「農民B」は、蓄えを作る余裕がありませんね?
哲雄 そうです。「農民B」は、次の年もその次の年も、自分たち家族が食べていくのにやっと……の小麦を生産し続けるだけ。一向に、豊かにはなってはいきません。しかし、「農民A」には、小麦粉100キロの余裕があります。さて、「農民A」は、この100キロをどう使うでしょう?
AKI よし、小麦余ってるから、スイーツ作っておやつにするかとか……。
哲雄 AKIクンなら、そうするかもしれませんね。でも、それじゃ、ブクブクと太るだけ。頭のいい「農民A」は、そんなことはしないんですね。余剰生産物として手元に残った小麦で、小作人を1人、雇い入れます。小作人が単身であれば、小作人の食い扶持として与える小麦は、1人分の100キロですみます。その小作人を目いっぱい働かせて、300キロの小麦を生産させるとしましょうか。すると、「農民A」のフトコロはどうなるか?
AKI ますます豊かになりますよね?
哲雄 ちょっと簡単な算数をしてみましょうか。
哲雄 農業を始めることによって、「豊かな農民」と「貧乏な農民」が生まれ、そこから貧富の格差が生まれ、さらに巨大な権力が生み出されていった――と、前回は、そこまでお話をしました。本日は、その仕組みについて考えてみようと申し上げたんでしたね。
AKI そうでした。同じ10アールの土地を耕す「農民A」と「農民B」がたどることになった運命について話してくださるということでした。
哲雄 あ、そうでしたね。じゃ、もう一度、前回の復讐からね。「農民A」は1年で400キロの小麦を生産し、そのうち300キロを自らの家族3人で消費(1人当たり100キロ)するとします。余剰生産物として備蓄できる小麦は100キロ。一方の「農民B」は、300キロの小麦しか生産できず、Bは、そのほとんどを自分たち家族3人のために消費してしまいます。余剰できる小麦は、ほとんどありません。これを表にするとこうなります。
農民 | 生産量 | 自ら消費する量 | 余剰生産物 |
---|---|---|---|
農民A | 400キロ | 300キロ | 100キロ |
農民B | 300キロ | 300キロ | 0キロ |
AKI 「農民B」は、蓄えを作る余裕がありませんね?
哲雄 そうです。「農民B」は、次の年もその次の年も、自分たち家族が食べていくのにやっと……の小麦を生産し続けるだけ。一向に、豊かにはなってはいきません。しかし、「農民A」には、小麦粉100キロの余裕があります。さて、「農民A」は、この100キロをどう使うでしょう?
AKI よし、小麦余ってるから、スイーツ作っておやつにするかとか……。
哲雄 AKIクンなら、そうするかもしれませんね。でも、それじゃ、ブクブクと太るだけ。頭のいい「農民A」は、そんなことはしないんですね。余剰生産物として手元に残った小麦で、小作人を1人、雇い入れます。小作人が単身であれば、小作人の食い扶持として与える小麦は、1人分の100キロですみます。その小作人を目いっぱい働かせて、300キロの小麦を生産させるとしましょうか。すると、「農民A」のフトコロはどうなるか?
AKI ますます豊かになりますよね?
哲雄 ちょっと簡単な算数をしてみましょうか。
農民Aの収入
Aの小麦生産量=400キロ + 小作人による小麦生産量=300キロ = 農民Aの総小麦生産量=700キロ
農民Aの支出
Aの自家消費量=小麦300キロ + 小作人に支払う小作料=小麦100キロ = 農民Aの総支出=小麦400キロ
農民Aが手にする余剰生産物
農民Aの総小麦生産量=700キロ - 農民Aの総支出=小麦400キロ = 農民Aが手にする余剰生産物=小麦300キロ
小作人を1人雇い入れることによって、「農民A」の手元に残る「利潤=余剰生産物」は、「小麦100キロ」が「小麦300キロ」へと、一気に3倍になりました。
AKI すご~い!
哲雄 さて、こうして増えた余剰生産物を「農民A」はどうするか? もうわかりますよね?
AKI よし、もっと小作人を増やそう――ですか?
哲雄 オーッ、珍しく正解! そうなんですよ、頭のいい「農民A」は、こう考えます。小作人1人で手元に「余剰」として残せる小麦が200キロ増やせたのだったら、小作人をもう1人増やせば、400キロ増やせるじゃないか。さらに2人増やせば、600キロだなぁ――ってね。表にするとこうなります。
AKI ワオッ! 小作人を10人雇えば、利潤だけで2100キロですか? どうしましょう? 蔵が建つんじゃありませんか?
哲雄 蔵、というか、余った小麦などを保管しておく倉庫のようなものができたでしょうね。しかし、その倉庫は、略奪の対象にもなってしまいますから、「農民A」は、利潤として得た2100キロの小麦の中から200キロを支払って、倉庫を警備する用心棒を2人、配置することにします。こうして、警察とか軍隊の元ができていったと考えられます。ここまで来ると、「農民A」には、さらに欲が出てきます。
AKI もっと大規模に農業を営みたい――ですか?
哲雄 そうですね。そのためには、何が必要でしょう?
AKI 農地ですか?
哲雄 まずは、それです。ひとりで耕作している場合なら、10アールの土地で十分だったとしても、そこに1人、小作人を入れて、耕作する人間が2人になれば、20アールの土地が必要になります。3人なら、30アール。耕地と耕作人数は、ほぼ比例して、必要面積が増えていきます。
AKI それ、どうやって確保するんですか?
哲雄 文明が未開の状態であれば、周囲に広がる荒れ地を開墾すれば、農地はどんどん広げていけます。しかし、周りに未墾の農地候補がない場合には、「農民A」は、蓄積した利潤で、生産力の低い農民の耕地を買い取ってしまう場合もあるでしょう。あるいは、腕ずくで奪い取ってしまうかもしれない。
AKI 奪い取る――って、つまり、略奪?
哲雄 貧しい農民が家族単位で細々と耕作している農地を、力ずくで奪い取ってしまうわけです。何しろ、金持ちの「農民A」は、何人もの小作人を抱え、おまけに蔵を警備するための用心棒まで雇っていますから、家族だけで細々と耕作している「農民B」などのビンボーな農民の耕作地は、簡単に奪い取られてしまいます。農地を奪われるだけではありません。「農民B」は「小作人」として、「農民A」の支配下に取り込まれてしまいます。
AKI 土地だけでなく、人も……ですか。つまり、ビンボーな「農民B」は金持ち「農民A」の「労働力」になってしまうわけですね。
哲雄 ハイ、それが「労働者」の誕生。そうやって土地も「労働力」としての小作人も増やした「農民A」は、「豊かな農園主」から「広大な農場主」へと成長していきます。しかし、そうして農場が大きくなっていくほどに、「農民A」には足りないものが出てきます。
AKI 何だろう? もしかして奥さん?
哲雄 ま、それもなくはないでしょう。場合によっては、奥さんも、その供給元になるかもしれないあるものです。
AKI エッ、何だろ? わかんない……。
哲雄 ようがす。その話は、次回に。
Aの小麦生産量=400キロ + 小作人による小麦生産量=300キロ = 農民Aの総小麦生産量=700キロ
農民Aの支出
Aの自家消費量=小麦300キロ + 小作人に支払う小作料=小麦100キロ = 農民Aの総支出=小麦400キロ
農民Aが手にする余剰生産物
農民Aの総小麦生産量=700キロ - 農民Aの総支出=小麦400キロ = 農民Aが手にする余剰生産物=小麦300キロ
小作人を1人雇い入れることによって、「農民A」の手元に残る「利潤=余剰生産物」は、「小麦100キロ」が「小麦300キロ」へと、一気に3倍になりました。
AKI すご~い!
哲雄 さて、こうして増えた余剰生産物を「農民A」はどうするか? もうわかりますよね?
AKI よし、もっと小作人を増やそう――ですか?
哲雄 オーッ、珍しく正解! そうなんですよ、頭のいい「農民A」は、こう考えます。小作人1人で手元に「余剰」として残せる小麦が200キロ増やせたのだったら、小作人をもう1人増やせば、400キロ増やせるじゃないか。さらに2人増やせば、600キロだなぁ――ってね。表にするとこうなります。
小作人 の数 | 農民Aの 生産量 | 小作人の 生産量 | 総生産量 | 小作人の 報酬 | Aの 自家消費量 | Aの利潤 |
---|---|---|---|---|---|---|
0人 | 400キロ | 0 | 400キロ | 0 | 300キロ | 100キロ |
1人 | 400キロ | 300キロ | 700キロ | 100キロ | 300キロ | 300キロ |
2人 | 400キロ | 600キロ | 1000キロ | 200キロ | 300キロ | 500キロ |
3人 | 400キロ | 900キロ | 1300キロ | 300キロ | 300キロ | 700キロ |
5人 | 400キロ | 1500キロ | 1900キロ | 500キロ | 300キロ | 1100キロ |
10人 | 400キロ | 3000キロ | 3400キロ | 1000キロ | 300キロ | 2100キロ |
AKI ワオッ! 小作人を10人雇えば、利潤だけで2100キロですか? どうしましょう? 蔵が建つんじゃありませんか?
哲雄 蔵、というか、余った小麦などを保管しておく倉庫のようなものができたでしょうね。しかし、その倉庫は、略奪の対象にもなってしまいますから、「農民A」は、利潤として得た2100キロの小麦の中から200キロを支払って、倉庫を警備する用心棒を2人、配置することにします。こうして、警察とか軍隊の元ができていったと考えられます。ここまで来ると、「農民A」には、さらに欲が出てきます。
AKI もっと大規模に農業を営みたい――ですか?
哲雄 そうですね。そのためには、何が必要でしょう?
AKI 農地ですか?
哲雄 まずは、それです。ひとりで耕作している場合なら、10アールの土地で十分だったとしても、そこに1人、小作人を入れて、耕作する人間が2人になれば、20アールの土地が必要になります。3人なら、30アール。耕地と耕作人数は、ほぼ比例して、必要面積が増えていきます。
AKI それ、どうやって確保するんですか?
哲雄 文明が未開の状態であれば、周囲に広がる荒れ地を開墾すれば、農地はどんどん広げていけます。しかし、周りに未墾の農地候補がない場合には、「農民A」は、蓄積した利潤で、生産力の低い農民の耕地を買い取ってしまう場合もあるでしょう。あるいは、腕ずくで奪い取ってしまうかもしれない。
AKI 奪い取る――って、つまり、略奪?
哲雄 貧しい農民が家族単位で細々と耕作している農地を、力ずくで奪い取ってしまうわけです。何しろ、金持ちの「農民A」は、何人もの小作人を抱え、おまけに蔵を警備するための用心棒まで雇っていますから、家族だけで細々と耕作している「農民B」などのビンボーな農民の耕作地は、簡単に奪い取られてしまいます。農地を奪われるだけではありません。「農民B」は「小作人」として、「農民A」の支配下に取り込まれてしまいます。
AKI 土地だけでなく、人も……ですか。つまり、ビンボーな「農民B」は金持ち「農民A」の「労働力」になってしまうわけですね。
哲雄 ハイ、それが「労働者」の誕生。そうやって土地も「労働力」としての小作人も増やした「農民A」は、「豊かな農園主」から「広大な農場主」へと成長していきます。しかし、そうして農場が大きくなっていくほどに、「農民A」には足りないものが出てきます。
AKI 何だろう? もしかして奥さん?
哲雄 ま、それもなくはないでしょう。場合によっては、奥さんも、その供給元になるかもしれないあるものです。
AKI エッ、何だろ? わかんない……。
哲雄 ようがす。その話は、次回に。
筆者の最新実用エッセイ! キンドル(アマゾン)から発売中です!

「好きです」「愛してます」――そのひと言がスラッと口にできたら、この世の恋する男性や女性の心は、ずいぶんとラクになることでしょう。しかし、なかなか言えないんですね、このひと言が。勇気がなくて口にできない。自分は口ベタだからとためらってしまう。
そんな人たちに、「これなら言えるんじゃないか」とすすめるのが、「愛」と言わずに「愛」を伝える「メタメッセージ」の技術。あなたの恋愛の参考書として、お役立てください。
2019年11月発売 定価:600円 発行/虹BOOKS
「好き」を伝える技術: あなたの恋のメタメッセージ・テク (実用エッセイ)
既刊本もどうぞよろしく タイトルまたは写真をクリックしてください。
〈1〉 〈2〉 〈3〉






【1】妻は、おふたり様にひとりずつ
2016年3月発売 定価/342円
【2】『聖少女~六年二組の神隠し』
2015年7月発売 定価122円
【3】チャボのラブレター
2014年10月発売 定価/122円
そんな人たちに、「これなら言えるんじゃないか」とすすめるのが、「愛」と言わずに「愛」を伝える「メタメッセージ」の技術。あなたの恋愛の参考書として、お役立てください。
2019年11月発売 定価:600円 発行/虹BOOKS
「好き」を伝える技術: あなたの恋のメタメッセージ・テク (実用エッセイ)
既刊本もどうぞよろしく タイトルまたは写真をクリックしてください。
〈1〉 〈2〉 〈3〉
2016年3月発売 定価/342円
【2】『聖少女~六年二組の神隠し』
2015年7月発売 定価122円
【3】チャボのラブレター
2014年10月発売 定価/122円

管理人は常に、下記3つの要素を満たせるように、脳みそに汗をかきながら、記事をしたためています。
あなたの押してくださったポイントを見ては、喜んだり、反省したりの日々です。
どうぞ、正直な、しかしちょっぴり愛情のこもった感想ポチをお送りください。よろしくお願いいたします。



→このテーマの記事一覧に戻る →トップメニューに戻る
- 関連記事
-
- 「帝王」が生まれるには「奴隷」が必要? (2020/04/28)
- 始めは、「金持ち農民A」と「貧乏農民B」のちょっとした差 (2020/03/21)
- 「所有」という原罪は、農業とともに始まった (2020/03/03)