「所有」という原罪は、農業とともに始まった

人間は、農業を始めることによって、食糧を「備蓄」できるようになりました。より多く生産できる人間は、より多くの「備蓄」を蓄えることができるようになり、そこから貧富の差も生まれました。その結果――。
Talker
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
【今回のキーワード】 貧富の格差 食糧の備蓄
AKI 紀元前1万年ぐらいに始まった農業が、人類の不幸の始まりでもあった――と、前回は、そんな話をしたんですよね。
哲雄 不幸が始まったわけじゃなくて、人を「不幸」にするかもしれないシステムが誕生したと言ったほうがいいかもしれません。
AKI なんか、イヤなものが始まったようなおっしゃり方ですが……。
哲雄 「イヤなもの」かどうかはともかく、人間が「原罪」として身にまとうことになった「ある性質」です。
AKI それは、何?
哲雄 しいて申し上げるなら、「何かを所有しようとする欲」といったところでしょうか。
AKI つまり「所有欲」? 哲ジイは、
それが人間の「原罪」ではないか
と考えているわけですね。
哲雄 正確に申し上げると、「人より多く所有しようとする欲」ですかね。農業を始める前、狩猟・採集生活を送っていた時代の人間は、一族が食べられるだけの食べ物を、大地から採集したり、狩りをしたりして調達し、それをみんなで分け合って暮らしていました。しかし、そうして獲得する食料は、長期間貯蔵して「富」として蓄えるようなものではありませんでしたから、食べきれないほどの食料を確保したからと言って、一族が他の一族に対して優位に立つということもありませんでした。
AKI 奪い合いとかはなかったんですか?
哲雄 隣の一族は、きのうイノシシを一頭仕留めたらしい。よし、あれ、奪いに行っちゃおう――とか、そういうのはあったかもしれません。でも、そんなことで戦をやってちゃ、身が持たない。小規模なイザコザぐらいはあったかもしれませんが、ま、その程度。モメ事が起こっても、族長と族長が話し合って、「今回は、うちのニワトリ、三羽差し上げるから」とかで話をおさめちゃう。そんなところで手を収めておかないと、一族の成員を失ってしまいますからね。それは、どちらの部族にとっても痛手になりますから。
AKI 争いがあっても大事にはいたらなかった。狩猟採集の世界では、そうして大地の恵みをシェアし合う関係が成立していたわけですね?
哲雄 そう言っていいかと思います。そういう関係の中では、いくつもの部族を束ねるような強大な権力は、生まれようがありません。しかし、農耕という文化の誕生は、そういう人類の状況を一変させました。
哲雄 不幸が始まったわけじゃなくて、人を「不幸」にするかもしれないシステムが誕生したと言ったほうがいいかもしれません。
AKI なんか、イヤなものが始まったようなおっしゃり方ですが……。
哲雄 「イヤなもの」かどうかはともかく、人間が「原罪」として身にまとうことになった「ある性質」です。
AKI それは、何?
哲雄 しいて申し上げるなら、「何かを所有しようとする欲」といったところでしょうか。
AKI つまり「所有欲」? 哲ジイは、
それが人間の「原罪」ではないか
と考えているわけですね。
哲雄 正確に申し上げると、「人より多く所有しようとする欲」ですかね。農業を始める前、狩猟・採集生活を送っていた時代の人間は、一族が食べられるだけの食べ物を、大地から採集したり、狩りをしたりして調達し、それをみんなで分け合って暮らしていました。しかし、そうして獲得する食料は、長期間貯蔵して「富」として蓄えるようなものではありませんでしたから、食べきれないほどの食料を確保したからと言って、一族が他の一族に対して優位に立つということもありませんでした。
AKI 奪い合いとかはなかったんですか?
哲雄 隣の一族は、きのうイノシシを一頭仕留めたらしい。よし、あれ、奪いに行っちゃおう――とか、そういうのはあったかもしれません。でも、そんなことで戦をやってちゃ、身が持たない。小規模なイザコザぐらいはあったかもしれませんが、ま、その程度。モメ事が起こっても、族長と族長が話し合って、「今回は、うちのニワトリ、三羽差し上げるから」とかで話をおさめちゃう。そんなところで手を収めておかないと、一族の成員を失ってしまいますからね。それは、どちらの部族にとっても痛手になりますから。
AKI 争いがあっても大事にはいたらなかった。狩猟採集の世界では、そうして大地の恵みをシェアし合う関係が成立していたわけですね?
哲雄 そう言っていいかと思います。そういう関係の中では、いくつもの部族を束ねるような強大な権力は、生まれようがありません。しかし、農耕という文化の誕生は、そういう人類の状況を一変させました。
AKI 「所有」をめぐる争いが生まれた?
哲雄 そうです。二重の争いが生まれました。
AKI 二重? 何と何の二重ですか?
哲雄 ひとつは、農耕によって収穫された主に穀類などの食糧。そして、もうひとつは、耕作を行うための土地そのものです。実は、ここにこそ、地上に大きな権力が誕生する秘密があったのです。
AKI 農業以前には、人類は、家族単位で暮らしていたんですよね。それが変わった。「所有」できるようになったからなんですね?
哲雄 それまで、小規模な単位で野菜や豆やせいぜいイモ類などを「栽培」して、その日の糧を得ていた人類ですが、農業を始めることによって、その生活は劇的に変化します。「採集」が「耕作と収穫」に代わったのですが、その「収穫物」の中には、収穫してしまうと、長期間保存の利く優れものがありました。
AKI 麦とか、米とか……ですか?
哲雄 そうです。これらの穀類は、収穫の時期になると、穂先に実をつけるのですが、実ってもすぐには地上に落下せず、しばらく穂先にとどまっています。その実を穂先から摘んで脱穀すれば、次の収穫期まで、保管して食べ続けることができる。しかし、この保管には、危険も伴います。
AKI 動物に食われてしまうとか……?
哲雄 ネズミとかですね。それもあるけど、もっとタチのわるい動物もいます。頭の黒いネズミとかね。
AKI 頭の黒い……? もしかして人間?
哲雄 正解! 収穫して保管した穀類は、略奪の対象にもなったんですね。たくさん収穫する農家ほど、それを警戒して頑丈な倉庫を造り、さらに裕福な農家は、それを警備する使用人を使ったりするようにもなった。
AKI つまり、用心棒ってことですか? もしかして……。
哲雄 そう。それが、後に、警察とか軍隊になっていったんじゃないか――と、私は思っています。
AKI 農業が始まると、そういう裕福な農家も出て来るようになったんですね。
哲雄 たぶんですけど、貧富の格差もそういうところから生まれた。想像がつくと思いますけど、「耕作」には、相当な体力を使います。当然のことながら、体力のある人間は、ない人間よりも、より多くの収穫を得ることができる。たとえば、ここに10アールの土地を耕す農民AとBがいるとします。Aは1年で400キロの小麦を生産し、そのうち300キロを自らの家族で消費するとします。余剰生産物として備蓄できる小麦は100キロ。一方の農民Bは、300キロの小麦しか生産できず、Bは、そのほとんどを自分たちのために消費してしまいます。余剰できる小麦は、ほとんどありません。さて、農民Aと農民Bは、その後、どんな運命をたどることになるか?
AKI それ、すごくキョーミある!
哲雄 そこをお話すると、貧富の差がどのようにして生まれ、どのように拡大されていったかを解説することになるのですが、ウーム……ちと、長くなりますなぁ。
AKI でもかまいません。次回、じっくり聞かせてください。
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