妻のガミガミは、なぜ夫の耳に入らないのか?

うちのカミさん、口うるさくて——と嘆いている人も多いかと
思います。しかし妻の小言、ガミガミ言えば言うほど、
夫の耳には入らなくなってしまいます。それはなぜ?
愛が生まれる日本語・殺す日本語 レッスン1-15


世の亭主族の中には、そんな疑問を抱く人も少なくないだろう――と思います。
そうなんです。「女房」という人種は、一度、文句を言い出すと、「あれも、これも……」と、不平や不満が飛び出して、とりとめもなくなってしまう。
たとえば、あなたに繰り出す奥さんの小言は、こんなふうではありませんか?
会話例1 まるで機関銃のように飛び出す妻の小言
妻 もォ、そこらに靴下脱ぎ捨てないでって言ったでしょ。それでなくても、私にはいっぱいやることがあるんだから。あなた、ちっとも協力してくれないんだもん。お風呂の電球だって、取り替えといてねって、もう、1週間も前、ホラ、妹たちが泊まりに来たときに頼んだでしょ。忘れてるんだもんね、コロッと。よく、それで、営業マンが務まるもんだわ。そうそう、明日、出張なんでしょ? 着替え用意しとくから、カバン出しとくのよ。それと、出かけるときにゴミ出すの、忘れないで。明日は生ゴミだからね。
夫 □△!※?×???(←完全に、頭がショートしてます)
妻 ねェ、わかったの?
夫 うるさいなぁ、そんないっぺんに言うなよ。あ~あ。(タバコを吸いにベランダへ)
妻 もォ、そこらに靴下脱ぎ捨てないでって言ったでしょ。それでなくても、私にはいっぱいやることがあるんだから。あなた、ちっとも協力してくれないんだもん。お風呂の電球だって、取り替えといてねって、もう、1週間も前、ホラ、妹たちが泊まりに来たときに頼んだでしょ。忘れてるんだもんね、コロッと。よく、それで、営業マンが務まるもんだわ。そうそう、明日、出張なんでしょ? 着替え用意しとくから、カバン出しとくのよ。それと、出かけるときにゴミ出すの、忘れないで。明日は生ゴミだからね。
夫 □△!※?×???(←完全に、頭がショートしてます)
妻 ねェ、わかったの?
夫 うるさいなぁ、そんないっぺんに言うなよ。あ~あ。(タバコを吸いにベランダへ)
ありがちな会話ではないでしょうか。
賭けてもいいのですが、この夫が言われたことのひとつでも実行する可能性は、限りなくゼロに近いと思います。
エーッ、ひどい! と思う人もいるかもしれませんが、別に、この夫が妻の言うことを軽んじているとかいう問題ではなくて、男の脳は、こんなふうにまくし立てられた事柄をすべて覚えておくような構造には、できてないのです。
『話を聞かない男、地図が読めない女』で一世を風靡したアラン・ピーズ&バーバラ・ピーズは、その続編として書いた『嘘つき男と泣き虫女』(主婦の友社)の中で、こんなことを言っています。
女の脳はマルチトラックになっている――電話でおしゃべりしながらコンピュータを操作し、なおかつ背後で交わされている別の会話を聞いて、しかもコーヒーを飲むことだって朝飯前だ。
男の脳はモノトラックなので、一度にひとつのことにしか集中できない。だから地図を読むときはラジオのスイッチを切るし、自動車を運転中に話しかけられたら、ちがう横道に入ってしまう。
男の脳はモノトラックなので、一度にひとつのことにしか集中できない。だから地図を読むときはラジオのスイッチを切るし、自動車を運転中に話しかけられたら、ちがう横道に入ってしまう。
わかりやすい例を挙げましょう。
目の前に複数のテレビを置いて、それぞれ別の番組を流しても、女性はそれを同時に頭の中に入れる能力を持っているけれど、男は、それでは情報を受け取れないので、「オレは野球を見たいんだ。他のテレビを消してくれ」と言い出す――というわけです。
電池にたとえると、並列型と直列型の違い――と言っていいかもしれません。

この会話例に出てきた妻は、この短いセンテンスの中で、なんと、全部で11個にも及ぶメッセージを発しています。しかも、そのメッセージは、命令あり、泣き言あり、非難あり……と、とりとめがありません。
ちょっと整理してみましょう。
〈1〉 そこらに靴下脱ぎ捨てないでって言ったでしょ――命令の確認
〈2〉 それでなくても、私にはいっぱいやることがあるんだから――泣き言
〈3〉 あなた、ちっとも協力してくれないんだもん――非難
〈4〉 お風呂の電球だって、取り替えといてねって言ったでしょ――命令の確認
〈5〉 ホラ、妹たちが泊まりにきたときに――記憶の喚起
〈6〉 忘れてるんだもんね、コロッと――非難
〈7〉 よく、それで、営業マンが務まるもんだわ――非難
〈8〉 明日、出張なんでしょ――記憶の喚起
〈9〉 着替え用意しとくから、カバン出しとくのよ――命令
〈10〉 出かけるときにゴミ出すの、忘れないで――命令
〈11〉 明日は生ゴミだからね――命令の確認
〈2〉 それでなくても、私にはいっぱいやることがあるんだから――泣き言
〈3〉 あなた、ちっとも協力してくれないんだもん――非難
〈4〉 お風呂の電球だって、取り替えといてねって言ったでしょ――命令の確認
〈5〉 ホラ、妹たちが泊まりにきたときに――記憶の喚起
〈6〉 忘れてるんだもんね、コロッと――非難
〈7〉 よく、それで、営業マンが務まるもんだわ――非難
〈8〉 明日、出張なんでしょ――記憶の喚起
〈9〉 着替え用意しとくから、カバン出しとくのよ――命令
〈10〉 出かけるときにゴミ出すの、忘れないで――命令
〈11〉 明日は生ゴミだからね――命令の確認
どうです?
メッセージの→があっちを向いたり、こっちを向いたりして、とりとめがないと思いませんか?
これを全部、頭に入れるのは、たぶん、聖徳太子でもムリだと思います。
もう一度、思い出してください。
アランとバーバラのピーズ夫妻は、女の脳は「マルチトラック」、男の脳は「モノトラック」だと言いました。私は、男の脳は「直列式」で、女の脳は「並列式」だと思っています。
どちらも似たようなことなのです。要するに、女性は、いろんなメッセージをとりとめもなく横並びにしても、それを同時に理解する能力を持っていますが、男性は、AだからB、BだからC……というふうに、論理的つながりを持ったメッセージを直線的にしか処理できない、ということです。
もし、妻なり恋人なりが、パートナーにある事柄を理解させ、自分の頼みを聞き入れてもらおうとしたら、並列式ではなく、直列式の言い方をしたほうが効果的、ということになります。
ただし、その場合、テーマはひとつに絞ること。一度に複数の依頼をしても、たぶん、男の脳はショートしてしまうので、もし、複数の依頼をしたいのであれば、ひとつのメッセージを相手が完全に受け取ったあとで、少し時間を置いてからにしたほうがいいでしょう。

さて、冒頭の会話例から、もっとも重要なメッセージと思われる「靴下を脱ぎ散らさないで」を抜き出して、これを「直列式」に並び替えてみましょう。
会話例2 夫の脳に入りやすい「お願い」の伝え方
妻 私さ、昼間も仕事してるし、家の中でもやることがいっぱいあって、けっこう大変なのよね。
夫 いつも、わるいなと思ってるよ。
妻 あなたが、ちょっと協力してくれるだけで、私、すごく助かるんだけどな。
夫 おう、何だよ?
妻 あのね、前にも言ったと思うけど、その靴下。あっちこっちに脱ぎ散らかされると、拾い集めるだけでも疲れちゃって、「まったく、この人ったら……」とか思いそうになっちゃうの。そんなふうに思いたくないのよね。だから、ちゃんとランドリー・ボックスに入れといてくれないかなぁ。お願い。
夫 わるかった、わるかった。(夫、靴下を持って立ち上がる)
妻 私さ、昼間も仕事してるし、家の中でもやることがいっぱいあって、けっこう大変なのよね。
夫 いつも、わるいなと思ってるよ。
妻 あなたが、ちょっと協力してくれるだけで、私、すごく助かるんだけどな。
夫 おう、何だよ?
妻 あのね、前にも言ったと思うけど、その靴下。あっちこっちに脱ぎ散らかされると、拾い集めるだけでも疲れちゃって、「まったく、この人ったら……」とか思いそうになっちゃうの。そんなふうに思いたくないのよね。だから、ちゃんとランドリー・ボックスに入れといてくれないかなぁ。お願い。
夫 わるかった、わるかった。(夫、靴下を持って立ち上がる)
いかがでしょう。ずいぶん流れがスムーズになったと思いませんか?
これなら、スッキリ、夫の頭の中に入っていきそうですよね。この改善例での妻のメッセージは、見事に論理的に直列しています。
私は、やることがいっぱいあって大変だ(泣き言)→(だから)→あなたが協力してくれると助かる(願望)→(だから)→せめて脱いだ靴下だけでもランドリー・ボックスに入れといてくれないだろうか(依頼)
つまり、言っていることが、AだからB、BだからC、というふうに、つながっているということです。しかも、この言い方には、もうひとつ、夫がつい、その願いを聞き入れずにはいられない「魔法」が秘められています。それは、これ。

お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、改善例での妻の言葉の中には、「夫を非難する言葉」がひと言も含まれていません。
「あなたはいつも××だ」と非難する代わりに、「私は××なの(××と思ってしまう)」と、自分の心情を訴えています。
ここも、重要なポイントです。
男は、「だからあなたはダメ」「言ったことをやってくれない」「何もできない人なのね」などと非難されると、心のシャッターを閉ざしてしまいます(これは、たぶん、女性も同じ)。いったんシャッターが閉じられてしまうと、以後に続く言葉は、何も耳に入ってこなくなってしまいます。
しかし、「私がつらいの」「苦しいの」「だから助けてくれるとうれしい」と心情を訴える言葉は、心の奥に届きます。その上で、「××してよね」という《命令》ではなく、「××してくれるとうれしい(助かる)」という《依願》の形でメッセージを伝える。
こうすれば、男性は、パートナーの依頼を無視できなくなってしまいます。

さて、このことは、男性の側にも重要なヒントを提供しています。
つまり、女性がほんとに言いたいことは、「××して」の内容ではなく、「××して」と言いたくなるような「心の中の不満」にあるのではないか――。
特に、冒頭の会話例のように、「あれもしてくれない、これもやってないでしょう」と、小言が一気に噴き出してしまう場合には、むしろ、問題は、妻の心の中に溜まった不満が原因と思ったほうがいいのです。
その「不満」とは、たいていの場合、「自分がこんなにガンバっているのに、この人は、それをわかってくれない(評価してくれない)」という不満です。


こんな言葉をふだんからかけておけば、少なくとも、冒頭のような「小言の連発」も、「だからあなたはダメ」という非難も、防げるのではないかと、筆者は思います。
妻をガミガミにするのは、夫のせいでもある――と、覚えておきましょう。
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