罪を半分かぶってあげる「やさしさ」

だれかがミスを犯したときに、「それは、自分の指示が
わるかった」と責任の一端を負ってくれる。人は、そうして
罪を半分背負ってくれる人間に恩義を感じ、「好き」という
感情が生まれます。そこから恋が芽生えることも――。
M は「男からのモテ技」、 W は「女からのモテ技」、 N は「男女共通のモテ技」です。
私の大学時代の後輩・Sクンが、その人に心奪われてしまった経緯は、ちょっと感動的。
埋もれさせてしまうには惜しい話なので、ご披露しておきたいと思います。
その女性は、Sクンの2つか3つ先輩で、名前をN絵さんと言います。
N絵さんは、別に「あっ」と驚くほどの美人ではありませんでした。「オーッ」と男たちが振り向くほどのナイス・バディでもありませんでした。それに、ものすごく頭がいい……というわけでもありませんでした。
でも、モテてしまうんですね、N絵さん。
その秘密は、彼女のこんな一面にあり――という話を、まずは。
Sクンの職場に、ある新人の男子社員がいました。その人を、仮にTクンとしておきましょうか。
けっこうイケメン系の、かわいい男の子ではあったのですが、Tクン、仕事の面では、お子ちゃまというか、ま、ちょっと使い物にならない。
ある日、そのTクン、A社に出さなきゃいけない請求書にB社の数字を打ち込んでしまって、先方から大クレーム――という事件が発生してしまいました。当然、Tクンは大目玉をくらいました。
ヘタしたら、取引停止って言われても仕方のないミスだぞ。どう責任を取るんだ!
課長の怒り方ときたら、ハンパじゃありませんでした。
ま、それもムリない……ぐらいのミスだったのですが、そのとき、N絵さんが進み出て、「課長、申し訳ありません」と、頭を下げました。
私の指示の仕方がいい加減でした。伝票をごっそり渡しただけだったんで、Tも戸惑ったんだと思います。以後、気をつけます。
深々と頭を下げるN絵さんに、課長もそれ以上、Tクンを追及できなくなってしまいました。
こういうとき、並みの人間なら、「私はちゃんと指示したんですけど……」と、責任逃れするのがふつうだと思うのですが、N絵さんは、「自分の指示の仕方があいまいでした」「自分が誤解を与えるような言い方したのがいけなかった」――と、罪を半分、かぶってあげたんですね、Tクンのために。
「全部」じゃないですよ、「半分」。
ここが、N絵さんの頭のいいところ&人間が練れているところ。
罪を全部、かぶってしまったのでは、自分が破滅するかもしれないし、かぶってもらった相手の自尊心も、根っこから傷ついてしまうかもしれません。
そうはせずに、「責任の一端は自分にもある」と名乗り出て、Tクンの罪の軽減を図ってくれたわけです。
なかなかできないことだ――と、長住は思います。
埋もれさせてしまうには惜しい話なので、ご披露しておきたいと思います。
その女性は、Sクンの2つか3つ先輩で、名前をN絵さんと言います。
N絵さんは、別に「あっ」と驚くほどの美人ではありませんでした。「オーッ」と男たちが振り向くほどのナイス・バディでもありませんでした。それに、ものすごく頭がいい……というわけでもありませんでした。
でも、モテてしまうんですね、N絵さん。
その秘密は、彼女のこんな一面にあり――という話を、まずは。
Sクンの職場に、ある新人の男子社員がいました。その人を、仮にTクンとしておきましょうか。
けっこうイケメン系の、かわいい男の子ではあったのですが、Tクン、仕事の面では、お子ちゃまというか、ま、ちょっと使い物にならない。
ある日、そのTクン、A社に出さなきゃいけない請求書にB社の数字を打ち込んでしまって、先方から大クレーム――という事件が発生してしまいました。当然、Tクンは大目玉をくらいました。

課長の怒り方ときたら、ハンパじゃありませんでした。
ま、それもムリない……ぐらいのミスだったのですが、そのとき、N絵さんが進み出て、「課長、申し訳ありません」と、頭を下げました。

深々と頭を下げるN絵さんに、課長もそれ以上、Tクンを追及できなくなってしまいました。
こういうとき、並みの人間なら、「私はちゃんと指示したんですけど……」と、責任逃れするのがふつうだと思うのですが、N絵さんは、「自分の指示の仕方があいまいでした」「自分が誤解を与えるような言い方したのがいけなかった」――と、罪を半分、かぶってあげたんですね、Tクンのために。
「全部」じゃないですよ、「半分」。
ここが、N絵さんの頭のいいところ&人間が練れているところ。
罪を全部、かぶってしまったのでは、自分が破滅するかもしれないし、かぶってもらった相手の自尊心も、根っこから傷ついてしまうかもしれません。
そうはせずに、「責任の一端は自分にもある」と名乗り出て、Tクンの罪の軽減を図ってくれたわけです。
なかなかできないことだ――と、長住は思います。

実はこれは、男でも女でも同じ――というか、おそらく、一定の集団の中で「人望を得る」人たちが、多かれ少なかれ、身に着けている美質と言ってもいいかと思います。
N絵さんのひと言に救われたSクン自身も、自分の後輩に対しては、N絵女史を通して学んだ「罪を半分かぶる」を実践して、「あいつ、いいとこあるじゃん」という評価を得ました。
それは、職場の上司の結婚披露宴の席。Sクンたちスタッフも呼ばれたのですが、なんと、その大事な席に、Sクンの後輩・Y佑が遅刻してしまったんですね。
披露宴に遅刻――って、まずいですよね。しかも、上司の……です。
当然、周りじゅうから非難の目。同席していた上役たちの印象も、当の上司の印象も、メチャクチャわるくなってしまいます。
ところが――です。Y佑がまっ青な顔して席に駆け込んでくるなり、Sクン、テーブルの全員に聞こえるような声で、こう言ったんだそうです。

「いや、そうじゃなくて……」と言いかけるY佑に目くばせ。暗に「そういう話にしとけよ」と言ってるように、Y佑には見えたのだそうです。

自ら「共犯者」に名乗りを挙げる知恵
いいですねぇ。N絵さんのような彼女なら、長住も欲しかったです。
「この人の借金、半分は、私が飲み食いしたんです」なんて名乗り出てくれるような……って、ちょっと話が違いますね。
さて、本題。
何か問題が起こったときに人がとる態度には、3つのパターンがあります。
[1]自罰型 わるいのは私です――と自分を責める。
[2]他罰型 わるいのは私ではなくて、○○です――と責任転嫁する。
[3] 無罰型 知らない、どうしてこうなったの?――と責任そのものの存在を無視する。
[2]他罰型 わるいのは私ではなくて、○○です――と責任転嫁する。
[3] 無罰型 知らない、どうしてこうなったの?――と責任そのものの存在を無視する。
自己正当化しようとする権力志向の強い人間は、[2]の「他罰型」のスタンスをとろうとします。これは、男性に多い傾向と言えます。
無垢を装いたい自己愛の強い人間は、[3]の「無罰型」のスタンスをとろうとします。これは、ブリッコ・タイプの女性に多く見られる傾向です。
さて、むずかしいのは、[1]の自罰型です。
一見、人格者のとる態度とも見えるのですが、そうでもない場合もあります。「わるいのはどうせ私ですよ」とやれば、開き直り型ととられてしまいますし、「おまかせください。その責任はすべてこの私が」と、過剰に自罰を名乗り出れば、偽善者と受け取られてしまいます。ニュアンスによって、どうにでも転がるスタンスなのです。
では、N絵さんはどうだったのか?
一見、[1]の「自罰型」に見えなくもありませんが、N絵さんは、「半分」だけ、罪をかぶってあげています。
「全部」じゃないところが、ものすごく重要なんですね。
もしここで、N絵さんがその責めを全部、自分の身に引き受けたとしたら、なんとなく事情を察している周囲は、N絵さんを「偽善者」と見てしまうかもしれません。そして、引き受けてもらった側は、ものすごい精神的引け目を、背負わされることになるかもしれません。
そこで「半分」。
N絵さんのこの態度は、「共犯型」と呼ぶべきか――と、私は思います。「共犯者」として名乗り出てあげることで、Tさんへの責めを軽減してあげてるわけで、しかも、Tさんに心理的負担がかからないようにも配慮してあげています。
実に聡明な、これこそ人格者のとるべき態度だと思います。
そして、この「共犯型」には、もうひとつ大きなメリットがあります。本人がそれを期待してやるかどうかは別として、「共犯関係」になった相手との関係がものすごく親密になるのです。
このことについては、本シリーズの N-05『「共犯関係」を結んだ相手は、あなたを裏切れない』でも申し上げましたが、この世に「共犯関係」ほど強い結びつきはありません。なぜなら、共犯者同士は、一生、相手を裏切れないからです。
N絵さんが、もし、これを意識的に「恋テク」として使ったとしたら、恐ろしいほどの達人ですね。
筆者の最新実用エッセイ! キンドル(アマゾン)から発売中です!

「好きです」「愛してます」――そのひと言がスラッと口にできたら、この世の恋する男性や女性の心は、ずいぶんとラクになることでしょう。しかし、なかなか言えないんですね、このひと言が。勇気がなくて口にできない。自分は口ベタだからとためらってしまう。
そんな人たちに、「これなら言えるんじゃないか」とすすめるのが、「愛」と言わずに「愛」を伝える「メタメッセージ」の技術。あなたの恋愛の参考書として、お役立てください。
2019年11月発売 定価:600円 発行/虹BOOKS
「好き」を伝える技術: あなたの恋のメタメッセージ・テク (実用エッセイ)
既刊本もどうぞよろしく タイトルまたは写真をクリックしてください。
〈1〉 〈2〉 〈3〉






【1】妻は、おふたり様にひとりずつ
2016年3月発売 定価/342円
【2】『聖少女~六年二組の神隠し』
2015年7月発売 定価122円
【3】チャボのラブレター
2014年10月発売 定価/122円
そんな人たちに、「これなら言えるんじゃないか」とすすめるのが、「愛」と言わずに「愛」を伝える「メタメッセージ」の技術。あなたの恋愛の参考書として、お役立てください。
2019年11月発売 定価:600円 発行/虹BOOKS
「好き」を伝える技術: あなたの恋のメタメッセージ・テク (実用エッセイ)
既刊本もどうぞよろしく タイトルまたは写真をクリックしてください。
〈1〉 〈2〉 〈3〉
2016年3月発売 定価/342円
【2】『聖少女~六年二組の神隠し』
2015年7月発売 定価122円
【3】チャボのラブレター
2014年10月発売 定価/122円

管理人は、常に、フルマークがつくようにと、工夫して記事を作っています。
みなさんのひと押しで、喜んだり、反省したり……の日々です。
どうぞ正直な、しかしちょっぴり愛のこもった感想ポチをお願いいたします。
→この記事はためになった(FC2 恋愛)
→この記事に共感した(にほんぶろぐ村 恋愛)
→この記事は面白かった(人気ブログランキング 恋愛)
このテーマの記事一覧に戻る トップメニューに戻る
- 関連記事
-
- 「つなぐ技術」で心もつなぐ理系男子 (2020/02/12)
- 罪を半分かぶってあげる「やさしさ」 (2020/01/25)
- 「共通の趣味」は、コアなほど、強い接着力を生む (2020/01/09)