人はなぜ、「楽園」から追放されたのか?

「悪意」は、人類が農業を開始するとともに生まれた、という話を前回はしました。それ以前の人類は、「狩猟・採集」生活を送っていましたが、そんな生活の中では、人は「善意」の共同体を作って生活していました。しかし、人類は、その「楽園」を追放されてしまいます。それはなぜ――。
Talker
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
【今回のキーワード】 エデンの園 氷河期 農業
AKI 今年も始まっちゃいましたね。
哲雄 始まっちゃいましたね、とうとう2020年が。
AKI なんか、イヤなものが始まったようなおっしゃり方ですが……。
哲雄 申し訳ない。せっかくなんだけど、私は、「東京オリパラ」なんてものに、まったく興味が持てない――というか、東京2020てものに、そもそも反対なので、とてもウキウキな気分にはなれないのでございますよ。
AKI あら、それは残念。
哲雄 でもね、こうしてAKIクンと新年のあいさつが交わせることも、みなさんにごあいさつできることも、とても喜ばしいのでございますよ。こうして新年のごあいさつをするのも、今年で11回目になりました。
AKI このトークの第1夜目をお届けしたのが、2009年でした。あれから11年。私たちもついに12年目に突入したわけですよね。道理でババァになったわけだ。
哲雄 いや、AKIクンはまだまだ。見ようによっては、30代前半で通用しますよ。私なんぞは、どこからどう見ても、「ただのジジイ」にしか見えませんから。ま、しかし、こんなふたりではありますが、のぞきに来てくださったみなさま、ほんとうにありがとうございます。
AKI 本年もどうぞよろしくお願いいたします。
哲雄 よろしくお願い申し上げます。さて、昨年は……と、どこまでお話したんでしたっけ?
AKI この地上には、「善意」を生み出す社会と「悪意」を生み出す社会があって、「悪意」もそれを警戒する「悪意」も、人類が農耕を始めるとともに始まった、というところまでお聞きしました。じゃ、「善意」のほうはどうなのか? 今回は、その話をしようということでしたよね?
哲雄 そうでした、そうでした。さて、AKIクンは、農耕を始める前の人類がどうやって生きていたか、ご存じですか?
AKI 自然に実った果実とか木の実とか、もしかして虫とかも食べてたんですかね?
哲雄 貝や魚も獲っていたでしょうね。小さな動物程度なら、捕獲して食料にしていただろうと思います。小規模な栽培は行っていたかもしれませんが、ほとんどは、自然にあるものを採ったり、獲ったりして食べる。そんな生活を送っていたんだろうと思いますよ。そういう生活様式を「狩猟・採集生活」と言うんですが、さて、そんな生活様式を送っていた人たちは、どういう場所でどんなふうに暮らしていたか?
AKI 木の実や果実が豊富に採集できる場所とか、貝や魚が簡単に獲れる場所とか……ですかね?
哲雄 ま、だいたいそんなところでしょうね。たぶん、そういう場所は、当時の人類にとっては、「楽園」のような場所だったのではないかと想像できます。食物は、手を伸ばせば簡単に手に入れられるようなところに豊富にある。魚介だって、肉だって、大がかりな狩りなどしなくても、手に入れることができる。そういう「楽園」にいる人間には、他人の食料を略奪しようなどという「悪意」は、芽生えようがない。人々は、小さな集落を作って、おたがいに助け合いながら暮らしていたのではないか――と、私は思います。しかし、彼らは、その「楽園」から追い出されてしまいます。
AKI エッ、追い出された? それはいつ? どうして?
哲雄 始まっちゃいましたね、とうとう2020年が。
AKI なんか、イヤなものが始まったようなおっしゃり方ですが……。
哲雄 申し訳ない。せっかくなんだけど、私は、「東京オリパラ」なんてものに、まったく興味が持てない――というか、東京2020てものに、そもそも反対なので、とてもウキウキな気分にはなれないのでございますよ。
AKI あら、それは残念。
哲雄 でもね、こうしてAKIクンと新年のあいさつが交わせることも、みなさんにごあいさつできることも、とても喜ばしいのでございますよ。こうして新年のごあいさつをするのも、今年で11回目になりました。

哲雄 いや、AKIクンはまだまだ。見ようによっては、30代前半で通用しますよ。私なんぞは、どこからどう見ても、「ただのジジイ」にしか見えませんから。ま、しかし、こんなふたりではありますが、のぞきに来てくださったみなさま、ほんとうにありがとうございます。
AKI 本年もどうぞよろしくお願いいたします。
哲雄 よろしくお願い申し上げます。さて、昨年は……と、どこまでお話したんでしたっけ?
AKI この地上には、「善意」を生み出す社会と「悪意」を生み出す社会があって、「悪意」もそれを警戒する「悪意」も、人類が農耕を始めるとともに始まった、というところまでお聞きしました。じゃ、「善意」のほうはどうなのか? 今回は、その話をしようということでしたよね?
哲雄 そうでした、そうでした。さて、AKIクンは、農耕を始める前の人類がどうやって生きていたか、ご存じですか?
AKI 自然に実った果実とか木の実とか、もしかして虫とかも食べてたんですかね?
哲雄 貝や魚も獲っていたでしょうね。小さな動物程度なら、捕獲して食料にしていただろうと思います。小規模な栽培は行っていたかもしれませんが、ほとんどは、自然にあるものを採ったり、獲ったりして食べる。そんな生活を送っていたんだろうと思いますよ。そういう生活様式を「狩猟・採集生活」と言うんですが、さて、そんな生活様式を送っていた人たちは、どういう場所でどんなふうに暮らしていたか?
AKI 木の実や果実が豊富に採集できる場所とか、貝や魚が簡単に獲れる場所とか……ですかね?
哲雄 ま、だいたいそんなところでしょうね。たぶん、そういう場所は、当時の人類にとっては、「楽園」のような場所だったのではないかと想像できます。食物は、手を伸ばせば簡単に手に入れられるようなところに豊富にある。魚介だって、肉だって、大がかりな狩りなどしなくても、手に入れることができる。そういう「楽園」にいる人間には、他人の食料を略奪しようなどという「悪意」は、芽生えようがない。人々は、小さな集落を作って、おたがいに助け合いながら暮らしていたのではないか――と、私は思います。しかし、彼らは、その「楽園」から追い出されてしまいます。
AKI エッ、追い出された? それはいつ? どうして?
哲雄 旧約聖書の『創世記』には、その楽園は「エデンの園」として登場します。創造主である神は、そこに、人間の祖先とされるアダムとエバを住まわせるのですが、エバがヘビにそそのかされて「善悪を判断できるようになる」という木の実を口にしてしまったために、神はふたりを「エデン」から追放してしまいます。そのとき、神は、アダムにこう告げます。
あなたは一生、苦しんで地から食物を取る。
地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、
あなたは野の草を食べるであろう。
あなたは額に汗してパンを食べ、ついに土に帰る(以下略)
――『旧約聖書/創世記』第3章17~19節
地はあなたのために、いばらとあざみとを生じ、
あなたは野の草を食べるであろう。
あなたは額に汗してパンを食べ、ついに土に帰る(以下略)
――『旧約聖書/創世記』第3章17~19節
ま、これは神話で、『創世記』が書かれたのは、紀元前1500年頃とされているのですが、そこに書かれているのは、もっとずっと古い時代の話を象徴的に伝えているのではないか――と、言われています。そして、そこに書かれている「あること」は、人類の歴史にとってきわめて重要な事実を示唆しているんですよ。
AKI ウソッ、なんだろ? 全然、わかんない。
哲雄 注目してほしいのは、「一生、苦しんで地から食物を取る」という部分と「額に汗してパンを食べ」という部分です。これは、いったい、何を意味しているのか?
AKI 働かざる者、食うべからず――とか?
哲雄 あ~あ、なんと浅薄な解釈。残念ながら、『聖書』には、そういう「人生訓」みたいなことは、書いてないんですよ。「創世記」のこの記述は、人間の「原罪」がどうして生まれたかに触れた重要な部分なのですが、それはあくまで宗教的な意味であって、文化人類学者や考古学者や歴史学者たちは、この記述が「ある歴史的な事実」を物語っているのではないか――と、推測しているんですよね。
AKI な、何すか、その「歴史的事実」てぇのは?
哲雄 人類が農業を始めた――という事実です。
AKI 紀元前1500年にですか?
哲雄 それじゃ、遅すぎるでしょ。それよりずーっと前。おそらく紀元前1万年ぐらいではないかと言われています。その頃の地球は、氷河期の終わりの時期にあって、地表は分厚い氷で覆われていました。地表の水分は、かなりな程度、氷結していましたから、海面は、いまよりも200~300メートルは下がっていただろうと言われています。そんな氷の時代に、聖書に出て来る「エデンの園」は、いったいどこにあったのか?
AKI ずっと南のほうですか?
哲雄 『創世記』の記述に従えば、おそらくは、メソポタミアの東南部、現在はペルシャ湾となっているあたりではないかと言われています。その頃は、一帯は低地で、氷河期であっても温暖な気候に恵まれ、果実は豊かに実って、文字通りの「楽園」だったのではないかと思われます。しかし、その楽園を気候の変動が襲います。
AKI どんな変動だったんですか?
哲雄 「氷河期」が終わりを迎え、地表を覆っていた氷が、どんどん溶け始めました。その結果、海面はグングン上昇して、豊かな採集・狩猟生活を送っていた「メソポタミアの楽園」も、海の底に飲み込まれていきました。
AKI 楽園の住人たちは、どこへ行ったんですかね?
哲雄 かつては分厚い氷に覆われていた高地へと、移動を余儀なくされました。しかし、それまで氷に閉ざされていた大地は、かつての「楽園」のように、手を伸ばせば簡単に食べ物が手に入るという環境ではありませんでした。『創世記』に書かれたとおり、「一生、苦しんで、地から食物を取る」しかない環境。そんな中で、人類は偶然にも小麦を発見し、そして、その小麦の種実は、すぐには地上に落下せず、穂先に付いたままになっている。その時期に穂先を収穫して、実を穂先から外しておけば、その実は、しばらく食糧として貯蔵しておくことができる。こうして、人類は、農業が自分たちの食料問題を解決してくれる手段であることを発見します。
AKI それが、紀元前1万年ですか?
哲雄 だいたい、紀元前8000年から1万年ぐらいですね。その頃に人類が穀物を栽培し、収穫していたとする痕跡は、さまざまな発掘調査などでも確認されているので、間違いないと思います。
AKI それで、人類は救われたんでいね?
哲雄 救われたのかどうかは、わかりません。もしかしたら、それは「不幸の始まり」だったのかもしれないし……。
AKI エッ、不幸の始まり? それ、どういうことですか?
哲雄 それについては、次回、詳しくお話したいと思います。
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管理人は常に、下記3つの要素を満たせるように、脳みそに汗をかきながら、記事をしたためています。
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