「悪意」を生む社会と「善意」を生む社会

前回は、「悪意」がどう拡散していくかという話をしました。今回は、そのそもそも論。「悪意」や「善意」は、どんな社会でどんなふうに生まれてくるのか? 実はそれには、生産様式や統治のシステムが関係しているという話をしてみます――。
Talker
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
【今回のキーワード】 性悪説 性善説 狩猟・最終文化 農耕文化
AKI 前回は、人に対する「悪意」が、「デマ」も含めてどう拡散していくか、という話をしたんですよね。
哲雄 ハイ。いったん、「悪意」がどこかで生まれると、それは、誇張され、ねつ造が加えられて、あっという間に世間に広がっていく。だから恐ろしい。拡散されかねない火を起こすことには、十分な注意が必要である、と申し上げました。
AKI そこでですよね、哲ジイ。その「悪意」というのは、そもそもどうやって生まれるのか? 今回は、その話をしようという話でした。
哲雄 そもそも論になりますが、この世は、元々「悪意」で満ちているのか、それとも「善意」に溢れているのか?
AKI どっちなんです?
哲雄 実は、両説あるんですよ。AKIクンも耳にしたことがあるんじゃないですか、「性善説」と「性悪説」。「性善説」では、人は「いい性質」を持って生まれてくるんだから、「悪意」なんてものは持つはずがない。「悪意」が生まれるとしたら、それは、だれかが邪悪な考えを吹き込んだからだ、あるいは、何らかの社会的な利害関係や抗争によって、「悪意」が芽生えざるを得なかったからだ――というふうに考えられます。
AKI あいつが悪くなったのは、周りがわるいからだ――って考えるわけですね。
哲雄 そうです。あのAKIちゃんだって、子どもの頃は、純情で、やさしい心根を見せるいい子だったんだけど、何だか男をたぶらかすような女になっちゃってさぁ……。ありゃあ、つき合った男がわるかったんだね――てなふうにね。
AKI 別に、わたくし、男をたぶらかしてなんぞおりませんし、わるい男に変な仕込みを受けた覚えもございませんが……。
哲雄 それは失礼いたしました。ま、性善説に立てば、そういう見方をする場合もあるということでしてね。他方、「性悪説」のほうはどうかと言うと、こちらは、人は生まれつき「悪い性質」を持っていると考え、放っておけば、人は悪事に走ってしまう、と考えます。だから、こいつらは、戒律や道徳などで厳しく縛っておかなくてはならない――というふうに考えるんですね。
AKI やたら校則が厳しい学校とかもありますからね。
哲雄 ハイ。いったん、「悪意」がどこかで生まれると、それは、誇張され、ねつ造が加えられて、あっという間に世間に広がっていく。だから恐ろしい。拡散されかねない火を起こすことには、十分な注意が必要である、と申し上げました。
AKI そこでですよね、哲ジイ。その「悪意」というのは、そもそもどうやって生まれるのか? 今回は、その話をしようという話でした。
哲雄 そもそも論になりますが、この世は、元々「悪意」で満ちているのか、それとも「善意」に溢れているのか?
AKI どっちなんです?
哲雄 実は、両説あるんですよ。AKIクンも耳にしたことがあるんじゃないですか、「性善説」と「性悪説」。「性善説」では、人は「いい性質」を持って生まれてくるんだから、「悪意」なんてものは持つはずがない。「悪意」が生まれるとしたら、それは、だれかが邪悪な考えを吹き込んだからだ、あるいは、何らかの社会的な利害関係や抗争によって、「悪意」が芽生えざるを得なかったからだ――というふうに考えられます。
AKI あいつが悪くなったのは、周りがわるいからだ――って考えるわけですね。
哲雄 そうです。あのAKIちゃんだって、子どもの頃は、純情で、やさしい心根を見せるいい子だったんだけど、何だか男をたぶらかすような女になっちゃってさぁ……。ありゃあ、つき合った男がわるかったんだね――てなふうにね。
AKI 別に、わたくし、男をたぶらかしてなんぞおりませんし、わるい男に変な仕込みを受けた覚えもございませんが……。
哲雄 それは失礼いたしました。ま、性善説に立てば、そういう見方をする場合もあるということでしてね。他方、「性悪説」のほうはどうかと言うと、こちらは、人は生まれつき「悪い性質」を持っていると考え、放っておけば、人は悪事に走ってしまう、と考えます。だから、こいつらは、戒律や道徳などで厳しく縛っておかなくてはならない――というふうに考えるんですね。
AKI やたら校則が厳しい学校とかもありますからね。
哲雄 校則が厳しい=性悪説というわけではないでしょうが、「性悪説」をとる世界には、一般に、厳しい戒律が存在します。代表が、イスラム教やユダヤ教の世界。どちらも、「善悪二神論」をとっていたゾロアスター教をベースに生まれた宗教で、ユダヤ教から発展したキリスト教でも、人は「原罪」を背負って生まれてくる「罪深い存在」である、と考えます。そういう意味では、「性悪説」に立っている、と言ってもいいかと思います。この3つの宗教は、同じ人格神を信奉し、信仰の祖先がアブラハムであることも共通していますから、「アブラハム宗教」と総称されることもあるんですよ。
AKI でも、キリスト教には、イスラムのような厳しい戒律はありませんよね?
哲雄 人間が持って生まれた「罪」は、イエスが十字架にかかって贖ってくれた――と考えますからね。したがって、戒律によって「罪を犯させないようにしよう」という考えは、キリスト教(一部の教派を除く)にはありません。自分の罪深さは、日々、悔い改め、それが赦されていることを神に感謝しなさい、と教えます。
AKI 仏教はどうなんですか?
哲雄 戒律に関する考えは、教派によって違いますが、アブラハム宗教の世界と違って、「悪魔」や「悪神」というものは、仏教の世界には登場しません。あるのは、人が「縁起=前世からの因縁」によって背負わされている「業(ごう)」です。その「業」から抜け出すために、厳しい戒律を守れ、それを守れたものだけが救われると教える教派もありますが、一方で、生きているものには、すべて「仏性」が宿っているのだから、「憐み」の心を忘れてはならないとも教えます。
AKI フーン、じゃ、「性善説」なんですね?
哲雄 そう単純に言っていいのか、どうか。ま、すべての人間に「仏性」が宿っている――と考える点では、「性悪」ではないわなぁ……と、私に言えるのは、それくらいです。それよりも、私が注目するのは、「善意」や「悪意」が主たる社会的感情として育つにいたった、その社会の生産様式や、社会の統治システムのほうです。
AKI 生産様式に統治のシステムですか? それが、「善意」や「悪意」の発生と、どう関係してるって言うんです?
哲雄 「狩猟・採集文化」と「農耕文化」。
AKI 「狩猟・採集」と「農耕」? エーッ、ますますわかんない。
哲雄 「狩猟・採集」の文化と「農耕」の文化の間には、大きな違いがあります。それが何か、わかりますか?
AKI 何だろ? もしかして、労働する場所が1カ所に決まっているか、あちこち動き回らなきゃいけないか――っていう違い?
哲雄 それもあります。でも、もっと大きな違いがあります。特に穀物を栽培する農業の場合を考えてみてください。
AKI あ、そうか。収穫する時期が決まってる?
哲雄 その後、収穫した穀物はどうする?
AKI どこかに貯蔵する?
哲雄 そのためには何が必要?
AKI そうか、蔵とか倉庫とか、そういう保管設備ですね?
哲雄 そのとおり。そしてね、ここからが重要なんだけど、農耕という生産スタイルの中では、たくさん収穫できる人間とそうでない人間の間に差が生じます。多く収穫できる人間は、多く貯蔵する必要が生まれ、すると、蔵も大きくなる。こうして、貧富の差が生まれてくる。「悪意」が生まれるのも、それを警戒する意識が生まれるのも、必然と言えば、必然なんですね。
AKI 農耕の発達とともに、「悪意」も発達したってことですか? それって、ちょっと複雑。「狩猟・採集」文化のほうでは、そういう変化は起こらなかったんですか?
哲雄 なぜなのか? そこらへんについては、次回、詳しくお話したいと思います。
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