手柄話と告げ口で作られる「集団感情」

私たちの住むこの社会は、時に、「わるい感情」に支配されてしまうことがあります。ある集団がそんな「集団感情」に支配されていくのは、私たちに「人の評価」を気にする性質があるから。「悪意」はそんな性質を利用して集団感情を作り上げていくのですが、そのときに利用するのが――。
Talker
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
【今回のキーワード】 集団感情 手柄話 告げ口
AKI だれかが「あいつらがわるい」と言い出すと、みんなが「そうだ」「そうだ」と雷同する。そうして、どこかで生まれた「ヘイト」が「集団感情化」していく。その傾向が世界的に広がっているような気がする――と、前回は、そんな話をしたんですよね。
哲雄 ハイ。それは、とても危険な傾向なのですが、どうしてそうなってしまうのか、きょうは、その話をしてみようかと思います。
AKI 何か原因がある――と、哲ジイは思っているんですね?
哲雄 いまに始まった話ではないと思うのですが、自分が人にどう思われているかを気にするという性質は、多かれ少なかれ、だれにも備わっています。人にこの性質がある限り、この傾向は、これからも強くなっていくだろうな――と思うんですよ。
AKI どう思われているかを気にすると、「ヘイト」も「集団感情化」するんですか? どうして?
哲雄 自分の評価を気にする人たちは、周りの声に自分の声を合わせようとします。たとえば、周りの人間たちが「あのAのやつは気に食わない」と言っているときに、「しかし、Aにはいいところもあるゾ」とは言いにくい。そんなことを口にしてしまうと、「あいつはAとつるんでる」とか「あいつは変人だ」などと言われかねない。結局、自分はそうは思わなくても、「A? オレも嫌いだな」と言わざるを得なくなる。そうして、「Aは嫌い」という「集団感情」が育ってしまうわけです。
AKI 「集団いじめ」なんかが発生するのも、そういうメカニズムがはたらくんでしょうね。
哲雄 かもしれませんねェ。
問題は、周りの声に自分の声を合わせてしまう性質のほうではなくて、
そう思わせてしまう動機のほう。
つまり、「人の評価」を気にする性質にある
――と、私は思っています。人にどう思われているかを知るためには、人は「あるもの」を必要とするんですけど、AKIクンは、それ、何だと思います?
哲雄 ハイ。それは、とても危険な傾向なのですが、どうしてそうなってしまうのか、きょうは、その話をしてみようかと思います。
AKI 何か原因がある――と、哲ジイは思っているんですね?
哲雄 いまに始まった話ではないと思うのですが、自分が人にどう思われているかを気にするという性質は、多かれ少なかれ、だれにも備わっています。人にこの性質がある限り、この傾向は、これからも強くなっていくだろうな――と思うんですよ。
AKI どう思われているかを気にすると、「ヘイト」も「集団感情化」するんですか? どうして?
哲雄 自分の評価を気にする人たちは、周りの声に自分の声を合わせようとします。たとえば、周りの人間たちが「あのAのやつは気に食わない」と言っているときに、「しかし、Aにはいいところもあるゾ」とは言いにくい。そんなことを口にしてしまうと、「あいつはAとつるんでる」とか「あいつは変人だ」などと言われかねない。結局、自分はそうは思わなくても、「A? オレも嫌いだな」と言わざるを得なくなる。そうして、「Aは嫌い」という「集団感情」が育ってしまうわけです。
AKI 「集団いじめ」なんかが発生するのも、そういうメカニズムがはたらくんでしょうね。
哲雄 かもしれませんねェ。
問題は、周りの声に自分の声を合わせてしまう性質のほうではなくて、
そう思わせてしまう動機のほう。
つまり、「人の評価」を気にする性質にある
――と、私は思っています。人にどう思われているかを知るためには、人は「あるもの」を必要とするんですけど、AKIクンは、それ、何だと思います?
AKI 鏡……ですか?
哲雄 自分で自分を評価するときには必要になりますが、気になるのは「他人の評価」ですからね。しかし、鏡のように「自分の評価」を映し出すものは、世の中にも存在します。
AKI もしかして、人気投票とか?
哲雄 日本の新聞やTVは、よくやりますよね。しかし、「好き」か「嫌い」か、「賛成」か「反対」か――を問うだけの人気投票で「自分の評価」がわかるというのは、一部の政治家ぐらいのものでしょう。でも、それに近いことなら、私たちも知らず知らず、やっていることがあるんですよ。
AKI どこかの先生におうかがいを立てるとか?
哲雄 あり得なくはないですね。「どこかの先生」っていうのは、たいていの場合、自分が所属する学校の先生だったり、職場の上司だったり、何かのサークル仲間のリーダーだったりするわけですが……。
AKI つまり、その集団の意思決定とかに影響力を持ち得る人間ってことですね?
哲雄 いずれにしても、「おまえは正しい」「よくやった」とお墨付きを与えてくれる立場の人間です。「自分の評価」を求める人たちは、そういう「先生」役に、「自分はこんなにガンバった」「あれも、これも、自分がやった」と「手柄」や「功績」を訴え、その一方で、「それなのにあいつは何もやらない」「いつも、自分がしりぬぐいをさせられてしまう」と、「あいつ」の悪口を吹き込んだりするわけです。
AKI ワッ、いやなタイプ。
哲雄 「評価」を得たいと思う人間は、そうやって「先生」にすり寄っては、「自分の手柄」を述べ立て、他人の失敗や悪口を吹き込むわけです。
AKI 「手柄話」に「告げ口」ですか。もう、最低ッ! わたし、そういう人間がいちばん嫌いなんです。
哲雄 小生も同じくです。もしそのような「先生」役がいないと、このタイプの人間は、集団の中で「多数派」を形成することに血道を上げます。
AKI 多数派工作……ですか? どうやって?
哲雄 先生役にやったのと同じことを、周りのだれかれかまわずやるわけです。たとえば、「Aが嫌い」を多数の声としてまとめたいと思う人間は、「あれも、これも、オレがやったんだぜ」「あいつなんて、口だけで何もやんない」てなことを、ひとりひとりの耳に吹き込んで回るわけです。
AKI それ、大変じゃないですか。
哲雄 大変でしょうねェ。でもね、自分の評価を高めることに汲々としているタイプの人間たちは、けっこうマメにそれをやるんです。人を飲みに誘ったり誘われたりしては、その耳に、「自分の手柄」や「他人の悪口」や「会社や組織への不満」を、ウソや誇張を交えながら吹き込みます。ときには、人のトイレにまで付き合って、「まったく、Aのやつときたら」という話を、それとなくつぶやいたりします。
AKI そうして吹き込まれた話には、尾ひれがついて広がっていくんですよね?
哲雄 吹くほうの人間は、自分が口にした話が、そうして拡散されていくことを、密かに期待しているんだと思いますよ。
AKI そうなんだ! タチわるッ!
哲雄 タチわるいんですよ。そしてね、自分の話が拡散することを期待する人間は、話を拡散させてくれそうな人間を選ぶのが、得意でもあるんです。
AKI つまり、口の軽い人間を選ぶんですね?
哲雄 ま、それもある。あと、尾ひれをつけるのがうまそうな人間とか。さて、そうして吹き込まれた「手柄話」や「悪口」は、どうやって拡散していくか? それには、いろんなパターンがあるんだけど、その話、長くなりますので……。
AKI ハイ、それは次回に――ですね。その間、私は、哲ジイの話をいろんな人に拡散させておきますから。
哲雄 な、何を? ちょっと待って~ェ!
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