私には「原点」となった「恥」がある

人は「恥」を隠そうとして、「都合のわるい事実」を隠蔽する。過去2回にわたってお届けしてきた、「恥」と「隠蔽」の関係。今回からは、どんな「恥」がどんなふうに隠蔽される傾向があるか? そのひとつひとつを検証していきます――。
Talker
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
【今回のキーワード】 原罪 裏切り
AKI 「恥」を隠そうとするから、人も、組織も、「都合のわるい事実」を隠そうとしたり、書き換えたりしようとする。その何を「恥」とするかが、個人と組織では違っている。どこがどう違うのか? 個人が「恥」とすることと組織が「恥」とすることを、ひとつひとつ検証しましょう――と、前回は、そんな話をしたんですよね?
哲雄 では、ひとつひとつ。よろしいですか、AKIクン?
AKI 何か、イヤな予感がするんですけど……。
哲雄 まず、キミは、お尻の穴を人に見せることができますか?
AKI ホラ、来た。そんなの、恥ずかしいに決まってるじゃありませんか。
哲雄 ま、そうでしょうね。なにしろ「恥部」なわけですから。しかし、ここでお話しようと思うのは、そういう肉体的な「恥ずかしさ」の問題ではありません。キミの精神がどういうことを「恥」と感じるか――という、精神的な話です。一般に、個人が「恥」と感じることにどういうものがあるか? 私なりに分析したものをリストアップしてみました。それがこちら――。
ま、ざっとこんなところでしょうか。
AKI ざっと――とおっしゃいますが、これ、ほとんどすべてじゃないですか。いくつかは、私にも当てはまっているような気がします。
哲雄 もちろん、私にも――ですよ。
AKI 本人が「恥」と感じる程度に応じて、「隠したい」と思う気持ちも強くなるんでしょうね?
哲雄 そう申し上げてよろしいかと思います。
哲雄 では、ひとつひとつ。よろしいですか、AKIクン?
AKI 何か、イヤな予感がするんですけど……。
哲雄 まず、キミは、お尻の穴を人に見せることができますか?
AKI ホラ、来た。そんなの、恥ずかしいに決まってるじゃありませんか。
哲雄 ま、そうでしょうね。なにしろ「恥部」なわけですから。しかし、ここでお話しようと思うのは、そういう肉体的な「恥ずかしさ」の問題ではありません。キミの精神がどういうことを「恥」と感じるか――という、精神的な話です。一般に、個人が「恥」と感じることにどういうものがあるか? 私なりに分析したものをリストアップしてみました。それがこちら――。
〈1〉自分の家系、血縁に関わる、知られると非難を浴びたり、嘲笑の対象になったりするかもしれない事実。
〈2〉自身の経歴に関して、他人に知られるとバカにされたり、軽蔑されたりするかもしれない事実。
〈3〉自身の能力や人間的魅力が、ライバルや同僚に対して劣ると見られていることまたは自ら感じていること。
〈4〉過去、他人を傷つけたり、裏切ったりしたことがあるという「原罪」とも言えるような経験。
〈5〉帰属する集団や組織に対して、期待された業績を挙げたり、義務を果たせなかったりしたこと。
〈6〉帰属する集団の規則やルール、マナーなどを自分の利益のために破ったり踏みにじったりしたこと。あるいはそれを第三者に知られてしまったこと。
〈7〉帰属する集団や組織での自分の評価が、思ったよりはずっと低かったこと。それに気づかされた事実。
〈8〉だれにも知られてないが、自分には心底、怖くて仕方のないものがある、という事実。
〈9〉だれにも知られていないが、自分には欲しくてたまらないものがある、その欲望がきわめて強い、という事実。
〈2〉自身の経歴に関して、他人に知られるとバカにされたり、軽蔑されたりするかもしれない事実。
〈3〉自身の能力や人間的魅力が、ライバルや同僚に対して劣ると見られていることまたは自ら感じていること。
〈4〉過去、他人を傷つけたり、裏切ったりしたことがあるという「原罪」とも言えるような経験。
〈5〉帰属する集団や組織に対して、期待された業績を挙げたり、義務を果たせなかったりしたこと。
〈6〉帰属する集団の規則やルール、マナーなどを自分の利益のために破ったり踏みにじったりしたこと。あるいはそれを第三者に知られてしまったこと。
〈7〉帰属する集団や組織での自分の評価が、思ったよりはずっと低かったこと。それに気づかされた事実。
〈8〉だれにも知られてないが、自分には心底、怖くて仕方のないものがある、という事実。
〈9〉だれにも知られていないが、自分には欲しくてたまらないものがある、その欲望がきわめて強い、という事実。
ま、ざっとこんなところでしょうか。
AKI ざっと――とおっしゃいますが、これ、ほとんどすべてじゃないですか。いくつかは、私にも当てはまっているような気がします。
哲雄 もちろん、私にも――ですよ。
AKI 本人が「恥」と感じる程度に応じて、「隠したい」と思う気持ちも強くなるんでしょうね?
哲雄 そう申し上げてよろしいかと思います。
AKI ちなみに、哲ジイの場合、上のリストで言うと、もっとも「隠したい」と思うのは、どの「恥」ですか?
哲雄 それを訊きますか? そろそろ後期高齢の域に差し掛かろうかというジジイに向かって?
AKI もうよろしいんじゃありませんか? 先もそんなに長くないことですし、いまさら隠しても仕方ないっしょ。
哲雄 そもそも隠そうとなんぞしておりませんよ。特にAKIクンには、すべてお見せしてきたつもりですがねェ。あと、お見せしてないのは、ケツの穴ぐらいのもので……。
AKI ですから、それはけっこうですって。
哲雄 いいでしょう、申し上げましょう。私がもっとも「恥」と感じていることは、〈4〉の「他人を傷つけたり、裏切ったことがある」ですかね。
AKI それ、なんか、哲ジイの「原罪」っぽいですね。
哲雄 「原罪」ってのは、「この世に罪を背負って生まれてきた」という人間のそもそもの罪深さを言う言葉ですから、これを「原罪」というのは、あまり正確な言い方ではないかもしれません。しかし、何かある度に、自分が持って生まれた「罪深さ」を思い起こさせるという意味では、私の「原罪」となっているかもしれませんねェ。
AKI 差し支えなければ、どんなふうに傷つけ、どんなふうに裏切ったか、それを聞かせてほしいものですわ。
哲雄 そこまで話せ――とおっしゃる?
AKI ほんのさわりだけでも……。
哲雄 では、ひとつだけ。
AKI ひとつだけ――って、そんなにいくつもあるんですか?
哲雄 持って生まれた「罪深さ」ですから、何度も繰り返されることになるわけですよね。あれは、中学校に入ったばかりのこと。私には、学年で常に1番・2番を争うライバルがいました。成績でもライバルなんですが、生徒会の選挙なんかでも、票を争うような関係。ま、あちらは歯医者の息子ですから、血筋はいい。誕生日なんかになると、お母さんがご馳走を作って友だちを家に呼び寄せ、「お誕生日会」をやったりするような、そんな典型的な中産家庭の子弟であらせられました。
AKI 仲わるかったんですか?
哲雄 わるかったわけではないけど、よかったわけでもない。ただ、ライバルですから、何かにつけておたがいを意識するような関係ではありましたかね。そして、何より違っていたのが、おたがいの周りに集まってくる友だちのタイプ。
AKI 何となくわかるような気がします。向こうには、比較的裕福な家庭のハイブローな子弟たちが集まり、哲ジイのほうには、あまり余裕のない勤労階級の子弟たちが集まった?
哲雄 悔しいことに、ほぼ当たっておりますね。付け加えるなら、あちらには大して勉強しなくても、そこそこの成績を取れるタイプが多かったのに対して、わがほうには、すごく勉強してびっくりするような成績を残す努力型がいる一方、まったく勉強しなくて、勉強はさっぱりというタイプもいました。
AKI 支持層が広かったんですね。
哲雄 よく言えば、そうなりますわなぁ。おかげで選挙には強かった――って、ま、そんなことはどうでもよくて、実は彼には、その気位の高さを嫌う連中もいたんですね。そういう連中の中には、ちょっと不良っぽいのもいて、ある日、私と彼が何かの用事があって、一緒に下校していると、そのひとりが、私たちを追いかけてきました。
AKI ワッ、ちょっと怖いですね。
哲雄 そいつは、いきなり彼に殴りかかってきた。そのとき、私は、咄嗟には体が動かなかったんですね。あっという間のことで、体が反応しなかったというのもあるんだが、そいつはなおも彼に殴りかかってきた。二発目が彼のあごにヒットして唇が切れ、血が流れ始めたとき、初めて私は、「まずい!」と思って、「オイ、止めろや!」とそいつの体を止めにかかった。最初の一発は仕方なかったとしても、二発目は防げたんじゃないか。
AKI 反応が遅れたことを「罪だ」と感じているんですか?
哲雄 いや、そうではありません。私が恥じているのは、そのとき、私の反応を遅れさせてしまった「理由」、つまり、私の心の中の状態。それを、私は「ああ、オレってなんてやつだ」と思ってしまったんですね。
AKI 勇気がなかった――とか、そういうことですか?
哲雄 それもなくはないでしょうが、問題は、その勇気にブレーキをかけることになった私の心の中のありようでしょうね。
AKI それは、いったい……。
哲雄 正直に申しましょう。
実はそのとき、私の中には、
どこかで「いい気味だ」と思う気持ちがなくはなかった。
「エラそうにしているから、そんな目に遭うんだよ」と思う気持ちです。その気持ちが、一瞬、自分の反応を遅らせた。
AKI 意外と冷静だったんですね。
哲雄 いやになるくらいにね。自分の中のそういう冷たい気持ちに気づいていたから、そのときの私は、自分を弁明するための咄嗟の「言い訳」を探して、「イヤな自分」を隠蔽しようとしました。
AKI どんなふうに……?
哲雄 仕方ないよ。突然だったんだから――ですかね。でも、最後は「止めろよ」と、あいつを止めただろ――かな。
AKI どこかで、自分を守ろうとしたんですね。
哲雄 申し訳ありません。実はそうでした。
AKI 少年・哲雄は、13歳にして、すでに隠蔽によって自分の身を守る知恵を身に着けていた――と。そういうことなんですね。
哲雄 人は、多かれ少なかれ、子どもの頃から、そういう知恵を身に着けて育っていきます。では、他の「恥」は、いかに隠されていくか? 次回は、AKIクンの「恥」を例に、そのパターンを分析してみることにしましょう。
AKI 止めて。私、次回は、欠席させていただきます。
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