「私と仕事、どっちが大事?」にどう答える?

手と手 
私と仕事、どっちが大事? よく女性からそんな質問を
受けることがあります。男にとって、これほど答えにくい
質問はない。そんなときのうまい答え方は——?


 愛が生まれる日本語・殺す日本語   レッスン1-12 



 世のカミさんたち、あるいは彼女たちは、しばしば、男が返答に困る質問を繰り出します。
 その最たるものが、これ!

 私と仕事、どっちが大事?

 という質問です。
 よくある会話例から、ご紹介しましょう。

 会話例1  結婚記念日に仕事が入った夫と妻の会話

 ねェ、明日、何の日か、わかってるよね?

 わかってる、わかってる。結婚記念日だろ? たださぁ……。

 エーッ! まさか、仕事なんて言わないでしょうね。

 それがさぁ……どうしても、現地視察にオレが行かなくちゃならなくなってさぁ……。

 ウソーッ。ねェ、あなたって、仕事と私とどっちが大事なの?

 そりゃ、どっちも大事に決まってるだろ。

 ……………。

 日本全国、津々浦々、あらゆる家庭で数え切れないほど繰り返されてきた会話。

 私と仕事と、どっちが大事?

 おそらく、日本の亭主たちは、これほどの愚問はないと感じ、日本の女房たちがこれほど言いたい言葉はない――と感じているに違いない言葉。
 結論から言いましょう。
 この「どっちが大事?」には、永久に答えが出せません。
 なぜなら、それこそが、男と女のミゾだからです。

カラス 「儒教」の考えでは、親⇒上司⇒夫婦、という順番

 古来の……と言っても、日本では、主に江戸時代になってから倫理的規範となった儒教の考え方によれば、優先順位は、「家」「仕事」「夫婦」でした。
 「家」と「夫婦」は一緒でしょう――と思うかもしれませんが、まったくの別物。「家」というのは「父子」の関係を表す言葉でした。
 まず、「親=父子間の親愛」を大事にしなさい。次に「義=君臣間の道義」を大事にしなさい。次に「別=夫婦間の分別」を大事にしなさい。このあと、「序=長幼の序」、「信=友人間の信義」と続き、この「親・義・別・序・信」を「五倫」としていました。
 つまり、江戸時代の男たちにとっては、夫婦のことは「二の次」どころか「三の次」だったわけです。
 明治以降はどうなったかと言うと、この「親」の前に「スーパー親」とも言うべき「天皇」が位置しました。国民はすべて「天皇の赤子」という考えですから、最優先事項は「天皇のため=お国のため」になったわけです。
 やっと、戦後になって、個人主義が輸入され、そこから「マイホーム主義」が生まれたりもしましたが、「公私」の「公優先」という感覚は、いまだに日本の男たち……というより、日本の社会から抜けきれていません。
 この感覚から言うと、「仕事と私」なら文句なしに「仕事」になってしまいます。仮に、「女房と約束があるので」と仕事を途中で放り出したりしたら、その男は、職場の中での地位を危うくしてしまうかもしれません。

カラス 「もっとガンバって」か「そんなにガンバらなくていい」か?

 動物界のオスとメスの役割から言うと、どうでしょう?
 たいていの場合、巣を守り、子どもを育てるのがメスの役割、そこへ十分なエサを供給し、他のオスの攻撃からコロニーを守るのがオスの役割ですから、むしろ、メスの言葉としては、「私が大事なら、もっとガンバってエサを取ってきなさい」になるのではないかと思われます。

 では、「私」と「仕事」を比較するという発想は、どこから生まれたのか?
 フェミニズムの発想なんでしょうか?
 しかし、フェミニズムの発想では、どちらかというと、「そんなに重要な仕事を男だけにはまかせておけない。私にもやらせろ」になるわけです。
 これは、筆者の推測ですが、「私と仕事とどっちが?」という言葉が飛び出す背景は、2通りしか考えられません。

 ひとつは、夫が不必要に仕事にのめり込んでいる――と、妻の目に映る場合です。
 必要もないのにサービス残業をする。「接待」や「つき合い」の名を借りて、毎日のように飲んだり食ったりして帰ってくる。
 「そんなにムリしてガンバらなくても、いまの稼ぎで十分。それより、もっと家族を大事にして」という気持ちが根底にあっての「私と仕事」です。

 もうひとつは、単なるわがままです。
 「そりゃ、仕事もガンバってもらわなくちゃ困るけど、私のことも放っておかれちゃ困るのよね」というわけです。
 この場合、「どっちも満たせ」が可能な状況が求められます。たとえば、夫の仕事がさほど忙しくなく、ほどほど給料もいい恵まれた職場であるか、または、仕事しようにも仕事のないアブナイ職場、あるいはアブナイ立場に夫が置かれている――という状況です。

 まず、後者から言うと、夫がよほど恵まれた職場にいるのでない限り、「私と仕事と」を言うためには、妻の側で覚悟しなくてはいけないことがあります。
 それは、「イザとなったら、私も働いてガンバるから、クビになるならなってもいいわよ」です。
 その覚悟がなくて言うのは、ちょっと無責任な気もします。

カラス 「注文」は「第三者」の口を借りて言うといい

 前者の場合には、夫の不必要なガンバリをやんわりと解除してあげる言葉が必要になります。
 それは、「もう、あなたは十分にガンバってるんだから」「私は、いまの暮らしで十分に満足なんだから」という言葉です。そうしたメッセージを伝えたあとで、「家族との時間も大事にして」と訴えれば、夫の過剰な仕事へののめり込みも、少しは緩むかもしれません。

 筆者の友人夫婦で、こういう話がありました。
 友人の亭主は部類の仕事好き。仕事、仕事で、一向に家族との時間を作ろうとしない、特に育ちざかりの子どももかまってくれようとしない。不安を感じたその細君が、ある日、ポツリとこんなことを言ったそうです。

学校の先生に言われたんだけど、クラスでキャッチボールができなかったの、うちの子だけなんだって。たまには、お父さんにも遊んでもらってくださいねって言うのよ、先生。

 第三者の口を借りた、うまい言い方です。
 友人は、「そりゃ、まずいな」と、それからは極力、子どもの相手をするようになったんだそうです。
 男が仕事をガンバるときには、必ず頭の片隅に、「家族のために」という言葉が浮かんでいるはずです。

  オレが仕事をガンバるのは、家族のためなんだ。
  そんなにガンバらなくてもいいから、もっと私たちを大事にして。

 この2つは、決して対立項目ではないということを頭に入れた上で、会話を進めれば、もう少し違ったコミュニケーションが生まれるような気がします。
 最後に、そんなニュアンスを取り入れて、冒頭の会話例を書き換えてみますので、よかったら参考にしてください。

 会話例2  まず「がんばり」に対する「感謝」があれば…

 いつも、遅くまでたいへんね。感謝してるのよ、とっても。おかげで、私たちも結婚3周年。

 おっ、そうだったな。

 ムリにとは言わないけど、明日の夕食、ちょっとリッチに楽しみたいの。

 わかった、何とかするよ。

 私は、いまのままで十分に幸せなんだからね。あんまりムリしないでね。

 この問題に関しては、この程度でとどめておくのがベター――と、筆者は思うのですが、いかがでしょう?



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