「家の恥を隠す」が先か、「個人の恥を隠す」が先か?

「恥」を隠すために、「不都合な事実」を隠蔽しようとしたり、書き換えたりしようとする。前回、《恥の文化》 の日本人には、その傾向が強いという話をしました。その「恥」はどこから生まれるか? 今回は、そんな話を掘り下げてみます――。
Talker
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
【今回のキーワード】 恥の文化 見栄の文化
AKI 「恥をかくこと」を恐れる意識が、よこしまな行為や思いを隠そうとしたり、書き換えたりしようとする。個人もそれをやるけど、組織もやる。前回は、そんな話をしたんですよね?
哲雄 《恥の文化》 の日本人には、その傾向が強いという話をしました。おそらくそれは、儒教に影響された東アジアには、多かれ少なかれ、見られる傾向かもしれませんけどね。
AKI 今回は、その隠蔽や改ざんが、どのように行われるか――という話をするんですよね。
哲雄 ハイ、その「どのように」を語るためには、そもそも、隠蔽しようとしたり、改ざんしようとしたりする動機を持つにいたったのは、個人が先か、組織が先か、ということを、検討しなくてはならないと思うんですが……。
AKI どっちが先だと思うんですか?
哲雄 組織だと思います。それも大きな組織ではなくて、小さな組織です。
AKI 「小さな」ですか? クラスとか、サークルとか?
哲雄 もっと小さな組織です。
AKI じゃ、家族……とか?
哲雄 「家族」というより「家」ですね。日本の社会が「儒教」思想に感化された「封建時代」以降、世の中のもっとも重要な構成単位は「家」とされてきました。
AKI 「○○家」とか言うときの「家」ですか?
哲雄 ハイ。ただの「家族」よりももう少し広い、親の親とか、兄弟とかまで含めた「家」です。儒教の教えでは、
「家」が治まれば、世の中は平安となる、
国家も安泰となる
――と教えます。儒教が生まれた中国でも、それを受け入れた朝鮮半島でも、そして日本でも、そこは共通しているんです。
哲雄 《恥の文化》 の日本人には、その傾向が強いという話をしました。おそらくそれは、儒教に影響された東アジアには、多かれ少なかれ、見られる傾向かもしれませんけどね。
AKI 今回は、その隠蔽や改ざんが、どのように行われるか――という話をするんですよね。
哲雄 ハイ、その「どのように」を語るためには、そもそも、隠蔽しようとしたり、改ざんしようとしたりする動機を持つにいたったのは、個人が先か、組織が先か、ということを、検討しなくてはならないと思うんですが……。
AKI どっちが先だと思うんですか?
哲雄 組織だと思います。それも大きな組織ではなくて、小さな組織です。
AKI 「小さな」ですか? クラスとか、サークルとか?
哲雄 もっと小さな組織です。
AKI じゃ、家族……とか?
哲雄 「家族」というより「家」ですね。日本の社会が「儒教」思想に感化された「封建時代」以降、世の中のもっとも重要な構成単位は「家」とされてきました。
AKI 「○○家」とか言うときの「家」ですか?
哲雄 ハイ。ただの「家族」よりももう少し広い、親の親とか、兄弟とかまで含めた「家」です。儒教の教えでは、
「家」が治まれば、世の中は平安となる、
国家も安泰となる
――と教えます。儒教が生まれた中国でも、それを受け入れた朝鮮半島でも、そして日本でも、そこは共通しているんです。
AKI てことはですよ、都合のわるいことを隠したり、書き換えたりするっていうのも、元はと言えば、「家」という組織がやり始めたってこと?
哲雄 始めたかどうかは定かではありませんが、「家が大事」と考えられている社会では、「不都合な真実」は隠そうとする心理がはたらいたのではないかと、私は思います。
AKI 「うちの子が盗みをはたらいた」とか「嫁に行った娘が離縁されて出戻ってきた」なんてことは、周りの社会には隠しておきたいでしょうからね。
哲雄 そういうことは「家の恥」になります。なので、隠す。場合によっては、「そんな子はいない」と、存在することを否定してしまおうとするかもしれません。あるいは、「おまえなんぞ家門の恥だ。家を出ていけ」と、存在そのものを抹消しようとするかもしれません。
AKI 「一家の恥」は「隠す」ですか? 究極の隠蔽ですね。その逆はないんですか?
哲雄 逆……?
AKI 「うちはこんな立派な家だゾ」と誇張して見せる心理も、はたらくんじゃないか――って思うんですけど。
哲雄 ウン、それもあるでしょうね。「うちは貧乏で、子どもたちに満足にメシも食わせられない」なんてことは悟られたくないので、屋根にうだつ(=防火壁を兼ねた屋根の装飾)を造りつけたり、門に立派な表札をつけたり……てなことをやる。「あそこん家のガキは頭わるくて勉強もできないらしい」なんぞと思われたくないので、無理して有名校に通わせようとしたりもする。
AKI 名前も知らないアメリカの大学に語学留学なんかして、「私、留学経験がありますの」なんて言いたがる女子も、いますしね。
哲雄 なんだか、留学女子を妬んでいるような言い方ですね。
AKI いえいえ、そんな妬みなんて、毛ほども持ち合わせておりませんわ。でも、そういうのも、「家」を立派に見せようとする偽装というふうに、私には見えてしまうんです。
哲雄 その見方、間違ってはいないと思いますよ。自分を実際よりも立派に見せようとするために、経歴を盛ろうとする行為、これもしばしば、「家」ぐるみで行われることが多い。というより、家が子どもをけしかけて、そういう経歴を身に着けさせようとすることもあろうかと思います。
AKI ナルホド。「家」の見栄のために、子どもにムリをさせるんですね。「教育ママ」と呼ばれる人たちの家庭などで、よく見られる傾向ですわね。
哲雄 ことさらにブランドものの装身具を身に着けようとしたり、いいクルマを持とうとしたり……という見栄工作も、よくやりますよね。《恥の文化》 は、そういう 《見栄の文化》 でもあるわけです。
AKI 隠そうとする「恥」があるから、よく見せようとする「見栄」もはたらく――ということ? 「恥」と「見栄」は、裏と表の関係なんですね?
哲雄 オッ、AKIクン、珍しく鋭いご指摘ですね。そうなんです。そういう「裏と表」の関係を生み出したのは、間違いなく「家」という社会単位なんですが、そういう関係は、企業や学校に、村や町や国家という社会全体へと広がっていく一方で、そんな「家」組織の中で育っていく個人個人の意識のありようもまた、変えていきました。
AKI 「家の恥」になることは、自分もしないようにしよう――というふうにですね?
哲雄 それもあるし、自分自身が、「家の恥」にならないようにしよう、「学校の恥」や「会社の恥」、「郷里の恥」さらには「国家の恥」にならないようにしようという意識が、作られていきます。
AKI 哲ジイは、そういう意識のありようが問題だと感じてるんですね?
哲雄 ハイ、「家の恥」だ、「組織の恥」だと感じる前に、「人間として恥」だという意識を持て――というのが、私の基本的な考え方であります。
AKI 「人間としての恥」と「組織の恥」。中身は同じなんですかね?
哲雄 微妙に違うんじゃないですか。その違いを語るためには、それぞれの「恥」がどのようなものであるかを、ひとつひとつ検証しなくてはなりません。
AKI ちょっと……時間かかりますねェ。
哲雄 ま、じっくり、時間をかけてやりますか。さいわい、まだ少々、時間は余っておりますので。
AKI そんなにたっぷりはないような気がしますけど……。
哲雄 ハ……?
AKI いえ、何でもありません。
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