「愛するリアル」も失われていく…?

「第二次リアル喪失」で、「ものづくり」のリアルを喪失した人間は、いま、「第三次リアル喪失」に直面し、「コミュニケーション」のリアルを失いつつあります。その「コミュニケーション」の中には「愛」も含まれています。愛も、そのリアルを失うのか? 今回は、そんな話を――。
Talker
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。
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AKI 「第二次リアル喪失」で、人類は、「生産の喜び」や「生産の計画性」というリアルから切り離され、「生産物との有機的な関係」を失ってしまった。その人類は、いま、さらに、新たな「リアル喪失」に直面している。「第三次リアル喪失」だ――と。前回は、そこまでお話したんですよね?
哲雄 ハイ、そうでした。さて、この「第三次リアル喪失」では、われわれは何を失いつつあるのか?
AKI そこです。これ以上、私たちは何を失うっていうのか、ものすごく気になるんですけど……。
哲雄 ハッキリ言いましょう。それは、人間が人間であるために失ってはいけないもの。コミュニケーションのリアルです。
AKI エッ、コミュニケーションから「リアル」が失われる? つまり、リアルなコミュニケーションが失われる……ってこと? まずいっしょ、それ。
哲雄 ハイ、まずいです。あなたがもっとも大事にしている「愛」も、その「リアル」を失ってしまう――てなことになってしまいかねない。というか、それはすでに始まっている。
AKI イヤです、それ。でも、どうしてそういうことになっちゃったんですかねェ。
哲雄 黒電話がなくなったから。
AKI ハ……? ウソでしょ?
哲雄 黒電話……てのはジョーダン。でもね、黒電話ではないにしても、固定電話があまり使われなくなったこと。実はこれ、コミュニケーションが「リアル」を失っていくきっかけだったんじゃないか――と、私はニラんでいるんですよ。
AKI 単に、固定電話が携帯にとってかわっただけの話じゃないんですか?
哲雄 「だけ」じゃなかったんですね。携帯にはもうひとつ、重要な機能がついていましたよね。
AKI メールですか?
哲雄 そう、その「メール」です。どこからでも、いつでも、「メール」という手段を使って、人は他者と必要なコミュニケーションをとることができるようになった。実は、これが、コミュニケーションの「リアル」を決定的に破壊するきっかけになりました。
AKI メールが……ですか?
哲雄 ハイ、メールが――です。
哲雄 ハイ、そうでした。さて、この「第三次リアル喪失」では、われわれは何を失いつつあるのか?
AKI そこです。これ以上、私たちは何を失うっていうのか、ものすごく気になるんですけど……。
哲雄 ハッキリ言いましょう。それは、人間が人間であるために失ってはいけないもの。コミュニケーションのリアルです。
AKI エッ、コミュニケーションから「リアル」が失われる? つまり、リアルなコミュニケーションが失われる……ってこと? まずいっしょ、それ。
哲雄 ハイ、まずいです。あなたがもっとも大事にしている「愛」も、その「リアル」を失ってしまう――てなことになってしまいかねない。というか、それはすでに始まっている。
AKI イヤです、それ。でも、どうしてそういうことになっちゃったんですかねェ。
哲雄 黒電話がなくなったから。
AKI ハ……? ウソでしょ?
哲雄 黒電話……てのはジョーダン。でもね、黒電話ではないにしても、固定電話があまり使われなくなったこと。実はこれ、コミュニケーションが「リアル」を失っていくきっかけだったんじゃないか――と、私はニラんでいるんですよ。
AKI 単に、固定電話が携帯にとってかわっただけの話じゃないんですか?
哲雄 「だけ」じゃなかったんですね。携帯にはもうひとつ、重要な機能がついていましたよね。
AKI メールですか?
哲雄 そう、その「メール」です。どこからでも、いつでも、「メール」という手段を使って、人は他者と必要なコミュニケーションをとることができるようになった。実は、これが、コミュニケーションの「リアル」を決定的に破壊するきっかけになりました。
AKI メールが……ですか?
哲雄 ハイ、メールが――です。
AKI 何かあったんですか?
哲雄 まだスマホなんてものが登場しない、ガラケーの時代の話です。私は、小さな編集制作会社を経営していました。何人かスタッフも抱えていたのですが、その新人スタッフのひとりが、ある日、ミーティングの時間になってもオフィスにやって来ない。30分ほど遅れて出社して来た彼女に、私は、やさしい声で、しかし、「ここは一度、ビシッと言っておかなくちゃ」という厳しさも込めて、言い諭すことにしたのです。そののときのやり取りが、以下の如くでありました。


まるで、メールをチェックしなかったおまえがわるい――とでも言わんばかりの言い方。私は、危うく、3メートルほどぶっ飛びそうになりました。
AKI ありがち~! 私の周りにもいましたよ、そういう女の子。大事な用事……ていうか、どっちかって言うと、都合のわるい用事になると、メールですませてしまおうとする女の子。すでに、哲ジイの時代から生存してたんですね?
哲雄 というか、そういうタイプが増え始めたのは、バブルがその頂点に達する頃だったかと思います。その頃からですよ、携帯電話の機能がやたら充実してきたのは。モニター画面は大きく見やすくなったし、何よりメールとカメラの機能が充実して、「写メ」だの「直メ」だのという言葉が、日常を跳び回るようになりました。
AKI 「写メ」っていうのは、「写真メール」? 「直メ」っていうのは?
哲雄 あ、それは……ですね、「出会い系サイト」などで、サイトを通さずに、直接「メアド」を交換してメールのやり取りをすることを言います。
AKI ヘーッ、「メアド」とか言ってたんだ、哲ジイ?
哲雄 いや、私が……ではありませんよ。そういうメールを交換している人たちもいたという話です。
AKI ま、深くは追及しないことにしましょう。でもね、ちょっとした用件だったら、メールですませる。それ、私たちの時代には当たり前になってましたね。たぶん、そのほうが安いからっていう理由もあったと思うんですけどね。
哲雄 確かに、肉声で通話するよりは安上がりでしたよね。だから、メールを使うようになった。それも、わからないじゃありません。しかし、そうしてコミュニケーションがメール主体になっていくことで、私たちは、コミュニケーションから「あるもの」を失っていきました。
AKI 「声」を使ってコミュニケーションすること――ですか?
哲雄 そうです。コミュニケーションから「肉声」というリアルが失われていきました。その結果、電話をかけるという能力が失われていった。しかし、それだけじゃないんですね。自分をプレゼンテーションする能力も、人とディベート(議論)する能力も、そして、AKIクンが大好きな、愛をささやき合う能力も、衰退していきました。
AKI 私が大好きかどうかは別にして、それって、ちょっとまずい気がする。人間が人間らしくなくなっちゃうんじゃありません?
哲雄 おっしゃるとおりです。しかもです、この面談・電話からメールへ――というコミュニケーション・ツールの主力転換は、人間関係にある決定的な変化をもたらしました。
AKI 決定的? それは何?
哲雄 ひとつは、人の気持ちや感情を読み取りながら話を交わすという、「対話能力」の衰退です。
AKI 「空気を読む」っていうのとは違うんですね?
哲雄 ええ。「空気」っていうのは、一定の集団などが抱く感情を集合化し、データ化したもので、それを「読む」という作業は、「対話」とは縁も因もない、ただの「処世術」でしかありませんから。個人の感情を「読み取る」という作業は、もっと直観的であり、その「直感」を前頭前野が処理する「知的な作業」でもあります。
AKI その「知的な作業」の素になる「直観」は、メールからじゃ得られないんですね?
哲雄 ハイ、得られません。人間が相手の気持ちや感情をまず受け取るのは、相手の目の色や声の調子などを通してです。面と向かってない相手からは、その情報を得られません。つまり、メールですませてしまうという行動からでは、人間は、相手の「感情」という「リアル」を得ることができないわけです。
AKI そうして《第三次リアル喪失》が始まる――と、哲ジイはそう言いたいんですね。
哲雄 ハイ。そのほんの始まりにすぎませんけどね。
AKI ほんの始まり……。もっと深く喪失してしまうんですか、われわれ人間は?
哲雄 そうです。もっと深く――です。そこから先の話は、ちと長くなりますので……。
AKI じゃ、次回、じっくりお聞きすることにしますか。私も、そのリアル、ちょっと失いかけてるんで……。
哲雄 何ですと! そりゃ、大変だ。
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