シランケンの不純愛講座

「仏の教え」に従う誓いを立てる「得度」というプロセス

　「得度」というのは、損得、愛憎、勝ち負けなどの煩悩に振り回される「迷いの世界」から、「仏の生き方」を拠り所とする「悟りの世界」へと渡ることを言います。「この世的な物差し」を捨てて「悟りの物差し」を身に着けるために、師となる僧の教えを受け、「仏弟子」となる誓いを立てること。それが「得度」の意味です。
　宗派によって違いはありますが、この「誓い」には、次の要素が含まれます。

　まずは、「帰依（きえ）」。
　「帰依」とは、「教えを信じて身を任せる」という意味ですが、任せる対象は「仏＝仏陀」「法＝仏陀が示した教え」「僧＝信仰の仲間」の「三宝」とされ、これを「三宝帰依」と言います。「得度」にあたっては、この「三宝」に帰依します――と、誓いを立てるわけです。

　次に、「戒律」を守るという誓いを立てます。
　何を「戒律」として重視するかは、宗派によって違いますが、一般的に知られているのは、「五戒」と呼ばれる次の５つの戒めです。


　仏門を目指す人間は、師についてこれらの「戒」を受け、それを守る誓いを立てなくてはいけません。「戒」を与える側から言うと、これを「授戒（じゅかい）」と言い、受ける側から言うと「受戒（じゅかい）」と言います。そして、この誓いを立てた人に「仏弟子」となった証明として与えられるのが「戒名（かいみょう）」です。
　ただし、浄土真宗と日蓮宗には、「戒」そのものがありませんから、「授戒会（じゅかいえ）」の儀式もなく、その結果与えられる「戒名」もありません。

「在家」のまま、「得度」することもできる

　こうして「帰依」を誓い、「戒」を守る誓い（浄土真宗と日蓮宗以外）を立てることを「得度」と言うのですが、そのために「出家」しなければならない――というわけではありません。「在家」のままでも「得度」は可能で、これを「在家得度」と言います。一方、「出家」して得度するほうは、「出家得度」と言います。
　「出家得度」の場合には、以上の誓いを立てるほかに、在家の肉親と別れる儀式をすませた上で「僧名」をもらって剃髪し（「剃髪」は、しなくてもいいとする宗派もあります）、衣・袈裟などをいただいて、お寺で僧としての生活に入ります。
　「在家得度」の場合には、お寺には入らず、在家（俗世間の住まい）に身を置いたまま、仏弟子としての生活を始めるわけですが、これには２種類があります。
　ふつうは、剃髪もせず、僧服も着ないで、人と変わりない姿かたちののままで、仏弟子としての生活を始めます。
　しかし、中には、頭を丸め、僧服に身を包んで、「在家」としての生活を続けようとする人もいます。こういう人たちを「入道」と呼びます。
　みなさんご存じの平清盛も、頭を丸め、僧服を着て、武将としての生活はそのままに僧形となり、「清盛入道」と呼ばれました。真田十勇士としておなじみの「三好清海入道」も、「入道」でした。そこには、「戦場で死なないように」という願いも込められていたのだろうと言われています。

週末だけの「プチ出家」もあり

　「出家」であれ、「在家」であれ、「得度」するには、それなりの時間も覚悟も求められます。忙しい毎日を送る中で、そこまでの時間を作ることも、覚悟は持つこともできない。しかし、それでも、せめて一時だけでも、俗世間の「さわがしさ」から身を退いて、「仏の教え」に耳を傾け、悟りの境地を味わいたい。
　そんな人たちの間で、お寺に泊まって「一日尼僧体験」を味わったり、「座禅の会」や「写経の会」に参加したりする人たちが増えているそうです。こうして、ちょっとだけでも「出家」気分を味わおうとする行動もまた、仏縁である――として、仏教界ではむしろ積極的に参加をすすめています。
　これらの「小さな仏教体験」は、「プチ出家」と呼ばれたりします。主に週末に行われることが多いので、「週末得度」と呼ばれることもあります。退職を機に「霊場巡り」の旅に出る――なんていうのも、一種の「プチ出家」と考えていいかと思います。
　還暦などを機に、一度、考えてみてもいいのではないでしょうか。
　筆者・長住も、いつか時間があったら――と思っているのですが、残念ながら、「時間があったら」が、なかなかやって来てくれそうにはありません。

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